神喰い達の後日譚   作:無為の極

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ちょっとだけ遅れました。




第122話 桃の節句

 極東支部にはとある場所では二つの顔があった。一つは華々しい環境。もう一つは色々な意味での戦場の様な場所だった。

 ゴッドイーターは基本的にはオラクル細胞を僅かながらに摂取し、超人的な能力を持って任務へと出動する。その対価として一般の人々からすれ羨む様な報酬が懐に転がり込む。勿論その報酬は自分の命削った代償なだけに誰もが真剣だった。

 幾らゴッドイーターと言えど、栄養を補給しなければ生命活動にも多大な影響を及ぼす。だからこそ、ここではその補完をする為に朝の早い時間から動く人々があった。

 

 

「しかし、ラウンジにそれを出すってのは、随分と豪華だね」

 

「手間はかかりますが、来る人には喜ばれますから」

 

「だからと言って、あたしゃ『あそこ』だけは勘弁だね。そんな気取った物なんて作れないんだからさ」

 

「気取ってはいませんよ。ここと大差は無いですから」

 

「それは、あんただけがそう思うだけの話さ。ここの皆はそう考えていなんだよ」

 

 まだ活動の時間には少しだけ早かった。しかし、ここでは時間と共に直ぐに対応できる様に前もって準備をする必要があった。

 相手はそれなりに食べる人間。だからなのか、口は動くも手はそれ以上に動いていた。

 リズミカルに聞こえる包丁の音はまるで何かの音楽を奏でるかの様に鳴り響く。時間的にはそろそろだからなのか、既に厨房の中にはゆったりとした空気は霧散していた。

 

 

「それに、ここよりも向こうの方がコストは高いですから。やっぱり、それなりに手間暇をかけないと申し訳ないですよ」

 

「そりゃそうだ。高かろう不味かろうではね。食なんて一番の本能みたいな物だからね」

 

 既に用意された食材の殆どは綺麗に形を揃えていた。後は冷ましながら混ぜ込むだけ。ラウンジでは出来ない仕込みだからこそ、食堂の設備を使用していた。

 用意された一人用の丸重に冷ましたそれを詰めていく。手順は既に理解しているからなのか、切り揃えた具材をその上から乗せていた。

 数はそれ程ではない。丁度、ここの人数と同数だった。

 

 

「態々お借りして済みませんでした。良ければ、これを人数分だけ作りましたので、ご賞味下さい」

 

 まだ一般には完全に流通していないからなのか、切り添えられた具材はどれもが海の幸だった。

 一部は既に火を通してある為に問題は無いが、それ意外は明らかに生ものだった。だからと言ってどの食材もそのままではなく、味付けなど一仕事されている。

 元々温かい状態で食べる物では無い事は厨房の人間であれば誰もが知っている。だからなのか、仕込みが終わった人間は用意されたそれを口にしていた。

 

 

「流石だね。今の仕事を引退したらここに来て欲しい位だね」

 

「何言ってるんだい。極東のエースが引退なんてしたら、アラガミが来たら心配じゃないか」

 

「他の皆も訓練してますから、心配はいりませんよ」

 

「いや、それは違うね。あんたと言う絶対がいるから、皆が自分達のやりたい様にやってるんだよ。ここは割と新人から中堅が殆どだ。あんたの話を聞かない日は無いよ」

 

「それってどっちの事ですかね。多分、妻の事だと思いますが」

 

「相変わらず謙遜だよ。やり過ぎると嫌味になるよ」

 

 まるで親子や近所付き合いがあるかの様に厨房の人間は一時的に設備を借りに来たエイジと話をしていた。

 本来であればラウンジでやれば良いだけの話。しかし、今回用意した物は流石に仕込み量が多かったからなのか、食堂の厨房まで来ていた。

 自分の包丁を滑らせ、具材は瞬時に切り整えられていく。

 熟練ともとれる技量は元からここに居た人間でさえも目を見張る程だった。

 そんなエイジが用意したのは赤く塗られた丸重。敷き詰められた具材は(いろどり)も鮮やかだった。

 

 

「以後気を付けます」

 

「そうだよ。トップがそんなんだと、下が苦労するからね」

 

 エイジとしてはそれ以上は愛想笑いしか出来なかった。

 周囲がどう考えていても自分よりも上の人間が身近に居る為に、慢心する事は無い。どれだけ鍛錬をしようが、その上の人間は遥か先を歩く様だった。

 だからこそ、毎日の積み重ねを続けるしかない。上達するには近道は無い事を理解しているからこそ、本心でそう考えていただけだった。

 勿論、エイジの本意など周囲は知らない。精々がアリサ位の話だった。

 

 

「これは……中々の味だね。こんな手の込んだ物を今日出すのかい?」

 

「ええ。そのつもりです」

 

 既に口にしたからなのか、周囲の人間は誰もが驚いたままだった。実際に細かく味を調整している為にそのバランスは絶品だった。

 ここでは絶対に出そうとすれば大味でしか出来ない。ラウンジに足を運ぶ人間は贅沢だけども羨ましいと誰もが感じていた。

 

 

「しかし………これ、結構するんだろ?」

 

「そうですね。少なくとも何時もよりは少しだけ割高ですかね」

 

「でも、これなら納得だね」

 

「専門の方にそう言って貰えて安心です」

 

「止しておくれよ。私らはそんなんじゃないからさ」

 

 既に時間は朝の時間に差し掛かろうとしていた。ここに来る前にラウンジの仕込みは完了している。

 前日に寝かせたそれを後は焼くだけにしてあるからなのか、エイジは何時もよりは時間にゆとりがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、今日は特別メニューを出すらしいんだけど、ナナは何か知ってるか?」

 

「えー。ロミオ先輩が知らないのに、どうして私が知ってると思うの?」

 

「そりゃあ……まぁ。色々とだって」

 

 ナナの反撃の言葉にロミオは僅かに後退りしていた。

 今朝、ラウンジに行った際にエイジが珍しく動きが慌ただしい様に見えていたのが原因だった。

 普段から段取り良く動くはずの人間が慌ただしくなるのは何らかの要因がある。

 普段はそれ程気にしないロミオではあったが、今日に限っては珍しく気になっていた。

 

 ひょっとしたらサテライト絡みの事案が発生したのかもしれない。そんな取り止めの無い事を考えていた。

 最近になって、中堅の人間の数もそこそこになってからのクレイドルは、改めて本来の任務でもあるサテライトの建設候補地を探す事を再開していた。

 実際には当時とは違い、今はアラガミの分布とこれまで培ってきたデータから、かなりの精度で探す事が可能となっている。当初の様にアリサやエイジが動くのではなく、今では事前の調査は人員を増やしたクレイドルの他の隊員が動く事が多くなっていた。

 勿論、ロミオもまたそれを知っている。だからなのか、エイジに思い切って確認をしていた。

 しかし、返って来た回答はまさかの言葉。何かしらあるのは予想はしたが、それが何なのかはロミオにも分からなかった。

 

 

「ふ~ん。で、本当の所は、何かな」

 

「いや、何でも無いって。ちょっとエイジさんから聞いただけなんだって」

 

「エイジさんが、何て言ってたの?」

 

「詳しい事は時間になってからって事で、詳しい事は何も教えて貰えなかったんだよ」

 

「勿体ぶってそれだけ?」

 

「勿体ぶってないし!」

 

 何時もの掛け合いだからなのか、周囲に居たギルとシエルは二人から距離を取ってた。

 ラウンジでは何時もの光景であることに違いは無かった。事実、極東支部の中ではラウンジはある意味では特殊な環境である事に違いは無かった。

 他の支部では分からないが、この極東支部には純粋に食事をする場所というくくりで見ればラウンジ以外には食堂がある。シエル達もその存在そのものはここに来た際に弥生から聞かされていた。

 しかし、最初からここに足を運んでいるからなのか、食堂そのものに意識は向かない。だからこそ、ブラッドの中では極東の内部はラウンジにあると言ったイメージが存在していた。

 

 これがムツミだけであれば食堂にも足を運んだ可能性はある。だが、エイジがカウンターの中に居た時点で食堂に行く事は無かった。

 それは偏にエイジの存在がそこにあったからだった。

 教導教官としてのエイジは苛烈でありながらも理知的に自分が不足している部分をフォローする。何も知らない新人からすればエイジは訓練中は苛烈だが、それ以外は接しやすい。そんなイメージを抱かせていた。

 だからと言って気軽に話せるかと言われれば否としか言えなかった。本人にそのつもりは無くても、周りから必然的に注目される。そんな中で話しかけるのはかなりの勇気が必要だった。

 そんなエイジにまともに話しかける事が出来るのはクレイドルの幹部かブラッドではロミオか北斗しか居ない。

 ナナはそんな事実を知っているからこそ、真っ先にロミオに確認をしていただけだった。

 

 

「それなら、その時間になってから足を運ぶのはどうでしょうか?その方が合理的かと思います」

 

「流石はシエルちゃん。ロミオ先輩とは大違いだね」

 

「………ナナが俺をどう見てるのか分かった気がする」

 

 これ以上はブラッドの恥が拡大すると判断したからなのか、シエルは二人の元で当然の提案をしていた。

 事実、エイジが時間になれば分かると言っているのであれば、その時に行けば良いだけの話。至極真っ当な意見を述べただけにも拘わらず、ナナは盛大に感謝していた。

 

 

「ラウンジでやるなら食事関係だろ?だったらこれからミッションにでも行けば時間も経つだろ」

 

「そうだね。ミッションをこなせば美味しく食べられるよね」

 

 ギルの言葉にナナは同意していた。本当の部分は誰にも分からない。ギルもまた絶対だとは思わなかったが、可能性を考えればそれが妥当だと判断しただけだった。

 だからこそ、それ以上の事は何も言わない。仮に違った場合、何かと問題を孕む事を理解したが故の行動だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹も減ったし、そろそろ良い時間だよね」

 

「ナナ。今日は何かあったのか?」

 

「詳しくは分からないんだけど、特別な何かがあるらしいって」

 

「特別な………何か?」

 

 ミッションが終わったばかりだからなのか、ナナのテンションは異常な程に高かった。

 詳しい事は分からないが、このままアナグラに戻れば何かがあるらしい。実際に極東支部は他の支部に比べれば、内部でのイベントは格段に多かった。

 ナナに聞きながらもリヴィもまた自分が来てからの事を思い出す。

 冷静に考えれば先月もまたバレンタインや豆まきをした記憶があった。それが前提であれば、恐らくは何らかのイベントが開催される可能性はあるのかもしれない。まだここに来てそれ程ではないが、リヴィもまた極東支部の流儀に慣れつつあった。

 

 

「詳しくは分からないんだけど、夕方から準備するんだって。楽しみだな」

 

 既にナナの意識はアナグラへと向いていた。

 帰投の際の案内がミッション中はフランだったが、帰投の際にはテルオミに変わっている。何時もであれば違和感を感じるはずが、これから起こる何を期待しているからなのか、誰もが気が付く事は無かった。

 

 

 

 

 

「お疲れさん。どうやら問題無さそうだったな」

 

「はい。感応種でしたけど、何となく勢いが無かった様にも感じました」

 

「そうか。まぁ、今日はこれで終いなんだろ?ラウンジに行くと良いぞ」

 

 神機のメンテナンスの為に整備室に行くと、出迎えたのは何時ものリッカではなくナオヤだった。

 整備の傍らで教導をしている関係で、ナオヤがこの時間までここに居るのは意外と珍しい。基本的にはブラッドの担当はリッカだけではないので、それ以上は気になる事は無かった。

 そんな取り止めの無い事を考える最中に、ナオヤから出たラウンジの言葉。ひょっとしたらナオヤは何をやっているのかを知っているのかもしれない。そう考えたからなのか、徐に聞いてみた。

 

 

「ナオヤさんは、ラウンジで何をしているのか、知ってるんですか?」

 

「ああ。少なくとも俺には関係が無いのは確かだな。まぁ、それ以上はここで言うのも野暮だ。ラウンジに足を運ぶと良いだろう」

 

「分かりました!リヴィちゃん、シエルちゃんも早く行こうよ」

 

「ナナさん!」

 

 既にロミオの事など眼中に無いとばかりにナナは速足で向かっていた。

 アナグラの中は緊急時以外は走る事は禁止されている。これがサクヤなら窘められるだけだが、ツバキであれば確実に雷が落ちるのは確定だった。

 下手に走る事で余計な時間を浪費しない。そう考えた苦肉の策だった。

 

 

「あの、俺にはって事は、何か特別な事でもしてるんです?」

 

「特別と言えばそうだな。行けば分かる。だが、俺だけじゃなくてお前も多分同じ事を思うぞ」

 

「そうですか」

 

「まぁ、屋敷の絡みもまるからな」

 

 残されたロミオは取敢えずナオヤの言葉に疑問を持ったからなのか、まずはと確認していた。

 ロミオとて短期ではあるが、屋敷で生活した経験はある。だからなのか、その単語が出た為に何かを理解した様な気分になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、お疲れ様でした」

 

「ピンチになる事は無かったよ。あれ、ところで皆は?」

 

 ラウンジへ行く道程にはロビーが必ずある。普段であればカウンターの位置はエントランスの下部である為にそのまま素通りする事が殆どだった。しかし、今回に限っては珍しく階段を下りてカウンターへと移動している。

 折角だからとナナが一声かけてからと考えた結果だった。そんなカウンターもまた何時もとは少しだけ違う光景が広がっている。

 普段であればヒバリかフランが居るはずのカウンターにはテルオミだけが佇んでいた。

 

 

「ラウンジですよ。それと………まぁ、とにかく行ってみれば分かりますので」

 

 ナナの質問に答える事無くテルオミは自分の仕事をこなしていた。

 実際に一人で回す為にオペレーター業務も入ってくる。少なくとも一定時間はここを一人で乗り切る必要があった。だからなのか、言葉短めに対応する。

 少しだけ視線をリヴィに向っていた事に気が付かないままだった。

 

 

 

 

 

「これって一体………」

 

 ラウンジの扉の先にあったのはここに所属している殆どの女性陣かと思う程だった。

 バレンタインの様に貸し切りでは無い為に男性陣も居るには居るが、その殆どはどこか居心地が悪そうだった。

 誰もが心無しか、食べる物を食べてから足早にラウンジを出る。その先に居たのは珍しい人物だった。

 

 

「お帰りなさい。任務ご苦労様でした」

 

「ユノさん!今日は来てたんですか」

 

「うん。ある程度落ち着いたから寄ってみたの」

 

 視線の先に居たのは着物姿のユノだった。普段であればワンピースを着る事が多いが、今日に限っては着物を着ている。

 恐らくはこれが原因なんだと思うまでにそれなりの時間を要していた。

 

 

「そう言えば、皆、着物とか着てるけど、どうして?」

 

「今日は桃の節句なんだって。私も知らなかったんだけど、弥生さんが折角だからって用意してくれたの」

 

 ユノの言葉にナナは漸くこの状況を理解していた。

 ラウンジの中は何時もとは違い、どこか華やいでいる。女性陣が着物を着ているからなのか、それとも周囲に飾られた花がそうさせるのかは分からない。しかし、これまでにアナグラでは見た事が無い景色はナナだけでなくリヴィやシエルの目も奪っていた。

 

 

 

 

 

「これが今日のメニューなんですか?」

 

「折角だから作ったんだよ。多分、食堂でも同じような物を作ってるはずだけど、こっち方が手間暇はかかってるかな」

 

 着物に着替えると食べるのが辛いからと3人は先に食事をする事にしていた。

 用意されたのはちらし寿司とお吸い物。エイジが言う様に丸重に乗せられた具材は海鮮をベースに彩を考えて作られていた。

 小さく切ってあるからなのか、どれもが一口サイズになっている。普段では見る事が出来ない料理にナナ達だけでなく他のラウンジに居る人間もまた満足気な表情を浮かべていた。

 

 

「本当はお吸い物も蛤を使いたかったんだけど、流石に全員に行き渡らせるのは無理だったんだよ」

 

「いえ。これまで食べた事が無い料理ですから、比べようもありません」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

 シエルの言葉にエイジもまた笑みを浮かべていた。

 実際には朝早くからの仕込みをしなければ用意できない料理。だからと言って、その過程を口にする事はない。

 食べた人の表情がエイジにとっての感想だった。改めて周囲の様子をうかがい知る。気が付けば扉付近にはソーマとリンドウの姿があった。

 

 

 

 

 

「今日はこれの用意だったのか?」

 

「ええ。事前に用意しておかないと流石に無理ですから」

 

 何時もの様にリンドウとソーマはカウンター席に座る。元々今日はこれだけの用意だったからなのか、座った途端に直ぐに用意されていた。

 

 

「あれ?ソーマの分はどうしたんだ」

 

 リンドウが疑問に思うのは当然だった。リンドウの前には既に用意されている為に直ぐに食べる事は可能だが、肝心のソーマの前には何も置かれていなかった。

 だからと言ってエイジが何かをする気配も無い。疑問を口にした瞬間だった。

 

 

「間にあったか?」

 

「丁度今来た所だよ」

 

「そっか。だったらセーフだな」

 

 まさかの声に真っ先に反応したのはソーマだった。

 も聞かされていなかったからなのか、珍しく驚愕の表情を浮かべている。ここは屋敷ではなくアナグラ。時折しか姿を見せないアルビノの少女シオの声だった。

 良く見ればシオの手には大きな風呂敷包みを持っている。誰が何を言おうと三段重ねのお重だった。

 突然の登場に各自が各々の反応を見せている。リンドウもまたこれからのシオの行動を予感したからなのか、その表情はまさにニヤニヤした物だった。

 

 

「シオ、どうしてここに」

 

「最近は顔も見てないからこっちにきた」

 

「言ってくれればそっちに行ったが」

 

「ソーマは研究でいそがしい。だったらわたしが来た方がはやいと思った。………でも、めいわくだった?」

 

 落ち込んだ表情に誰もがソーマに向ける視線に様々な感情が乗っていた。あんないい娘をと思った妬みの色を持つ感情が一番多い。

 ソーマとて嬉しい気持ちはあったが、だからこと言ってここでそんな言葉を口にするには余りにもハードルが高すぎた。

 隣に居るリンドウやカウンターの中に居るエイジは既に戦力にすらならない。

 今のソーマはまさに四面楚歌だった。

 研究明けのソーマの背中に冷たい物が流れる。誰もがソーマの一挙手一投足に注目していた。

 

 

「迷惑な訳があるか。ほら、さっさとこっちに来い」

 

「いいのか?」

 

「良いに決まってるだろ」

 

「やった!」

 

 ぶっきらぼうな言葉にシオの表情は一気に明るくなっていた。ひょっとしたら先程の表情は演技だったのだろうか。そんな取り止めの無い事を考えながらも誰もが口にはしなかった。

 ここで何かを言えば後が怖い。ソーマを怒らせる猛者は何処にも居なかった。

 

 

 

 

 

「これは……中々良い物だな」

 

 ソーマとシオのやりとりなど無視するかの様にジュリウスもまた物珍し気に食べていた。

 ロミオの様に箸にはまだ慣れていないからなのか、大きめの匙を使っている。

 味わいもさることながら、ここまで華やかな物を食べた記憶は無かった。

 物珍しいからなのか、食べる事に集中している。ジュリウスは常に平常運転だった。

 

 

 

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