神喰い達の後日譚   作:無為の極

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第131話 懐かしき思い (後篇)

 自分の優位は揺るがないと判断したからなのか、ディアウス・ピターは二人から逃げる選択肢は無かった。

 実際に詳しい事は分からないが、先程までの自分の命を脅かすはずのそれが鳴りを潜めているのは何となく理解していた。

 

 見た目は小さいが、これまでに数多くの物を捕喰した側からすれば、この(つがい)のゴッドイーターは極上の餌の様に見えていた。これを捕喰すれば、更なる進化と遂げる事が出来る。獣とは言うものの、最低限の思考能力から出た判断だった。

 万が一の可能性もある。だからこそディアウス・ピターは二人から視線を外さず、周囲の状況だけを確認していた。

 自分の命を脅かす存在だった物は既にこの場にはいない。自分の片目は潰されはしたが、これならば目の前の2つを捕喰し、他の個体も適当に捕喰すれば何とかなる。ましてや先程まで戦った種が居ないのであれば、命の保全は為されているのと同じ。それをはっきりと理解したからなのか、自慢の巨躯を見せつけるかの様にゆっくりと歩を進める。

 既に意識は半ばこの二人だけに向いていた。

 

 

 

 

 

「アリサ。分かってるとは思うけど、落ち着いて狙ってくれ。基本的には視界の死角の部分から動く事になるから」

 

「分かりました。ですが……無理はしないで下さい」

 

「ああ。分かってる」

 

 まるで猫が弱った鼠を甚振るかの様にその巨躯はゆっくりと近づいていた。

 事実、先程とは違い両肩からは刃の羽がまるで死神の鎌の様にその存在感を示している。初見であればどんな攻撃になるのかが分からないが、生憎と交戦経験がある以上は脅威ではあるが、警戒しすぎる事は無かった。

 基本的な動きはこれまでと同じ。違うのはその羽の攻撃範囲だけ。当然、ディアウスピター自身に変化は見当たらない。だからこそ、これまで培ってきた戦闘経験を活かし、自分が囮となる事を選んでいた。

 本当の事を言えば強引に突っ込んでも問題はないかも知れない。しかし、その根底にあるはずの神機が不調をきたしている今、アリサの攻撃力に頼るしかなかった。

 

 自分が囮になるとは言え、何もしなければ意識はアリサへと向く可能性が高い。だからこそ、そうだと思わせないように動くより無かった。

 アリサの声には心配している感情がありありと混ざっている。それを理解しているからこそ、エイジもまた何時もと同じ様に返事を返していた。

 お互いの距離がゆっくりと縮まる。まだ間合の外だからこそ、その動きは慎重になっていた。

 只でさえ油断出来ない相手であり、その上位とも取れる変異種。自分の攻撃がブラフであることを悟られない様にエイジは漆黒の刃を改めて構え直していた。

 

 

「交戦する」

 

 一言だけ出た言葉と同時に、エイジだけでなくディアウス・ピターもまたタイミングを計ったかの様に疾駆していた。

 巨躯からなる振動の間隔は極めて短い。それはディアウス・ピターが疾走しながら様子を伺っている証拠。

 走る事によって狭まる視界を活かすかの様にエイジはギリギリのタイミングを見計らっていた。

 

 襲い掛かる三条の爪。少なくとも、どんな攻撃をするのかを警戒しているのであれば、確実に反応出来ない速度。何も知らないゴッドイーターであれば悲鳴が上がる程のそれだった。

 

 

「アリサ!」

 

「はい!」

 

 ディアウス・ピターの爪が届こうかと思われた瞬間、そこにあったはずのエイジの体躯は無くなっていた。

 ギリギリの間合いを見切った事により、素早くその場から移動する。疾駆していたディアウスピターの眼から見ても、エイジの体躯がまるで消えたかの様に感じる程だった。

 そこにあったはずの獲物が居ない。ディアウスピターは二人からは少なくともそう感じた瞬間だった。

 

 待ち構えていたのは獲物ではなく、自分を攻撃する為の手段。そこにはアリサが放ったバレットそのものがそこにあった。

 事実上の零距離。回避する事無くその銃弾はディアウス・ピターの醜悪な顔面に着弾していた。

 一度着弾した事によって大きく怯む。ここで態勢を整えるのが従来のやり方だったが、それはあくまでも十分な戦力が揃っているのが前提の話。今は確実に火力が不足している以上は僅かな隙であれも出来るだけ攻撃を叩き込むのが先決だった。

 次々と届く銃弾。着弾した端から小爆発を起こす事によって開幕はエイジ達が先制していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《リンドウさん。エイジさん達が交戦を開始しています。できるだけハンニバルの討伐を早くする事は可能ですか?》

 

「どう言う事だ?」

 

 突然の通信にリンドウは少しだけ訝しげにしていた。オペレーターの中での新人ではなくベテランのヒバリあれば、今の戦況がどうなっているのかは理解しているはず。ましてや相手がハンニバルであればそれは尚更だった。

 リンドウとソーマの戦力を加味した上でのその言葉。リンドウもまた、交戦しながらもその意味を確認するよりなかった。

 

 

《エイジさん達が交戦しているのはどうやらディアウス・ピターの変異種の可能性が高いです。現時点は肉体的な損傷はありませんが、エイジさんの神機が大幅に使えない状態になっています。厳しい事は重々承知していますが………》

 

「……そうか。直ぐにでも言いたい所なんだが、生憎とこっちも厳しいんでな。出来る限りの事はするが、期待はしないでくれ」

 

《いえ。無理を言う様ですみません》

 

 今のリンドウには、そう言うのが精一杯だった。実際に話をするだけのゆとりはあるが、だからと言ってもう片方の戦場を意識しながら戦える程の相手ではない。

 既にこちらもまた戦況はこちらへと傾いてはいるが、時間にゆとりを作るだけは無かった。

 目の前のハンニバルは既に逆鱗を破壊された事によって炎を背にしている。

 新人や中堅ならばすぐにでもと考えるが、あっちはエイジとアリサ。ならば多少の時間がかかっても何とかなるだろうと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリサ、大丈夫か」

 

「何とか大丈夫です」

 

 戦闘開始直後はこちらの策が見事に嵌まったものの、その後は思ったよりも苦戦していた。

 一番の要因はアリサ自身がこの変異種の範囲攻撃の距離を掴み切れていない点。これが小型種程度であれば最悪は攻撃を受けてもフォロー出来るが、このクラスともとなれば、些細な攻撃一つとっても慎重になる必要があった。

 

 下手な防御をすればこちらの盾など気にする必要も無い。その為に回避行動にはどうしても隙が生まれていた。

 エイジが幾ら攻撃をする素振りを見せた所で、肝心のそれがこちらに害が無いと判断すれば、あとは実に単純な話。エイジの動きを完全に無視してアリサだけに的を絞るだけの話だった。

 幾らそぶりを見せようが、実体が伴わない牽制は既に牽制ですらなくなっている。

 その結果、アリサだけが執拗に狙われていた。

 純白だったクレイドルの制服は既に泥に塗れ、元の色すらも分からなくなっている。

 そこには幾つかの擦り傷もあった。

 

 巨躯を活かした攻撃だけならまだしも、問題なのは、遠距離でもあった雷球が全てアリサへと向いている。ゆっくりではあるが、二人は追い込まれつつあった。

 このままの状態が続けば、待ってるのは捕喰される可能性。だからと言って起死回生の手段がある訳でも無かった。

 

 

「一回だけ攻撃をする。後の事はそれからにしよう」

 

「ですが……」

 

「今はそれしかない」

 

 エイジの言葉にアリサもまた、強く反論する事は出来なかった。実際にジリ貧になっているのは間違い無く、既にアリサだけでなくエイジもまたボロボロの状態になっていた。

 最前線に躍り出て、回避だけを繰り返す。ある意味では相応の技量が求められる事。

 このままだとどうなるのかを考えれば、ある意味仕方の無い事だった。

 ここで致命的な攻撃を一度でも仕掛ければ、再度疑念を持つかもしれない。再度意識を固定させる為の手段だった。

 口にしたからなのか、エイじは改めて自分の神機に目をやる。

 無茶を承知の上での行動だった。距離を取りながらもその様子を伺う。その瞬間だった。

 

 

「お前達、無理はするな」

 

 漆黒の旋風がエイジの前に躍り出た瞬間、即座にディアウス・ピターへと向いていた。

 エイジと同じ漆黒の刃。極東支部に於いて、漆黒の刃を持ったエイジ以外にはただ一人だけ。

 潰された片目が死角になっている事を理解したからなのか、ディアウス・ピターは自身の体躯を護るかの様に羽を振り回していた。

 嵐に立ち向かうかの様に疾駆するのはこの場に居ないはずの無明。襲いかかる刃を全て回避しながらも止まることなく一気に距離と詰めていた。

 

 

「─────────!!!」

 

 周囲一帯にディアウスピターの悲鳴が響いていた。

 まだ覚醒する前にエイジが傷つけた目とは反対の目に漆黒の刃が深々と突き刺さる。視界を完全に失ったからなのか、ディアウス・ピターは悶絶するかの様に暴れまわっていた。

 

 

「2人共、一気に決めるんだ!」

 

 無明の言葉にエイジだけでなくアリサもまた神機を剣形態へと変形させる。

 暴れまわるディアウス・ピターは危険ではあるが、脅威は感じられない。だからこそ、そのまま止めを刺すべく行動していた。

 両方の前足が捉える意識も無く、ただ振り回している。今の状態の攻撃を受けるほど、エイジとアリサは愚かではなかった。

 事前に聞かされた精々が一合程度。その一合を振るうのが今である事を理解しているからなのか、エイジは全身の力をこの手に集中させていた。

 狙うは両目が潰された顔面。これまでの鬱憤を晴らすかの様にその斬撃は斜めに叩きつけられていた。

 衝撃をまともに受けた事によって態勢が完全に崩れている。そこに待っていたのは追撃する為に同じく疾駆していたアリサの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。お蔭で助かりました」

 

「気にするな。ここに来たのは偶然だ。それに、時間をかければ他の人間が間に合ったはずだ」

 

「ですが、結果的には同じなので」

 

 横たわった巨躯は既に朽ち始めたのか、その姿がおぼろげになりつつあった。

 最終的に引き抜いたコアは変異種特有の物。考えるまでもなくレアな物だった。

                                                                       戦闘が終了したからなのか、アリサもまた乱れた呼吸を元に戻している。漸く厳しい戦いが終わった証左だった。

 

 

「ですが、僕等だけでは厳しかったのも事実なので」

 

「そうか。エイジ、お前の神機は早々に整備してもらうと良い。ナオヤが何と言ったのかは分からんが、実際にはこれ以上の戦闘は危険だ。直ぐに帰投の準備をするんだ」

 

「ですが、サテライト候補地のここをそのまま放置する訳には………」

 

「その気持ちは大事だが、それとお前自身を天秤にかけるな。ダメなら再度新たな候補地を見つけるだけだ」

 

 無明の言葉にエイジもまた薄々とは感じていたが、それ以上は何も言えなかった。

 詳しい事はアナグラに戻らない限り分からないが、少なくとも今の状態で神機を振るうのがどれ程危険なのかは理解している。実際にはここにアラガミが出没したとしても、神機の事を考えれば振るう事を躊躇う程。止めの一撃を加えた瞬間の手応えは少なくともこれまでに感じた事が無い物だった。 

 完全に破損すればゴッドイーターを続ける事は出来ない。何よりも無明の言葉だからこそ従うしかなかった。

 

 

 

 

 

「お前ら大丈夫………みたいだな」

 

「遅かったなリンドウ」

 

「何だ、お前が居たのか。焦って損したぞ」

 

「俺がここに居たのは偶然だ。それとそっちの方は良かったのか?」

 

 背後からは僅かに焦りを持ったリンドウの声が聞こえていた。実際の状況がどうなっているのかは通信越しで分かっている。無明がここに居た事を知らないのであれば、その状況は当然だった。

 無明の姿を見た事によって大きく息を吐く。エイジ達の厳しい戦いがどうなったのかを理解したからなのか、表情は何時もと同じ様になっていた。

 

 

「ああ。何とかって所だ。元々それとこっちのハンニバルがお互い争っていたんだ。多少なりともやり様はあったな。で、そっちは………」

 

「見ての通りだ」

 

 無明の言葉にリンドウは、まだ霧散していない骸へと視線を動かしていた。

 背中からは刃の羽が生えている。ディアウス・ピター変異種。それが何を意味するのかは言うまでもなかった。

 

 

「変異種か。何でこんな所に?」

 

「さぁな。だが、お前の話から考えれば捕喰した事による進化なのかもしれんな。実際には変異種に関してはまだ不可解な部分も多い。今回のこれもまた出来るだけの情報を早急に持ち帰る必要があるだろうな」

 

 以前に対峙した際には螺旋の樹と言う特殊な場所であった為に、何かと調査する事は困難だった。

 事実、螺旋の樹は既に崩壊し、聖域となっている。周辺の状況を確認しようにもその術は何も無いまま。しかし、この地に関してはフィールドワークに範囲に収まる。リンドウにはそれ程大きな影響は出ないが、ソーマにとっては重要な調査地点だった。

 

 

「無明。コアはどうした?」

 

「問題無く回収してある。それと一部の部位は残ったんだ。これを解析に回すだけでも前には進むだろう」

 

「そうだな。アラガミにとっては朗報ではあるが、俺達からすれば凶報でしかないからな」

 

「この件に関してはお前に任せる。キュウビの件は大よそメドがついたと聞いている。それに、こっちはこっちでやる事がまだあるんでな」

 

「良いのか?」

 

「当然だ。後進を育てるのも我々の仕事だ。今は良いが、次代はお前が主導する事になるんだからな」

 

 会話をしながらもソーマの目は常にディアウス・ピターへと向けられていた。

 余程大物だったのか、コアを抜いた今もまだその姿はまだ残っている。幾ら現場に出る事があるとは言え、これ程のアラガミと遭遇するのは稀だった。

 だからこそ完全に霧散するまでに取れるデータは全て取る。解析をする為には出来るだけ多くのデータと素材は必要不可欠だからだ。

 時間が来たからなのか、その姿は大地に溶けるかの様に霧散していく。先程までの厳しい戦いは最初から無かったかの様に静かに消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し歩いた先にそれなりの水源があった。そこで少し綺麗にしてきたらどうだ?」

 

「ですが、私も準備をしないと……」

 

「ここは俺がやっておく。それと、エイジ。お前もだ。アラガミは出てこないとは思うが、それ以外に何が出るか分からん。護衛として行ってこい」

 

「そうします」

 

 無明の言葉にアリサも頷くしかなかった。本当の事を言えば、言われる前にそうしたい気持ちの方が勝っていた。

 エイジにとっては二戦目だが、アリサにとっては初戦。事前に行動パターンを知っていたとしても、いざ実戦となった際には苦労の連続だった。

 確かにディアウス・ピターに変わりはないが、翼が生えてからは心もち体感速度が上昇した様にも感じていた。

 それは種特有の物なのか、それとも強制進化した結果なのかは分からない。当然ながらその認識のズレは戦いを厳しい物へと変えていた。

 

 だからと言ってアリサを責め立てる訳にも行かなかった。

 実際にアリサの攻撃があって初めて戦いが成立している。結果的に無明が間に合ったとは言え、それを維持した事実に変わりはなかった。

 泥や汗で全身が重く感じる。ある種の重圧から解放された結果なのかしれない。今回のメンバーは事実上の身内ばかりとは言え、アリサにも女の矜持がそこにあった。

 だからこそ無明の言葉にアリサは万が一の事を考え用意している着替えを持って行動する。お湯は無いが、それでも最低限身綺麗に出来るのであればと考えていた。

 

 

「すみませんが、少しだけ離れます」

 

「慌てなくてもいいぞ」

 

 元々帰投する予定が無かった為に、リンドウ達は用意してあった物資で少しだけ休憩する事になっていた。

 本来はサテライト候補地にある物を利用する前提だった為に、ここに有るのは簡素な物だけ。このまま日没を迎える事が濃厚になれば恐らくは車での移動は困難を極めるのは当然だった。

 普段であれば専用の車だが、今日は移動に重点と置いている為に何時ものジープ。

 火を起こすと同時に、ジープに乗っていた簡素な食事の準備を始めていた。

 

 

 

 

 

 

「何だかこうやって野営するのは久しぶりだな」

 

「そうだな。少なくともここ最近は無かったな」

 

 小さいながら点いた火はゆっくりと周囲を照らしていた。アラガミの気配は無いが、獣が出る可能性がある。今日の時点では可能性は低いが少なくとも、この周辺は普段の場所に比べれば緑が濃くなっていた。

 これだけの自然があれば生物は住みやすいはず。無明がエイジに指示したのはその可能性を考えた結果だった。

 幾らゴッドイーターと言えど、神機を持たないのであれば獣に対する対処方法は無に等しい。普段から苦無を持ち歩くエイジであれば、万が一があっても大丈夫だと判断していた。

 特段、この後は何かが出来るはずも無い。そう考えたからこそ、誰もが地面に腰を下ろしていた。

 

 

「いや。この面子だともっとじゃないか?」

 

「そうだな。最後にこうしたのは8年………いや9年ぶりか」

 

 揺らめく炎は珍しく当時の事を思い出させていた。まだエイジやアリサの様な第二世代型神機が開発されていない頃。少なくともまだ殉職率が高い頃に野営をした記憶があった。

 何かを動かすにも物資が全く足りていない。そんな当時の事を思い出させていた。

 

 

 

 

 

「用意ありがとうございました」

 

 アリサとエイジが戻ると、そこには既に野営の準備が完了していた。

 時間的にはまだ明るかった事もあってか、夕闇は濃くはなてっているが視界を遮る程では無かった。

 雨の心配が無ければそれ程気にする必要は何処にも無い。まだ髪に水分が残りはするが、それでも丁寧に時間をかけたからなのか、アリサの髪が輝きを取り戻していた。

 

 

「エイジはどうした?」

 

「折角だからって、少しだけ奥に行きました」

 

 アリサの言葉にリンドウは珍しくどこか思案気な表情を浮かべていた。先程の話の事が影響しているのかもしれない。しかし、今ここに来たばかりのアリサには疑問しか浮かばなかった。

 

 

「そう言えば、食事の準備はどうしますか?」

 

「ボチボチとやるか」

 

「いや。少しだけ待とう。何か持ってくるかもしれん」

 

 無明の言葉にリンドウも少しだけああと言った表情を浮かべていた。

 エイジが奥に行ったのであれば何らかの獲物を見つけた証拠。レーションなどの物資は元々用意はしてあるが、やはり味気ない物が多い為に、無明の待つと言う言葉に少しだけ期待を持っていた。

 ゆっくりと燃え上がる炎は、時折薪が弾けた音を立てている。エイジが現れたのは、それから数分後の事だった。

 

 

 

 

 

「そんな事があったんですか。でも、意外ですね。リンドウさんの新人の頃なんて想像出来ませんよ」

 

「誰だって新人の頃はあるんだよ。そう言えば、ソーマは最初から太々(ふてぶて)しかったよな」

 

「うるせえ。黙って食え」

 

 エイジが獲ってきたのは来たのは鹿だった。既に現地で解体した為に、戻ってきた際には既に肉は切り分けられブロック状になっている。以前にに同じ様な事があったからなのか、誰一人慌てる事無く何時もと同じ空気が流れていた。

 何時もであれば些細な言葉で終わるが、今日は無明が一緒に居る。だからなのか、リンドウはともかくソーマはどこか居心地が悪かった。

 何時もとは違う空気にアリサもまた物珍しくこれ幸いにと色々と話している。

 恐らくは、今後何かあった際にはネタとして使うつもりなのか、何時もとは違った時間の過ごし方に、誰もが穏やかな時間をすごしていた。

 

 

 

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