もんすたーはんたー・はくのん   作:ケモミミを愛する異端の氷雪王

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第2層 狩り暮らしのハクノンティ

 

 さてさて、これは一体どういう事なのだろうか。私がハンター? 分からない。まったく以て分からない。マスターという肩書きは持っているけれど、ハンターなどという物騒な称号は手にした覚えはない。

 それどころか、私自身が何かを倒すような力なんて持っていないというのに。

 

 私が疑問に首を傾げていると、謎の老人はこちらに構わず話をどんどん進め始める。

 

「さて、ハンター殿。ワシはこの『ココット村』の村長をしておる者じゃ。基本的にはワシからお主にクエストを紹介する事になっておる」

 

 クエスト…とは、もしやアレだろうか。聖杯戦争第四回戦の際、言峰神父が気まぐれに発した、指定されたエネミーを討伐する、的な?

 

「そうさな、まずは小手調べとして、簡単なものだけをこちらで手配しておこうかの。それらを見事こなした時に、正式にクエストを受注出来るようにしよう」

 

「ちなみに、クエストってどんな内容が…。そもそもハンターって何の事ですか?」

 

 内気な学生が授業中、おずおずと手を上げて先生に質問するように尋ねる形になる。

 そんな私の質問に対し、ココット村の村長と名乗った老人はポカンとして、すぐに我に帰り答える。

 

「なんじゃ? お主、もしやまだ自分の置かれた状況を把握しておらなんだのか?」

 

「は、はあ…」

 

 村長は、さも知ってて当然のものとばかりに話していたようで、私が何も知らなかった事に呆気に取られているようだった。

 

「ふむ…、ここに来る際に何の説明も受けておらんかったようじゃの。これは失敬した。まずは、ほれ。そこの家に入るといい」

 

 と、私の右手に見える一軒家を指して言う村長。見た感じ、そこそこ大きさがあるようだ。

 

「そこはハンター殿の為に用意したものでな、なに、聖杯戦争時のマイルームのようなものと思って構わんよ。まあ、こちらには入室制限のようなものは無いが…」

 

「え、今、聖杯戦争って…」

 

 突如、見知った言葉が出てきた事で、私はここが完全にアウェイではないと分かったが、村長は有無を言わさず私を家の中へと押し込んでいく。というか、村長の身長がけっこう低いせいで、私のお尻に村長の手がダイレクトに当たっているんですが!?

 

「今更そんな年でも無いわい。小娘の尻くらいでは何も思わんでの」

 

 な、なんて屈辱だ。これでも、クラスで三番目くらいに可愛いね、って色んな人から言われていたのに! 私のお尻にはそんな魅力が無い、だと…!!

 

「ほれほれ。落ち込まんで良かろうて。こんな老人相手に一喜一憂せんでよい。お主が一喜一憂すべきは、これからの生活に、なんじゃからのう。さて、お主が知りたい事はそこにある」

 

 そう言って、室内に入ってすぐの所にあるベッド、そしてその枕元にある本棚を指差す村長。しかし、そんな事よりも気になるのは、いくらなんでも入ってすぐにベッドがある家というのは物騒すぎやしないだろうか?

 

「…案外細かいのう。そこは安心してよい。そのような野蛮な事をしよる輩はこの村には居らん。そんな事をしようものなら、すぐさま粛正対象にされようて」

 

 その自信は一体どこから来るというのか。そしてこの老人は本当に何者なのだろうか。などと考えていたが、我関せずとばかりに村長は玄関から出て行こうとする。

 

「そこの資料を読み終えたら、ワシの所に来るといい。ここを出てすぐ右手にある大きな建物の前に居るからのう。話はそれからじゃ」

 

 伝えるだけ伝えて、村長はさっさと出て行ってしまった。まだ気になる事、聞きたい事は山ほどあるが、とりあえず先に言われた通り資料に目を通しておこう。

 

 そうと決まれば、私はベッドに座り、本棚に手を伸ばす。手頃な一冊を手に取り、パラパラと捲ってみる。ちなみに、本の表紙は『月間、狩りに生きる!』というものだ。

 

 そして、黙々と目を通していくうちに、私はある程度の情報を得る事が出来た。村長の言う通りにして正解だ。そういえば、メッセージにもそんな事が書いてあった。

 

 それでは、私が得た情報をいくつか、簡単にだがまとめてみようか。

 

 

 ①まずはこの世界について。この世界はムーンセルが再現した仮想世界で、ここに住む全ての人はNPCおよびAIであるようだ。なるほど、それならさっきの村長の言葉も納得がいく。村長もNPCかAIで、だから聖杯戦争の事も知っていたのだろう。

 

 ②そして、人以外の存在について。この世界にも、聖杯戦争時で言うところの敵性エネミーが存在しているらしい。それは俗に言うモンスターと呼ばれる怪物達で、中には中立のモンスターもいるようだが、ほとんどが敵性を持っているとの事。

 何より恐ろしいのが、この世界には事実上の『竜』が存在している事だ。というか、モンスターのほとんどが竜種であるとか、なにそれいじめ?

 

 ③そして、そんな世界で私が何をするのかというと、まことに恐ろしい事に、私がそのモンスター達を倒す…要は狩っていかなければならないという事。

 幸い、私にはここで生きていく為の最低限のステータス、つまりは筋力、体力、耐久力が与えられている事だろうか。

 正直、そんなものよりサーヴァントを寄越して欲しいのが本音です、はい。

 

 ④これは吉報で、どうも私がクエスト…モンスターの討伐を進めていく事で、様々な制限が解除されていくらしい。具体的には書いていないが、私の狩猟生活に役立ってくれるはずだ。そう信じたい。そうであってくれ。後生ですから。

 

 ⑤そして、これが私が一番知りたかった情報なのだが、どうもこの世界に私が飛ばされた、そして消去されずに済んだのは、とあるサーヴァントとプログラムが原因らしい。

 サーヴァントの方はノイズによって読み取れなかったが、プログラムに関しては何とか読み取る事が出来た。

 『リボーン☆ブロッサム』なる、トラップ式プログラムが発動した事で、私は別の仮想空間に転移させられたらしい。そこに、そのとあるサーヴァントが絡んでバグが発生し、この世界に固定、転移されたようだ。

 

 

 何だろう…。そこはかとなく嫌な予感がすると共に、嬉しい気もする。

 いや、全然嬉しくない! 私がモンスターと直で戦うとか、聖杯戦争の時よりも更に物騒じゃないか!

 死ねる。絶対に死ねる自信がある。そもそも、素人が武器を振り回してなんとかなる相手のはずがない。

 これはもう、泣いていいだろうか、私……。

 

 と、いつまでも落ち込んでいても仕方がない。とりあえず、村長の所に行こう。話はそれからだと村長も言っていたし。

 村長の所に行く前に、玄関から入って左手にある大きな木箱を開く。

 やはりムーンセルらしく、木箱の中には本来有り得ない大きさの武器が、データ化されて収納されていた。さっき読んだ説明書には、どうやらこのボックスは武器や防具の他、アイテムも収納出来るらしい。とは言っても、入れられる数にも限度はあるようだが、今のところは気にしないでもいいだろう。

 ちなみに、装備の変更はこのボックスのある家…『マイルーム』でいいか、とまあ、ここでしか出来ない仕様だ。

 正直それはありがたい。公共の場、ひいては衆目に晒される場で脱衣とか、絶対に嫌だ。私は断じて露出狂ではない。

 

 木箱から、ひとまず初心者向けの武器として『片手剣』の分類である『ハンターナイフ』を取り出す。ちょうど、端末から礼装やアイテムを取り出す感覚だ。

 それにしても、これはナイフと呼んでいいのだろうか…。明らかにソードレベルの大きさである。これで私もセイバーだ!

 などと、ふざけるのも大概に、そろそろ向かうとしよう。

 

 

 

 

「ほう…なかなか様に……なっておらんなぁ」

 

 頭のてっぺんからつま先まで、私を品定めするように眺めた村長の第一声がそれだった。何故なのだろうか、ただハンターナイフを装備しただけなのに、どうしてそこまで言われなくてはいけないのか。

 私だって、似合ってるなんて思ってないやい!

 

「まあ、そこは追々かのう。今はその聖杯戦争の時の姿のままじゃからな。装備が整い、経験を重ねていく事で貫禄も付くじゃろうて」

 

 はっ…! 言われてみれば、自分が如何に珍妙な格好しているのかが盲点だった! 女子高生が制服姿に剣と盾を腰に付けた姿のなんと可笑しな事か。完全に失念していた……!!

 

「それでは、本題に入るとしようかの」

 

「はい…!」

 

 気を引き締めて、姿勢を正す。

 

「クエストに関してじゃ。お主には方々から集まった依頼、つまりクエストじゃな。それを達成してもらいたい。クエストはそれこそ多種多様でな、素材の採集、モンスターの討伐、または捕獲…巨大モンスターの撃退。果ては闘技場への参加依頼などな」

 

「…あの、やっぱり私一人で、ですか?」

 

 知り合いと呼べる人が言峰神父しかいない、いや、彼でさえメッセージしか送ってこない現状で、私が今頼れるのはこの村長しかいない訳だが…。

 

「すまんが、ワシも年でな……。というのは冗談で、ここはお主の為に再現された世界。故に、ここでクエストを受けられるのはお主か、お主に縁のある者のみなのじゃ。じゃからすまんがワシは助けになってやれん」

 

 まあ、期待はしてなかった。うん、してなかったよ。………してなかったよ?

 

「まあ、頑張ってくれとしか言えんのう」

 

「はい…………うん?」

 

 あいや待たれよ村長さん。ちょっと気になる事を言ってませんでしたか?

 

「私に縁のある者って何ですか? ていうか誰ですか!?」

 

「ぬ、ぬおぉ!?」

 

 思わず村長の両肩を掴んでグワングワンと揺らして尋ねる。おお…村長がなんだか壊れたオモチャみたいに首を揺らしている。なんというかグロい。

 

「そ、その辺はワシも詳しくは知らん! それに関してはアドバイザー殿に聞いてくれ!」

 

 とは言われても、メッセージが一方的に来るだけで、こちらからはコンタクトが取れないのが現状な訳で…。まあ、そのうち分かってくるだろう。

 

「はぁ…やっと解放されたか…。では、今お主が受けられるクエストを…と、これじゃこれじゃ」

 

 ため息を吐きながら、村長が懐から丸められた紙を取り出す。これはアレだ。マンガやアニメでよく見るような、本物の依頼書だ。

 ふふっ、本物を目にすると、流石に気分が高揚します。(ドヤァ)

 

 なんて、冗談半分に、確かに実物を目にすると興奮する。未だハンター生活に不安は残る…というか有り余るが、やはり私だって年頃の女子高生。こんなファンタジーのアイテム的な物を目の前に出されて、興奮しない事があろうか、いやない!!

 

「まあ、最初じゃから簡単なものしか無いがな」

 

 さあて、こうなったら死ぬ気で楽しんでやる。記念すべき私の最初のクエストは……。

 数枚を伸ばし、ペラペラと確認していく。そして何たる事か。その内容がショボい。

 なんだよ、特産キノコ採集、回復薬の調合、サシミウオの納品…とか。簡単そうにしか見えないぞ。てっきり小型モンスターの討伐やらをさせられるのかと思ったのに。

 

 これでは拍子抜けだ。なんだか、この世界でも十分やっていけるような気がしてきた。ふっ、やってやる。私はこの世界でも、きっと生き残ってみせる!

 

 まずは、特産キノコでも狩り尽くしてやろうではないか。

 

「ふっふっふ。では村長、特産キノコを五個納品するクエスト、受けさせていただこう」

 

「…そのポージングに何の意味があるかは知らぬが、とりあえず頑張ってくるがよかろう。ハンター殿」

 

 クエスト受注の判子をもらい、私は足取り軽やかに、私が立っていた門とは真逆の門へと歩いていく。目的地は大ざっぱだが、『森と丘』。シンプルな名前だが良いではないか。

 

 私のハンターライフが今、始まろうとしていた……!!

 

 

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