リヴァイアサン・レテ湖の深遠   作:借り暮らしのリビングデッド

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5-2 “失われた少年”“失われた少女”

 

 

 

 

 

 

 

ゴォーーーン…ゴォーーーン…

 

 

 

雲ひとつ無い青い空にはその音はどこか不釣合いだった。

 

一段と熱い今日の気温が、それが鳴るたび下がっていくような気さえした。

 

 

そこはあまりにも人の気配が無さすぎた。

 

最初廃墟かと思って、何度も住所を確認したぐらいだった。

軍艦島みたいだ。

シンジはそんな感想を持った。

 

その素晴らしい夏の晴天と陰のあるその涼やかな団地のギャップは、まさにシンジの琴線に触れてくるようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこれに乗ってるんだろう。

 

シンジはそう思いながらその小さな海に沈んでいった。

やはり、目を瞑ると自分が人である事を忘れてしまいそうで、あわててシンジは目を開けた。

 

自分の掌を見て、自分の形を確認する。

そして、あれ?人の手ってこんな形だったっけ?とそんな事を考えてしまって、首を傾げた。

 

『…シンジ君?』

 

ミサトさんの通信に、我に返る。

 

「はい…」

『何かあった?』

「いえ…」

 

お互いの声にはどこか気まずい湿度があって。

そのまま僅かに沈黙する。

 

『何か異常があるようならどんな些細な事でも良いから即言って』

「はい…」

『とにかく、今日は初号機をドックに戻してくれるだけでいいわ…謹慎は解きます。終わったら帰りましょ』

「…はい」

 

やはり、そのまま沈黙して、あまり心地よくない空気が流れた。

 

シンジはとりあえず眠いし、早く済ませたかったので、初号機をゆっくり射出口に向かわせる。

何か、気のせいかこないだより初号機の動作が軽い気がした。

もちろんただの気のせいに違いなかったが。

 

更衣室を出る直前、それに気づいた。

 

もう深夜を回ってシンジは眠気にふわふわしてしまって、つい備え付けの椅子にぐったりと座ったのだった。

 

ぱき、と音が鳴った。

お尻の感触で何か押しつぶしてしまったのだ、と気づいてそれを見る。

 

眼鏡ケース?

 

ケースのプラスチック部分が少し割れてしまったそれを何とはなしに空けてみる。

歪み壊れた男性用らしき眼鏡が入っていた。

 

「あの、リツコさん、更衣室に忘れ物みたいなんですけど…」

「忘れ物?」

 

どうやって零号機を破棄するか技術部での会議も一段落ついて、コーヒーを飲んでいたリツコは突然の訪問者に目を細めた。

彼が手に持っているそれを見て。

 

「ああ…レイね」

 

シンジは一度瞬きした。

ちなみにわざわざリツコの所まで来たのは、何となくミサトと会いたくなかったからだった。

 

すると、リツコは煙草に火をつけて、深く吸い込む。

何か考えているようだった。

 

そして煙を吐き出し終えると、小さく囁いた。

 

「どうせ明日日曜だし、貴方学校無いわよね。」

「はい…」

「聞いてるでしょうけど、零号機の回収作業は多分明日夕方ごろになると思うわ」

 

はあ、とシンジは返事して。

リツコは少し煙を眺めて、何のつもりか、こんな事を言ったのだった。

 

「あの子の住所教えるから…良ければ、レイに届けてあげてくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・Ⅱ『“失われた少年”/“失われた少女”』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも出会いが人を変えるのだった。

 

それは、必ずしも人間であるとは限らない。

生物である、とすら限らない。

 

本や、映画や、音楽や、そういったものともまた出会いがあるからだ。

 

時に一冊の本や、一本の映画や、一曲の歌との出会いが人を変えてしまうこともある。

それは啓蒙される、というのとは少し違うだろう。あるいはそれもあるのかもしれないが。

だが大抵、そういったものとの出会いがその人の何かを変えるとき、理由はいたって単純なのだった。

 

こんな素晴らしい物があったなんて。

 

その想像し得ない優れた未知との出会いは、まさに何時の時代も人の一生に影響を与えるのには十分だった。

 

つまりシンジのような、詩など知らない、興味も無い、だが豊かな感性を持つ少年にとって、その出会いの入り口としてウィリアム・ブレイクはあまりに鮮烈過ぎたのだ。

少なくとも、詩、というただの道端の石ころと思い込んでいたものが、ある日突然ダイヤだったと気づくぐらいには。

 

そう、いつだって未知との出会いが人を変える。

時に導かれるように、最初から定まっていたかのように、出会う事もある。

 

 

“無心の歌 有心の歌”

 

 

その文庫本の題名は確かにシンジの何かをちょん、と叩いたのだった。

 

どうやら詩集のようだった。

ほとんど無自覚に手にとってページをめくった。

 

そしてたまたま目に入ったそのページで、ふと手が止まったのだ。

 

 

 

 

 “失われた少年”

 

 『「父さん! 父さん! どこへ行く?

  おお そんな速く 歩かないで

  話して 父さん この小さな僕に話して

  でないと 僕は迷子になる」

 

  夜はくらく 父の影もなかった

  幼子は びっしり露に濡れた

  ぬかるみは深く 幼子は泣きに泣いた

  いちめんに 夜霧が飛んだ』

 

 

 

 

 

刃物とは最小限で構成された物を指す。

 

一切の無駄をそぎ落とし、ただ必要な物だけを取捨選択し、極限まで特化する。

その時ただの石ころだったそれは確かに刃物という別の、より上位の概念へと変質するのだった。

 

なら、最小限の文節で構成された『詩』という表現の本質は、まさしく刃物に他ならなかった。

槍、と言ってもいいのかもしれない。

 

詩というその研ぎ澄まされた刃物、または槍は、年齢性別人種宗教思想知能すら貫通して。

まさにあらゆる概念や壁を切り裂いて、その心に凄まじい切れ味で直接切り込んでくるのだった。

 

そう、確かにその詩は、シンジにとって一本の鋭い刃のついた槍に他ならなかった。

 

シンジはただ衝動の赴くままページをめくった。

 

 

 

 

 “見つかった少年”

 

 

 『きつね火に たぶらかされ

  寂しい沼地に 迷い込んだ少年は

  たまらず泣き叫んだ しかし つねに近くに居る神は

  白衣の姿の父となって あらわれた

 

  神は幼子にくちづけし 手をとり

  母のもとへ つれてかえる

  寂しい谷間をさまよい 悲しみに顔青ざめ

  泣いてわが子をさがす 母のもとへ』

 

 

 

 

シンジは、震えながらゆっくりと、それを元の棚に戻した。

 

指先がちりちりした。

ひどく揺さぶられて読んでいられなかった。

まるで古いかさぶたを剥がされたようですらあった。

 

その傷口から湧き出る感情が一体何なのか自分でもまるでわからなかった。

うめき声のような何かが漏れて、口をきゅっと結んだ。

ただその激しく夥しい感情の波が去るまで、じっとそれに堪えた。

 

そして聞こえたのは涼やかな声。

 

「泣いているの」

 

 

 

 

シンジははっと目を瞬かせた。

 

あまりに何も無いコンクリートの部屋。

 

パイプベッドと、椅子と、小さなタンスと、その上にある数冊の文庫本、それだけ。

コンクリートむき出しの壁に、窓にはカーテンすらなくて。

その部屋から感じられる涼しさや無機質さや空白は、やはり何かシンジの琴線に触れるものがあった。

 

「どうして、泣いているの」

 

もう一度呟かれた涼やかな声に振り向くと、裸にバスタオルを羽織っただけの白い少女が居た。

どうやらシャワーを浴びていたらしかった。

 

シンジは、とっさに目をこすった。

涙などこぼれていなかった。

 

「べ、別に、泣いてない、よ…?」

「そう」

 

彼女はしばらく、相変わらず無表情に彼を見ると、一切の興味を失ったように彼とすれ違った。

 

「それで、どうして貴方ここに居るの」

 

あ、とシンジは声を上げた。

 

「あ、あの…忘れ物」

 

彼女は少し首を傾げるような動作をしてちらりとシンジを見た。

シンジはあわててバッグからそれを取り出しす。

 

眼鏡ケース。

少女は僅かに、ごく僅かに目を見開いた。

 

「それで、ノックしても出ないから、その、これだけ置いていこうかと…」

 

それを見下ろしながら話して、何か気配を感じ、目を上げる、と目と鼻の先に少女が居て。

どうやらそのケースを奪い返そうとしているようだった。

あ、とシンジは口を開き、咄嗟に後ろに下がろうとしてバランスを崩してしまって。

 

ぱさり、とバスタオルが落ちる音がした。

 

 

ゴォーーーン…ゴォーーーン…

 

 

ぽた、ぽた、と彼女のまだ濡れた髪から雫が落ちて、シンジの額を濡らしていた。

 

窓からの浅い光が彼女の肌と髪を光らせ、影を作った。

少し眩しくて、だから目を細めて、覆いかぶさる形の彼女の瞳を覗き込んだ。

その瞳の血の中に幼い子供が浸っていた。あ、僕か、と彼は思った。

 

ふと、右手がとてもとても心地良い、重みのある何かを掴んでいた。

少し握ってみる。彼女が瞬きした。

 

しっとり、すべすべしていて、丸みがあった。

吸い付くように柔らかく、なのに硬めの弾力もあって、とてもひんやりとしていた。

何か、柔らかい突起のようなものが掌で転がった。

それすらも気持ちの良い質感で。

 

シンジは今までただの一度もこんな気持ちのいい感触が存在するなど想像した事もなかった。

厳密には忘れているだけで母のそれを知っているはずだったが。

 

その心地の良い何かにずっと触れ続けていたい、とふと、思ってしまって。

 

「離してくれる」

 

シンジはきょとんとした。

 

右手を改めて見る。

その先には彼女の左の乳房。

あ、とシンジは口を開いた。

 

「ご、ごめん!」

 

慌てて手を離す。

すると彼女は奪った眼鏡ケースをもって上半身を起こした。

心地の良い、なんともいえない気持ちの良い重みがシンジの下半身に圧し掛かった。

 

「あ、あの」

 

その心地の良い重みに何か、良く分からないが芯が熱くなるような感覚があって、シンジはほんのり顔を染めた。

 

「何」

 

彼に馬乗りになっている彼女は、気にする風でもなくケースを開けて中身を確かめていた。

 

改めて彼女のその裸身を見て、シンジは今更ながらその美しさに見惚れてしまった。

さっきまで右手で掴んでいた乳房は青白く、吸い寄せられそうな魅惑的な丸みを帯び、

その乳頭は良く見なければ分からないほどかすかにうっすらと薄い桜色をしていた。

 

全てが白く、まるで陶器のような、あるいは蛇のような艶があり、確かに人には本来宿りようがない何かが宿っていた。

でもまだ癒えていないその傷口は、その分だけ彼女を人に貶めているようだった。

 

彼女はケースの中身を確認すると、何事も無かったように立ち上がって、タンスの上に置き引き出しから下着を取り出した。

 

シンジは上半身を起こして、ぼんやりと下着を着る彼女を眺めた。

 

「人の着替え見るの、楽しい?」

 

あ、とやっぱり声を上げて、シンジは今更ながらくるりと背を向けた。

 

「あ、あの!ごめんなさい、その、さっきからなんか…」

 

彼女は答えなかった。

ただ布の擦る音だけが聞こえていた。

 

すると突然その音が止んだので、もういいかな、と振り向くと、彼女は下着のままベッドに座って包帯を巻こうとしていた。

でも、右手だけでやるそれは傍から見てても難しそうで、シンジはつい口を開いた。

 

「あ、あの、手伝おう…か?」

 

それはもちろんまったく下心の無い、純粋な厚意、というか謝罪のつもりで出た言葉だった。

彼女はそっけなく、彼に一瞥もせず、代わりにこう言った。

 

「どうして貴方が届けに来たの」

「あ、うん…更衣室にあって、で、リツコさんに話したら忙しいからかわりに届けてくれないかって…」

 

彼女は一瞬だけ手を止めた。

 

「そう。貴方初号機に乗ったの」

「うん。何でか知らないけどジオフロントに出ちゃってたから、ドックに戻しただけだけど…。

 その後何かやたら凄い精密検査させられて…で、プラグスーツから着替えるときに…それを、その…」

「届けなくたって、良かったのに」

 

囁くように言ったその言葉に、シンジは目を瞬かせた。

良く分からなくて首を傾げる。

すると巻かれた包帯が彼女の手から落ちて、白い帯を床に付けながらころころとシンジの傍に転がった。

 

 

 

彼女の身体は、硬質な水で出来ている。

 

ふと、シンジは唐突にそんな事を思った。

やはり、彼女の手はひんやり心地よくて。

水の中に手を浸してるような気持ちよさがあった。

 

きっちり左腕に包帯を巻き終えて、彼女を見た。

彼女はやはり下着のままベッドに座って、特に抵抗する事もなく、成すがまま彼を上目で見ていた。

 

良く見ると、額や、左目の瞼の上にも痛々しい縫い目があった。

やはりそれは陶器に走ったひびのようで、その傷口だけが彼女を人と証明しているようだった。

 

「あの、頭の包帯も、巻こうか?」

「…いい」

「そう?」

「ええ。眼帯、あるもの」

「そっか」

 

何となく見詰め合って。

やっぱり綺麗な目だなあ、とシンジはぼんやり考えた。

 

「貴方、どうして逃げなかったの」

 

唐突なその言葉にシンジはあ、と口を開いて。

 

「…その」

 

逡巡した後ぽつりと言葉を重ねた。

 

「…どこへ行けば良いか、わからなかったし…」

「そう」

 

彼女は小さく独り言のように呟いた。

 

「でも、どちらにしろきっと難しかったわね」

「…どうして?」

「この都市の出入りには許可が必要だもの」

「そうなの?」

「ええ。それに、貴方きっと監視されてるから」

 

シンジは目を伏せて。

 

「…うん。それは何となく…」

「そう」

 

彼女はやはり唐突に立ち上がると、壁に掛かっていた制服をとり着替え始めた。

やっぱりシンジはぼんやりそれを見て、あ、と慌てて背を向けた。

 

着替え終えた彼女はタンスの上のその壊れた眼鏡をとって、きゅっと握った。

 

どうやら、大切な物のようだった。

それをポケットに仕舞うと、彼女は背を向けて、玄関へ向かった。

 

「あの、どこ行くの」

「ネルフ本部」

 

彼女は振り向きもせず答えた。

 

「貴方も行くんでしょう」

「うん。夕方から零号機?って言うエヴァを回収しなきゃいけないらしいから」

「そう」

「昨日…何かあったの?」

「知らないの?」

「うん、何せ僕独房に居たし…」

「失敗したの」

「何が?」

「エヴァとシンクロに、失敗したの」

 

私が、と彼女は囁いた。

 

「…碇司令は」

「え?」

 

その言葉に一瞬目を瞬かせて。

 

「…忙しくて、しばらく留守ってリツコさんが言ってた」

「そう」

 

彼は、迷った後、口を開いた。

 

「あの、あ、あやな…み?」

「何」

「その、父さんが、保護者だって…」

「そうね」

 

シンジは目を泳がせた。

 

「僕…全然知らなかった、そんな…」

「そう」

「…いつから、なの?」

「七年前よ」

 

一瞬、シンジの身体が止まった。

七年前。それはつまり。

 

「そっか」

「ええ」

「やっぱり、僕、捨てられてたんだね」

 

その無理に笑ったような言い方に、彼女は振り向いた。

 

「そっか、そうだよね…そうじゃないかなって…」

 

彼女は無表情に彼を見た。

 

「あの、じゃあ、あの、変な事言うけど…父さんよろしくね」

 

彼は笑ってた。

とても空虚な笑い方に、彼女は口を開いた。

 

「きっと貴方が考えてるようなものじゃないわ」

「…だって、七年前でしょ?つまり、僕が叔父さんの家に預けられてからなんでしょ?それってつまり…」

 

そういう、事じゃないか、と。

 

「貴方が考えてるものじゃないって言ったわ」

「だって、じゃあ、なんで父さん七年も僕の事…」

「…お父さんが信じられないの」

 

シンジは目を伏せて、そっと、でも搾り出すように言った。

 

「…どうやって、信じればいいのさ…」

 

すると影が足元に差した。

ふと上げると、彼女の赤い目。

 

ぱあん、と音がなった。

 

遅れて、頬を打たれたのだ、と分かって、きょとんと彼女を見返した。

 

「私は、貴方が羨ましい」

 

彼女のその言葉に、シンジはただ目を瞬かせるだけだった。

そして彼女は背を向けた。

 

去り際、こう呟いて。

 

「初号機のパイロットはきっと貴方よ」

 

良かったわね。

 

そして、彼女は振り向かずにドアを開けて出て行った。

 

シンジはただ、ぼんやりとその閉じられたドアを見続けていた。

 

 

 

 

 

 

「サードチルドレン、ファーストチルドレン共に到着」

「時間通りね」

 

リツコはコーヒーを啜ってマヤの報告に頷いた。

 

「ベークライト解体作業、進行度43%」

「そろそろね。シンジ君は初号機に、レイは待機させて」

「はい」

「零号機の内部電源もう一度確認」

「ゼロです」

「いいわ。それじゃ一気にやっちゃって、シンジ君に零号機回収してもらいましょう」

 

早くシャワー浴びたいし、とリツコは内心で呟くと警告音。

 

「どうしたの?」

「あ、いえ、零号機からパターンブルーです!」

「ふん?…内部電源は無いんだし、心配ないでしょう。そろそろ初号機の準備させてちょうだい」

「あ、いえ、コアに熱源!」

 

モニター一面に警戒音。

 

「どういう事!?」

「ですから零号機のコアより熱源…これは」

「そんなまさか!?」

 

振動。

 

そして解体途中のベークライトが粉々になる。

そこから見えたのはオレンジの光。

 

翼?いえ…魚の、ヒレ?

 

「間違いありません!S2機関です!」

 

そして閃光。

 

 

リツコの意識はここで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15/7/20

 

参考文献

ウィリアム・ブレイク著作『無心の歌 有心の歌』


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