ISはアニメを一周見ただけであまり詳しくありません。
後はウィキを頼りに書いたので設定とかキャラが間違っている所も多々あるはずです。
指摘していただければ修正させていただきます。
(お兄ちゃん迷子?)
(俺は生まれた時からずっと迷子なのかもしれない)
(そうなんだ。私は迷子じゃないよ、メリーとお散歩してるの)
そよ風の吹く芝生で寝転びながら少年は流れる雲を見た。
雲の隙間から覗く青空はコロニーでは見ることが出来ない。
ここが地球なのだと少年は納得をするしかなかった。
「お前、迷子か?」
話しかけられた方向に振り向くと白い学生服を着た少年が立っていた。
返事を返す訳でもなくじっと学生服の少年を見ていた。
「ってんな訳ないか。でも男子がどうしてここに居るんだ?俺とシャルルしか居ない筈だろ」
「さぁな」
「さぁって、部外者は入れないはずだぞ?」
「そうか」
「そうかって、まぁいいか。俺は織斑一夏って言うんだ。キミの名前は?」
織斑と名乗る学生服の少年はやさしく問いかけた。
それを聞いてようやく芝生から起き上がると鋭い目つきで一夏を見た。
殺気を帯びているような目線は一夏を一瞬震えさせる。
「な、なんだよ!?」
「俺の名前はヒイロ・ユイ、案内を頼む」
「お、おう!任せとけ」
一夏はヒイロの出す雰囲気にすぐには慣れずに居た。
けれどもこのまま放って置く事が出来る性格でもない彼はヒイロを案内する。
「でも案内って言っても誰か分からない人を無闇に学校に入れていいものか?」
名前は分かったがそれ以外の情報はまったくないヒイロを簡単に入れて良いのか悩む一夏。
学校の中にはインフィニット・ストラトスに付いての情報が調べればすぐに出てくる。
機密情報もある中で一夏の独断で部外者を入れては姉である千冬の迷惑にもなりかねない。
「一夏さ~ん!!」
「この声はセシリアか?」
見ると同級生のセシリア・オルコットが手を振ってこちらにやって来た。
縦ロールの長い金髪を軽やかに揺らすその姿は絶世の美少女である。
「こんな所で何をしていらっしゃるのですか?」
「あぁ、そこに居るヒイロって言うんだけど学校を案内してくれって頼まれたんだ。でも部外者を中に入れてもいいのかな?」
「あの~、そのヒイロさんと言う方はどちらに?」
「どちらってここに―――」
ちょっと目を離してセシリアと話している数秒間の間にヒイロは一夏の隣から居なくなっていた。
一瞬冷や汗を掻いて周囲を探すと知らない間に50メートル程離れた場所を歩いている。
「ヒイロ、勝手に何処かに行くなって!」
「一夏さん、待ってくださいまし!」
離れていくヒイロを追いかけて一夏は走った。
彼に置いて行かれない様にとセシリアも動揺に追いかけて行く。
「一夏さん、彼はお友達ですの?」
「いや、たまたまさっきの場所で寝ててさ。俺も良くは知らないんだ」
「部外者が学校の中に居るのは校則で禁止されています」
「あぁ、やっぱりそうなのか?」
「そうですわよ。すぐに先生に報告しないと」
走りながら2人で話していると歩いているヒイロに追い付いた。
一夏は呼びかけると彼の歩みを止めさせた。
「ヒイロ、ちょっと待ってくれ」
「ここはやはり担任の織斑先生に報告したほうが」
「そうだな。別にヒイロは悪くないんだ、でも校則で決まっててな。ちょっと職員室まで来てくれるか?」
「わかった」
一言で意思を伝えるとヒイロは一夏に素直に従った。
3人は職員室に向かうと一夏の姉である織斑千冬に合いに来た。
理由はもちろんヒイロの事、これからどうしていいのかを決める為にも1度彼女には話しておくべきだ。
職員室の扉の前に立つと不意にヒイロはセシリアの顔を睨んだ。
「な、なんですの!?」
「別に」
鋭い眼光に彼女は少し怯んでしまうがそれ以上ヒイロは何もしない。
扉をじっと見つめているだけで何を考えているのかも想像か付かなかった。
「不思議な方ですわね」
「じゃあ俺が呼んでくるからちょっと2人で待っててくれ」
一夏は1人で扉を開けるとそのまま職員室に入っていってしまう。
取り残された2人には空調の音が聞こえそうなほど空間が静まり返った。
(か、会話がありませんわ)
沈黙した空間が2人を包み込むがヒイロは平然とした様子のままだったがセシリアには苦痛でしかない。
耐えかねた彼女はヒイロの顔色を伺いながら恐る恐る声を掛けてみた。
「あ、あの~ヒイロさん?」
帰って来るのは鋭く睨む目つきだけ、それだけでセシリアは少し驚いてしまう。
だが勇気を出してセシリアは対話を試みた。
「ひっ!?あのヒイロさんのご出身は何処なのでしょう?」
当たり障りのない質問で取り合えず場を和ませようとしたが、ヒイロから返って来た返事は和むどころか彼女との接触を拒否するかのような態度だ。
「ダメだ、それは言えない」
「言えない理由とは何ですの?」
自分の事を話そうとしないヒイロ、理由を尋ねて見ても彼を口を閉ざして何も話そうとはしない。
まるでセシリアを無視するかのような態度は高飛車な彼女の性格を刺激させた。
自分に振り向かせようと彼女は自慢げに自身の事を語り始める。
「わたくしはイギリスの名門の家柄でしてよ。今度のお休みにお家で盛大なパーティーを開きますの。一夏さんと同級生も御呼び致しますの」
本当は一夏だけのつもりだったが同級生も一緒に招待したのには想像に容易い。
運悪く他の人にばれてしまい一夏と一緒に付いて来る事となってしまったが今とは別の話。
「ここで出会ったのも何かの運命、宜しければ招待されませんか?」
彼女は断れるはずがないと絶対の自信を持ってヒイロに問いかけたが相変わらず彼の態度は変わらぬままだ。
「ダメだ、気が乗らない」
2回も誘いを断られると彼女は意地でも振り向かせようと言う気分になってきた。
プライドも汚されて我慢がならないセシリア、ヒイロはその事に気が付いていない。
「ならお昼をご一緒しませんこと?わたくしが高級材料で腕によりをかけて―――」
「ダメだ、お前のタメにならない」
「わたくしのタメにならないとはどう言う事ですの!」
彼女の何を知っているのか、ヒイロの言葉についに言葉を荒げてしまう。
セシリアの甲高い声は職員室の扉を抜けて中にまで聞こえてしまっている。
「何を騒いでいるんだ?」
「い、いえ!何でもありませんことよ」
強引に誤魔化そうとするが彼女の声を耳にした長い黒髪とポニーテールが特徴の篠ノ之 箒が来てしまう。
その場に合流した箒はセシリア以外にもう1人居る男の姿を視界に入れた。
(このざわざわとした感覚はなんだ?)
彼から感じるのは普通の少年とは違う、長い間剣道で培ってきた神経が過敏に反応するもその違和感が何なのかは分からなかった。
「それよりも部外者が何故校内に居る?」
箒も当然校則の事は知っており尚且つ相手は男、簡単に見過ごす彼女ではない。
でも彼は呼びかけられても振り向こうともせずずっと前の扉を見ているだけだ。
すると、職員室の中に入っていった一夏が出てきた。
「ダメだ、千冬姉会議で居ないんだってさ」
「一夏!?来ていたのか」
会えるとは思っても居なかった一夏が現れて箒は動揺してしまう。
一夏は彼女の思いも知らずに素っ気なく返事を返す。
「箒、お前も居たのか」
「その言い方、私が居たら何かまずいのか?」
「いや、まずいって事はないけど」
自分の気持ちに素直になれない箒、それだけが原因ではないがピリピリとした空気が流れてくる。
時間が掛かると予測したセシリアは2人の間に割り込んで行った。
「それよりこれからどういたしますの?」
「う~ん、そうだ!俺とセシリアで模擬戦をやろう」
「模擬戦ですか?」
「あぁ、会議が終わるまでの良い時間潰しになるだろ。授業もないからあそこには余り人も集まらないし誰かに見つかってヒイロの事を追求されると面倒だろ?」
「だから部外者を―――」
「そんな硬い事言うなって。悪いやつじゃないんだからさ」
一夏は強引に箒をなだめると彼女の背中を押して訓練場へと移動する。
2人の後ろからセシリアとヒイロも後を付けた。
///
訓練場へと到着した4人、広大なアリーナは他の生徒も見られるようにドーム状になっており360度から見渡せる。
「ここがISの訓練場だ。授業とかクラスの対抗戦で試合をする時はここに来る」
「IS、聞いた事がない」
簡単に説明している一夏にヒイロはそう答えた。
今やISは世界のパワーバランスを担っており、ISが普及して女尊男卑が当たり前の時代へと変わった。
「え、知らないのか?ISはインフィニットストラトスの略だ」
「インフィニットストラトス?」
「う~ん、まぁパワードスーツみたいな物かな?技術が進歩した今は各国で色々開発が進んでいるらしいけど」
「そうか、インフィニットストラトス」
(本当に知らないのか?)
ISを知らないヒイロに疑問を感じるが真相はわからないまま。
疑問を後回しにして訓練場を見渡すとまた1人知っている顔がココに居た。
「あれは、シャルルか?」
一夏ともう1人、ISを動かす事の出来る男がシャルル・デュノア。
フランスの代表候補生で中性的な顔立ちと金髪を後ろ髪で束ねている。
彼だけではなく近くには作業服を着た女性が2人と展開されたISが設置されていた。
「一夏も来てたんだ」
「お前こそここで何やってるんだ?」
「新しく製造されたISのテストだ。デュノア社は第2世代のISしか作っていなかったけど初めて第3世代の製造にも着手したんだ。今日はその試作機のテストの為に技術者の人にも来て貰ってる」
青い装甲のラファール・リヴァイヴ、背中の実体シールドが変更されており新装備の大型の羽が追加されている。
両腕にはナイフのような物も装備されていた。
「部外者は入れたらダメなんじゃないのか?」
「事前に申請すれば大丈夫だったよ」
当たり前のように彼はそう言うと一夏は自分の知識のなさに少し落胆した。
一夏を無視して技術者の2人はISのテストを進めていく。
「それではテストを開始します。以前のデータは完全に抹消して初期設定もされていませんのでまずはそれから」
「うん、わかった」
技術者に言われてシャルルは展開されているISに搭乗しようとする。
でもシャルルよりも早くそのISに接触しようと彼は動いた。
「え……」
考える暇もない、気が付いた時にはその人物は傍に居た技術者の女性を躊躇なく右足で蹴り飛ばす。
「キャァ!!」
脇腹を蹴られ受身も取れずに彼女は倒れてしまう。
「誰だお前!?っぐぁぁ!!」
もう1人の女性も腹部を蹴られ激痛で動けなくなってしまう。
残されたシャルルだが思考が追いつかず何もする事が出来ないで居る。
「キミは一体!?」
返って来たのは鋭く突かれた拳、胸を殴られ激痛が体に走る。
「ぐぅっ!!ま、待て……」
殴られた箇所を手で押さえ痛みを少しでも和らげようとするがとても動けなかった。
そうしている間にテストの為に運ばれてきたISに彼は接触した。
「これがISか」
始めて見るISでも見た目と構造から乗り込むのは容易に出来た。
すると内臓されているIAが搭乗者に音声を流し始める。
『搭乗者を認識、初期設定を行ないます。搭乗者名を登録してください』
「搭乗者名ヒイロ・ユイ」
『ヒイロ・ユイ、登録しました。搭乗者との最適化を始めます』
完全にデータを初期化されており奪ったISはすぐには起動しない。
それを見てセシリアと箒は自身のISを展開し武装を装備する。
そして一夏は世界で3人目のISを動かす事が出来る男を目の当たりにして驚きを隠せない。
「あの人、やっぱり侵入者でしたのね!」
「俺以外にもISを動かせるのか!?」
「動く前に取り押さえるぞ!」
ISを展開したセシリアと箒はすぐに奪われたISを奪取すべく行動に出た。
一夏も一緒に行こうとしたが痛みで苦しんでいるシャルルを見ると走って傍まで駆け寄った。
「シャルル、大丈夫か?」
「僕は平気だよ、ちょっと痛いけど」
「ちょっとっておもいっきり殴られてたぞ?」
一夏は殴られた箇所を見ようとシャルルの上着を脱がそうとボタンに手を掻けた。
「うわぁあぁあぁ!?だだ、だ、大丈夫だから!!」
シャルルは痛みに苦しみながらも何故がその手を無理やり止めて触らせないようにする。
「僕の事よりも一夏、あれを止めるんだ。盗まれる訳には行かない」
「それは分かってるよ。でもさ」
一夏は倒れている技術者の人もそうだしシャルルも心配だった。
それにセシリアと箒の2人を相手にして勝てる相手がそう居るとも思えなかった。
箒は紅椿の機動力で瞬時に接近すると主力武器の雨月で斬りかかる。
「はあぁぁぁ!!」
『最適化終了しました。試作型第3世代ISラファール・エクシーガ起動します』
ヒイロが奪ったISは最適化が終了すると箒の一閃を寸前の所で上空に飛び上がり回避した。
「避けた!?」
箒が見上げた先には完全に動くようになったISがそこに居る。
束から渡された紅椿は第4世代型ISで他とは一線を越える高性能を誇るが箒はISによる戦闘経験はまだ短く性能も完全には引き出せていない。
(武装は?性能も未知数、こういうときは……)
ヒイロを視界に捉えると雨月を構え直しもう1度突っ込んで行く。
「自分の力を最大限ぶつける!」
正面から迫る紅椿にヒイロは迷わず攻撃を仕掛ける。
何もかもが初めてのISから武器を取り出すと迫る敵に照準を合わせる。
『ヴァリアブルライフルを展開します』
エクシーガの両手にスマートガンのような無骨で大型のライフルが握られるとヒイロは紅椿に向かってヴァリアブルライフルを構えた。
「目標を捕捉、撃破する」
トリガーを引くと右手のライフルからは高出力のビームが、左手のライフルからはマシンガンのように細かなビームが連射されて発射される。
ヒイロはヴァリアブルライフルのトリガーを引き続けたまま自分の過去を思い出していた。
記憶に蘇るのは幼い頃から工作員として訓練されてきた時の大人たちの声。
(兵器に感情など入らん!心など不要なのだ!)
(これはヒイロ・ユイの復讐なのだ!コロニーの意思だ!)
(訓練が足りなかったのじゃないか?これでオペレーション・メテオを成功させれるのか?)
「俺は……」
大人たちは自分の意見を勝手に言うだけで誰もヒイロの言う事など聞こうともしないし言わせようともしない。
その中でもドクターJはヒイロを庇ってくれた。
(無論だ、だが復讐の為に人類を抹殺するなどヒイロ・ユイは望んでおらん)
(OZ殲滅がお前の任務、後は好きにしろ)
(そうだな、コロニーの平和的指導者の名前でどうだ?)
彼はコードネームをヒイロ・ユイと名乗りガンダムで地球に下りた。
ミッションであるOZ殲滅の為ウイングガンダムでただ1人戦い続けた。
戦う事に意味があるのか、戦う事に自分の意思があるのかはわからない。
「俺は戦う。目の前の敵を倒すだけだ」
エクシーガが発射するビームは容赦なく紅椿を襲う。
空中でブレーキを掛けて旋廻し回避行動に移るがビームはわずかに当たってしまいシールドエネルギーを消耗してしまう。
「くっ!射撃タイプのIS、セシリア援護を!」
「その必要はありませんことよ、ブルーティアーズ!」
セシリアの声と共に背面に装備されていたブルーティアーズが4基飛んで行きエクシーガを方位する。
ヒイロは攻撃を中断するとエクシーガの機動力と運動性能を試すように縦横無尽に飛び回りブルーティアーズの攻撃を掻い潜った。
「行けるな」
「避けられた場合もちゃんと想定しておりますのよ!」
攻撃が当たらないと見るやブルーティアーズを回収させるとスターライトマーク3で照準を定めビームを発射する。
だが包囲したと思っていたブルーティアーズの攻撃でさえも当たらなかったのに威力は強力だが直線的なビームではエクシーガに直撃などしてくれない。
「素早いですわね!」
「でもこれはISの性能だけじゃない。コイツは一体?」
ヒイロの操縦するエクシーガに箒は舌を巻いた。
彼の動きは箒よりも戦い慣れしておりISの動きにも躊躇いがない。
エクシーガのヴァリアブルライフルで回避行動を取りながらビームマシンガンを連射するとセシリアと箒も直撃を避けるために動くしかない。
「射撃戦でわたくしに勝てると御思いで!」
同じ射撃武装を中心としたISに対抗心を燃やすセシリア、けれども彼女は相手の性能を全て把握していないのに接近戦は得意ではないと思い込んでしまっている。
射撃戦をしようと考えているとエクシーガは急接近しブルーティアーズの懐に飛び込んだ。
右腕に装備されているナイフからエネルギーが放出しブルーティアーズのシールドエネルギーを削っていく。
『バリアアーマーブレード、出力70パーセントで展開』
レーザーブレードのようなエネルギーが収縮された刃がブルーティアーズのシールドバリアを一閃するとエネルギーが一気に7000近くも減少した。
エクシーガの接近戦用の武器であるバリアアーマーブレードは自身のシールドエネルギーをそのままブレードの威力として相手に斬り付ける。
だがその間はブレードに廻したエネルギー分だけシールドエネルギーも少なくなってしまう。
「そんな!?」
初めて戦う相手、その特性も把握出来ずに気付けば自分が倒されそうになっており思考もまともに働かない。
人間であれば幾ら訓練していようと反応が遅れてしまうのは防ぎようがない。
けれども戦いの中で相手に隙を晒すのは自分を危険にする行為、ヒイロは見逃さない。
敵を倒す為に躊躇なくライフルのトリガーを引いた。
「逃げろセシリア!」
「遅い」
2丁のヴァリアブルライフルから放たれたのはビームのマシンガンでライフルでもなかった。
高出力のビーム砲がセシリアのブルーティアーズに向かって正確に発射され反応が遅れた彼女には避ける事は出来ない。
箒の呼びかけが聞こえた時にはすでに遅すぎた。
「キャァァァ!!!」
ビームの直撃を喰らいバリアアーマーブレードでシールドエネルギーを大幅に削られたのもありエネルギーの残量が底を尽きる。
体にダメージはないが直撃に衝撃で意識を失ってしまい重力に引かれて落下して行く。
「セシリア!?このー!」
激怒した箒は紅椿の機動力を全力で使い強引に接近を試みて射程圏内に入ろうとする。
ヒイロも回避行動を取りながらヴァリアブルライフルをマシンガンとライフルに分けて接近されまいと連射をするが性能では紅椿には勝てない。
照準を捉えてトリガーを引く時にはロックから外れておりビームは在らぬ方向へと飛んでいってしまう。
第4世代の紅椿を捕らえるのはいくらヒイロでも難しかった。
「捉えられない、性能は向こうが上か」
分析しながらもトリガーを引き続けビームの弾を発射し続ける。
それでも性能差を埋める事は出来ずあっと言う間に紅椿の射程圏内まで近づかれてしまう。
「近づいた、仕留める!」
雨月で斬りかかろうとした時にエクシーガの背中の羽から光る粒子のような物が放出された。
『エネルギーチャージ完了、エクシードシステム任意で発動可能』
ヒイロは無言で頷くとAIが言っていたエクシードシステムを発動させた。
羽から放出される粒子が360度エクシーガを囲っていきそれに伴ないシールドエネルギーが上昇していく。
「シールドバリアーを突破できない!」
「邪魔だ!」
シールドバリアーに防がれる雨月の刃、動きが止まった所をすかさずバリアーアーマーブレードで斬りかかる。
初めて見る武器に箒もまた反応が遅れてしまった。
回避に移ったがバリアーアーマーブレードに一閃されてしまいシールドのエネルギーが削られる。
エクシードシステムでシールドバリアーのエネルギーが底上げされておりブレードの威力は更に増しており紅椿と言えども不利な状況に陥る。
この時箒は1度距離を空けて体勢を整えようと考えたが思考に逃げる事を考えている事をヒイロは理解していた。
武器を瞬時に切り替えヴァリアブルライフルによる一斉射を放つ。
「くっ!避けれない!?」
ビームが直撃しシールドエネルギーが削られていく中で箒は初めてヒイロを見た時の感覚を思い出していた。
(わかった、初めてアイツを見たときの変な感覚。アレは―――)
シールドエネルギーの残量も少なくなり反撃の手段も思いつかない。
何も出来ないまま箒の眼前にはライフルのビームが迫ってきた。
(アレは殺気だ)
ISには絶対防御が備わっておりどんなに攻撃を受けても搭乗者が死亡する事はない。
授業でも習っており理解もしているのだが躊躇も戸惑いもないヒイロの攻撃に箒は死の恐怖を体験した。
剣道の試合とは訳が違い体が竦み声1つ上げられない。
1秒がとても長く感じられ恐怖が自分の心に襲い掛かる。
けれどもビームは直撃しなかった。
目の前には白式を纏った一夏のISが箒を守ってくれていた。
「一夏!?」
「大丈夫だな箒?どうしてこんな事をするんだ!」
「キサマに話す必要はない。障害は排除する」
「箒は逃げろ、アイツは俺がなんとかする」
ヒイロはヴァリアブルライフルの照準を今度は一夏に向けるとトリガーを引いた。
ビームの雨の中を一夏は白式の高い運動性能で切り抜けようと突っ込んで行った。
けれども一夏も箒よりはISの操縦になれているとは言え戦い慣れたヒイロには到底適わない。
ISの性能を引き出す技術、知識はセシリア、箒、一夏のほうが上だが戦闘経験は圧倒的にヒイロが勝っている。
ヒイロはエクシーガに備え付けられている標準的な武装しかまだ使用しておらず性能を満足に引き出せてはいないが経験がそれをカバーする。
彼女達は所詮学生、IS学園でも良く言えば訓練をしているに過ぎない。
でもヒイロは違う、彼は人を殺す為に強化されてきた。
躊躇も戸惑いもない、その為に今まで生きてきた。
それ故に戦いの中で感じる恐怖などすでに克服しているし人を殺すのに干渉など厭わない。
この技術で幾度もの死線を潜り抜けて来たし敵を倒してきた。
彼女たちにそんな事が気付きようがないがそれが敗因だったのかもしれない。
ヒイロは敵を倒す為、殺す為に戦っている。
一夏に容赦なく発射するビームは直撃はせずとも少しずつシールドバリアーをかすめて行く。
「箒でも難しかったんだ、簡単には出来ないか。それにシールドのエネルギーも少しずつ削られる」
一夏はヒイロの強さに舌を巻いた。
近づこうにも弾幕を突破出来ず満足に攻撃1つまだ出来ない。
けれども突如として勝機が舞い降りる。
『エネルギー残量0、エクシードシステムクールタイムに入ります』
エクシーガのAIが告げると周囲を纏っていた粒子はなくなり背中の羽からも粒子は発生しなくなった。
エネルギー残量は元の状態に戻ってしまうが変化はそれだけでない。
システムを発動させる前よりも性能が下がり機動力が目に見えて落ちた。
「動きが鈍い」
すぐにヒイロは性能が下がった事に気が付いたがそれは一夏も同じ。
今まで精密に放たれていたビームも白式に機動力で振り切る事が出来る。
「行くしかないだろ!」
意を決して一夏は一直線にエクシーガに突撃した。
白式を第2形態・雪羅に移行すると大型のウイングスラスターで一気に加速した。
雪片弐型を零落白夜に変形させるとエネルギーの刃が形成される。
自身のシールドエネルギーが消耗されて行き尚も発射されるビームに直撃するが構いはしない。
「ぶち抜けえぇーー!!!」
一夏は射程圏内まで入り込むと零落白夜で袈裟斬りしエクシーガのシールドバリアーを切り裂いて本体に直接ダメージを与えた。
ヒイロのエクシーガは衝撃からか斬られると重力に引かれ地面へと落下した。
「やったか?」
地面に突っ伏して動かないエクシーガ、でもこれでまた動いたら勝つ手段がないと一夏は不安になる。
数秒するとエクシーガは膝を地面に付けてゆっくりと起き上がり始めた。
『シールドバリアー、エネルギー共に0です』
AIは無機質な音声を発する、それはもう戦えない事を意味しているがヒイロにはその気はない。
「俺は逃げない、最後まで戦い抜く」
立ち上がるとヴァリアブルライフルを握りなおし上空に居る一夏を睨んだ。
そして一夏に向かいライフルの銃口を向けようと腕に力を入れる。
「動くな!」
だが後ろから聞こえてきた声に動きを制止させらる。
首を傾け体を少しだけ動かすと後ろに居る人物を視界に捕らえた。
スーツを着た女、一夏の姉である千冬と黒いISを装備した銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒが右肩のレールガンでヒイロを捉えている。
「武器を捨てろ、さもなくば背中から撃つ」
千冬がホールドアップさせようと呼びかけるがヒイロにはまだ戦いを止める意思はない。
シールドバリアーも展開出来ない、エネルギーも底を突き戦闘など出来はしない。
ISの知識がないからではなく、彼はそれでもまだ戦おうとしている。
素早く振り向くとライフルの銃口をラウラに向けるかトリガーを引くよりも早くレールガンの弾が左肩に直撃し倒れてしまう。
「がはぁ!」
レールガンが大型なのもあり弾の衝撃で吹っ飛ばされ地面に再び倒れこんでしまう。
ラウラは動かなくなったのを確認すると隣に居る千冬に呼びかけた。
「ご無事ですか、教官」
「何ともない、だが一夏以外にも男でISを動かせる人間が居るとは」
「何者なのでしょう?」
「捕まえてからゆっくりと聞かせてもらう」
「はい」
千冬の指示でラウラは倒れているエクシーガの元まで歩いて行く。
また反撃されないようにいつでもプラズマ手刀を出せる準備をしてエクシーガに近づいた。
けれどもそこで違和感を感じた。
彼女は歩く速度を早めると倒れているエクシーガへの警戒心を少し緩めた。
そして右腕を掴み地面から起こすとそこに搭乗者は居なかった。
「居ない、まさか!?」
気が付いた時にはもう遅かった。
ISを捨てたヒイロは1人で立っている千冬に攻撃の意思を示して走っている。
体を低い姿勢にして駆け抜けると顔面に向け右手をぶつけようとする。
千冬は簡単に手で受け止めると手刀を首筋に当てヒイロを気絶させた。
「そうとう疲労しているらしいな。そんな体でも私に攻撃してくるか」
「俺は……戦い抜いて……」
モウロウとする意識の中でもヒイロの戦う意思は消えない。
体が地面に倒れるとそのまま視界は暗闇に包まれた。
ご意見、ご感想お待ちしております。