IWS はばたく翼   作:K-15

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1日1回の更新はさすがに辛くて無理でした。
マイペースに進めていきます。


第6話 篠ノ之束の存在

「ここがフランスのIS研究所だよ。大抵の物なら揃っているけれど」

 

シャルルの本国であるフランスへ到着した2人、研究室内は開発段階のISと白衣を着た研究員や作業服を着た技術者が忙しなく動いている。

データ収集、性能向上、新型機の開発、第3世代機の着手に遅れているデュノア社では社員も他の企業からの遅れを取り戻そうと躍起になって仕事をする。

第3世代の開発には遅れているが世界に名を連ねるデュノア社だが、第2世代の量産機は世界有数で設備や技術者は一流が揃っている。

ヒイロは研究室内の様子を確かめたら、シャルルにここまで来た理由を話し始めた。

 

「なら、準備してもらいたい物がある」

 

「ねぇ、ISを殺すってどういうこと?」

 

「今にわかる。そうしなければ篠ノ之束の呪いは溶けない」

 

「僕にもわかるように説明して欲しいな。篠ノ之束って言えばISの開発者だよ。彼女の呪いって?」

 

「後で説明する。とにかくこれを用意しろ」

 

懐から紙切れを取り出し、細かい文字が書かれたそれをシャルルに手渡した。

紙切れにはIS用のジェネレーター、戦艦にも使用する砲身などが書き込まれていた。

使用する部品だけ示されてもまだ、ヒイロの考えは理解出来ない。

 

「こんなのが必要なの?」

 

「出来るな?」

 

「出来るけど……」

 

何をするのかもわからないので、曖昧な返事しか返せない。

はっきりとしない態度に鋭い眼光で睨みつけるヒイロの視線に耐えられず、シャルルは半ば無理やり必要な部品を集める為に動かされた。

 

///

 

制服に着替えた一夏は全力疾走で教室に向かうが時は既に遅かった。

教室の扉を勢い良く開けた先にはスーツを来た姉、千冬が立って1限目の授業を初めてしまっている。

肩で息をしながら額の汗を手で拭い、絶望感に苛まれる。

 

「遅刻だ、織斑。ペナルティーは覚悟しておけ」

 

「すいません」

 

「ならさっさと席へ付け」

 

(最悪だ、とんでもない量の課題を出される)

 

心の中で悪態を付きながら言われたように自分の席へ座った。

いつものようにヒイロの席は誰も座らず空いたまま、今日になってからはまだ一度も顔を合わせていない。

千冬は空いている席に人差し指を刺して一夏に聞いた。

 

「織斑、他の2人はどうした?」

 

「来てないんですか?起きたらもう部屋には誰も」

 

ヒイロが取る行動の傾向から、今日はもう学園に来ないと悟る千冬。

顎に手を当てながら授業に参加させる対策を考えるも、簡単には浮かばない。

 

(ヒイロ・ユイ、一筋縄ではいかんな)

 

一夏も千冬もまだ誰もしらない所でヒイロは秘密裏に計画を進めていた。

 

///

 

部品が用意された研究所で技術者を顎で使い、IS用の武器を開発していた。

ISに使用されるジェネレーター丸々1個を巨大な砲身に無理やり組み込む。

これだけでも充分に威力があるがヒイロは満足せず、タンクローリー程の巨大なエネルギーパックを3つ取り付けた。

ジェネレーターとエネルギーパックの2つを使用し、強引に一撃の威力を高める。

現状では仮組みの段階だが、あまりにもオーバースペックな武器で威力だけを見たら世界で1、2位を争うぐらい強力だ。

でもそれをISで使用する武器となると話は別で、さまざまな欠陥が浮き彫りになりシャルルは頭を悩ました。

 

「無茶だよ、ヒイロ君。無茶苦茶だ」

 

研究室の大型ディスプレイに表示される武器の情報にシャルルは声を漏らした。

ISの何倍もある砲身とそれに伴う重量、デュノア社でも制作した事のない強力すぎるエネルギー、問題は山積みでとても使用出来るレベルではない。

 

「エネルギーが強力すぎて制御できてない。バランスだって取れてないし、重量過多で飛行出来るのかも怪しい。こっちのISが持たないよ。1回使うだけでも武器にどんな異常が出るかもわからないし、衝撃とエネルギー波でISにも致命的なダメージが受ける」

 

「問題はない、武器そのものにスラスターを取り付ければ機動力も確保できる。だが放熱が間に合っていない。冷却装置を別に付けるしかない」

 

どれだけの欠陥が出ても計画を中断もしなければ、見直しもしない。

武器としては不完全な物であっても、ヒイロはこれを完成させるつもりでいる。

 

「1回使うだけで武器もISも壊れるなんて、この武器で本当にISを倒せるの?」

 

「倒すんじゃない。ISを殺す」

 

ヒイロがここまでしてこの兵器を作りたいかは誰にも理解されなかったが、作業は構わず進み続けた。

終わってもまだ、疲れた体でISを操作し日本へ戻らなくてはならない。

 

///

 

作業の終わったシャルルは疲れた体にムチを打ち、長い廊下を歩く。

夜になった部屋の中には明かりが灯されており、隙間から光が溢れている。

やっとの思いで自室までたどり着くと重たい扉を開いた。

部屋にはまだ、眠らずに待っている一夏の姿があった。

 

「ただいまぁ~」

 

「シャルル!?やっと戻ってきた。お前までどうして休んでるんだよ?」

 

「ちょっと本国に帰っていたんだ」

 

「ヒイロも一緒だったのか?」

 

疲労困憊した体には声を出すのも辛く、無言で顔を縦に降る。

自分のベッドに腰を付けるとようやく、溜まっていた疲れを癒やす事が出来た。

一夏も向かいのベッドに座るとシャルルに聞きたかった事を話し始めた。

 

「それで、本国に2人で何をしに行ったんだ?」

 

「僕にもよくわからない。ただ、ヒイロ君はISを殺す兵器を作るって」

 

「ISを殺す?」

 

『殺す』と言う単語の意味がよく理解出来ないが、それはシャルルも同じ。

話したくても話せないので、これ以上に情報を引きだすことは出来ない。

 

「聞いても詳しくは教えてくれなくて。とにかく、今日はそれで1日学園を離れていたんだ」

 

「そうだったのか。ヒイロはどうした?」

 

「篠ノ之さんの部屋に用があるからって、1人で行ったよ」

 

学園に戻ってきたヒイロは誰にも顔を合わせず、まっすぐ篠ノ之箒の部屋のまで来た。

部屋の前まで来るとインターホンを押し、箒が出てくるのを待つ。

中から足音が近づいて来て錠が降ろされると、ドアノブが捻られて扉が開いた。

 

「はい、今開けます」

 

出てきたのは目的の人物、長髪をポニーテールに束ねた篠ノ之箒の姿。

彼女は以前に強奪されたエクシーガと戦闘になって以来、顔を合わせていないヒイロが突然現れた事に驚いた。

 

「お前は!?」

 

「お前に話がある」

 

驚く箒の事などまったく気にもせず、自分の言いたい事を強引に話しだす。

でも箒にはヒイロに簡単に負けてしまった事が悔しくて、怒りに近い物を態度で表した。

 

「私は話なんてするつもりはない」

 

「篠ノ之束について聞きたいことがある」

 

「どうして、姉さんのことなんか!?」

 

思っても居ない質問に箒は驚かされてばかりいた。

咄嗟に息を飲み、家族である束の事を久しぶりに考えてしまった。

束がISを開発してからというものの、自分も政府の監視下に置かれて息苦しい生活を強いられてしまい嫌な思い出が先に浮かび上がる。

でもこの世界の事を調べて少なからず事情を知っているにも関わらず、ヒイロは構わずに話し続ける。

 

「女にしかISが乗れない理由。篠ノ之束に会えればそれがはっきりする」

 

「知っているのか!?世界中の科学者が調べてもわからなかったんだぞ!」

 

この短い期間でISは女性にしか乗れない理由に、薄々ではあるが気づき始めた。

男で数少ないIS搭乗者であることが、ヒイロにその切っ掛けを与えてくれた。

それでもまだ確実ではなく、確信に変えたいが為に束との接触を試みている。

 

「まだ憶測でしかない。篠ノ之束は今どこに居る?」

 

「私にも姉さんが居る場所はわからない。いつも突然私の前に現れる」

 

「居なくなったのは何時だ」

 

「ISを開発してすぐに政府の監視下に。それからは、本当にどうしているかわからない」

 

「そうか……」

 

話している内に段々と顔が俯きになっていく箒。

視点も少し乱れており、手が汗で濡れた。

 

「今から篠ノ之束に連絡を取れ」

 

「え?」

 

「見ればわかる。居場所は知らないかもしれないが、連絡手段は持っているな。動揺が表情に出ている」

 

確信を突かれたヒイロの言葉に嘘をついてごまかすことも出来ない。

姉にただ連絡するだけ、それだけでも素直に了承の返事は返せない。

長きに渡る姉への反抗心が、今の箒を支配している。

 

「確かに、連絡は取れる。でも……」

 

「なら伝えておけ。お前の幻想にいつまでも付き合うつもりはない」

 

踏ん切りのつかない箒に言付けしたら、ヒイロは箒の部屋から立ち去った。

ヒイロの姿を部屋の中から、無骨なレンズが睨んでいる。

部屋の中に隠しカメラがあることは宿主である箒も気がついていない。

 

///

 

仕事が残っている千冬は生徒が居なくなった学園で、夜になっても仕事を続けている。

職員室にももう誰も居らず、1人で担々とパソコンのキーボードをタッチする。

するとデスクの上の携帯がバイブレーション機能でガタガタ震え、液晶画面が光った。

画面には久し振りに見る友人の名前、篠ノ之束の文字が表示されている。

携帯を片手に持ち耳を当てると、彼女の声が鼓膜を破らんとばかりに大きく響いた。

 

「はい、もしも―――」

 

『やっほぉぉぉ!ちぃちゃん、げんきしてるぅ?』

 

「うるさい。何の用だ?」

 

仕事を一時中断し、電話の向こうの友人の言葉に耳を傾けてあげる。

束のやる事なす事すべてがいつも突然だ。

 

『箒ちゃんは大丈夫?いじめられたりしてないかなぁ?』

 

「いじめなんてあるわけがないだろう」

 

『本当かなぁ?かなかなぁ?』

 

「しつこいぞ。話がないならもう切る」

 

要件を話そうとしない束に、脅しをかけるとようやく話しだした。

でもその声はいつもの彼女とは違い、暗く重たい声だった。

 

『最近また転校生が来たよね。それも男の』

 

「何故知っている、と聞いても無駄か。どうせまた学園内のコンピューターにクラッキングしたな」

 

束は紅椿を作成する為に学園のデータバンクから箒のデータを盗み出した。

その件からヒイロが転校してきたのも、クラッキングで情報を仕入れたのだと考える。

 

『天才の束さんに知らないことなどないのだ』

 

「お前が他人に興味を持つとは珍しい。どういう風の吹き回しだ」

 

束は家族以外では友人の千冬と一夏だけにしか心を開かない。

あまりに他人に心を塞ぎすぎて、千冬にも怒られた経験がある。

それ以来少しはマシと言えるくらいにはなったが、他人に興味を持つのは本当に珍しい。

 

『いやぁ。箒ちゃんの姉として、妹がいじめられているのを黙って見ているなんてできないわけで』

 

「また変なことを企んでいるんじゃないだろうな?」

 

「んふふ、な・い・しょ」

 

意味深な言葉だけ残して通話が途切れた。

考えの読めない束の行動に、千冬は一抹の不安を抱えた。




感想でも書きましたが原作やアニメとは違って時系列が少しずれています。
シャルロットが学園内で男として過ごすのも、これでは改変させていただきました。
タグでもちゃんと表示したほうがいいのでしょうか?
ご意見、ご感想お待ちしております。
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