IWS はばたく翼   作:K-15

8 / 9
半年はダラダラと放置し続けたこの作品ですが、いい加減に完結させます。



第8話 サントリーフラワー

「すげぇ……」

 

一夏はその威力に舌を巻くしか出来ない。

ヒイロが独自に開発したロングメガバスターキャノンの一撃により無人ISは姿を消す。

必要以上に強力な兵器は規格をクリアしておらず、使用するには余りある威力だ。

そのせいでヒイロのエクシーガは1発撃っただけで機体が耐え切れず、被弾していないにも関わらず各部が損傷してしまう。

 

『重量過多によりライトアーム損傷、フレームにも甚大なダメージ。各部スラスター出力低下。重量オーバーにより飛行が困難です。冷却装置に不具合アリ、エネルギーの充填を中止します』

 

IAが次々に損傷箇所を知らせて来る。

とても満足に戦闘出来る状況ではなく、空中に留まるだけでも困難だ。

右腕のロングメガバスターキャノンを格納し重量を軽くしてもバランスが取れず、ふらふらと風に舞う落ち葉のように海へ落下して行く。

 

「ヒイロ!!」

 

一夏は真っ先に動きエクシーガの落下速度よりも早く空を飛んだ。

白式の相対速度を合わせ、右腕のマニピュレーターを思い切り伸ばす。

ヒイロは口を閉じたまま何も言わず、同じように腕を伸ばし2人はがっちり繋がり合い速度は減速する。

反重力装置を全開にして2機分の重量を支える白式。

海面スレスレでどうにか停止する事に成功し、一夏はそのままヒイロを肩を担いだ。

そこへ他の4人も合流し、シャルルが右側へ回り込み損傷しているエクシーガを支える。

機体はボロボロだがパイロットは無事な事に安心し、一夏はヒイロに声を掛けた。

 

「大丈夫か?」

 

「想定よりも負荷が大きい。しばらくは飛べそうにない」

 

重大な被害を被ったにも関わらず顔色1つ変えずに平然とした態度を崩さない。

シャルルは無茶をするヒイロに驚かずには入れなかった。

 

「本当にあの武器を使うなんて!? テストするまでもなくこうなる事はわかって居たのに!!」

 

「こうするしか方法はなかった」

 

「だからって……」

 

使えばどうなるかわからない未完成の兵器をヒイロは自らの意思で使用した。

力強い眼力を見てシャルルは自分にはない心の強さを彼から感じる。

そこまでの勇気を持てないシャルル、最後の言葉は尻すぼみになりながら自らの弱さを実感した。

 

「俺達で運ぶから捕まってろ。いいな?」

 

「あぁ」

 

一夏は合図を出し、シャルルと一緒に2人がかりで学園まで運ぶ。

無人ISの反応はレーダーから完全になくなり、背後に注意を払う事もなく全員が安心して帰路に付く。

 

///

 

開放されたアリーナへ出撃した全員が戻って来た。

ヒイロが一撃で仕留めてくれたお陰で、他の5人はエネルギーが少し消費しただけで終わってしまう。

地面へ脚部を設置させ作戦が終了したのを実感するメンバー達。

一夏とシャルルに運んで来て貰ったヒイロのエクシーガは自立するのも不安になる程に酷い有様だ。

重たい重量に右肩の関節は悲鳴を上げ、それを支える為に補助アームを胴体部分に食い込ませたせいで装甲がひしゃげて変形して居る。

バリアーを展開しても右腕からの衝撃はボディー全体に伝わり、フレームが歪み内部構造にも被害が出た。

それでも僅かにエネルギーは残っており動く事は可能である。

ヒイロはエクシーガを格納はせず、その目に闘志は宿ったままだ。

戻って来たメンバーの元へスーツ姿の千冬がハイヒールの踵をカツカツと鳴らしながら、睨みを効かせて早歩きでやって来る。

結果だけで言えば成功だが本来の作戦とは全然違う過程、無断欠席の上に無断出撃をしたヒイロの前に立ち、眉間にシワを寄せながら口を開く。

 

「無茶苦茶をしてくれたな。ヒイロ・ユイ」

 

声を聞いてからようやく視線を千冬に向ける。

けれども彼女の言葉など無視して、誰もが予想も出来ない事を言い出す。

 

「お前になら出来る筈だ。篠ノ之束をここへ呼び出せ」

 

「束……だと!?」

 

何故彼女の名前がここで出て来るのか一夏達には理解出来ず呆然と会話を聞いているしか出来ない。

千冬でさえも確信はなく、半信半疑で悩んでいた所に来て間もないヒイロからその名前が出た事に驚きを隠せない。

 

「何故、ここでアイツの名前が出て来る? いや、お前は真相に辿り着いたのか」

 

「それを確かめるにはアイツを引きずり出すしかない。篠ノ之束がISを作り出した理由も、俺と一夏が乗れた理由も、全てヤツが知っている」

 

「わかったよ。でも、私だって何となくでしかないんだ。本当に束が関与している証拠なんて1つもない。だが決着を付ける良い機会かもしれん。もっとも、すんなりここへ来てくれるかはわからんがな」

 

千冬は言いながらスーツの内ポケットから携帯電話を取り出そうと手を伸ばした。

右手が懐に入ろうとした瞬間、この場に居る筈のない聞き慣れた友人の声が耳に入る。

 

「その必要はないんだよ。ちぃちゃん」

 

「お前!? いつ学園に来た!!」

 

「天才の束さんは何だって出来ちゃうのです」

 

両手を頭に持って行きウサギの耳を形作り、カチューシャに取り付けてあるウサ耳と一緒にパタパタ動かす。

いつもの笑顔を浮かべているが、今では不敵な笑みに感じ取れる。

千冬でさえ躊躇する場面で、ヒイロは知ってか知らずか1歩前に出て束と初めて対面した。

 

「お前が篠ノ之束か」

 

「そっか、そっか。束さんもキミのことよ~く知ってるんだよ。私の大事な大事な箒ちゃんをいじめた――」

 

今までは笑みを浮かべて居た束が一瞬息を吸い込む。

そして見開かれた瞳はガラス細工の様に透き通り、ゆっくりと吐かれた言葉は聞くモノを戦慄させる。

 

「ヒイロ・ユイ」

 

周囲の空気は冷え切り、束からは冷たい威圧感が放たれる。

誰も安易に口出しするなど出来ず、呼吸をするのも辛くなる程に今の彼女の存在は異様だった。

でもヒイロにはそのプレッシャーは通じない。

 

「話して貰うぞ。ISを作った理由を」

 

「どうしてテメェみたいなガキに、この束さんが親切に教えてあげないといけないのかなぁ?」

 

途端に変わる口調。

けれども優しく子供をあやすように。

凍り付く空気の中でヒイロは構わずに話を続けた。

 

「女にしかISが乗れない理由。俺にはわかった」

 

「どうかなぁ~? 凡人の男どもにそんなの理解出来る筈ないもん」

 

「ISは女にしか乗れないのとは違う。男が乗っていないだけだ」

 

真相を語るヒイロ。

束は言い返しもせず口を閉ざすだけ。

一夏にも他の4人にもヒイロの言う事が理解出来ないで居た。

 

「どういう意味だ?」

 

「搭乗するには必ず生体認識が必要になる。事前に登録しておけば、他の人間は乗れなくなる」

 

ISを運用する為の1番最初の、誰もが知って居る当たり前の作業。

一夏ですら授業を受けて覚えた初歩の初歩。

内部構造により詳しいシャルルは、その意見に口を挟んだ。

 

「ならデータを初期化したら男の人でも乗れるようになるの? でもそんな簡単なのすぐに気づくよ」

 

「ISを作れるのはこの女だけだ。搭乗者を限定させ、世界中の人間に女しか乗れないと思い込ませた」

 

「灯台下暗しってやつか。でも世界中の科学者が集まってもわからないものか?」

 

一夏の疑問は最もだった。

世界中に散らばるありとあらゆる専門機関と科学者達が匙を投げた、ISが女性にしか乗れない理由がそんな簡単な事なのかと疑問が生まれる。

悩む一夏に千冬は助け舟を出す。

 

「一夏、地球はどんな形をしている?」

 

「ボールみたいに丸い形をしてる。でもそれがISと何の関係があるんだよ?」

 

「そうだ、今では誰でも知っている。常識と言ってもいい。だがそれがわかるまで、地球は水平だと思い込んで居た人間は世界中に居た」

 

「それと同じってことか。なら男はISに乗れないように思い込ませたのは?」

 

世界に初めて登場したインフィニット・ストラトス。

未知数の技術力に見るモノは舌を巻く。

束は開発者として新たな常識を作り出す事で世界中の人間を欺いた。

そしてそうなるに至った経緯を千冬は考え、語り始める。

 

「束の家は古くから伝わる神社だ。それは一夏も知っているな? 剣の巫女とも呼ばれ、篠ノ之家の女性は幼い頃から剣術を習う。それが嫌になってお前はISを開発したのか?」

 

幼い頃から束を知っている千冬には彼女の家庭事情も当然知って居る。

彼女が両親をあまり良く思って居ない事も、他人には閉鎖的な心も。

ここまで話して横目で束を見た千冬、その表情は心の中が読み取れないいつもの笑みに変わって居る。

 

「ちぃちゃんだから特別に言うけど、ざ~んね~ん。20点ぐらいだね」

 

的を外した千冬。

束はケラケラ笑うだけでそれ以上は何も言わない。

ヒイロは彼女の歪んだ心の闇を垣間見て、今までに出会って来たどの人種とも違う束だが、自分と同じく負け続けて来たのだと心の中で感じる。

この学園に来てから調べた彼女の情報が、ここに来てジグソーパズルのようにピタリと噛み合う。

それは歴史の変化を体験して来たから感じ取れたのかも知れない。

 

「古くからの歴史でも戦いは常に男がしてきた。外見は変わりはしたが、元を辿れば家を作ったのも、剣の巫女と言う剣術も、最初に作ったのは男だったはずだ。お前は自分よりも劣っている人種が、世界を牛耳る世界が苦痛だったんだ」

 

「えへへ、まいったなぁ~。そんな論理の欠片もない戯言を聞かされても、束さん困っちゃう」

 

何処までもしらを切る束。

でもヒイロは口を閉ざしたりはしない。

 

「計画通りにISは女にしか乗れないと認知され、その性能から現代の主力兵器にもなった。でもそこからが、お前の計画とは食い違った。あまりに強すぎる性能から、世界はISを共有しようとした。お前は男が作る世界を壊そうとした。そして思惑通り女尊男卑の社会に変わった。だが今度は世界に振り回されるようになった。だから開発を中断して雲隠れした」

 

そこまで言うと束は両手を叩いて拍手した。

1人だけの乾いた拍手。

全員の意識は拍手の音に集中し、それから数秒経過し音は止んだ。

 

「すごいねぇ、ヒイロ・ユイ君。正解だよ」

 

見開かれた瞳からは感情は読み取れない。

千鳥足で歩く束は異様な存在にみんなの目に映る。

力なくふらふらと歩き、止まったかと思ったら不敵な笑みを浮かべて蒼いバラの花びらの形をしたペンダントを取り出した。

 

「世界はもう変わったの。男でISに乗れるヤツなんて、いっくん以外にはいらないんだよ」

 

次の瞬間に待機状態のISが展開され、束の全身に装甲が展開される。

敵意を感じ取ったヒイロは臨戦態勢に入り、脚部で地面を蹴って空中へ飛び上がった。

そこから見えるのは蒼い装甲を身に纏った束の姿。

 

「あははははっ!! そのボロボロのISでは、このサントリーフラワーには勝てない!!」




これを考えて居た時にはまだアニメの2期は放送されていませんでしたので何処かに矛盾があるかもしれません。
ご指摘してくれれば嬉しいです。
束がISを開発した経緯などは自分の想像で、本編でどのようにえがかれるのかは当然わかりません。これも正直説明が強引な所があるのは頂けないですが。
ボロボロのヒイロのエクシーガと束が用意した謎のIS、サントリーフラワー。
どのような決着を迎えるのか!?
ご意見、ご感想お待ちしております。
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