IWS はばたく翼   作:K-15

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かなり無理やりですがこれで終わりです。
今まで付き合ってくれてありがとうございます。


最終話 成層圏の彼方まで

右手に握った長い槍の形状をした武器。

鮮やかな黄色で彩られ見た目からは接近戦用の武器に見えるが、蕾が開花したように四方へ展開し内部から赤い球体が現れる。

束はおもむろに白い雲目掛けて先端を突き出し、充填されたエネルギーが発射された。

瞬時に飛んで行くソレは空気を焼き、雲の真ん中へ丸い空洞を作り出す。

発射し終わった後もエネルギー粒子が残留して居る事から、相当な破壊力を持って居る事が視覚的にわかる。

 

「ディバインバスター、性能は良好。満身創痍の状態で私に勝てるかなぁ?」

 

「戦い用はある」

 

顔は笑顔を作っているが明確な敵意をヒイロに放つ束。

性能が未知数の相手でもヒイロは怖気づいたりせず、相手を倒す為に今の自分に出来る事をする。

AIへ指示を出し、両手に武器を装備して目の前の敵へ照準を合わせた。

 

『ヴァリアブルライフルを展開します』

 

機械質な音声で何もない空間から武器が転送され、無言のままにマニピュレーターでグリップを引っ掴む。

それが2人の戦いの合図になる。

一夏は知り合い同士が本気で戦おうとしているのを黙っては居られず、間に割って入ろうとするが既に遅く、互いの闘志は戦う事でしか打ち消す事は出来ない。

 

「やめてください、束さん!! ヒイロ!!」

 

地面を蹴り空中へ飛び上がった束のIS、サントリーフラワー。

目にも留まらぬスピードで加速し、エクシーガへ肉薄する。

相手の力を見下している束はすぐには攻撃せず、エクシーガの全体を舐めるように見つめた。

 

「ラファール・エクシーガ、まだ試作段階の第3世代型。ふふふ、サントリーフラワーは紅椿と同じ第4世代型なんだよ~」

 

「ペラペラと喋る。余裕のつもりか?」

 

ヴァリアブルライフルの銃口を向け、ヒイロは迷わずトリガーを引いた。

発射されたビームは真っ直ぐサントリーフラワーへ迫るが、瞬きした時には既に敵の姿は消えて居る。

瞬間移動にも思える驚異的な加速力で、束は意図も容易く攻撃を避けた。

そして力の差を魅せつける様にヒイロの背後で笑みを浮かべながら、両手でピースサインを出して嫌味ったらしく口を開く。

 

「天才の束さんにはこんなの余裕なのですよ。わざわざ本気出さなくても、システムの補正だけで簡単に避けられちゃうんだから。攻撃力だって負けてないよ。ディバインバスター」

 

再び槍の形をした武器を取り出し、その矛先をエクシーガへ向ける。

切っ先が展開され赤い球体から高エネルギービームが発射され、ヒイロは直ぐ様回避行動に移る。

 

「くっ!? 機体の反応速度が鈍い!!」

 

損傷して居るエクシーガはヒイロの思い通りには動いてくれない。

前面へバリアーを展開させるが衝撃は打ち消せず、左腕で受け止めるも空中に留まる事も出来ずに吹き飛ばされてしまう。

 

「どうしたのぉ? ほらほらほら~!!」

 

束はキリモミするエクシーガに容赦なく銃口を向けビームを撃つ。

それでもヒイロは姿勢を制御して起き上がり、重力に引かれて自由落下する事で通常よりも早く動きこれを避けた。

落下しながらも、隙を晒す束に銃口を向け両手のヴァリアブルライフルのトリガーを引き、攻撃の手は緩めない。

だがたった3発撃った所でAIが現在の状況を知らせて来る。

 

『ヴァリアブルライフル、エネルギー残量0』

 

「弾切れか」

 

トリガーを引いてもカチカチ音を鳴らすだけで、もはやただのウェイトでしかない。

ヒイロは両手の武器を投げ捨て、機体の損傷状況を考慮せず強引に上昇する。

風圧を受けただけでもガチガチと各部の関節から悲鳴が上がり、補助アームのせいでひしゃげた装甲板が耐え切れずに吹き飛んだ。

ヒイロは一切構いはせず、右上腕部からビームブレードを展開しサントリーフラワーに斬り掛かる。

 

『バリアアーマーブレード、出力70パーセントで展開』

 

「おおっと!?」

 

素っ頓狂な声を出す束。

けれども攻撃はバリアーに阻まれ、装甲まであと少しの所で停止して居た。

自身のシールドエネルギーを攻撃にも転用し、通常兵器とは比べ物にならない破格の攻撃力を持つバリアアーマーブレードでも、サントリーフラワーの装甲に触れる事すら出来ない。

受け止める事で消耗して行くサントリーフラワーのシールドエネルギー。

だが表示されて居るエネルギー数値は少し減っては増え減っては増えを繰り返しており、スペックの違いをまじまじと見せ付ける。

 

「すごいねぇ、フランス製のISも。けどサントリーフラワーには及ばないよ。コレには箒ちゃんの紅椿と同じ『絢爛舞踏』を搭載してるんだから。本来ならワンオフアビリティーなのにこう言う事が出来るのは、天才の束さんだけなのです」

 

「耳障りな声でいつまでも喋る」

 

「折角親切に、この最高傑作のサントリーフラワーの性能を説明して上げてるのに?」

 

「敵の施しは受けない」

 

「そっか、残念。ならいつまでもこんな近くで話してる必要はないね。レヴァンティン」

 

右手のディバインバスターを格納しさらに別の武器を展開させる。

真っ赤なレイピアを取り出した束は、諦めずにバリアアーマーブレードを通そうとするヒイロに切っ先を向け、横へ一閃した。

ヒイロはコレを受け止めようとするが、レヴァンティンはシールドエネルギーで精製されたブレードを分断してしまう。

力は必要とせず、包丁で豆腐を切る如く簡単に。

危険を察知したヒイロは急いで後退し致命傷は避けるも、シールドエネルギーが大幅に減ってしまった。

 

「このレヴァンティンは、いっくんの零落白夜と同じ性能を持ってるんだよぉ。まぁ、オリジナルと比べれば少し性能は落ちちゃうんだけどね。でもそこは束さんの天才頭脳がカバーするのでした!!」

 

ヒイロには彼女の声は届いて居ない。

考えるは起死回生の一発逆転の方法をどのように実行するかだけ。

レヴァンティンにより消滅したエネルギーは全体の7割に昇り、戦い続けるにしても限界が見えて来る。

束は休み暇など与えずに、レイピアの剣先を振り空気を斬り裂きながらエクシーガを追い詰めに行く。

 

「スピードもパワーも、防御だって!! アンタが私に勝てる要素なんて1つもないんだよぉ!!」

 

発狂気味にレイピアを振り回す束に今のヒイロには逃げるしか手段がなかった。

バリアーを展開すれば問答無用で消滅させてくる相手の武器に防御手段はなく、装甲を斬り刻まれながらも限界まで耐える。

回避行動を取ろうにも行く先行く先にすぐ回りこまれてしまい、破壊された装甲が重力に引かれて落ちて行く。

 

「大口を叩いた割には弱いねぇ。もう飽きちゃった」

 

クルリと回った束はサントリーフラワーの脚部でエクシーガを蹴り付けた。

咄嗟に両腕で前面を守り攻撃を防ぐヒイロだが、余りの威力にまた吹き飛ばされアリーナの地面へ激突してしまう。

コンクリートをバラバラに砕くも衝撃は吸収しきれず、2回3回バウンドし勢いの付いた慣性に流されボディーを擦り付け火花を飛ばしながら壁面へぶつかりようやく停止した。

 

「うふふふふッ!! コンクリートはどんな味かなぁ? ヒイロきゅ~ん」

 

ガタガタと震えながら体を起き上がらせるヒイロ。

地面へ両手を付き、立ち上がろうと右膝を曲げたら回線が焼き切れスパークした。

右膝から先は完全に反応しなくなり、左足だけで重量を支えて何とか立ち上がる。

ヒイロの頭上に未だキズ1つ負っていないサントリーフラワーが、ディバインバスターを構えてこちらを見て居た。

 

「なら次はコレの味見をして貰おうかなぁ?」

 

「AI、IWSを出せ」

 

『Non-standard product. Infinity Weapon System』

 

機械音声が流れ、エクシーガの右腕にロングメガバスターキャノンが展開される。

損傷の酷い装甲に無理やり補助アームを設置させた。

ISの保護機能では庇いきれずパイロットにも負荷が掛かってしまう。

それでもヒイロは表情1つ変えず、銃口の先をサントリーフラワーへ向ける。

 

「ターゲット、ロックオン」

 

空中で静止したままの相手にターゲットカーソルがピッタリ合わさる。

しかし初めの1発でロングメガバスターキャノンも壊れており、正常に作動出来ないとAIが訴えかけて来た。

 

『エネルギー充填率40パーセント。冷却装置に不具合アリ。これ以上はエネルギー充填出来ません』

 

「構わない。このまま撃つ」

 

『了解』

 

ISが装備するには巨大過ぎるソレに流石の束も驚きを隠せなかった。

 

「IS用の武器じゃない。規格外品!?」

 

「破壊する」

 

本来の威力ではないがISを1機倒すだけなら充分なエネルギーは残って居る。

銃口のエネルギーが溜まり、閃光となって周囲を照らす。

目標であるサントリーフラワーの地点を一瞬で通り過ぎ、白い雲にまた穴が開く。

姿は見えなくなった。

だがレーダーを確認するとヒイロのすぐ目の前にまで来て居る。

 

「ざ~んね~んでした~。サントリーフラワーには、まだまだ知られざる能力がたくさんあるので~す。その名もミラージュ・セレニティ。このエメラルドグリーンのヴェールがどんな射撃武器でも防いじゃうんだよ」

 

「もう止めてくれ、束さん!!」

 

白式を展開した一夏がサントリーフラワーの前に立ちはばかる。

視界に一夏を入れた束は歩みを止め、またケラケラと笑った。

 

「いっくんのお願いだから聞いてあげたいんだけど~」

 

「ならもうこんな事――」

 

仄かに灯った優しさに一夏は安心しようとした。

けれども彼女が次に口にした言葉は無慈悲であり、一夏の記憶の中の彼女とは何かが決定的に違って居る。

 

「でもダメ……徹底的に痛めつけないと、私の気が収まらないの」

 

束の冷たい表情に一夏は戦慄し、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

それでも退いたりはせず、雪片弐型を右手に構えて束と対峙する気で居る。

 

「もうこんなの見てられないんだ。知ってるヤツが傷付くのも、アナタが豹変して行くのも!!」

 

「それは私の事を買い被ってるだけだよ。後ね、いくらいっくんでも邪魔をするなら容赦しないよ?」

 

「こっから先は通すもんか!!」

 

「そうなんだ~。なら――」

 

呼吸を止め、瞬きすらして居ない。

だが目の前からサントリーフラワーの姿は消えてしまう。

 

「っ!? 何処に!!」

 

「ゴールドチャペル。瞬間加速を凌駕したこのシステムは、レーダーにすら反応しない。誰にも見える事なく距離を詰められる。私は今、いっくんの目の前に居るんだよ?」

 

防衛反応が頭で考えるよりも早く一夏の体を反射的に動かす。

受け身を取った瞬間にレーヴァティンの鋭い突きが雪片弐型の片刃に突き刺さる。

姿を現したサントリーフラワー。

視界に入れるのがやっとで、一夏もアリーナの壁面へ吹っ飛ばされた。

 

「ぐぅっ!!」

 

「ごめんねぇ~、いっくん。すぐに終わらせるから」

 

邪魔者が消え、束はヒイロへ視線を向ける。

その先は壁に穴が出来ているだけで、目標であるエクシーガの姿はない。

 

「居ない!?」

 

『エクシードシステムを起動します』

 

AIの無機質な機械音声が鳴り、エクシーガのシールドエネルギーの上限値が増える。

背中の翼の装甲がスライドし一回り大きくなり、展開された部分からは粒子が発生し視覚的にも性能が変化した。

最後の瞬間加速で詰め寄ったヒイロはサントリーフラワーの背後から強引に組み付き、ロングメガバスターキャノンの補助アームを相手の装甲へ喰い込ませる。

 

「コイツ!? これだけ密着してるとゴールドチャペルの効果が発揮出来ない!!」

 

束が次の手に打って出る前に、ヒイロは組み合った状態でエクシーガを前進させた。

そしてそのままお返しとばかりにサントリーフラワーと一緒にまた壁へ激突する。

 

「ぐはぁっ!! やってくれるわね」

 

「これで最後だ。セーフティー解除、ジェネレータマキシマム」

 

『冷却装置を強制解除。メインジェネレーターをマキシマムで起動します』

 

ロングメガバスターキャノンのパーツがパージされ、内部のジェネレーターと直結されたISコアが剥き出しになる。

エネルギーが充填され高熱が発生し、取り付けられているパーツが溶解してしまう。

だがヒイロはジェネレーターの稼働を止めたりしない。

 

「何をする気なの? まさか!?」

 

臨界点を超え、ISコアさえも破損寸前まで追い込まれる。

束は必死に振り払おうとするがヒイロはそれを許さず、システムも使えないせいで逃れる事が出来ない。

解体するしかない程にボロボロのエクシーガの最後の手段。

瞬時に理解した束は脱出を諦めレヴァンティンを呼び出し、切っ先をISコアへ突き刺そうとしたが残り数ミリでタイムリミットを迎える。

巨大な爆発が2人を呑み込み、灼熱の炎で周囲の景色は全て真っ赤に変わった。

エクシーガは真っ先に溶けて原型を無くして行き、熱で光る左腕が崩れ落ちる。

サントリーフラワーはバリアーを全開にしてエクシーガの自爆を耐えるが、絢爛舞踏を発動させてもシールドエネルギーがもの凄いスピードで減少して行く。

10秒も持ち堪えるのが精一杯で、蒼いボディーが晒され光に染まる。

 

(シールドエネルギーが無くなる!? もう、終わりなの……)

 

///

 

一夏はクーラーの効いた自宅のリビングでくつろいで居る。

見た目を気にする必要がないのでTシャツとジーンズのラフな格好だ。

寮ではなく住み慣れた家と言う事もあり、リラックスしてソファーの上に座る。

 

「学園の工事が終わるまではゆっくりできるな」

 

手に持ったガラスのコップを口元まで運び、氷を入れた麦茶を喉に通す。

その後ろで姉の千冬はYシャツにネクタイを結んで居た。

 

「私は学生とは違ってまだやることがある」

 

「でも、前よりは家には居られるだろ?」

 

「そうだな」

 

必要以上の事は話そうとしない千冬。

一夏も間近で見ていてわかっているのでそれ以上言及はしない。

もう1度だけ麦茶を飲み、今は居ない人物の事を考えた。

 

(あの自爆のせいでアリーナは完全に崩壊。爆発の余波で学園の窓ガラスも全部割れちまうし、怪我をした生徒も居てとても授業を出来る環境ではなくなった。爆発の中心に居た束さんのISは完全に動かなくなった。それでも絶対防御が守ってくれたお陰で、しばらく入院すれば体は大丈夫らしい。でも、ヒイロだけは何処を探しても見つからなかった)

 

俯き暗い表情になってしまう一夏。

動きながらもチラッと様子を見た千冬は、少しだけ手を差し伸べる。

 

「気になるのか?」

 

「そりゃあな。やっぱりヒイロは、死んじまったのか……」

 

「束が助かったんだ。アイツだって生きているはずだ」

 

「だったら、何で消えちまったんだよ!!」

 

感情的になってしまい、一夏はコップを固く握り締め背後の千冬へ振り返った。

彼女はいつもと変わらず、鋭い視線を向けるだけ。

 

「さぁな。現れた時も知らない内に現れたんだ。居なくなる時だってそうさ。話は逸れるが、ISは元々は宇宙空間で動く為のパワードスーツだった。それがいつしか今のような形に変わってしまった。束のせいとは一概には言えんが、久しぶりに本来の使い方をしたな。一夏」

 

「本来の使い方?」

 

「爆発で溶岩のように溶けたあの場所で活動するにはISでしか無理だ。2人を助けにお前は飛び込んだだろ? 人命救助も本来の使い方の1つだ」

 

黒のスーツへ袖を通す千冬。

準備が終わって家から出て行く前に、もう1つだけ引っ掛かっている事を口にしてみる。

 

「ヒイロのやった、絶対防御の突破。これで何が変わるんだ?」

 

「私にもわからん。でも、絶対の安心なんてものが存在すれば進歩は止まってしまう。私はそう考えるがな。行って来る」

 

その言葉を最後に、千冬はテーブルに置いて居た革調のバッグを片手に持ちリビングから出て行ってしまう。

1人残された一夏は背もたれに体重を預け、答えの分からない事を考え黄昏れる。

 

(千冬姉の言う事も、ヒイロと束さんがやろうとしたことも、俺には難しくてわからない。ヒイロ、お前は今どうしてる?)

 

雲1つない空は快晴で、成層圏の彼方まで見渡せる程に。




コレを書いて実感しましたね。勢いで物事を進めてはいけません。
途中からどうしようか悩むだけで一向に進まなくて、こんなにも時間が掛かってしまった。
ヒイロがどうなったのかは、読む人に任せます。責任放棄です。
サントリーフラワーの武装の名前は誰もが知るあの作品から拝借しました。
他はちょっともじって変えたくらいです。
鈴音が最後まで出て来なかったのは理由があります。
使いこなせないからです。自分にはアレだけのキャラを全てこの話に組み込もうと初めは考えていましたが、彼女だけはどうしても無理でした。
キャラの特性を掴むのも苦労したし、居なくてもストーリーを展開出来る事に気が付いてもうそのまま行ってしまいました。
短い話ですが長かったこの作品も終わりです。
ご意見、ご感想お待ちしております。
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