織斑一夏の青春   作:リディクル

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今回の話も、思いつきで書いたものなので、かなり短いです。

あと、何人かキャラ崩壊しているので、そこも注意してください。

それでもよろしければ、どうぞ。





其の者の名、アイドル

 

 

 

「あら、織斑君もそういう雑誌を読むのね」

 クラス対抗戦が近づいてきたある日の昼下がり、食堂でのんびりとある雑誌を読んでいた俺に、更識先輩が声をかけてくる。雑誌から目を離して、先輩の顔を見れば、口元を扇子で隠しながら、さも意外なものを見たという風に目を丸くしていた。

「そんなに意外ですか?」

「いや、君が今持ってるのってアイドル専門の雑誌でしょ?」

 そう、俺が今まで読んでいた雑誌は、古今東西のアイドルについての情報がまとまっているものであり、あと2ヶ月で1周年らしい。ちなみに週刊じゃなくて、月刊だ。

 ――そんなことより、さっきから無駄にポーズをとっては神通さんに絞められているマリアさんは何を考えているのだろう。

「まあ、織斑君も年頃の男の子だし、そういったのに興味を持ってても不思議じゃないか」

 そう言って自己完結したような納得の仕方をする先輩に、まあそんなもんっす、と返しつつ、雑誌を読み進めていく。

 島村卯月、立凪スイコ、弓弦羽ミサキ、ランカ・リー…… 今をときめくアイドルたちの眩しい笑顔や、色とりどりの衣装が写っているその雑誌を読むきっかけは、現在関西の聖竜学園高校に通っている、中学時代の友人である天王寺飛鳥(てんのうじあすか)から薦められたからだ。エセ関西弁を自在に操る彼曰く、自分には()()が足りないらしく、このままだと人生を棒に振ることになる。だからこれを読んで全うな人間になれと言われ、差し出されたのが確か中学2年の時の出来事だ。

 その時の彼の様子が余りにもウザく感じたので、同じく中学時代の友人で、現在神奈川にある千信館學園に通っている柊四四八(ひいらぎよしや)と一緒にクロスボンバーで物理的に沈めた記憶がある。まあ、最終的にはこうして定期的に読むようになってしまったが――

 

 そんなことを考えながらマリアさんの特集が掲載されているページを飛ばして先を読み進めていたが、やがて一つのページに目が止まる。

「――お」

「あら」

 そこのページに書かれていたアイドルは、手入れが行き届いた黒髪で、それをまとめる二つのお団子ヘアー。そして()()()()()()()()と同じグラデーションがかかった朱色のセーラー服にも似た衣装。その顔には愛くるしくもどこか溌剌さを感じさせる笑顔を浮かべている。

 そんな彼女は、自分にとってはとても見慣れた人物だ。間宮食堂でアルバイトをしていた時に、彼女から注文をとったことがある。彼女はよく自分の配下の駆逐艦娘たちとよく騒いでいていたことも、今では楽しかった思い出だ。そんな彼女の名前は――

「那珂ちゃんじゃない。いつの間にメジャーデビューしたのね」

 そう、那珂ちゃんだ……って。

「更識先輩、知ってたんですか?」

「知ってるもなにも、神通ちゃん繋がりでよく会う機会があったのよ」

 初耳だ。いくら艦娘であっても、対暗部組織の長と顔見知りになるアイドルがいるなんて、誰も予想なんぞしないだろうに……

「でもなー、ここ最近は私の方が忙しくて会う機会がないのよねえ」

「那珂ちゃんはあまり気にしていませんよ」

 ちょっと申し訳なさそうな更識先輩に、いつの間にか近くに来ていた神通さんがそう言う。彼女に絞められていたマリアさんはというと、少し離れた場所で犬神家のように地面に頭から突っ込まれていた。そんな彼女の様子に慌てたようにオロオロしているとこのめさんと、そんな彼女を見ながらほっこりしている敷島さん、そしてそんな彼女らの様子を面白そうに椅子に座って眺めている立上先輩と、我関せずといったようにレース編みをしているティルフィングさんがいた。フリーダムすぎだろ、誰か助けてやれよ。

「あらそう? 本当に申し訳ないわねー」

「でも、できたら自分のライブに来て欲しいとは言ってましたよ」

 この二人は、そんなカオスな中で世間話を始める始末だ。でも、これが平和ってものだろう。少なくとも周りがうるさいが、悪の組織とかに襲撃かけられるよりかは断然マシだ。

 

 そんなことを考えながら、次のページを捲ろうとしたとき、視界の隅に金色の線が何本か見えた。それが気になり、顔を上げてみれば、そこにはこちらの手元を覗き込んでいるフェイトさんがいた。

「あれ、いつの間に」

「それは君がその雑誌を読むのに集中してたからじゃないかな?」

 フェイトさんが邪気のない笑顔で総指摘してきた。そう言われてしまうと、実際そのとおりなのだから、なにも言い返すことはできない。これも、ひとえになにも厄介事が起こらないのが悪い――実際に起こってもそれはそれで困るが……

 まあ、何にしても、暇といえば暇だから、こうして雑誌を集中して読むことができるのだ。え、マリアさん? しばらくあのままにしていたほうが世のためになるんじゃないかな?

 そんなことを思いながら、雑誌を読むのに戻ろうとした俺の頭の上で、フェイトさんがその言葉を言った。

 

「その子、誰かな?」

 

 ――空気が、凍りついた錯覚に陥った。それと同時に、謎の闘気がある方向から感じられた。

「――ご存知ではないのですか?」

 闘気の主が、声を出す。その声は――神通さんのものだった。

「えっと……」

 フェイトさんが何かに迷いながら、言葉を紡ぐ。

「私、こういう話題には少し疎くて」

「ご存知ではないのですか!」

 大声を上げ、神通さんがフェイトさんのほうを向く。その迫力に、フェイトさんが小さく悲鳴を上げて、一歩後ずさる。

「彼女は!」

 神通さんが一歩詰め寄る。それに怯え、フェイトさんが一歩後ずさる。

「今をときめく!」

 神通さんがさらに詰め寄る。フェイトさんの背中が壁につく。どうやら追い詰められたようだ。

「超艦隊アイドル!」

 神通さんの攻撃範囲に入る。フェイトさんに逃げ場はないようだ。

 

「那珂ちゃんですよ!」

 

 そして、女同士の壁ドンをこの目で見た。さっきから犬神家のままでいるマリアさん以外は、神通さんの気迫に押され、彼女らの間に入れないでいた。というかドン引きしてるよ。

 そして、当事者であるフェイトさんも、いきなりの展開に困惑しきっているようだった。

「え、えっと、神通さん?」

「いいですか、フェイトさん」

 フェイトさんの言葉を遮り、神通さんが口を開く。

 

 ――そこからは、神通さんによる、那珂ちゃんの魅力の説明が行われた。

 

 曰く、彼女が戦場に出れば、そこはたちまちのうちにライブ会場に変わるのだと。

 曰く、彼女はヒュムノスの使い手であり、その昔この星を救ったのだと。

 曰く、彼女の歌があったからこそ、シンフォギアシステムが生まれたのだと。

 曰く、あの司波達也ですら、彼女の力には敵わないのだと。

 曰く、彼女はかの黄昏の女神の加護を一身に受けている存在なのだと。

 

 曰く、曰く、曰く……神通さんが語り続ける那珂ちゃんの魅力のようなものの説明は、にわかの自分でも嘘じゃねえかと思えるものばかりであった。普通ならば、そう思っても仕方がない。いや、それが正常な人間の考えだ。

 だが、残念ながら、神通さんが言っている事全部真実なんだよ! しかも現在進行形で神通さんが言っている那珂ちゃんの武勇伝って、全部過去に俺が持ってる雑誌で特集されたことなんだよ! ふざけんな!

 

 そう俺が考え、言葉に出しても、神通さんは止まらないだろう。むしろ、俺まだ巻き込まれてしまうので、そう思っていても言わない方が吉なのだ。

だからフェイトさん、ご愁傷様。

 そうして、俺は今もなお神通さんに()()されているフェイトさんに心の中で謝ってから、雑誌の続きを読み始めた。

 

 

 

 なお、マリアさんが犬神家状態から救出されるのは、日の入り間近になってからだった。

 

 

 

 

 




アイドル>アイドルのファン>覇道神>盧生>一夏>シンフォギア奏者>艦娘>IS操縦者
上記がこの作品の力関係です。ギャグ作品ゆえに致し方なし。

ちなみに那珂ちゃんはアイドルの中でも上の下くらい。上の上はお空の上を旅した笑顔が素敵なあの娘です。この作品でも名前だけ出てます。

この頃シリアスな作品ばかり書いてたりしたので、こうやって難しいこと考えないで済むこの作品には結構救われたりしています。

長くなりましたが、ここまで読んで下さり、どうもありがとうございます。
よろしければ、感想でこの作品に対してのツッコミがあると嬉しいです。
それでは、これからもどうぞよろしくお願いします。


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