俺はテイルブルー《津辺 愛香》が大好きだ――っ‼ 作:帆金 焔
(はぁ~……)
端から見れば、俺達の関係にはなんの変化もない、いつも通りの光景に見えているだろう。
……だが、それは違う。
幼馴染みの俺だからこそ、他人じゃ気づかない些細なことでもすぐに気づける。
津辺にブレスレットのことを指摘して以降、俺と津辺達との間に若干の距離感が生まれてしまった。
原因は分かっている…。『俺にブレスレットが見えてしまっている』ことだろう…。
あれは恐らく、『普通の人間には見えちゃいけない物』なんだ…。
俺の方で『調べてみた』んだがなんでも、ああいう変身アイテムには認識攪乱装置《イマジンチャフ》というものが備わっているらしい。周りからの『〇〇=〇〇』な認識を阻害、正体バレを防ぐ効果があるんだとか。
しかし、そのシステムも決して万能ではなく、少しでも正体に結びつくような考えを持ってしまうと効果が消えてしまうらしい。
(……はぁ~)
…無理じゃん!そりゃあ他の人間なら気づかないだろうけどさ、俺だったら気づくから‼
総二がツインテール馬鹿じゃなく、髪は黒で変身したら赤くなるっていうんだったら俺でも気づかなかっただろうよ。
津辺のことだってそうだ。惚れた女じゃなく、変身前の髪型もツインテールじゃなかったら気づかない可能性だってあったろうよ。
……………でも無理だからね!?
特に、テイルブルーの正体を見抜くなとか言われたら俺、絶対に『無理』って言う自信あるから!
俺、津辺のこと好きだから!好きな女を間違えるなんて俺的には超有り得ないから!
(はぁ~…)
二人は多分、俺の口から正体がバレないか警戒してるんだろうな…。
そう思われてるなんて幼馴染みとしては正直、ショックっつーか……俺だって、正体バレとかそこんところの空気はちゃんと読めるし!
「本当、どうすりゃいいんだろうな…」
津辺達とのことも解決しなきゃいけないっつーのに、実はもう一つ、そこから派生した問題がある。
廊下の曲がり角。伸びをしながらバレないギリギリのラインで視線を向ける。
俺の視界が捉えるもの、それは『銀髪』。その持ち主は知る限り、この学園では一人しかいない。
名前は、観束 トゥアール。
総二と同じく『観束』の姓を名乗っているのは当然。総二の親戚、という『設定』らしい。
…が。付き合いの浅い周りは誤魔化せても、幼馴染みである俺からすれば総二とトゥアールの親戚設定は違和感が半端ない。
そんな俺は、辻褄合わせの為か、記憶の改竄的なというか催眠術的なことをする装置を、総二達からトゥアールを紹介された時にトゥアール本人から使われた。…まぁ、実際のところはその装置、俺には効果を発揮することなく、俺は『装置の効果にかかったフリ』を続けているだけなんだけどな。
そのトゥアールの正体だが、たまに三人から漏れ聞こえる会話や総二と津辺が最近機種変したという携帯のやりとりから総合的に考えて、どうやら正体は『異世界人』らしく、総二と津辺にブレスレットを与えたのも彼女らしいのだ。
何のつもりで二人を選んだのかは知らないが、トゥアール自身は悪い奴じゃない……と思う。
ただ、幼女趣味とか総二の童貞狙ってるとかそんなぐらいで…。……あ、ある意味、危険な奴だけど…悪い奴じゃない、よな…?
(さて、どうしたもんかね…)
放課後。
「──ん~~‼終わった終わった‼なぁ、総二。これからゲーセン…行か…ね…?」
いくら事情があろうとも、幼馴染みとしちゃあ距離が空いたこのままの関係はいかんだろう。そう思い、俺は総二に声をかけたんだが 、その総二はそそくさと教室を出ようとしていた。
「へっ?あっ、わ、悪い、華火。俺、これから急ぎの用事があって行かなきゃならないんだ」
俺に声をかけられて、総二は明らかに動揺している。ふむ……さっき、授業終わる直前で携帯見て何かに気づいたっぽいから多分……あれか、エレメリアンでも出たんだろう。
「そっか…。……なぁ、総二。俺ってそんな信用ないかな?」
「へっ?ど、どうしたんだよ急に」
「いやさ……、最近、津辺と総二に距離置かれてるような気がしてな」
「うぐっ…!?そ、それは……」
「俺、何か悪いことでもしたんかなぁ~って気になってよ…」
まぁ、実際、俺は二人を困らせるようなことを言ってしまったのだから俺に非があるのは当然だし、距離を置かれてるのも自業自得だ。
「それで距離置かれてんなら謝っ──「ち、違う!」総二?」
「え、えっと華火は悪くないんだ。あ~………くそっ、何て言ったら良いのかな…!?」
本気で悩む総二を見て、自分の言動をちょっと反省する。
幼馴染みとして打ち明けてくれないのは寂しいっちゃあ寂しいが総二も津辺も、俺が変なことを言い出さないか警戒すると同時に、関係ない俺を巻き込まんがために何も言わずにいる。俺の勘違いじゃなけりゃ、そう思って良いよな?
「……くくっ。悪い、総二。冗談だ」
「──へっ?じょ、冗談?」
「まぁ、付き合いが悪くなってるのは実際気にしてんだが、だからちょっと仕返しに少し困らせてやろうかと思ってな。そこんところは悪ぃ」
「──何だよぉ、ビックリさせるなって」
「はははっ、悪ぃ悪ぃ。引き止めて悪かったな、ゲーセンは暇なときにでも付き合ってくれりゃあ良いからさ」
「おう。じゃあ俺、行くから」
駆け出す総二を見送り、津辺も既に教室には居ないことから、暇になった俺は放課後をどう過ごそうかと軽く頭を悩ませる。
「……そうだな。今日は──」
〇〇〇
総二side
今から数日前、愛香からある衝撃的なことを聞かされた。
「えっ…?ちょっ……あ、愛香。それ、本当か…?」
俺の問いかけに対し、神妙な面持ちで頷く愛香。
「…うん、間違いないよ。華火、確かに私やそーじのブレスが『見えてる』って言ってた…」
「マジか…」
俺と愛香のテイルブレスにはイマジンチャフがかかっており、『普通の人間』であるならばまず認識することは出来ない。
まさか華火の奴、何か気づいてるのか?そうであるなら納得できないこともない…。…でも、そんな素振りは全く見られなかったし、仮に気づくとしてどこで?『観束 総二=テイルレッド』って普通なら結び付く要素無いのに…。
俺達が華火と距離を置くようになったのはその日からだった。
俺達としてはなるべく華火にそれを悟られないよう元の関係を保ちつつ、付かず離れずと行動していたつもりだったんだけど華火のある言葉から、しっかりバレていたんだと気づかされる。
「……なぁ、総二。俺ってそんな信用ないかな?」
俺の携帯、トゥアルフォンにエレメリアン出現の報せが入ったのはその日最後の授業が終わる直前のことだった。
さりげなく、愛香とトゥアールにアイコンタクトを取った。頷く二人。
そして授業も終わり、周りと挨拶を交わし愛香・トゥアールが自然な形で教室を出る。
俺も急いでツインテール部の部室へ向かおう。そうしようとしたところで、華火が俺を呼び止める。ゲーセンへの誘いだった。
マズい、早く現場に行かないと。
華火の誘いを、俺はやんわりと断ったつもりでいたんだけど、華火は表情を曇らせ、俺に呟く。自分は信用が足りてないのか?と。
ほんの一瞬、華火が何故そんなことを言うのか分からなかった。
信用が足りてない?はっ?んなわきゃないだろうが。
「いやさ……、最近、津辺と総二に距離置かれてるような気がしてな」
「うぐっ…!?そ、それは…」
しっかりバレていた。同時に気づく。これじゃあ、華火を信用してないも同然じゃないか…!
「俺、何か悪いことでもしたんかなぁ~って気になってよ…。それで距離置かれてんなら謝っ──「ち、違う!」総二?」
頭を下げようとする華火に、俺は無意識に叫ぶ。
「え、えっと華火は悪くないんだ」
そうだ、華火は悪くない。俺達のことに巻き込みたくないがために、真実を言えない俺達に非があるんだから。
「あ~………くそっ、何て言ったら良いのかな…!?」
悩む俺に、表情を沈ませていたはずの華火は笑みを浮かべながら言ってくる。
「……くくっ。悪い、総二。冗談だ」
「──へっ?じょ、冗談?」
「まぁ、付き合いが悪くなってるのは実際気にしてんだが、だからちょっと仕返しに少し困らせてやろうかと思ってな。そこんところは悪ぃ」
「──何だよぉ、ビックリさせるなって」
「はははっ、悪ぃ悪ぃ。引き止めて悪かったな、ゲーセンは暇なときにでも付き合ってくれりゃあ良いからさ」
そうれで良いなら、次に誘いが来たときは付き合わねば華火に悪いだろう。
「おう。じゃあ俺、行くから」
俺は離れたところで待っていたトゥアールと合流して部室へ行き、そこで愛香ともに変身。転送装置で現場へと向かった。
〇〇〇
もしかして、とは思っていた。
現場へ着くなり、俺の『もしかして』は予想から確信へと変わる。
「………おや?」
現場へ着くと、そこにエレメリアンの姿はなく、一人の『メイドさん』の姿だけがあった。
メイドさんはレッド《俺》とブルー《愛香》の存在に気づくとロングスカートの端をつまみ上げ、丁寧な挨拶をしてきた。
「これは、テイルレッド様にテイルブルー様…。今日もお疲れ様です…」
「お、おう…。鍔姫(つばき)さん…だっけ?今日は来てたんだな」
実はここ最近、俺達とアルティメギルの戦いにある変化が起きている。
それは、謎の第三者による戦いへの介入だ。
何者かは分からない。
どうやら俺達以外にも、アルティメギルと戦う術を持っている『誰か』が居るらしく、鍔姫さんは自分のことをその人物に仕えるメイドだと紹介してくれた。
しかし、俺達はその『誰か』にまだ会ったことがない。
たまにではあるんだけど、俺達が現場に着くと既にエレメリアンの姿はなく、鍔姫さんだけが居るという状態が何度かあった。
「テイルレッド様」
「あ~……鍔姫さん、様付けなんてしなくて良いって。呼び捨てで構わないから」
「そうですか?では、お言葉に甘えて…。テイルレッド、我が主よりこれをお預かりしています。ツインテイルズが来たら渡すようにと」
渡されたのは属性玉《エレメーラオーブ》、属性は《太股》だった。
「あ、ありがとう…」
「では、私はこれにて…」
立ち去ろうとする鍔姫さんに俺は声をかける。
「鍔姫さん!」
「……?何でしょう?」
「…あのさぁ。鍔姫さんの『主』って人に会わせてもらえないか?アルティメギルと戦ってるっていうんなら、俺達の敵ではないんだろ?だったら一度くらい、話をしてみたいんだけど…」
俺の提案に鍔姫さんは首を横に振る。
「主は仰っておりました。自分は気まぐれで戦っているにすぎない、それでは大切なものを守るために戦っているツインテイルズに失礼だと」
「えっ?別に、そんなこと気にしなくていいのに…」
「…テイルレッド。貴女が気にしなくても、主は気にするのです。……ですが、そうですね。私から言えることは一つ」
鍔姫さんは口元で右手人差し指を立て、ウインクするように片目を閉じながら一言だけこう言った。
「……我が主は、貴女方のすぐ近くに居ます」
鍔姫さんは最後に俺達へ意味深な言葉を残し、再び優雅な挨拶をするとともに俺達の前から立ち去った。
俺達は周りに誰も居ないことを確認、変身を解き、お互いに顔を見合せ、再度、鍔姫さんが立ち去った方を向いた。
「私達のすぐ近くに居るって……。今の、どういう意味かしら……」
愛香はそう呟くけど、多分、鍔姫さんの言葉はそのままの意味で捉えれば良いんだと思う。でも、そうだとすると……。
(…一体、誰なんだ……?)
今はまだ短編扱いにしてるけど、連載扱いにした方が良いだろうか?ん~……悩む。