俺はテイルブルー《津辺 愛香》が大好きだ――っ‼   作:帆金 焔

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今回は、正義の味方も楽じゃない、そんな感じのお話。


男女が二人だけで映画に行く、それをデートと言わずして何と言おうか!?……いや、デートじゃないから。

 突然だが。津辺を映画に誘ってみた。

 決して、デートの意味合いにて誘ったのではない。……本当だからな?二度もフラれてるのに何を今さら、ってのもちゃんと分かってるから。

 

 ……すいません、嘘です。ぶっちゃけ、あわよくば、なんて思っておりました。

 

 津辺を映画に誘った理由だが、ちゃんとしたものもあるので聞いてくれ。

 日々、ツインテイルズとしてアルティメギルと戦っている総二と津辺。

 しかし、その評判は変わらない。

 テイルレッド《総二》は希望の女神などと呼ばれたり、テイルブルー《津辺》はやはり恐れられてたり。

 津辺だって一人の女の子。悪評が応えないわけがない。

 だから俺は考えた。津辺にも気晴らしが必要なんじゃないか、ってな。

 そんな折、運良く手に入ったのが映画のチケット。津辺が観たいと言っていた映画だ。

 そこで素直に自分の心に従い、津辺だけを誘うのも良かったのだがそれだと周りから変な詮索をされかねない。故に一度、総二とトゥアールも誘った。観たがっていたし、トゥアールは……まぁ、総二のおまけってことで。

 映画に乗り気だった総二だが何かに気づいたように考え込み、そしてトゥアール共々、映画の件は断ってきた。

 まぁ……よくよく考えたら分かることだけど、津辺と総二の二人が休んだら誰がアルティメギルと戦うんだよって話になるよな。

 

 さて、津辺と出掛けることになった日曜日。

 待ち合わせ場所の駅前にて、俺は本来の待ち合わせ時間より30分前から待っていた。

 

「……………」

 

 ……ヤベェ。俺、緊張してる。津辺と二人だけで出掛けるなんていつ以来だ?

 落ち着け、心守 華火…!これはデートじゃない…!そう!あくまで、津辺の気晴らしになればと思ってのこと!

 

「……早く来ねぇかな…」

 

 

 

 

 

 映画が10時上映の為、待ち合わせ時間はその30分前である9時30分。

 ただ今の時刻……10時5分なり。

 

「……仕方ない。午前中の部は諦めるか」

 

 

 

 

 

 11時になった。津辺の姿は未だ発見できず。

 

 場所も時間も間違いなく合っている。……津辺が約束をすっぽかす奴だとは思わない。

 

「もうちょい待つか…」

 

 

 

 

 

 12時30分。…腹へった。…しゃーない、津辺にはメール送っといて昼飯でも食べるか。

 丁度、近くにファミレスがあり、窓際の席なら待ち合わせ場所がよく見える。昼飯がてら、津辺を待つか。

 

 

 ファミレスに入ってすぐ、今時風の若そうな女性店員と目が合う。…何故か軽く笑われた。

 

(あ~……)

 

 きっと、中から俺の姿が見えていたんだろう。

 

 

 

 入って数分後、注文したナポリタンを食べながら、ふと、店内備え付けのテレビに目がいく。

 放送されていたのはお昼の情報番組。やはり、日曜でもツインテイルズの特集は欠かさないか、テレビ局。

 

(……………ん?)

 

 流れていた映像はツインテイルズとアルティメギルの戦闘。画面の右端に『LIVE』の文字が。

 

 

 

『LIVE』、つまりは生中継。つまりは、絶賛戦闘中。つまりは──

 

 

 

「……あ~。津辺、来ねぇわ、これ」

 

 

 

 

 

 結果を言うと津辺は結局、本当に来なかった。メールの返信さえ来ていない。

 でも、実際は『来なかった』のではなく『来れなかった』。メールも返信が『出来なかった』と言うのが正しいだろう。

 

「…………」

 

 津辺を怒る気は全く無い。その理由は二つ。

 一つは、単純に『惚れた弱み』って奴。

 もう一つは、津辺が『正義の味方 』だからだ。正義の味方ってのは何時なんどき、何が起こるか分からない。今日みたいなトラブルがあってもおかしくはないのだ。それに、俺達のために戦ってる奴を怒るなんて筋違いも甚だしいだろ?

 時間は……おっ?6時になった。俺も根気強く待った方だわ。………どおりで、店員の視線が痛かったわけだ。

 

「………帰るか」

 

 津辺と映画に行けなかったのは残念だが、諦めて帰るとするか。立ち上がった俺の耳に──

 

 prrrr

 

 携帯の着信音が届く。

 

「ん?津辺から?」

 

 ピッ

 

「もしもし?」

『…は、華火?あんた…、今、どこに居る…?』

「へっ?どこって、待ち合わせ場所──『……っ!?』──ってのは冗談で。待ち合わせ場所のすぐ近くにあるファミレスに居るぞ」

『っ!?ず、ずっと待ってた……?』

「はははっ……我ながら、根気強く待ってみた」

『っ!?………華火‼ごめん‼』

 

 おいおい。何で津辺が謝んだよ?

 

「ごめんって……お前が俺に何か悪いことしたってんなら謝るのは分かるけど、何かしたか?」

『したじゃん!約束……すっぽかした……』

 

 はぁ~……、アホかこいつ。『正義の味方としてのやるべきこと』と『ただのデート(だからデートじゃねぇよ)』、天秤にかけりゃあ、どちらが優先すべきことかなんて分かるだろうが。津辺、別にお前は間違っちゃいねぇよ。

 だから、俺が津辺に言ってやる言葉はこれが正しいだろう。

 

「津辺」

『…な、何?』

 

 

 

「……お疲れさん」

 

 

 

『えっ……?』

「お前が理由もなく約束を破るような奴じゃないのは分かってる。大方、出掛けようとしたんだけど急用が入って、その急用が忙しくなって、気づけばこんな時間、ってところか?」

『うぅっ……まさにその通り……』

「こんな時間になるまでって、余程のことだったんだろ?じゃあお前は悪くない、責めやしないさ」

『華火……。…うん、ありがとう。そして今日は本当にごめん。この埋め合わせは必ずするから』

「はははっ…期待せずに待ってるよ」

 

 津辺との会話を終え、携帯の電源を落とす。

 

「……ふぅ~……」

 

 津辺よ。正義の味方も楽なもんじゃないな。

 アルティメギルの連中も、少しはツインテイルズを休ませてやれってんだ。

 

「……さってと、帰るか」

 

 

 

 

 

〇〇〇

 

 愛香side

 

 

 ピッ

 

「……はぁ~………」

 

 華火との会話を終え、私は再び自己嫌悪に陥る。

 今の気持ちを表す言葉は『最悪』以外、何も思い浮かばない。

 

 

 私・そーじ・トゥアールは華火から映画に誘われた。乗り気だった、何せ観たかった映画だからだ。

 でも、そーじとトゥアールはそれを断る。

 仕方無いよね。私とそーじはツインテイルズ、両方が戦いを休むわけにはいかない。

 そして約束当日の今日、準備を終えて出掛けようとした私の携帯(トゥアルフォン)に着信が入る。

 

『すみません、愛香さん!』

「トゥアール?私、もう出掛けるんだけど?」

『そ、それがですね』

 

 いつものように、エレメリアンが出たという連絡だった。ただ、問題なのは出現場所。

 トゥアールから送られてくるデータ。

 赤い点がエレメリアンの反応。それが国内に一つ、国外に一つ。つまり、『二ヶ所同時』に現れたということ。

 

「なっ……!?」

『すみません、総二様一人では…』

 

 時計を見ると、まだ時間に余裕はあった。

 

「……あーっ、分かったわよ!今、そっちに行くから転送の準備しといて!」

 

 私は地下基地へ向かう。

 テイルオン!

 転送で現場へ。そーじが国内、私は国外の方へ。

 

 

「むっ…!?来たのはテイルブルーか。我としてはテイルレッドの方が良かったのだが…。まぁ、良い。我が名「オーラピラーーっ‼」えっ!?ちょっ──」

 

 ソッコー‼

 

「ま、待て!せめて名乗ら「エグゼキュートウェーブ‼」ぬぁぁぁぁーーー‼」

 

 エレメリアンを倒し、トゥアールへと通信を繋げる。

 

「こちらテイルブルー。エレメリアンは倒したわ、早く転送して」

『敵に名乗らす隙を与えないとは、相変わ「あ゛ぁっ?」い、いえ、何でも……。それでは、こちらに戻──』

 

 ビーッビーッビーッ!

 

 トゥアルフォンの向こうから聞こえる警告音。

 

「……トゥアール」

『………エ、エレメリアン、ですね…』

 

 だぁーーっ!メンドイ変態どもがーっ‼

 

 そこからは繰り返しだった。

 偶然か策略か。エレメリアンだったり、アルティロイドだけだったり。倒したと思ったら別の場所に、倒したと思ったらまた別の場所に。

 そして漸く終わり、『家に着いた頃には』あと数分で6時になろうという所だった。

 

「た、ただいま~……」

「あら。愛香、お帰り」

 

 恋香お姉ちゃんが出迎えてくれる。

 あぁ…、今日は変態どもの相手で疲れた…。早く、ご飯食べてお風呂に入って寝てしま──

 

「随分お疲れみたいだけど、『映画』の他にどこか行ってきたの?」

 

 お姉ちゃんの『映画』という一言に私の全身は固まり、嫌な汗が滲み出る。

 

「………え、映画…?」

「華ちゃんと映画行ってきたんでしょ?」

「…………わ…………」

「わ?」

「忘れてたーーーーーーーっっ‼‼‼」

 

 私はその場でorzな状態になる。

 

「お、お姉ちゃん…。今……、何時……?」

「えっ?何時って……あっ、6時になった」

 

 急いで華火の携帯へ。本当は願っちゃいけないんだけど華火が待ち合わせ場所に居ないことを願いつつ、出るのを待つ。

 

『もしもし?』

 

「…は、華火?あんた…、今、どこに居る…?」

『へっ?どこって、待ち合わせ場所──』

 

「……っ!?」

 

 まだ居たの?!待ち合わせ時間から九時間近くも経ってるのに?!

 

『──ってのは冗談で』

 

 じょ、冗談…?……はぁ~、び、びっくりさせないでよね。…まぁ、そりゃそうよね。さすがに、こんな時間まで待ってるわけ──

 

『待ち合わせ場所のすぐ近くにあるファミレスに居るぞ?』

 

 大して変わってなーーーーい!?!?

 

「っ!?ず、ずっと待ってた……?」

『はははっ……我ながら、根気強く待ってみた』

 

 待ちすぎでしょ!?なんてツッコミを心の中で入れると同時、こんな時間まで待たせてしまったことへの罪悪感で私の心は一杯になった。

 

「っ!?………華火‼ごめん‼」

『ごめんって……お前が俺に何か悪いことしたってんなら謝るのは分かるけど、何かしたか?』

「したじゃん!約束……すっぽかした……」

 

 連絡の一本でも入れれば良かったのに、私はそれすらしていない。

 

『津辺』

「…な、何?」

 

 責められても仕方無い。何を言われても文句を言えない私は、華火の言葉を待った。

 

『……お疲れさん』

 

「えっ……?」

 

 その一言は予想外を極めた。どうして華火は責める言葉ではなく、私を労うような言葉を言ったのだろうか。

 

『お前が理由もなく約束を破るような奴じゃないのは分かってる。大方、出掛けようとしたんだけど急用が入って、その急用が忙しくなって、気づけばこんな時間、ってところか?』

「うぅっ……まさにその通り……」

『こんな時間になるまでって、余程のことだったんだろ?じゃあお前は悪くない、責めやしないさ』

「華火……」

 

 そうか…。

 …分かってしまった。華火がどうして私を責めないのか…。もしも、今、私の頭の中に浮かんでいる『理由』が正しいのであれば、それが一番納得できる…。

 華火はきっと、『全部、知ってるんだ』…。私とそーじがツインテイルズであることも、多分、トゥアールの正体についても全部…。

 知ってて『知らないフリ』をしてくれているんだ…。

 

「…うん、ありがとう。そして今日は本当にごめん。この埋め合わせは必ずするから」

『はははっ…期待せずに待ってるよ』

 

 

 

〇〇〇

 

「はぁ~……」

 

 お風呂に入れば少しは気分が晴れるかと思っていたけど結局は晴れることなく、思い返せばやはり憂鬱な気分になってしまう。

 今日は本当、華火には悪いことをしてしまった。

 テイルブルーとして、変態ども《アルティメギル》と戦うと決めたのは自分の意志。そこに後悔はない、はずだった…。…しかし。だからといって、約束を反故にして良い理由にはならない。

 今回のことでほんのちょっだけ…、後悔してしまった感は否めないな…。

 

「……………」

 

 華火は私を責めなかった。それは私とそーじがツインテイルズだと知っているから。……でも、それだけなんだろうか?

 思えば、華火は昔からどんな時でも私の味方だったっけ…。今更ながらに、何でなんだろうと疑問に思う。

 

「……そう言えば……」

 

 前に一度、華火からコクられたことがあったっけ…。本人はあの後、笑って冗談だって言ってたけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トクンッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……えっ?あ、あれ?まさか……『そういうこと』…?だから、華火は私の味方で居てくれたの…?

 

「えっ…?えっ…?」

 

 

 

 

 えっ?あ、あれ?あの時の告白ってじょ、冗談……よね……?

 

 

 

 

 

 

 

 




愛香嬢が華火少年を振った理由は三つ。

1・単に、華火少年を幼馴染み以上に見ていなかった。
2・他に好きな人(観束 総二)が居たから。
3・華火少年の告白を、『本気の告白』だと気づいていなかったから。

以上!

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