俺はテイルブルー《津辺 愛香》が大好きだ――っ‼ 作:帆金 焔
以前の私だったら、華火が誰かとデートすると聞いたとしても「ふ~ん」ぐらいにしか思わなかっただろう。
それはそうだ。何せ、華火の想いを『冗談』としか思っていなかったのだから。
だけど……。華火が本当に私を好きなのだと知って、華火が戸塚さんとデートすると知ったときは正直、衝撃を受けた…。
何と言うか………そう。まるで、華火に置いてかれてしまったかのような、『寂しさ』に似た衝撃だった。
自分の気持ちもハッキリしてなくて、『答え』すら出せていない私が感情としてそれを抱くのは筋違い、と思えなくもないけど……やはり感じずにはいられなかった…。
そして…。私が受けた衝撃は、そこそこ面倒な事態を招いてしまった…。
〇〇〇
エレメリアンとの戦闘、私は今までにない違和感を感じていた。
しかし、考えても違和感の正体が分からない。
そんな私に違和感の正体を気づかせる切っ掛けを与えたのは、トゥアールからの通信だった。
『あ、愛香さん、どうしちゃったんですか!?』
トゥアールにしては珍しく、通信の向こうで焦っているように感じる。って、私?私がどうしたんだ?
『愛香さんのテイルギア、明らかに普段よりも出力が落ちてるんですよ?!』
はっ?一瞬、トゥアールが何を言っているのか分からなかった。
いや…………確かに、今日のアルティメギルはエレメリアンだけじゃなく、アルティロイドまでしぶといなぁとは思わなくもなかったけど…。私が普段通りの力を出せていない?そんなはず──
「あるわけないで──」
ウェイブランスでアルティロイドを薙ぎ払う。それは普段なら、例え20や30で束になってこようが雑作もないことだ。だから──
「────えっ?」
数にしてたった10の、強化もされてないようないつもと同じアルティロイドに止められたときは信じられなかった。
「「「…モ、モケッ?」」」
止めた方も、自分達がしたことに驚いているらしい。
い、いや………待って待って!?と……止められたって…ウェイブランスがアルティロイドに止められた…?!
(くっ……!?何の──)
冗談よっ!?
私はウェイブランスを持つ手に力を込め、振り抜く。今度は薙ぎ払えた。
「オーラピラーーー!!!」
透かさずエレメリアンにオーラピラーを放つ。
「
エグゼキュートウェーブ‼
叫ぶ私の手を離れ、水を纏ったウェイブランスは真っ直ぐエレメリアンへと突き進む。
今回のエレメリアンはアルマジロ型のエレメリアン。属性は《豊満》。……要はデブ専らしい。
ウェイブランスに貫かれる自分を想像したのか、苦虫を噛んだような表情を浮かべるも悪あがきと言わんばかりに体を丸めて防御をとるアルマジロギルディ。
言わせてもらおう、無駄だ。
アルティロイドに止められたのは単なる偶然、そう何度もあんなことが起こってたまるもんか。
自分の心に言い聞かせる。……でも正直なことを言うと、本当は『原因』に心当たりがある。だから───
ガキィィィンッッ‼
ウェイブランスが弾かれたのを見て、『あぁ、やっぱり……』と思ってしまう自分が居たことに、それほどの衝撃は受けなかった…。
「…………えっ?…マ、マジか…?」
自分がしたことに自分で驚くアルマジロギルディ。その表情はやがて勝ち誇ったようなものへと変わり、私を指差しながら高らかに叫ぶ。
「……フ……フフッ…………ハーッハハハハハッッ!!!貴様に何があったかは知らんが叫ばせてもらおう‼…テイルブルー、敗れたり‼」
そ、そんな……。
「さぁ、テイルブルー!まずはお前からだ!その細い身体を我が理想の「
レッドが私を飛び越え、ブレイザーブレードを降り下ろす。
「グランドブレイザーーーーー‼」
炎一閃。レッドによる火炎の一太刀にアルマジロギルディは倒される、かに思われた。
「甘いわっ‼」
ギュルルルッッ‼アルマジロギルディはその場で高速回転。レッドのグランドブレイザーまで弾かれてしまった。
「クククッ……!覚悟するがいい…!少女は丸く肥えてこそ映えるというもの‼」
とか言いながら、弾丸のように突っ込んでくるアルマジロギルディ。
私は全力で戦えるような精神状態じゃない。レッドの手にはブレイザーブレードが握られていない。グランドブレイザーが弾かれた際、その勢いがレッドの手からブレイザーブレードを弾いてしまったからだ。
ブレードを取りに行こうにも、アルティロイド達にそれを阻まれる。
情けない……。この状況、明らかに私のせいだ…。一体、どうすれば──
「……大丈夫ですか、お二方」
聞き覚えのある声。いつまで経っても来ない衝撃。
私は瞑ってしまっていた目をゆっくりと開ける。
私とレッドの前に現れたのは一人の女性。名前だけしか知らないメイドさん。
驚くことに、私達と大差ない細い腕をしているにも拘わらず、片手だけで軽々とアルマジロギルディの突進を止めている。
ギュルルルッッ‼ギュルルルッッ‼アルマジロギルディがどれだけ力を強めようとも、その細腕は全くビクともしない。
アルマジロギルディは回転を止め、私達から距離を取り、体勢を立て直す。
「くっ……、誰だ、貴様!?」
アルマジロギルディの叫びにメイド・鍔姫さんは優雅な挨拶を返す。
「とある方に仕える、メイドの鍔姫と申します」
「メイドぉ?……だが、この俺の突進を止めるとは貴様、ただのメイドでは──って、聞けーーい!?」
自分は自己紹介をしておいて、アルマジロギルディの事は無視する鍔姫さん。その鍔姫さんは、私達から離れた位置に突き刺さっているブレイザーブレードのもとへ歩み寄る。
ブレイザーブレードを引き抜き、それを二三度振る。まるで、自分の手に馴染むかどうかを確認するかのように。
その動作が終わり、鍔姫さんは呟く。
「………
と──。
瞬間、ボォォォッ!と音を立てブレイザーブレードから炎が吹き出た───…って、ちょっ─!?
「な、何で鍔姫さんがっ?!」
鍔姫さんがブレイザーブレードを扱えた事実に、誰もが驚かずにはいられなかった。
衝撃は更に続く。
決着は一瞬だった。
アルマジロギルディと鍔姫さんとの空いていたはずの距離、それが一瞬でゼロになる。
誰も反応できなかった。気づいたときには既に、鍔姫さんはブレイザーブレードの刃をアルマジロギルディの喉元に当てていたのだ。
「……去るなら斬りません。ですが、まだ戦うというのであれば斬ります…」
「ぐっ……!?」
「相手との力量の差を理解し、適切な判断を下すのも戦士としての技量の内かと存じますが…?」
「ぐっ……………くそっ!?…………全員、撤収‼」
「ブルー、大丈夫か!?」
アルマジロギルディ達が去った後、私を心配してレッドが駆け寄ってくれた。
私を心配してくれるのは嬉しいけど、今はレッドの顔を見てそれに応えることは出来なかった…。
「…ごめん……。迷惑…かけた……」
「め、迷惑なんかじゃないさ。気にするなって。人間、誰しも調子の悪いときがあるものさ」
レッドの慰めも今はちょっと、逆に辛いものがある…。
「ごめん………ちょっと、一人になりたい………」
「お、おう……」
私は
〇〇〇
レッド《総二》side
「ごめん………ちょっと、一人になりたい………」
ブルーの言葉に、俺は返事をすることしかできなかった。
遠ざかるブルーの姿を見て、同時に心配になってくる。何が原因かは分からないけど、テイルギアに支障が出るような不調…。
……こんな時に助けにならずして何が幼馴染みか、何が仲間か。
しかし、ブルーの後を追おうとした俺はそれを鍔姫さんに止められた。
「彼女のことは私にお任せを…。貴方に話しづらいことでも、女同士である私になら少しは心を開いて頂けるかもしれません」
こういう場合は同世代の俺よりも大人な鍔姫さんに任せる方が得策か…、少し迷いはしたものの、俺は鍔姫さんの言葉に従うことにした。
「……分かった。じゃあ、ブルーのこと、頼む」
「はい、承りました」
鍔姫さんが一瞬で姿を消す。後に残ったのは地面に突き刺さったブレイザーブレードだけだ。
「ブレイザーブレードが使えた時点で普通の人間じゃないとは思ってたけど……しゅ、瞬間移動まで出来るのかよ…。鍔姫さんがあんなならきっと、鍔姫さんの『主』って人も只者じゃないんだろうな……」
鍔姫さんにブルーを任せた以上、俺に出来るのは信じて待つだけ。
秘密基地へ戻ろうとしたところで、
「……………………ん?」
不意に頭を過った鍔姫さんの言葉に、俺は違和感を感じて立ち止まった。
「ん?……あれ?」
《貴方に話しづらいことでも、女同士である私になら少しは心を開いて頂けるかもしれません》
「…ん?ん~?」
《貴方に話しづらいことでも、女同士である私になら少しは心を開いて頂けるかもしれません》
あれ?変身してるから俺って今、一応、『女同士』の扱いになると思うんだけど………………んん~~?
鍔姫さんは普通のメイドさんじゃありません!