俺はテイルブルー《津辺 愛香》が大好きだ――っ‼ 作:帆金 焔
さて、今回は華火少年と彩加嬢のデート(?)回。出だしはまず、華火視点で始めて愛香視点と交互にやっていこうかなと考えてます。
あと、華火少年の過去をちょいとばかし書いてます。
ちょい役登場人物はアニメ、カバネリより生駒と無名(穂積)の二人。この世界では義理兄妹。
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彩加嬢の私服モデルです。
夏休みを翌週に控えた中等部二年の夏。
俺はその日、人生最大の大勝負に出ようとしていた。
大勝負も大勝負、俺の人生のその後を左右すると言っても過言ではなかろう大勝負だ。
男としてのプライドがある。基本、勝負事からは逃げたくない。
………だが!
その勝負だけは話が別だった。
心臓は早鐘を打つかの如く苦しいくらいに俺の中で鳴り響き、脚は震えて前に進もうとしてくれない。
『恐怖』と似て非なる感情が俺を支配し正直、その場から逃げ出したい気持ちで一杯だった。
「──…や、やっぱ無理無理無理無理‼」
背後に居た、当時のクラスメートとその義理の妹が同時に溜め息を吐く。
「はぁ~………。……あのねぇ、華火兄ぃ。ここまで来てそれは無いでしょ?今さら後戻りなんて出来ない、前に進むしかないの。………愛香さんのこと、好きなんでしょ?諦めきれないんでしょ?」
そうなんだよ…。俺はどう考えたって、やっぱり津辺のことが好きで、諦めきれなくて…。
二人に相談して覚悟を決めたんじゃないか…!
「……ほら。愛香さん、もう来てるから」
津辺には事前に、屋上に来てもらうよう頼んでいた。
ほんの僅かな隙間ができる程度に扉を開けて外を覗けば、そこには既に想い人の姿が。
心守 華火、想い人への告白という一世一代の大勝負。
「……大丈夫だって。華火兄ぃの気持ちは真剣なものだから、必ず愛香さんにも届く。ねっ?兄貴」
「おう。……心守、お前の気持ち、津辺にぶつけてこい。そしたらお前は、自分を誇れる自分になれる」
「二人とも…。…………おうっ!」
二人が俺に向かって突き出した拳に、俺も自分の拳を合わせる。
二人のお陰で、今度こそ覚悟が決まった。
さぁ、行こうか…!
一人佇む津辺に声をかける。
「あ、愛香……!」
「──あっ、華火?遅いわよ」
「わ、悪いな、待たせて」
「で?話って?」
「あ~………えっと…………」
告白の時のことは、今でも鮮明に思い出せる。脚が震えていたこと、緊張のあまり喉が乾き始めていたこと、心臓がバクバク鳴っていたこと。
怖い、逃げたい。……でもそれ以上に、やっぱり諦めたくない…!
「……愛香、大事な話があるんだ」
「ん?」
勇気を振り絞って、俺は口を開いた。
「愛香、初めて会ったときからずっと好きだった!俺と付き合ってくれ!」
言った。遂に言ってしまった。
幼馴染み以上の関係になりたい。
告白する勇気と、ただの幼馴染みを止める覚悟と、色んなもの全部を込めて放った俺の想いは──
「えっ?無理」
──たった一言で打ち砕かれた。
「……えっ……?む……無理……?」
「うん、無理」
「ほ、本当に………無理……?」
「うん、無理」
「そ…………そっか…………」
全く予想できなかったというわけではない。………むしろ、それしかないとさえ思っていた。ただ、考えないようにしていただけ…、覆らないことから目を背けていただけなんだ…。
こいつはもう一人の幼馴染みが好きで、俺のことなんて一度も、恋愛対象として見てくれたことなんて無いって分かってたんだ……。
だから……、
「…………じょ…………………冗談だよ冗談!」
俺は
「はははっ!い、いやぁ~~、お前を驚かそうと思ってさ!」
「でしょうね」
「しかし、失敗に終わっちまったか…………チッ…!もうちょいインパクトのある奴を考えりゃ良かったぜ…!」
「で?話ってそれだけ?」
「お、おう。…じゃあ俺、戻るわ…!」
足早に津辺から離れ、俺は中へと戻る…。
「は、華火兄ぃ……」「心守……」
「……生駒、穂積ちゃん………相談に乗ってくれてありがとな………でも、悪ぃ…………。……………いやぁ~~、参った参った!見事にフラれちまったぜ!」
「「………………」」
「──ふぐっ!?何故か急な腹痛が!お、俺、保健室行ってくるから、先生には適当に言っといてくれ…!」
「お、おう……」
勿論、腹痛だなんてのは真っ赤な嘘だ。
………男が泣くとこなんざぁ、他人に見せるもんじゃねぇさ…。
〇〇〇
「…………………あぁ~、クソッタレ…」
正直、寝覚めは最悪………の一歩手前ぐらいだろうか。
フラれた時のことを夢に見るとは縁起が悪い。
「…………………」
夢に見たせいか、つい考えてしまう…。
もしもあの時、『無かったことにする』ことを選ばなかったら…。…俺達の関係は今と違うものになって──………いや、それは無いか。結果はきっと同じだ…。遅いか早いかってだけの違いだな…。
「……さて、起きるか」
布団を足ではね除け、伸びをする。
軽快に起き上がってから服を取りに行こうとしたところで、
「ん?」
服は一式、既に机の上に用意されていた。
「……相変わらず優秀なことで」
気配を感じさせず仕事をこなす我が家の優秀なメイドさんに感嘆しつつ、俺は着替えを始める。
「…………ん?」
ふと意識が向いたのは、着替えの横にあったメモと何か。
《必要とあらばお使いください》
そう一言が書かれていたメモ。次いでもう一つのものを手に取る。
薄い袋に………中身は……これ、ゴムか何──って、ゴ、ゴムっ?!
「─────っ!?」
知識としては知っていた。
自分が手にしている物を理解した瞬間、俺はそれを床に叩きつける。
こんなモン、誰が使うかボケーーーッ‼‼
「はぁ…はぁ…はぁ……」
《小粋なメイドジョークです》、メモの裏にそう書かれていた。
「小粋でも何でもねぇ~……」
あの人には今日の予定、ちゃんと伝えてあんのに……何で余計なことするかなぁ~…!
「………はぁ~。アホらしい………さっさとするか…」
中断していた着替えを済ませ、俺は部屋を出た。
リビングに行くと朝食も既に用意されていて、気配はない。日課の散歩だろう。
テレビを点けて朝飯を食べる。
食べ終わって食器を洗い、時計を見ると待ち合わせまではまだ余裕があった。
「………………………行くか」
遅刻するよりかは何倍もマシ。まぁ、そもそも。何であっても余程の理由がない限り、男が女を待たせるなんざぁ論外この上ねぇよ。
俺は戸締まりを確認し──と、ヤバいヤバい。何があるか分からないから一応、アレも持っていこう。
最後に玄関の鍵を掛けて待ち合わせ場所へと向かった。
〇〇〇
「……まぁ、来てないのは当然だわな」
津辺とのデートの待ち合わせ(だから違ぇよ、アレはデートにすらなってないだろうが)にも使った
今回は待ち合わせ時間10時。現在の時刻……まだ、8時を5分しか過ぎてねぇよ。
「………俺の馬鹿。律儀に早く来すぎだ」
念のために暇潰し(ラノベ小説)持ってきて正解だったな。
〇〇〇
集中していたせいだろう。待ち合わせ時間になっていたのも、待ち人が来ていたのも気づかなかった。
「こ、心守くん─」
待ち人、戸塚 彩加。ほんの少し息が上がってるように見える、もしかして走ってきたのか?
「──おっ?悪い、戸塚。もう時間になってたか?すまん、気づかなかったわ」
「ううん、気にしなくて良いよ。えっと……………そ、それじゃあ、今日はよろしくお願いします」
「おう」
読んでたラノベをポシェットに仕舞い、歩き出そうとした所で、戸塚が自分の腕を俺の腕に絡めてくる。
普通なら美少女との腕組みなんて男なら心踊ろうものであるが、
「…………平塚先生に何て言われたんだ?」
俺の質問に、戸塚はバツが悪そうに答える。
「……え、えっとね……。その………心守くんをオトす勢いで行けば……本番成功は間違いないって………」
……………………………………はぁぁぁ~~~。戸塚に何吹き込んでんだ、あの人は。
「……今日はそんなんが目的じゃないだろうが。っつーわけで、腕組みは却下」
「だ、だよね」
腕組みを解き、改めて俺達は歩き出した。
(それはそうと………)
まさかとは思うけど…。
原作小説の方では地名などの名前は出ていなかったので、駅名はオリジナルです。