作戦決行を明日に控え、真島は自室で酒を飲んでいた
「月見酒もええもんや」
すると、自室の扉を叩く音が聞こえてきた
「なんや?人がせっかくいい気分で飲んどるっちゅうのに」
真島は酒を片手に扉を開けると、暗い顔をした龍驤が立っていた
「なんや、お前まだ寝てへんのか、良い子は寝る時間やぞ」
真島は冗談交じりにそう言うと、龍驤は小さな声で
「吾朗ちゃんは怖ないか?」
その声はいつも元気で勝ち気な龍驤からは想像もできないほど弱々しかった
「何がや?夜のトイレか?」
「そんなわけないやろ!明日戦いが待ってるんやで?怖ないん?」
真島はため息をついた
「アホ抜かせ、何で俺がビビらなあかんねん」
「せ、せやんな、吾朗ちゃんは関係ないもんな」
悲しそうな目で俯く龍驤に、真島は一層大きなため息を吐いて、酒を机の上に置いた
「ホンマにアホやな、お前らの事を信用しとるさかい、ビビる理由が無いっちゅうとんねん!」
「吾朗ちゃん・・・」
「自分のガキ共を信用できひんで、何が極道や、何が提督じゃ!わしは真島組組長兼提督じゃ、わしはお前らを信用して、明日戦地に送る、それだけや、何もビビる要素ないやろ」
真剣な眼差しの真島を見て龍驤はクスッと笑った
「全く、とんだ狂犬やな」
「あぁ?笑うとこちゃうやろが」
「いや、これはうちの悩みがちっぽけやなって、思っただけや」
龍驤は目が覚めたかのように爽やかな顔で
「うちも、吾朗ちゃんや、皆を信じてる。これだけで十分やな」
「はっ、柄にもなく臭いこと言うてもうたわ、わしはこのまま飲み直すけど龍驤もどうや?」
「明日に備えて寝るわ、酒は勝ってから飲むことにしてんねん」
「そうか、ほなわしもこれまでにして、寝るとするかの」
「吾朗ちゃん、明日の勝利の美酒、楽しみにしてるで」
龍驤は元気で無邪気な笑みを見せてピースした
「おう」
二人はそんな約束を立てて、眠りについた
翌日
「おっし、お前ら!準備はできとるやろうなぁ!」
朝八時、全員司令室に集められた
「当ったり前やろ!」
「私はいつでも行けるわよぉ~」
「龍驤の姉御直伝の戦い方の試し台として、使わせてもらうぜ」
「暁型響、準備万端」
「テ、提督・・・私モ、参加シテイイノカ?」
ヲ級は不安そうな眼差しでそう言った
「お前の身内の事やろ、せやったら、お前が尻拭いせなあかんやろ」
「ウ、ウム・・・」
「それに、一気に攻めるとはいえ、裏口から行くようなもんや、そない身構えんでもええやろ」
「だが、深海棲艦が凶暴化しているらしい、嘘か真か絶海鎮守府の艦娘も何体かが手負い状態とか」
「ほぉ、そらええわ、面白なってきたで」
「久々の戦闘、楽しませてもらうわぁ」
「仲間トハ言エ、暴レ回ッテイルノナラ、私ガ止メナケレバナ」
真島はニヤッと笑い
「第一艦隊出撃じゃ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
威勢の良い艦娘の声と共に、戦地へと向かった(ホッポはお留守番)
「流石は辺境鎮守府と言った所か、波がとても穏やかだ」
「索敵してるはずが遠征してるみたいねぇ」
「呑気なもんやなぁ、少なからずここは戦地やいつ襲われるか・・・」
その時、龍驤は物凄い反射神経で飛んできた砲弾を避けた
「危ないなぁ、物騒な物飛ばしてきおるわ」
楽しそうな笑顔を見せながら飛んできた方向に顔を向けた
「龍驤の姉御!大丈夫っすか!」
「極道みたいやから止めて欲しいんやけどなぁ、まぁ、怪我はないわ。でも、敵さんが来てるみたいや」
その時、龍驤の表情が一変、オモチャを与えられた子供のような笑みを浮かべ
「しゃっ!お前ら、うちが先行するから、後方支援よろしく頼むでぇ!!」
そう言って、目にも止まらぬ速さで飛び出した
「ほれほれ、どうした!遅すぎて眠ってまうで!!」
空母とは思えないその機動性に深海棲艦たちは成す術なく落とされていく
「さ、流石は戦場の鬼、空母とは思えないな」
響は圧倒されただ観察し続けた
「さっ、私たちも」
「戦闘ニ参加スルカ」
龍田とヲ級は息ピッタリに飛び出し、龍驤の後方から援護射撃を開始した
「ぎゃっはははは!!」
龍驤は敵を無邪気な笑み撃墜していく
「たまらんのぉ!頭が沸騰しそうや!!」
狂気とも言えるその動きは誰に求めることはできない。その時、全員はそう思っていた、しかし
「!!」
ある一機の深海棲艦に艦載機飛ばそうとした瞬間、龍驤の手が止まった
「お、お前は!・・・」
龍驤は動揺し後退りした
「龍驤!大丈夫カ!」
ヲ級が龍驤の側によると、龍驤が小刻みに震えていることがわかった
「龍驤?」
「な、何でお前がおるんや、あの時、確かに沈んでいった筈・・・」
「オ久シ振リデスネ、龍驤姉サン」
「加賀・・・」
深海棲艦と化した加賀は朗らかに笑った
「疑問ニ思ッテイルノデショウ、無理モナイ、最愛ノ妹分ガコンナ風ニナッテイルノデスカラ」
「何があったんや、他のみんなは」
「第二部隊、第三部隊、奇襲隊、色々ナ形デ今モナオ、生キテイマスヨ」
加賀は指を立てて数えるように言った
「加賀、今でも遅ぉない、こっちに戻って来てくれへんか?」
龍驤は弱々しく悲願するように願った
「残念デスガ、無理ナ相談デス」
「何でや、吾朗ちゃんやったら、話せば・・・」
「ソウイウ問題デハ無イノデス」
「せやったら、どうしたら戻ってきてくれるんや?」
「姉サンナラ、ドウシタライイノカ分カリマスヨネ?」
加賀はニヤリと笑った
「加賀、ええんやな?」
「答エル必要ハ?」
龍驤も少し嬉しそうにニヤリと笑い
「いや、無いな」
龍驤と加賀は一歩前に出た
「久々にやり合うんや、思いっきり楽しもうや」
「スグニハ死ナナイデ下サイネ、姉サン」
「行くでぇ!加賀ぁぁ!!」
「龍驤ォォ!!」
掛け声とも言える二人の声は大海原を駆け巡った
「な、なんと言うスピード、本当にあの二人は空母か?」
響は背後から観察を続けていた
「どうした加賀!そんなんじゃうちに当たらへんでぇ!」
「マダマダァァ!」
目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出す二人は、まるで本物の姉妹が戯れ合っているようだった
「うらぁぁ!」
艦載機を飛ばし、加賀が一瞬隙を作った瞬間に龍驤が後ろ回し蹴りを当て、加賀が吹き飛ばされた
「ッツ!」
「加賀、諦めてくれ、うちにお前を沈めるなんてでけへん」
「ソンナノ、私ダッテ、無理ニ決マッテルジャナイデスカ・・・」
加賀は涙を流しながら立ち上がった
「互イニ、互イヲ思ッテ手加減シテルンデスカラ」
「加賀、教えてくれ、何がお前にこんなことをさせとるんや、教えてくれ!」
龍驤の怒りの表情で加賀に聞いた
「ソレハ・・・!」
加賀が口を開こうとしたが、突然何者かの腕が加賀のお腹を貫通した
「ガハッ!」
「加賀!!」
加賀の背後には男が立っていた
「ナ・・・デ・・・」
「余計な事は喋らなくていい」
男が腕を抜くと、加賀は崩れ去るように倒れた
「加賀!大丈夫か!」
龍驤は加賀の方へ駆け寄った
「龍・・・驤姉サ・・・」
加賀の声が少しずつ小さく消えていく
「加賀が来たとき、何となく予想はしとった、せやけど、何でこないなことするんや」
龍驤は涙を流し男を睨み付けた
「桐生!!」
「龍驤、お前に再開できるこの瞬間を待っていた。久しぶりだな」
桐生は体の所々が深海棲艦のようになっていた
「桐生、あんたはそんな真似するような奴や無いやろ?何でなんや」
「この戦争を終わらせるために必要な事は何か分かるか?」
「はぁ?何を・・・」
「答えは無力化だ。艦娘と言う名ばかりの兵器があるから戦争は続く、俺はその全てを終わらせるために艦娘も鎮守府も深海棲艦も全てを破壊し無力化する」
「まさか、深海棲艦の凶暴化も・・・」
「全ては平和のためだ」
龍驤は桐生のその言葉に絶句し、膝をついた
「龍驤ちゃん!」
龍田達が駆け寄るが、龍驤はまるで死んだかのようになっていた
「龍驤の姉御を守りながら後退するぞ!」
天龍がそう言って、桐生に標準を合わせようと顔を向けると
「お前たちには沈んでもらう!」
一瞬で天龍との間を詰めて顔面に拳をぶつけ吹っ飛ばした
「天龍ちゃん!」
「よそ見している場合か?」
桐生はよそ見をしている龍田を裏拳で殴り飛ばそうとするが、ギリギリで避け間合い開けた
「女の子に手を上げるなんて紳士らしく無いわねぇ」
「駆逐すべき相手に感情移入するわけがないだろう」
龍田は龍驤たちを見て
「ヲ級ちゃん、天龍ちゃん、響ちゃん!龍驤ちゃんを連れて戻って!桐生さんは私が相手するわ」
龍田は桐生に威嚇射撃で牽制し間合いを詰めていく
「龍驤、早ク逃ゲルゾ!」
ヲ級が龍驤の肩を持ち後退し始めた
「お前一人で倒せると思うか?」
「さぁね!」
龍田は間合いを詰めて、桐生の顔を目掛けて回し蹴りをはなった
「ふっ」
桐生は蹴りが向かってくるなか、鼻で笑い、一瞬で龍田の懐へ入ると
「カウンターほど威力のある技はない」
そう言うと、お腹目掛けてマグナムにも匹敵するほどのパンチで龍田を吹き飛ばした
「ゴハッ!?」
龍田は何が起きたのか理解できないまま海の中に落ちた
「龍田!」
天龍はヲ級に龍驤を任せて龍田の元へ走った
「龍田!大丈夫か!?」
沈みかけていた龍田を抱き上げた
「てめぇ、舐めた真似しやがって」
「ほぉ、そいつを庇いながら戦うと言うのか、俺と」
「庇う必要はねぇ」
そう言うと、ポケットから小さなカプセルのようなものを取り出し、水面につけるとボートになった
「ゆっくり休んでいてくれ」
天龍は龍田をボートに乗せて桐生を睨み付けた
「さて、やらせてもらおうか」
「その必要はないで」
天竜は驚き振り向くと、龍驤の姿があった
「龍驤の姉御!?」
「悪かったな、ちょっと寝てたわ」
「ふん、お前もやる気か?」
「うちの妹に手をかけた礼をさせてもらわなな」
龍驤は指をポキポキ鳴らしながら歩み寄った
「姉御!俺もやるぜ!」
「さっきまでは面食らったが、もう、遅れはとらない」
「仲間ノ仇ヲ取ラセテモラウ」
「4体1数では圧してるで」
天龍、響、ヲ級は龍驤の横に並び構えた
「面白い、来いよ。まとめて面倒みてやる」
桐生も構えながらそう言った
「行くでぇ!桐生!」
四人一斉に飛び出した
「はぁぁ!」
最初に動いたのは天龍だった
(まずは、牽制!)
天龍は近付きながら砲撃し、桐生の回りに大きな水飛沫を上げた
「行け!」
「言われなくても!」
次に、響が視界を隠された桐生に、当たるギリギリの場所に砲撃し動きづらくした
「響!」
「了解!」
ヲ級が響を呼び、振り向くと、ヲ級が響に走って行った
「行くぞ!」
響の手を踏み台に上に大きく跳躍し、桐生の真上から艦載機を飛ばした
「ほぉ、考えたな」
ドグオォン!!
艦載機に爆弾を乗せて、桐生の近くで爆発させた
「ふふ、私が怖いk」
「まだまだやな」
「へ?」
「小細工程度で死ぬんやったら、うちが100回殺してるわ」
龍驤が飽きれながらそう言うと。ヒュンッと何かが水飛沫の中から飛び出してきた
「厄介な相手やで」
そんな呑気なことを言いながら桐生の蹴りを紙一重で避けた
「桐生ちゃん、体鈍ったんとちゃうか?」
「お前こそ、ガキ共の指導が成ってないじゃないか?」
「まさか、あれは天龍のアドリブや、うちのがあんなんな訳無いやろ」
龍驤は天竜の方へ顔を向けて少し微笑んだ
「お前だったらどうするんだ?」
「うちやったら、こう!」
龍驤は桐生に向かって飛び出した
「まぁ、聞かなくても分かっていたがな」
二人は目にも止まらぬ肉弾戦を繰り広げている
「天竜、行かなくていいのか?」
「響、龍驤の姉御は捨て身の戦術をやり遂げようとしてるんだ、黙ってみてよう」
桐生と龍驤は一進一退の攻防戦を繰り広げている、普通に考えれば、改造されたとはいえ、ただの人が艦娘、しかも、空母相手に傷ひとつ付けられるはずがない
「流石、全身凶器って言われるだけはあるな。せやけど!」
龍驤は桐生の拳を避け、その腕にしがみつき十字固めの形に入った
「艦娘、特に空母の力は、例え桐生ちゃんでも容易に解けるほど弱ない、関節技となれば耐えるので精一杯やろ!」
龍驤の言う通り、桐生はただ十字固めを食らわないように耐え続けた
「今や!」
龍驤が大声で合図すると
「了解だ!」
天龍が構えた
「ま、待て!このままでは、龍驤も巻き添えに」
響が急いで止めるが、天龍は真っ直ぐ前を見つめ
「安心しな、この程度で死ぬようなタマじゃない」
「クソッ!死んだら承知せんぞ!」
三人はほぼ同時に発射した
「桐生ちゃん、サヨナラや・・・」
龍驤は着弾する一歩手前で拘束を解き、桐生の肩を踏み台にし飛び上がった
「堪忍や、桐生」
龍驤はポツリと呟き艦載機飛ばした。そして、その海域に大きな爆音が轟いた、龍驤は水面に着水し、ただ何かを見つめていた
「悪い夢なら、覚めてほしいけどな」
目に涙を一杯に貯めて、泣きそうなところをグッと堪えた
「何で・・・」
爆発と共にできた煙の中から
「誰も・・・」
その化け物は出てきた
「助からへんのや」
飛び出た化け物は龍驤ではなく、その後ろにいた天龍達を狙った
「なっ!この化けも・・・」
言い切る前に、天竜は水面に叩き付けられた、しかも、爆発と同じくらいの水飛沫を上げて
「やめてや、桐生ちゃん」
次に、響を手刀からの裏拳、ヲ級を肘打ちで沈めた
「やめて、なぁ」
化け物は、龍驤に飛び込みながら拳を顔に向けて放った
「ええ加減にしとけや」
龍驤の後ろから、蹴りが飛び出した、化け物を吹き飛ばした
「わしのガキ共に何さらしとんじゃ、ワレ」
「ご、吾朗ちゃん!?ど、どうしてここに!」
「明石に特別製の人間用水面歩行機を用意させたんや」
「いつの間に・・・」
「そんなんはええ、龍驤、お前は後ろの連れて鎮守府に戻れ」
「で、でも!吾朗ちゃんは!?」
「あいつの遊び相手はわしや。さっさと行けや、手遅れになってまうやろ」
真島はそう言うと、ゆっくりと歩き出した
「わ、分かった。絶対に無事で帰ってきてや!桐生ちゃんも」
「安心せぇ、嶋野の、いや、東城会の狂犬、真島吾朗をなめたらあかんで」
真島は真っ直ぐ前に進み。龍驤は天龍達の元へ駆け寄った
「大丈夫か!?」
「あ、姉御。俺は大丈夫だ、他のみんなを」
天竜はフラフラと立ち上がった
「歩けるか?」
「大丈夫だ、俺は龍田と響を運ぶから」
「うちはヲ級を、やな」
二人は倒れている三人を連れて鎮守府に向かった。その最中、龍驤は見た、真島と桐生の闘いを、真島の狂犬のような表情を
何とか鎮守府に戻り、応急治療をしていた
「吾朗ちゃん、大丈夫やんな」
「兄さんなら大丈夫だ、信じて待とう」
不安で一杯な二人はただただ信じて待つことしかできなかった。そんな時
ピーピー
無線機に通信が入った
「吾朗ちゃんか!」
龍驤は通信に出るなり大声でそう言った
「うっさいのぉ、大声だすなや。桐生は片付いたわ。回収に来てくれ」
龍驤は安堵と共に涙をこぼしながら
「了解!!」
真島の元へ走った
「おう、早いな」
「ええやん、それより、怪我してへん?」
「安心せぇや、ちょっと小突かれただけや、さっさとこいつ連れて帰るで」
「うん」
二人は帰り道を歩いていた。すると、真島が突然笑いながら
「ホンマにここは飽きへんな、おもろいことばっかや」
「はは、流石やな、さしずめ「鎮守府の狂犬」って感じかな」
「そらええわ、二つ名は多いに越したこと無いし。おっしゃっ!鎮守府まで競争や、負けたら腹筋100回や!」
「はぁ!?ま、待ってこの!」
一応これで終わりです
ただ、不完全燃焼なので続編をのんびり書きます
次は書けてなかった暴走した深海棲艦の話です
興味があったらまた読んでください