龍驤に案内された場所は施錠された扉の前だった
「ここに何かあんのか?」
「まぁ、ただ、絶対に他の艦の子には言わんでな。流石にバレたら色々ややこしなるから」
真島と龍田は顔を見合わせた
「ほな行くで」
固く施錠された錠前を外すとゴゴッと重い音を立てて扉が開いた
中には牢屋があり、牢屋の中には猿ぐつわを付けられ、四肢を鎖で繋がれた深海棲艦が力無く佇んでいた
「おい、何や・・・これ・・・」
二人は思わず絶句した、そして、龍驤がここの存在を隠そうとする理由が一瞬で理解できた
「この深海棲艦はな・・・元々は
龍驤は牢の前に立ちまるで我が子を見る母のような目でそう言った
「この子はな口は悪いけど仲間思いで、時には自分の身を挺してまで助けようとするええ子やねん」
その場に座り深海棲艦と化した曙に手を伸ばすと
「・・・!」
さっきまで大人しかった曙は急に暴れ出した
「あぁ、ごめんな、ご飯がまだやったな、ほら落ち着いてゆっくり食べや」
ボロボロの皿の上に栄養のある食料渡しに中に入り、猿ぐつわを外し手渡しで食べさせ始めた
「お、おい!大丈夫なんか!?」
「他にも助けられるはずやった子がおってん、けど、うちが無能やから結局こんな形でしか助けられへんで・・・」
龍驤は涙ながらに続けた
「第一艦隊旗艦の赤城、第二艦隊旗艦の神通、第三艦隊旗艦の曙、第四艦隊旗艦の夕立、うちは鎮守府の副司令みたいな役割でずっと桐生ちゃんの補佐役。あの時も遠征組の子らとうちと桐生ちゃんで待機してたんやけど。うちがいても立ってもいられへんなって・・・」
「龍驤ちゃん・・・」
涙ぐんだ声で語る龍驤に二人は何と声を掛ければいいかわからずただただ見つめることしか出来なかった
「『難攻不落の城 赤城』『鬼神の娘 神通』『紫毒姫 曙』『ソロモンの悪夢 夕立』うちの訓練を卒業した卒業生で中でも優秀な奴は二つ名が付けられる程強ぉなってな。まぁ、曙の二つ名はいつも毒を吐く所からも来てるみたいやけど」
クスッと龍驤は少し笑うと
「夕立もいつもは犬みたいに桐生ちゃんの後ろについて行くんやけど、戦場に出たら急変して目の前の敵を殲滅する怪物みたいになって、掛け声みたいに言うんや『
龍驤がそう言った瞬間、大人しかった曙が急に暴れ出し低い唸り声を上げた
「ヴーヴー!!」
「な、何や!?」
「龍驤!これはどういうことなんや」
「わ、わからん、今までこんなことは・・・」
すると、龍田が
「五郎ちゃん、何か聞こえない?」
「ん?」
真島は耳を澄ますと、外からサイレンのような音が聞こえてきた
「この音は・・・敵襲のサイレン!」
「い、急いで外に出るで!」
三人が急いで部屋の外へ出ると、耳に響くほどのサイレン音が鳴っていた
「何事や・・・」
真島は窓の外を見てみると、一体の深海棲艦と加賀が戦闘をしていた
「な、なんで加賀単体で戦ってるんや!?」
「五郎!」
声のする方を向くと、響が危機迫る顔でこっちに来た
「大変だ!突然深海棲艦が攻めてきて、全員が練習用の装備だったから加賀が私たちの撤退を援護してくれたんだが・・・」
「龍驤!急いで加賀の加勢に行くで!!」
真島と龍驤が走って加賀の元へ向かうと、加賀は中破状態で膝を突いていた
「クッ!まさかここまで動けるとは・・・」
「加賀!大丈夫か!?」
真島は加賀に寄り添い、龍驤は前に出た
「龍驤姉さん、あの子は・・・」
「・・・」
龍驤は辛そうな表情で
「夕立、やっぱりあんたも・・・」
そう言うと、深海棲艦と化した夕立は見たこともないような速さで動き攻撃を仕掛けてくる
「や、やるしか・・・ないんか・・・」
龍驤が攻撃を躊躇っていると、夕立は龍驤の目の前まで来ると
「素敵ナパーティーシマショウ」
真っ赤に染まった目はまさしく悪魔の如く、何の躊躇いもなく連装砲を龍驤の額に向けた
「good-bye
その時、龍驤はあることに気が付いた
「もしかして、深海棲艦を相手にしていると思ってる・・・」
そう、今の夕立には自分以外の艦娘は深海棲艦にしか見えず。夕立からすれば潰すべき相手にしか見えていないのだ
「だったら、地獄の訓練時代を思い出してもらおうやないか!」
そう言うと、龍驤が額に向けられた連装砲を蹴り上げた
「!」
「相手を轟沈寸前で油断をする、あんたの悪い癖や!仕留める時ほど油断をしてはならない!」
蹴り上げられ腹部が完全に無防備になった瞬間、龍驤はあろうことか回し蹴りで夕立を蹴り飛ばした
「「はぁ!!!????」」
加賀と真島は龍驤のあり得ない行動に声を合わせた
「夕立ぃ、何寝とんねん、訓練中に寝るやなんてええ度胸しとるのぉ」
真島は初めて龍驤が戦場の鬼と呼ばれている理由を理解した、その後ろ姿からは今まで龍驤の雰囲気ではなく、まるで化け物でも見ているかのような悪寒を感じさせた
「その寝ぼけた根性、うちが叩き直したるわ。さっさと起きんかい!」
夕立が起き上がると同時に龍驤の膝蹴りが夕立の顎を捉えた
「ガフッ!!」
「遅いんじゃボケェ!!一秒以内に起きろ!!」
龍驤の強烈な膝蹴りを食らった夕立だが、倒れる寸前で踏み止まった
「痛イッポイ・・・」
「ほぉ、今ので立ってられるんか、まぁまぁやな」
そう言うと、龍驤は何故か後ろを向いた
「殺スッポイ!!」
すかさず夕立が飛びかかるが、龍驤は後ろを向いたまま
「誰に言うとんねん」
スッと間合いに入り裏拳で夕立を殴り、地面に落ちた
「相手に隙があるとき、その瞬間に攻撃をするときこそ己に隙が生じる。何回も言うたやろ」
いきなりの龍驤の奇策に加賀はハッと気が付いた
「あれは訓練生の時に私たちが受けていた実践練習、まさか、アレで夕立を助けようと・・・」
「真面目にやれや・・・お遊び気分のガキに・・・用はないんじゃ!!」
地面に倒れ伏した夕立に容赦なく蹴りを入れようとするが、その蹴りを肘打ちで相殺した
「リ、龍驤姉ェハ・・・ヨ、容赦ナイッポイ・・・」
「!」
さっきまでの強い殺意は薄れ表情も少し和らいでいる
「龍驤姉ェ・・・油断大敵ッポイ!」
肘で蹴りを止められ、少し感情が戻りつつある夕立に呆気を取られていると、夕立が連装砲を向け発射した
「そういうのは当ててから言うもんや」
ギリギリで体を反らして砲撃を避けた
「流石、デモ」
地面に倒れている状態から龍驤の腹部に向けて蹴りをいれ、そのまま龍驤は吹っ飛ぶが地面に倒れることなく立ったままであった
「痛いやないか、そうかそうか、そんなに地獄が見たいか・・・ほなお望みどおり地獄を見せたるわ」
「ソロモンノ悪夢ヲ見セテアゲルッポイ!!」
そこからは化け物同士の狂想曲というべき惨劇の様だった、傷つきあいながらも無邪気に笑いあう姿はまさしく狂気の祭典であった
「だ、大丈夫なんか・・・あれは・・・」
「流石は夕立ね、あの龍驤姉さんのお墨付き四人の一人ね、まるで地獄の沙汰を見せられているようだわ」
「そういえば言うとったな、訓練生って・・・」
「龍驤姉さんの訓練に耐え切れたのは四十数名のうちたった四人・・・それが、赤城さん、神通、曙、夕立、その中でも夕立は一番龍驤姉さんに噛み付き続けた狂犬よ」
真島は二人の姿を見ていると加賀の説明に納得する以外できなかった。
その後、二人の
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「ゲホッ・・・ハァ・・・」
二人は全く防御をすることなく狂ったかのように攻撃を続け満身創痍となっていた
「深海棲艦になってもその凶暴性は直らんようやな・・・」
「龍驤姉サンモ鬼ミタイッポイ・・・」
龍驤はその言葉にニヤッと不敵に笑うと
ドサッ!
龍驤はその場に力なく倒れた
「「「!」」」
真島は走って龍驤の元へ向かおうとするが
「龍驤お姉ちゃん!!!」
誰よりも早く夕立が駆け寄った
「うちも腕が落ちたわ、昔やったらもっとやれたはず何やけどなぁ・・・」
「お姉ちゃん!」
「強ぉなったな、夕立、うちは嬉しいわ。うちの誇りやで」
龍驤は力なく夕立の頬を撫でた
「お姉ちゃん・・・こんなお別れあんまりっぽい・・・」
夕立は涙をポロポロと流しながらそう言うが
「ごめんな・・・だらしのないお姉ちゃんで・・・」
そう言い残し、龍驤は目を閉じた
「龍驤お姉ちゃーーーん!!!」
夕立は龍驤を抱きしめ泣き叫ぶ、その声は鎮守府の中にも響いていた
その時、真島が夕立の肩を持つと
「嫌!!龍驤お姉ちゃんから離れたくない!!」
夕立はまるで龍驤を守るかのように抱きしめながらそう言った
「落ち着け、死んでへんわ」
「ふぇ?」
その言葉に間の抜けた声を出した
「お前、艦娘が殴り合いで死んだって話聞いたことあるか?」
「はっ!」
「ほれ、龍驤。三流芝居はそこまでや取りあえずドッグに行くで」
「アガッ!!ちょっ!ボロボロなのは事実なんやからもっと丁重に!!」
「はいはい、ほな行くで」
「二ギャァァァァァ!!」
その後、龍驤は首根っこを掴まれドッグに沈められた