とある魔術の禁書目録のあべこべ物の予定   作:はじめの一歩

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ちっちゃい茶髪のひと

「お、100円でコーラが買えるのか……よし、買うか」

上条の目の前の自販機には100円のジュースが2つ、そのほかは120、130円と150円で大体は120円であった。自販機のジュースを100円で買うことは精神的にも財布的にも優しい。

この町のスーパでは10円玉が5枚しかなくてももやしが一袋買えてしまうので貧乏高校生の上条にはたった10円でも余計に出費することは躊躇われるのだ。

しかし、そんな上条にも贅沢したいという欲はあるわけで、もやし二袋分のお金を自販機に投入し、コーラを買ってしまった。

「……っん……ぷはぁ」

喉が渇いていたのでごくごくと勢いよく缶の中身を飲み干した。100円で買ったコーラは少し小さめだったのでちょっともの足りなさを感じている上条に迫る影が一つ。

上条が自販機の横にある空き缶用ごみ箱に空き缶を捨てて身を翻すとオレンジ色のパーカーを着た子供が立っていた。パーカーの中のその中性的な顔が男の子なのか女の子なのか判断を難しくさせていた。

そして、上条の顔を見て棒立ちだ。

「どうした?」

動こうとしないので話しかけてみた上条だったが、相変わらずパーカーの子供は動きがない。仕方ないので上条がその子を避けて行くことにした……が、その行動は途中で中止させられてしまった。

「ちょっと、お兄さん」

「なんですか」

先ほどは無視されたのになんであちら側から話しかけられるのか不思議に思う上条だったが、そんなことは相手には分からない。すると、オレンジ色のパーカーのフードを頭から外し、綺麗な茶髪が現れる。

「ちょっと超困ってるんです……わたし、いつもなら友人に部屋を貸してもらってそこに済ませてもらってるんですが今日は友人の彼氏が来るからと追い出されちゃって……所持金ゼロ、ほかに行く当てなしなんですぅ……だから、お兄さんの家に泊めてもらえませんか?超お願いします!」

ちょっとか超かどちらかわからない困りっぷりだがとても怪しいお願いをされて上条は困惑中である。

(なんで俺の家なんかにこんな美少女が泊まりたがるんだ??怪しいぞ!絶対何か盗んだり勧誘したりしてくるはずだ、そうまんまと相手に乗せられて堪るか!)

「悪いけどさ、無理だわごめんな」

そういって茶髪の女の子を避けようとするもまた行く手を阻まれる。

「お願いしますっ!もうあなたしか頼れる人はいないんです!!あっそうだ!これ、ほらこれ!!」

そういって、自販機の前で前かがみになった上条が着ている紺色のジーパンから少しだけはみ出ている白いパンツが真ん中に移っている写真を見せつけてきたが、いろいろと突っ込みたくなった。

「いや何盗撮してんだよ!てかこれが何?」

「え?超反応薄い?!なんでっ?こんな決定的な瞬間ですよ?痴男《ちだん》認定まっしぐらなこの状況でどうしてこんな平然としていられるんですか?超ありえないです!」

「え?ちだん?なにそれ」

「超エッチな男の人の事です。あなたは、人が普通に通る公園の自販機の前でパンツを出した……もうこれは痴男で決まりです!」

ビシッ!と振り上げた人差し指を勢いよく上条の目前に持ってくる。犯人はお前だ!とでも言わんばかりのポーズだった。

「なぁにそれぇ?!理不尽すぎだろ!こんなもんほとんど見えてないしどっちかっていうと盗撮したお前のほうが悪いだろうが!てかちだんなんて言葉は無いはずだ」

痴漢とどう違うのかよくわからないが、とにかくこの子は難癖つけて何かと奪う気だと思った上条はハイテンションで反論する。

「超あります!あなた教養は無いんですねちょっとがっかり……」

何故か勝手にがっかりされて上条は切れそうになる。

「うるせえ!辞書にも載ってないわそんなもん!!でたらめ言ってんじゃねえぞ!」

はたから見ると子供に切れてる不良のようにも見えるこの光景、幸いにも公園には誰もいなかったので通報されることは無かった。

「え?載ってますよ。てか、もし載ってたらお兄さん家に泊まっていいですか?」

「ああ!載ってたらな!てか辞書なんてここら辺に無いぞ、諦めろ」

(やっとこの変な女の子から離れられる……)

そう思ったのもつかの間、「じゃじゃーん!超これなーんだ?」背中から電子辞書が出てきた。スマホやパソコンが当たり前になった今、電子辞書を持ち歩いている人はあんまりいないのだが何故か茶髪の少女は持っていた。

「う……でもこれでわかるだろ、そんな言葉は無いってこと」

上条の前で電子辞書を操作し始めた茶髪の少女は数秒電子辞書をいじり続け……

「あった!超あった!ありましたよほら!これが動かぬ証拠!さあ泊めてもらいますからね!!」

「う……嘘だ、こんなのうそだぁぁぁぁぁぁっ!!」

その場で頭を抱えてへたり込む上条を腕を組んで勝ち誇った目で見下す茶髪。そんなこんなで上条の家に行くことになった。

*

「超今日はよろしくお願いします!絹旗最愛と申します!」

「あぁ……そういえばお互い名前名乗ってなかったっけ……上条当麻、よろしく、はぁ……」

上条は先ほど謎の賭けに負けてテンション駄々落ちになってしまった。そんなに嫌なら断ってしまえばいいのだが、そうはできないのがツンツン頭の長所でもあり短所でもあった。

「超突然ですが質問です!上条さんって彼女とか、います?」

「彼女?もしいたら家に泊まることなんてとっくに断ってるよ……」

彼女いない歴=年齢の上条当麻は、今の質問でさらにテンションが下がる。これ以上下がると歩きたくなくなりそうだ。

「ええっ?!いないんですか?」(やば……このルックスで彼女がいないってことは理想がめちゃくちゃ高いのかも……)

「そう、今まで一度もいたことがないですのことよ……」

「うえええええええ?!」

上条は突然大声を出した絹旗にびっくりしてしまう。そんなに驚かれると今までのうのうと住んでいたこの世界は17までに彼女がいることが当たり前なのだろうか心配になってしまう。

「あ、すいません。超テンション上がっちゃいました。本当なら絶対おかしいですよ!今までアタックしてきた女性とかいないんですか?」

「うーん……別の意味でアタックしてきた女性なら多々いるけど……うん、いねぇわ」

言ってて苦虫をかみつぶしたような気分になってしまったので話を変えようと今度は上条が絹旗に質問してみる。

「逆に絹旗はいないのか?そういうのに敏感なお年頃そうだし……」

「いないです。いたことないです」

さっきまであんなにハイテンションだった彼女だが、急に話のトーンが落ちたので上条はちょっと心配になる。

「はは、まあ、そうだよな。大体皆いないよなぁ」

笑って彼女のテンションを取り戻そうと努めるがそれも無駄に終わる。

「む、それって超私の事バカにしてます?どうせ私なんてモテないまま処女で終わるんですよ!うえぇぇ…………」

両目を手で覆ってしまった絹旗に戸惑いを表す上条。取りあえず褒めて励まそうとして

「女の子がそんな下品な言葉を使っちゃいけません!大体まだ中学か高校生だろ?全然チャンスあるよ!可愛いと思うし、絶対彼氏できるって!俺が保証してやる」

と言うと彼女の顔がゆでだこのように真っ赤になり、はうっ?!という声と共に、後ろへ倒れそうになったので、慌てて上条は彼女を抱きかかえたのだが……

「おい?!大丈夫か!おーい!」

彼女はよだれを垂らしてどこかうっとりしたような表情で気絶してしまっていた。丁度上条の住むアパートの近くだったので、お姫様抱っこで彼女を抱きかかえながら急いで自分の部屋、301号室へと向かった。

*

インデックスの時のように布団に寝かし、上条は絹旗が起きるまでテレビ番組を見ていた。

ちゃぶ台の上には皿にもやしとコップに牛乳が入っている。どちらも特売セールでgetした品物だ。

絹旗を布団に寝かせてから30分経った頃、ようやく、絹旗が起きた。柔らかそうな頬には先ほどのように真っ赤ではなく、ほんのりと赤みのある程度だった。

「…………はっ?!あれ?私何してました??」

「気絶したから俺の部屋まで運んできたんだけど……」

と、上条が言うと目をキラリと光らせて

「は、運んできたって?!超、どうやって運んできたか気になります!!」

グワワッッ!と上条の顔と絹旗の顔が触れ合いそうになるぐらいの距離まで詰めてきたので若干顔をそらしながら

「ち、近いって!えと、お姫様抱っこでこう……」

お姫様抱っこのポーズを真似して上条が身振り手振りで説明すると、絹旗が自分の顔を両手で挟んだ。そして、クネクネと身を捩りながら

「いやぁ~、これはもう付き合うしかないですね!!超大胆というか、上条さんがそんな事してくれるなんて……!」(きた?!私の時代が来ました??!!)

と、めちゃくちゃ嬉しそうに言った。

(嫌がられなくてよかった……)

こんなにうれしそうな絹旗を見てちょっと照れてしまい、どっかの電撃姫みたいに顔を真っ赤にして攻撃を仕掛けてくるような事は無くて安心もしていた。

「で、返事はどうなんですか??」

「え?」

「だから!さっきの告白の返事です!言わせないでください、恥ずかしい……」(この際だし振られるの前提で聞いとこう!もしかしたら……)

調子に乗り、勢いに任せてさっきの冗談を告白に仕立ててしまったが、瞬時に自分が何を言ったのかをもう一度考え、とてつもなく恥ずかしくなり、頬の赤みがさっきよりも増してしまった。そして、そんな絹旗の様子を尻目に上条はひたすらに混乱していた。

(さっきちらっと付き合ってとかなんとか聞こえたと思ったけど告白だったのかよ?!え?まじで?どうしようタイプとしてはこう、ボインというか、お姉さんというか、むっちりとエロくて優しく癒してくれるそんな女性が好みなんだけど……でも可愛い!どうするか……はっ?!まてよ、こいつはこの状況を録画して誰かに見せる気じゃないだろうな……告白されたらドッキリ報告とかされたら俺もう立ち直れないよ!女性恐怖症になるよ!うおおおおおお!!)

「はい!よろしくお願いしますキヌハタさま!」

気が付くと返事をしていた。むっちりでもお姉さんでもないが、こんなに可愛い子に告白されて受けないなんてなかなかできることじゃないだろう。特に事件もなく、人肌恋しかった上条には断る理由がなかった。

「うわあわわ?!?!え?マジですか??」

顔の赤みが先ほどの気絶の時と変わらないほど真っ赤に染まった絹旗にコクコクとうなずく上条。

「ふにゃ~」

再び気絶し、10分ほど、動かなかった。




ちょっとこれ普通じゃないか……次で逆転設定生かさないとまずい

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