永遠の空~失色の君~   作:tubaki7

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episode18 昼食イベント

訓練機の収納作業をしながらふと空を見上げる。アリーナの吹き抜けの天井から覗ける空は青くどこまでも澄んでいて果てしなく僕の頭上に広がっている。

 

でも、こんな空でさえ僕には無色に見える。

 

何も感じない、何もわからない。

 

記憶の断片はあるけれどただそれだけのことで、はっきりとしたものはいまだもってわからないまま。もうこのまま記憶が戻らなくてもいい・・・・そんな気さえしてくる。

 

 

「お疲れライ」

 

「ああ。今日はさいなんだったな」

 

「あはは・・・・」

 

 

模擬戦のあとは実習訓練で主に専用機持ちがリーダーを行い各グループに分かれてのものだったが、当然と言うべきか。シャルルの人気はかなり大きく、転校初日だというのに長蛇の列。一夏も同様でセシリアと鈴、そして箒とモニカがかなり不機嫌だった。おかげでフォローにまわるのも一苦労である。

 

 

「それはお互い様だよ。列もそうだけど、ライはすごいね。代表候補生二人相手にあそこまで動けるんだから」

 

「買い被りすぎだ。あれは山田先生あってこそだし、ほとんど彼女が合わせてくれていた。僕がしたのは作戦の立案だけだよ」

 

「それでもすごいよ。あの動きはまず普通じゃできない」

 

 

そういうものだろうか。僕でなくてもできると思うが。

 

 

「シャルル様、そろそろ」

 

「あ、うん。ライ、また食堂で!」

 

 

手を振りながら駆けていくシャルルに手を振りかえす。モニカがしばらく見たあとお辞儀をして後に続いたのが少し気になったが、彼女なりに僕に対しておもうことがあったんだろう。

 

見上げた空は、やっぱり青かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・一夏は時々わざとじゃないかと思うときがあるんだ」

 

「なんのことだよ」

 

 

この状況見てわからないのかと問いただしたいところだが、それは野暮というものだろう。

 

いつも通りの昼食というわけでなく、今は屋上でいつものメンバーにシャルルとモニカを加えたメンバーで輪になって座っている。一夏発案のもと、転校生二人を加えてみんなで食べようという彼なりの心遣いだが、その前に箒と鈴、それにセシリアから誘われていた。だが彼女たちの心中も知らない彼は承諾するもシャルルとモニカを誘い、いまに至る。

 

 

女子3人からの視線が痛い。というかなんでセシリアは僕をにらんでいるのかがわからないんだが。

 

 

「えっと・・・・僕たちもいていいのかな?」

 

 

シャルルが申し訳なさそうに僕に言ってきた。モニカも気まずいようでこちらを見ているのと、「こいつはアホなのか」と問うているような視線を投げかけてきている。それにかんしては僕も思うことがあるがそれはもう慣れろとしか言いようがないため苦笑いで返す。

 

 

「大丈夫だ。・・・・多分」

 

 

フォローできない僕を許してくれ。

 

 

「・・・・フン、まあいいわ。一夏、あんたにこれあげる」

 

 

そう言って鈴がバッグから出したのは酢豚の入ったタッパーだった。それを見た一夏のテンションがあがる。

 

 

「おお、酢豚か!」

 

「前に食べたいって言ってたでしょ?作ってきたからあんたにあげるわ。ありがたく思いなさい!」

 

 

高らかに言い胸をはる鈴。よほどの自信がるようだ。

 

だが、鈴の期待も淡い。相手はミスター鈍感の異名を欲しいままにするあの織斑一夏だ。当然、彼女の期待通りの展開になるわけもなく。

 

 

「ほら、ライも食べてみろよ。鈴の酢豚めちゃくちゃうまいんだぜ?」

 

「いや、僕は――――――」

 

「いいから、ホラ」

 

 

喋ってる最中に箸でつまんだ豚肉を僕の口に放り込む一夏。空気読めと言いたかったが・・・・。

 

 

「どうだ?」

 

「・・・・うまい」

 

 

「ごめん鈴」「いいわよ、そんな気がしてたから・・・・」なんて会話を目でする。そしてなにやら顔を赤くする箒とセシリア。何を想像してるんだなにを。

 

 

「シャルルもたべなよ。口にあうかどうかわかんないけど」

 

「ありがとう凰さん。モニカも」

 

「毒はないようですし、せっかくのお気遣いなのでお言葉に甘えさせてもらいます」

 

 

シャルルとモニカも一口。料理において定評のある鈴の酢豚は当然のごとく受け入れられ、あっという間になくなった。

 

 

「ライさん、わたくし特性のサンドイッチも召し上がってくださいな」

 

 

セシリアの持つバスケットには色とりどりの鮮やかなサンドイッチが。ありがとうと一言断り一つ手にとる。

 

 

「・・・・うん、おいしい」

 

「当然ですわ」

 

 

これまた誇らしげに胸をはるセシリア。・・・・ちょっと直視できない。

 

 

「みなさんもどうぞ」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

「ところでセシリア」

 

「なんでしょう?」

 

「このタマゴサンド、ちょっと想像してたのとちがうんだけど何かいれたのか?」

 

「はい。隠し味に・・・・」

 

 

と、これは秘密なようで僕に耳打ちしてきた。うむ、たしかにユニークだ。

 

 

「い、いい一夏!?」

 

 

・・・・一夏が顔を真っ青にして倒れた。鈴も同様。

 

 

「貴様、さては毒を!」

 

「失礼ですわね!そのような下賤なマネはしませんわ。わたくしのサンドイッチのあまりにものおいしさに気絶してしまったようですわね」

 

「・・・・セシリア。味見はしたのか?」

 

 

おそるおそる聞く箒。返ってきたのは――――――

 

 

「してませんわよ?」

 

 

の一言だった。

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