永遠の空~失色の君~   作:tubaki7

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episode45 亡国機業 ―ファントムタスク―

 

言われるがまま衣装に着替えて舞台に立つ。我ながらたかが食券ごときで買収されるなんて軽いなと思いつつ同時にありがたいと思う。小遣いもなく少し困っていたのでありがたい話ではあるものの代わりの条件が「生徒会主催の舞台に出ろ」なんてことになろうとは。だが今更ごねたところで変わりはしない。

 

だから諦めてステージへと出る。薄暗い中楯無のナレーションが流れているのだが…

 

 

〔シンデレラってそんなに物騒な内容だったとはな。初耳だ〕

 

「バカ言うな。これは会長が付け足した内容だ。そもそも開幕直後から王子がこうして檀上にあがている時点で嫌な予感がしたんだ」

 

 

C.C.に突っ込みを入れるとなるほどと返ってくる。どうやら本当に知らなかったらしい。毎日読んでいたあの本はなんだったのかと思うもそんなことはどうでもいい。今はこの舞台を無事に乗り切ることだけを考えようと思考を切り替える。

 

足音がする。反対方向を見るとそこには黒髪の少年が自分とは色違いの衣装を着て歩いている。

 

 

「一夏も呼ばれたのか」

 

「ライもか。楯無さんに無理やり連れてこられた口みたいだな」

 

「あ・・・・うん、まあそんな感じ」

 

 

とてもお小遣いに困っていて食券につられましたなんて言えないので濁してはぐらかす。

 

 ナレーションが終わり、スポットライトが二人に当てられる。

 

 

《ルールは簡単。王子様の持つ二つの王冠・・・・それを手に入れた者だけが二人を好きにする権利を得る。同時に生徒会からとぉーってもお得な特典付よ。さぁ、血に飢え、欲望丸出しのシンデレラたちの健闘、とくとご覧あれ!》

 

 

人権とはいったいなんだったのか。そう言いたくなるほどに悪意しかないルールに怒りを通り越して呆れしか出てこない。一夏は口をあけてそんな馬鹿なといった感じだがあの日、あの人と出会った瞬間にこうなるような予感はしていた。ただ・・・・何故だろうか。お祭り騒ぎの好きそうな彼女。無邪気な笑顔のその裏に何かを感じる。それがなんなのかまではわからないが・・・・時々、寂しそうな、悲しい顔をしているのを今でも覚えている。

 

 そして、その顔が記憶の中にある誰かと重なったのも。

 

 

「一夏、ライ!覚悟ォ!」

 

 

声がした方向から向かってくる気配で誰が来たのかを察する。一夏の胸を軽く押し、左右に分かれて振り下ろされた踵を交わす。ドン、という音を立てて木材でできた床がへこむのを見たときは軽く血の気が引いた。

 

 

「チ、外したか…不意打ち失敗」

 

「声だして気配消してないなら不意打ち以前の問題だ。と、言いたいが・・・・」

 

 

純白のドレス。スカートはふわりと膨らんでおり、ガラスの靴と頭に乗ったティアラがまさにシンデレラそのものだ。いつものツインテールも艶が増しておりライトに照らされた鈴は誰の目から見てもかわいい。

 

 

「…な、なによ?」

 

「かわいいな、って思ってさ」

 

「なっ・・・・!?なななな、何言ってるのよアンタは!?」

 

 

予想通りの反応。これで一瞬ではあるが鈴に隙が生まれる。その瞬間を狙って一夏と合流し距離を置く。

 

 

 

「ライって割とえげつないな」

 

「一夏もみんなへの態度変えた方がいいよ。そのうち箒に本当に斬られるかもしれないぞ?」

 

 

そんな会話をしながら逃げる。途中、何度か鈴の猛攻にさらされるがそれを何とか躱しとりあえずステージから出ようとする。が――――

 

 

「一夏!」

 

「あ?――――わッ!?」

 

 

キラリと光った何かに反応し一夏を引っ張りセットの陰へと身を隠す。

 

 

「この口径の銃、それに精密射撃・・・・オルコットさんか」

 

「外しましたわ。やはりライさんの身体能力を見誤ってましたわね・・・・」

 

 

毒づくセシリア。ISだけのものかと思っていたがまさか生身であの動きができようとはさすがに彼女も計算外だったらしい。これでは難易度が上がり過ぎていると放送室にいるであろう楯無を睨む。勝利条件は二人の冠を奪う事。一夏は仮にとれたとしてもあの射撃を躱すほどの身体能力を持っているライまでしとめるとなると一人では無理だ。

 

 

「誰かと協力、それしかありませんわね」

 

 

だがこのメンバーで協力関係を築くのは到底無理だ。スタンバイの時点で一部を除いてかなりやる気満々だったし、鈴にいたってはあの通り。残る選択肢の中で最も友好な人物としてシャルロットがあげられるが彼女も意外と抜け目がない。いざという時に抜け駆けされる可能性が充分にあり得る。あとはモニカだが、彼女も割とノリに身をゆだねるふしがある。シャルロットと共に裏切りなんてことにでもなればそれこそ本末転倒だ。

 

 結果、自分ひとりで何とかするしかない。そう思いもう一度スコープを覗いた。

 

ライは思考する。相手は拳法を習得し、さらに軍事的訓練も積んだ鈴。そして学園一の射撃の腕前を持つセシリア。この二人がいるということはほかのメンバーもおそらくいるとみて間違いない。対象に一夏がいる時点でまず箒とラウラは決定している。となれば、敵はかなりの脅威。唯一の抜け目は互いが協力体制をとっていないということだけか。

 

 

(でも、充分に個人の能力値の高さは厄介だ)

 

 

迂闊に動けばすぐに詰みとなる。それほどまでに相手に回せば厄介だ。対し、こちらは一夏とふたりだけ。勝利条件がこうしてそろっているのは危険だ。だが・・・・

 

 

「…一夏。少し提案がある」

 

「よし、それ乗った」

 

「まだ何も言ってないんだが?」

 

「俺には上手いことこの状況を乗り切る案が浮かばない。だからお前に全部任せる。そのうえで俺がやらなきゃいけないことは何が何でもやり遂げる。…今の俺には、それぐらいしかできねーからな」

 

「・・・・わかった。じゃ、作戦は――――」

 

 

作戦立案する側も、実行する者を信頼しなければ成り立たない。その点一夏は凄いといえる。無茶な作戦を「絶対にやってのける」と言い切る自信。大丈夫だと思わせるその姿は本当に凄いと思う。

 

 

(――――あ)

 

 

笑顔を浮かべる褐色の髪の少年。その傍らで表情に出さないながらもその様子を温かい目で見る黒髪の少年。どこか懐かしい、愛おしい風景が脳内をよぎる。頭の中がぐちゃぐちゃになりそうなのを何とかこらえながらも一夏に作戦内容を説明するが、途中目が合った彼の表情が少し困ったようなものに変わる。

 

 

「ライ、泣いてるのか?」

 

「え・・・・?」

 

 

言われて頬に手を当てると湿ったものが手を濡らした。理由は何だかわからない。ただ・・・・そう、ただ、とても大事なものを失くしている。それが悲しくて、どうしようもなくて悲しいんだと思う。dめおそれを言葉で説明しようとすると上手くできなくて。だから「目にゴミが入っただけだ。気にする必要はないよ」と笑う。

 

信じよう、この笑顔を。凛としたこの背中を。

 

 

「・・・・以上が、作戦内容。イケる?」

 

「男に二言はねぇ。任せろって」

 

 

頼もしく胸をたたく一夏。それに頷いてタイミングを見計らい、二人同時に飛び出す。鈴とセシリアの待つ方へはライが、それとは反対方向には一夏が飛び出す。

 

 

「出てきたわねライ!」

 

「すまないが、そう簡単に捕まるわけにはいかないんだ。だから――――」

 

 

放たれる銃弾。タイミングよく狙ったかのように繰り出されたそれらを、ライは躰を低くしてまず銃弾を躱し、鈴の拳を右手で少し払いのけて背負い投げのようりょうで投げ飛ばす。突然のことに驚く鈴とセシリアだがそれでも彼の動きは見慣れている。生身でISと同様の動きをしようと今更驚きはしないと鈴は着地してすぐさま追いかける。セシリアは近づかれまいと得物を変えライを狙う。躰に当てる気はない。狙うは頭上に輝くその王冠のみ。だが・・・・

 

 

「・・・・マジ?」

 

 

監視している楯無までもが驚く。それもそうだ。❝学園一の腕前のスナイパーの撃つ銃弾を走って躱しながら壁を走っているのだから❞。

 

壁を蹴って宙を舞う。回し蹴りでセシリアの銃を飛ばし、それをキャッチして構え数発発砲。これで二人の意識はこちらに向いた。あとはこのままこの二人をひきつけて逃げるだけだ。

 

 

「逃がすかァァァァ!」

 

 

鈴が咆哮を上げて追いかけてくる。もう追いついてきたのかと驚きつつなんだかおもしろくなってきた辺り毒されてきたのかもしれない。

 

 でもまあ、こういうお祭り騒ぎも悪くはない。そう思い始めた時だった。

 

 

〔学園の海域に未登録の機影を確認した。またこの前の奴らかもしれんぞ〕

 

 

突如C.C.が警告を告げ、さらにその直後にアラートが鳴る。

 

 

〔今更衣室で白式が戦闘中だ。急いでいかないと不味いぞ〕

 

 

 ぬかった。まさかこのタイミングで攻めてくるとは。学園に一度侵入を許してしまっている以上ここもあまり安全とは言えないかもしれない。

 

 

《ライ君、聞こえるかしら》

 

「はい」

 

《私は一夏君の方に行くから、あなたは接近中のもう一機をお願い。ほかの候補生たちにはもう織斑先生から指示が出されているはずよ。その子たちと合流して対処して頂戴》

 

 

楯無の指示に了解と返し、機体を展開して空を舞う。開け放たれたアリーナの天井から青い粒子を散らしながらライは指示された機影をセンサーでとらえる。形状からして、まるで蝶のよう。顔にはバイザー、手には遠距離用でありながら近接戦でも使用できるライフルを装備している。そしてなんといっても特徴的なのは、その周囲に浮かぶビット兵器。それを見れば、一目瞭然だった。

 

 

《ライさん!》

 

 

セシリアからの通信。その向こうにはシャルロットと鈴の姿もある。

 

 

《あれはサイレント・ゼフィルス。イギリスで開発され、奪取された第三世代機ですわ》

 

 

なるほど、と合点がいく。道理でビット兵器を積んでいるわけだと納得し、直後あがったC.C.の警告に躰を捻る。そこをビームが通過したのを見てから相手がブルーティアーズと同じ遠距離型だと推測する。

 

 

『オルコットさんとシャルロットは援護を。僕と鈴のツートップで行く。学園にはこれ以上近づけさせない!』

 

「了解!」

 

「・・・・さあ、来い。蒼月ライ。少し遊んでやる」





ついに姿を現したファントムタスク。



壇上に登り始めた役者達。交錯する思惑の中、明かされる真実は一夏に何を見せる


次回 永遠の空~失色の君~

episode46 ギアスユーザー


瞳に宿るは呪いの力・・・・
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