Fate/strange fake Prototype 作:縦一乙
紳士淑女のプレイヤー諸君に告げる。
これは“偽りの聖杯戦争”のマスターとサーヴァントによる戦いの記録である。
アーチャー、英雄王ギルガメッシュが怒りに我を忘れず、
マスター、原住民族長ティーネ・チェルクが全身を辱められ、
ランサー、神造兵器エルキドゥが役に立たず、
マスター、合成獣の銀狼が空気を読んで行動し、
ライダー、ヨハネ黙示録のペイルライダーが正義を語り、
マスター、眠り続ける少女繰丘椿が肉弾戦を挑み、
キャスター、劇作家■■■■が周囲からこき使われ、
マスター、
アサシン、美しき暗殺者が人助けに奔走し、
マスター、六連“男装”ジェスター・カルトゥーレが流れ弾で死に、
バーサーカー、殺人鬼ジャック・ザ・リッパーがあっさり殺され、
マスター、時計塔の魔術師フラット・エスカルドスが恐怖に怯え逃げ去り、
そんな彼らの願いが『全て』叶ってしまう物語である。
しかしながら残念なことに、君達プレイヤーは徹頭徹尾、活躍しない。
君達プレイヤーが持つ英霊を時間限定で自由に喚べる五つの令呪、
君達プレイヤーが背負う四つの制約、
そんなものは物語の本筋に大した影響は与えない。
君達に待っているのはただ弄ばれ、利用され、使い捨てられる運命だけだ。
例え活躍してもそれはサーヴァントの活躍であって、君達では決してない。
君達は大量生産の粗悪品にすら劣る廃棄物でしかない。
度し難く、救いようが無いほど愚かであり低劣。
そしてここより辿るのは、自ら死を選ぶ道程だ。
そこに何を感じ、何を思うのかを、是非その目で見て欲しい。
さあ、前口上もここまでだ。
徹底的に役立たずな君達ではあるが、唯一無二の権利がある。
ここに、このねじ曲がった運命の開幕宣言を、“君”に託そう。
感謝する必要はない。
恐縮する必要はない。
遠慮する必要はない。
開幕の狼煙は分かり易く派手な方が好ましい。
大きく、広く、全体に波及するかのような衝撃が理想的だ。
となれば、使い捨ての君達には適役だろう?
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Fate/strange fake Prototype
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それは、誰かの放った一撃だった。
拳銃から放たれたのは一発の弾丸。
日本であれば実物を見る機会はまず皆無である代物であるが、情報だけならいくらでも手にすることができる。兎角、それらの情報の中で最も大切なのは経験せずとも理解できる殺傷能力。
ある程度距離が離れていては命中など期待できないが、だからといってなんの訓練も受けていない者が銃口を向けられて平気でいられる筈もなかった。
一発目、二発目は見当違いな場所に弾は当たった。運が良かったわけではなく、これはただの威嚇。三発目からは手足が狙われ、銃口が複数になった頃合いからそれもなくなった。
そして、最初の銃弾から数えて一〇発目。
偶然ではあった。しかしながら、必然でもあった。遅いか早いかの違いに過ぎない。
予定調和の如く、その一撃は、気づけば眼前にあった。
銃弾を目視する。あり得ないことではあるが、事実としてその銃弾は不可避の速度、必中の進路を持ってそこに存在していた。
アキレスが亀を追い抜こうとしている、そんな刹那。
時が止まってみえたのは走馬灯の原理に違いない。しかし走馬灯ならば身体が動かぬのもまた道理。死の間際にあって何かをしている暇などどこにもない。瞼を閉じる事も、祈ることも、座して待つことすら許されない。ただ弾がそこにあるという現実だけを頭は理解する。そしてその先に待つであろう『死』を直視させられる。
だが。
この身を貫こうとする銃弾は、
この身を救おうとする白刃に、軌道を逸らされた。
軽やかな無音が戦場を支配する。銃弾飛び交う社交場に現れた無粋者は、ただその存在感だけで静寂を呼び込んだ。
「……」
人には到底成し遂げられぬ事をあっさりと成し遂げ、次へと繋げたのは嵐を呼び起こすような静かな呼気がひとつ。他の全ての生物は呼吸を忘れている。
足音などしなかった。
その場に唐突に現れた影。
それは今の今まで存在しなかった人物だ。
「―――問おう。貴殿が、我がマスターか」
誰何の声が辺りに響き渡った。
それは誰に問いかけたというよりも、周囲に自身の存在を知らしめる問いかけ。
これは現実でありながら夢幻の存在がここにいる、という事実をこの場にいる全員に共有せしめる言葉。
「召喚に従い馳せ参じた。
これより我が刃は貴殿のために振るい、全力を持って貴殿を守ることをここに制約する」
――聞くところによると、第五次聖杯戦争優勝者、衛宮士郎も自らの危機において最後のサーヴァントを召還したという。この場にもし彼がいればこの光景を自らの過去と被せたことに違いない。
聖杯戦争の開始と見なす時期には諸説ある。
最初の令呪が宿った時――
全マスターに令呪が宿った時――
最初のサーヴァントが召還された時――
マスター全員が開催地へ足を踏み入れた時――
サーヴァントとサーヴァントが最初に激突した時――
どれを開始とするのか難しいところではある。
ただ、後世の歴史家や研究者の多くは、ある条件によって聖杯戦争の開始とする者が多い。例えば、第四次聖杯戦争であればキャスターの召還、第五次聖杯戦争であればセイバーの召還である。
即ち。
「サーヴァント、新免武蔵藤原玄信」
このスノーフィールドの地に、七人のマスターと七柱のサーヴァントが出そろったこの瞬間こそが、
「――押して、参る!」
偽りの聖杯戦争、その開幕である。