この哀れな暗黒破壊神にも祝福を!   作:鎧武 極

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こ、これぞ私の求めていたお仕置き! byダクネス

生活をするにおいて大切な物とは何だろうか。衣食住という言葉がある。人が生活するためには、自身の体を守る衣類が必要である。日々の活力となる食事が必要である。自然から身を守り、安息の地となる住居が必要である。だが、この3つすべてを満たすために必要なものがこの世にはある。

 

「金がない!!!」

 

ギルドの集会所で、俺はそう叫んだ。

今俺とアクアは、相当な金銭難に陥っている。それもこれも、この駄女神が無駄にギャンブルに手を出して、無駄に借金を増やして、無駄にその返済を俺の財布でやっているからだ。こいつ本当に使えない。

 

「毎日毎日、商店街のコロッケ売りのアルバイトをして、売り上げたと思ったらアクアが売れ残して、バイト料から残ったコロッケ分差し引かれ、そして無駄にアクアがギャンブルに手を出して金が溜まらない負のスパイラル。もういやだよこんな生活!」

 

「おおザギ、泣かないでください。よしよし」

 

「本当に大丈夫か? なんだか最初に会った時よりもやせ細って白髪が増えてるぞ」

 

慰めてくれるめぐみんとダクネス。そして当の本人のアクアは何も言わずに視線をそらしている!法がなければこいつを殺してやる!法があっても殺してやる!もうなんでこいつと一緒にこの世界に来ちゃったんだろ俺

 

「いや、あのですねザギさん。私も悪いとは思ってるんですよ。ギャンブルのお金が足りないとき、ザギさんの財布からお金ちょおーっとお借りしてそれを黙ってたり、ザギさんのお財布のお金使って私だけ良い物食べたり、エトセトラエトセトラ・・・」

 

「お前! 最近財布の金の減りが激しいと思ったら、勝手に使ってたのか! この犯罪者めえええええ!」

 

問答無用でアクアの襟をつかんで持ち上げる。もうこいつだけは絶対に殺す。誰が何と言おうと殺す!

 

「だってだってぇー! ザギさんが「犯罪はバレるから犯罪になる。だったらバレなきゃ問題ねえ!」って言って、他の冒険者から金盗んでたりしてるの聞いたから、私も実行しただけなんだもん!」

 

「俺の言葉を鵜呑みにするなあああ!! 大体お前、女神なんだから善悪の判断ぐらいつけろおおおおお!」

 

「ザギさんといたら善悪の判断なんてつかないんだもん! 全部善にしちゃうんだもん!」

 

俺のせいかああああ!!今の状況全部俺の行動が招いた結果かああああ!!

なんてことだ。まさかここにきて日頃の自分の行いがアクアを通じて帰ってくるだなんて。いや、確かに盗んでます。たまにここで酔いつぶれた冒険者の財布を『スティール』で奪ってます。そしてそれをアクアに自慢してました。でもね、なんでそれを実行するこの駄女神いいいいいいい!!!

 

「全く、ほんとにこの二人はどうしようもありませんね。まあ、私も盗賊スキルで財布を盗むのには賛成しますが」

 

「全くだ。他人の物を盗むな・・・ちょっと待てめぐみん。いまなんといった?」

 

「ん? 何か変な事を言いましたか?」

 

「・・・いや、なんでもない」

 

ああどうしよう。割とマジな方でこのパーティー崩壊してる

 

 

 

 

「ねえザギさん。私いま、市場に売りに出されに行くモンスターの気分なんですけど・・・」

 

クエストへ向かう道中、檻の中のアクアがそんなことをつぶやいた。今から俺たちは、湖の浄化という簡単なクエストを受けに行く。一応水の女神のアクアは、触れているだけで水を清める効果を持っているらしく、この能力を使えば他のクエストを受けるよりも比較的楽にクエストをこなすことができる。ちなみにアクアが檻の中に入っているのは、湖に要るモンスターに食われないためだ。

 

「それにしても、こんなものまで貸し出してくれるなんて、ギルドも随分太っ腹ですね」

 

「まあ、向こう(ギルド)としても冒険者に死なれなくないからだろうな。あの首なしの事もあるし」

 

アクアの入った檻を乗せてる台車の上に座る俺とめぐみんは、そんな話をしていた。あの首なしの一件以来、ギルドにいる冒険者の数が極端に減った気がする。全員あの首なしにビビッて宿から出ようとしないからだ。まあ、魔王軍幹部がいるのに呑気にクエスト受けてるもの好きなんて俺たちぐらいだろうな

 

「おーいダクネス、スピード落ちてるぞーもっと足に力入れろ」

 

「ヒィイン!」

 

手に持っていた鞭でたたいたのは、目の前で台車を引いているダクネス。檻は借りれたが、さすがに馬まで借りる金は持ち合わせていなかったので、この中で一番体力と力のあるダクネスに引かせている。あ、ちなみにこれは双方合意の上で行っているので別に問題はない。

 

「こ、こんな事をされて、人としての尊厳をぞんざいに扱われても、わ、わ、わたしはー!」

 

「ほれほれー早くしないと、鞭で叩いてやらないぞー」

 

「わかりました! 全力で引かせていただきます!」

 

なんだかブツブツ言ってたので、脅しをかけて全力を出させる。うん、この状況に何の疑問も抱いてないアクアとめぐみんはほんとどうしたよ。

ダクネスの全力疾走で台車を引くこと十数分後、体中鞭で叩かれているにもかかわらず、この上ない快感を得て満足しているダクネスを尻目に、アクアを湖の真ん中に放置していた。

 

「なんだか、今回は比較的楽に終わりそうな気配ですね」

 

「ま、今回はアクアに任せるしかないからな。俺達はトランプでもして遊ぶか」

 

「とらんぷ? それはザギの住んでいた国の遊びですか?」

 

「んーそういうわけでもないが、暇つぶし程度にはなるからやろうぜ」

 

こうして、暇つぶしに作っておいたトランプを使ってババ抜きを始める俺たち。因みに罰ゲームは帰りも俺たちを乗せた荷台を引くというものにしたらダクネスが食いついてきた。うん、こいつ本当にバカだ。

 

 

2時間後

 

 

「助けてざきしゃあああああああん! ワニが! ワニがああぁああ!!」

 

湖の真ん中でワニ型のモンスターに襲われているアクアは、まるでサルのように俺の名前を叫んでいた。だがそんなアクアの叫びに反応することもなく、俺たちは12回目のババ抜きをしていた

 

 

4時間後

 

 

「〈ピュリフィケーション〉! 〈ピュリフィケーション〉! 〈ピュリフィケーション〉!」

 

「アクアのやつ、結構必死だな」

 

「まあ檻がミシミシと出してはいけない音を出していますからね。命の危機を感じているのでしょう」

 

流石にトランプに飽きた俺たちは、ワニに襲われながらも必死に浄化魔法を唱え続けているアクアを観察していた。

 

「ギャアアアア!! 檻がミシミシ言っちゃってるんですけど! 今バキッって音が聞こえたんですけど! 助けてざぎしゃああああああああん!!!」

 

「あの檻の中、ちょっとだけ楽しそうだな・・・」

 

「頼むから行くなよ?」

 

 

7時間後

 

来た時とは見違えるほどに綺麗になった湖。その中心にはワニに噛まれてボロボロになったアクアの入った檻があった。ワニたちは湖が浄化されたことによって別の場所に移り、もう姿は見えない。

もうアクアの悲鳴は聞こえてこない。というより、もう一時間ほどアクアの声を聞いていない。

 

「アクア~大丈夫か~?」

 

「もうワニはいないので、出てきても大丈夫なのですよ?」

 

「そうだぞアクア。それにさっき3人で話して、今日の報酬は全部アクアに渡すことにしたんだ。30万エリスは全部アクアのだぞ」

 

俺、めぐみん、ダクネスの呼びかけに答えないアクア。

虚ろな目で綺麗になった湖を見つめたまま、アクアは言った。

 

「檻から出たくない。このまま連れて帰って・・・」

 

「「「・・・・・」」」

 

引きこもりになってしまった

 

 

 

 

「おーいアクア、もう街についたからいい加減檻から出ろよ。街の奴らの視線が集まりまくりなんだが」

 

「多分それは私たちがダクネスに台車を引かせているのもあるからだと思うのですが」

 

頑なに檻から出ようとしないアクアを無理やり連れて帰ってきた俺たちは街の奴らからの冷ややかな視線を一身に受けていた。

檻に入ってブツブツと暗い歌を歌っているアクアに、重い檻に3人分の体重が乗っかっている台車を引くダクネスに、その上に呑気に座っている俺とめぐみん。うん、別にどこもおかしいところはない。ただ少し注目を集めやすいだけだ

 

「にしても、今回は一名を除いてみんな無事にクエストを終えられたな」

 

「ザギ、それを言うと必ず何か起こる気がするのですが・・・」

 

墓穴を掘った。安心しきってフラグを立ててしまった。こういう時は必ず何か起こる、いや起こらないはずがない

 

 

「めっ、女神様!? 一体どうして女神さまがこんなところに!? 今すぐ出してあげます!」

 

で、出たーめんどくさい事しかしないやつー

突如現れた男は、ワニたちですら壊すことのできなかった柵を曲げると、中のアクアに手を差し出す。

てか今あいつ、アクアの事を「女神様」って言ってたから、多分死んでアクアにこっちに転生させられた転生者なのだろう。なるほど、となると腰から下げてる妙に強い力を放ってる剣が転生特典か。

 

「どうするお前ら?」

 

「めんどくさい事はこれ以上勘弁なのですが、流石にこれ以上アクアを見捨てるわけにもいきませんし」

 

「私もめぐみんに同意見だ。大切な仲間が見知らぬ男に襲われるのは、騎士として見過ごすわけにはいかない」

 

めぐみんが杖を、ダクネスが剣を構える。どうやら二人は殺る気満々のようだ。

今は金があっても足りないぐらい厳しい状況だ。仲間に手を出そうとしている見知らぬ男の身ぐるみはがしてお金に換えても別に問題ないだろ?

俺も台車からメイスを下すと、二人に指示を出した

 

「あの男から金目のものすべて奪えええええ!!!」

 

「「うおおおおおおおおお!!!」」

 

「え? ちょっ、待っ、ギャアアアアアアア!!!」

 

街中に見知らぬ男の叫び声が響き渡る。

その後、檻の修理費で報酬の30万エリスは10万エリスにまで減ったが、男から奪った装備やらなんやらを売って20万エリス稼いだので、その日の夜は久しぶりに贅沢な食事が食えましたとさ。めでたしめでたし

 




お久しぶりです!年末年始はいろいろとあったり、ちょっと小説書いたりする気分ではなかったので遅れましたが、新年一発目(もう年明けてから結構経ってるけど)はこのすば!
アニメ2期も始まり、ますます熱くなるこのすばの勢いに乗れたらなーと思ってたり思ってなかったり。
取りあえず、犯罪者街道まっしぐらのザギ様主人公のこの作品をよろしくお願いします!

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