人々は彼らを勇者と呼んだ。
神室町の地下には普通じゃない場所が存在する。
伝説の情報屋の仕切る裏の歓楽街、二つの闘技場、それぞれが意味を成す四つの迷宮。
それらはマンホールからのみ入ることが出来る隠された場所だ。
だが、その下にまだ空間がある事は誰も知らない。
四つの迷宮の中でも最も過酷な場所
それは【亜門】と呼ばれる一族が己を鍛えるために用意した修練場の最深部、更にその部屋の隠された扉からのみ入ることが出来る。
【アンダーグラウンド】と呼ばれる
そして更にその下、【禁忌】と呼ばれるその扉は亜門一族初代当主【亜門丈之進】が何年もの歳月をかけて封じた扉である。
封じてあるものは【扉】
善性は無く、情は無く、温度は無い。
死を望み、絶望を望み、蜜を望む。
皮肉を好み、理不尽を好み、不条理を好む。
日ノ本の九つの歓楽街、そこから際限無く湧き出る妬みと欲と暴力、そして純粋な悪意の上澄み。この世で最も忌み嫌われる感情の最も濃い部分でのみ作られた異形の者の通る扉。
人を殺め、人を辱め、人を嘲笑い、涙を蹂躙した者だけがいる。
それは存在するはずの無い物だった。
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アンダーグラウンド最難関の場所【亜門修練場】
そこに二人の男が降り立つ。
現代にしては古風な身なりの風格のある老人、そして対照的な現代風の若者の衣服を着た若者。
どこか普通じゃない雰囲気を醸し出す二人は
「ジジイ、ここで間違いねぇんだろうな?」
若者は老人に尋ねる。
「上山のれーだーではここを示したらしいわい。万が一間違っていたとしても、屍を葬るという役目が儂等にはあるのじゃ」
若者に対して簡単な説明をするその老人の体からはオーラのようなものが湧き出しており、それは力の象徴のような光を纏っている。
「ケッ……無限に湧いてくるんじゃ潰した所で意味ねぇじゃん」
「だが誰かがやらねばならん。綾小路の者も西郷の奴も今は神室町におらん」
「上山は……戦えないよな」
一歩一歩、扉へ近づくたびに瘴気が増していく。
小動物なら殺してしまいかねない程に。
「元より刀匠の血筋じゃ、無手を極めた儂等と対照の位置にいる上山に喧嘩は無理じゃろう」
「亜門は?」
「ここ以外のすべてのアンダーグラウンドを封鎖しておる…………正真正銘、儂等にしかできないんじゃよ、【アレ】を封じるのは。それとも怖じ気付いたか?」
「ハッ、な訳ねぇじゃん?おっさんと会ってまた強くなったんだぜ?…………けどさ、異形に会うのは初めてだしな……勝率はどれぐらいなんだよ」
「1割、じゃがお前もおる。3割ってとこじゃ」
「命張ってその程度かよ……」
二人は扉の前にたどり着く。
未だ、ゾンビ達が二人に気づく気配はない。
「【神墜し】はできるな?」
「よゆーだっつーの。ジジイこそ、【黄泉返り】わすれてねーだろーな?」
「ホザけ。現当主が忘れたら面目丸つぶれじゃ!………行くぞ」
「あぁ。……死ぬなよ」
老人の名は『小牧宗太郎』
戦国時代より続く小牧流無手術の正統継承者である。
若者の名は『小牧宗介』老人の孫であり、次期当主である。
小牧流の役目は二つ。
無手での立ち回りを極め、世に広める事。そして
妖を討つ事。