ハリー・ポッターと導く者   作:匿名希望 2

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ハウル・グリンデルバルドの記憶 7

 

 

 

 

 

ハウルが目を覚ましたのはそれから3日後だった。ハウルはすぐに昨日の出来事を思い出した。自身を庇って拷問されたティンクス、自身を庇って呪いを受けたアイリス。あれは夢だったのだ。きっと悪い夢だ。だが周りの雰囲気がいつもの寝床と違うのだ。自分のベットとはいつもの感触は違うし、なにやら薬品のような香りがする。ふと目線を下にやると見覚えのある茶色の長い髪をした女性がいた。自分の母であると理解したハウルは勢いよく起き上がった。あれは夢じゃない...。現実だ!ハウルが起き上がった振動でマリアは目を覚ました。

 

「ハウル!良かった目覚めたのね!」

 

マリアはハウルを優しく抱き締めた。マリアは泣きながら喜び、そして事情を説明し始めた。ここが聖マンゴ病院である事、キースは無事だということ。そして火事が起こった後にティンクスがマリアのボーバートンに姿現しをして知らせてくれたことなど教え始めた。するとマリアの話を遮りハウルは声をあげた。

 

「母上!アイリスとティンクスは無事なの?」

 

ハウルが声をあげると同時に部屋の扉が開いた。ガリムが袋を持ってキースと共に部屋に入ると二人は目覚めたハウルの元に走ってきて抱き締めた。

 

「良かった...。すまなかった。私のせいだ...。」

 

「兄様!無事で良かった!」

 

二人は泣いてハウルを抱き締めた。だがハウルは胸騒ぎがしたのだ。何かがおかしい。

 

「父上、アイリスとティンクスは無事なのですか?」

 

ガリムはハウルの質問に少し答えづらそうな顔をしたが、やがて答えた。

 

「ティンクスは死に、アイリスは植物人間となった。」

 

ハウルは動かなくなった。ハリーは不自然だと思った。ティンクスは手足のほとんど切り裂かれ、大量の血を流したが治療すれば無事ではすまぬとはいえ問題なかったはずだ。アイリスに至っては完全におかしい。ティンクスがマリアに知らせ治療に当たるまでどう考えても10時間かからないはずだ。ガリムはハウルの思考を察したのか少し申し訳なさそうな顔をしてハウルを見ている。

 

「父上。...もしやアイリスは治療されなかったのですか?」

 

ガリムは一瞬とても悲しそうな顔をするが、すぐにいつもの顔に戻りハウルの肩に手をかける。

 

「医師はぜんりょくを尽くしたのだ。可哀想だがアイリスは...。」

 

ガリムの左頬がほんの少し上がっている。ハウルはガリムの表示をジッと見ると隣にいた素早くキースのローブに手を突っ込み、杖を奪い、ガリムに向けた。

 

「<レジリメンス>」

 

ハウルはガリムに開心術にかけた。

 

「しまっ!」

 

ガリムは完全に油断していた。ハウルの杖は自分が扱っており、そして我が子の無事を確認し、普段の警戒心が薄れていたのだ。

 

 

すると記憶の場面が変わった。ガリムの記憶だ。報告書を書いていると両面鏡に妻のマリアの声が聞こえてきた。

 

「ガリム!ハウルと女の子が大変なの!」

 

ガリムは持っていた羽根ペンを投げ捨て、ローブから両面鏡を取り出し、事情を聞いた。すると指をパチンと鳴らし、聖マンゴ病院に移動した。マリアと再会すると抱き締めあい。ハウルとアイリスの様子を尋ねる。奥から魔法省の役人と思われる人物に事件の解明する事を命じられた。

 

 

 

場面が変わる。そこはグレンスト家の屋敷だった。ガリムは結界により無事な屋敷を見てホッとしたが、森の半分が焼き焦げ、地面がかなり湿っている。おそらくしもべ妖精が消そうと奮闘したのだろう。二人の死喰い人の屍を見つけ、色々調べていると森を燃やしたのは悪霊の炎だと知った。ハウルの才能に驚いたものの束の間、少し焼け残っている死体を調べると死の呪いをハウルが使用したという事実を目の当たりにしてしまった。

 

「...これはマズい。」

 

そばにいた闇祓い達も同じように思った。正当防衛とはいえ、許されざる呪文を使用したのだ。法律上は問題ないものの、危険人物として監視される日々が続くかもしれない。何よりマスコミに嗅ぎつけられたらハウルの一生は台無しだ。だが職務を全うせねばならない。ガリムはありのままを報告書に書き、上司のムーディに渡した。ムーディはガリムの報告書を義眼でギョロギョロ見ると無言で局長室から出て行った。

 

 

場面が変わるとガリムとムーディ、そして魔法大臣のファッジがいた。ガリムはどれだけでの収納できる魔法バックに数え切れない程のガリオン金貨を見せ、マスコミに圧力をかけ、穏便に済ませて欲しいと頼んだ。ムーディは静かに考え、ファッジは重い口を開いた。

 

「ならばしもべ妖精はともかくアイリスとかいうマグルの娘の治療を中止せざるを得んな。」

 

これは当然の判断だ。被害者であるアイリスの記憶を消したとはいえ、マスコミは既にハウルが何らかの事件を起こしたと知られたため、ただ記憶を消すだけでは済まないのだ。仮に記憶を消しても、その記憶を呼び覚ます術がないわけではない。ハウルは閉心術を扱えるものの、アイリスは閉心術など扱えるわけない。ガリムはすぐさま断った。そんな事認めるわけにはいかないと...

 

「だがガリムよ。賢いお前なら選べるだろう?」

 

ムーディは瞳を閉じたまま言い放った。もしアイリスの治療を中止し、植物人間となれば感情が無くなるのだ。つまりアイリスから記憶を奪えなくなる。だがアイリスを見棄てなければ愛する息子は殺人犯として世間に知れ渡ってしまう。ガリムは初めから理解していた。これが息子を守るのに最も最善の手だという事を、顔見知りの娘としもべ妖精の未来を奪えば愛する息子は救われる...。

 

「...息子を助けてくれ。」

 

ガリムは蚊の鳴くような声でつぶやいた。ファッジとムーディは部屋から出て行った。一人になったガリムは膝から崩れ落ちた。

 

「済まぬアイリス。私はハウルを守りたいのだ。許してくれ...。」

 

ガリムは涙を流し、四つん這いとなり、ひたすらアイリスに許しを請うた。

 

 

 

するとガリムの記憶は終わり、病室に戻った。ハウルは頭を押さえ、激しく呼吸を繰り返した。

 

「ハウル...私は...。」

 

ガリムは涙を浮かべながらハウルを抱きしめようと側に寄るがハウルはガリムの身体を小さな手で拒絶するとベッドから降り、病室から走って出て行った。キースから奪った杖を落とす音のみが病室へ響いた。ハウルは走り続け、ガリムの記憶の端にあったアイリスとティンクスの病室へ走った。そこはハウルの小綺麗な病室とは違い、四人部屋の荒んだ部屋だった。ティンクスがいたはずのベットは空だった。ハウルはティンクスが死んだと理解した。そしてカーテンで覆われたベッドが奥にある。ハウルは恐る恐る手をかけ、勢いよくめくった。

 

「アイリス?」

 

そこにいたのは起き上がり、ベッドの縁に自身の身体を支えているアイリスだった。だがそこには無邪気で暖かい笑顔は微塵もなく、冷たく目を開き無表情で一点を見つめていた。ハウルの頭ではガリムの植物人間という声がリフレインする。ハウルはアイリスとティンクスの病室を出ると脇目も触れずに飛び出し、看護師にぶつかりながらも走り続けた。ハウルは病院の屋上に出ると悲鳴のような声で泣き叫んだ。ハウルは泣け叫びながらも頭の中は冷静でひたすら自問自答を続けていた。誰が悪い?誰のせいだ?

 

 

 

『死喰い人が悪い?』

 

あいつらが僕を狙ったのは父上に恨みを持ったからだ。

 

 

『それじゃあ恨みをかったり、アイリスを見棄てた父上が悪い?』

 

違う。父上は仕事をしただけだ。恨みを買うのは仕方がないし、出来る限りの防衛策を講じていた。それに父上は僕を守るために見棄てたのだ。死なせたくはなかったはずだ。ただ天秤にかけただけだ。何も悪くない。

 

 

『飛び出したアイリスとティンクスが悪いのか?』

 

違う。二人が居なければ僕は死んでいたかもしれないし、どの道、近しい誰かは死んでいただろう。二人は恩人だ。

 

 

『弱い自分か?』『なぜアイリスを見捨てるという手段をを導き出したのか?』

 

ハウルは様々な答えを出し続けるがこの二つの疑問だけは簡単には導けなかった。

 

弱ければ誰も守れない。この世は弱肉強食。弱ければ全てを奪われ、強ければ全てを蹂躙できる。弱い僕が悪い。

 

もしアイリスやティンクスがマグルやしもべ妖精でなければ確実に治療をやめなかっただろう。グレンスト家には及ばずとも名家の家の娘なら見捨てるという答えは導かなかっただろうし、差別心がなければティンクスは見殺しにしなかっただろう。魔法省は多額の寄付をしたとしても許可しなかっただろう。つまりこの世界の思想こそが間違っているのだ。

 

 

 

答えを導いたハウルは涙を流し尽くし、空を見上げた。その時のハウルにはもう子供の面影はなかった。

 

「アイリス、ティンクス。僕は君達の為にこれからの人生を使うよ。僕は君達をそんな目に合わせた世界と僕自身を変える。何年かかっても構わない。まだよく分からないけど君達が笑って過ごせるような世界を...。」

 

 

ハウルは天を仰ぎそして心に誓った。

 

 

 

俺は必ず<公平で差別なき世界>を創る

 

 

 

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