ハリー・ポッターと導く者 作:匿名希望 2
日常
ホグワーツでの戦争から約12年前
イギリス
とある屋敷の地下室
「ハァハァ...。」
中腰の状態の杖を持った少年の美しい金髪からは到底似合わぬ大量の汗がつたい、地面にポタポタと落ちる。目には薄黒いクマができており、とても六歳児とは見合わぬ状況と様子だった。
「無様だな...ハウル。この程度の呪いも防げないのか? もう一度だ。<クルーシオ> 苦しめ」
三つの許されざる呪文の一つとして人々から恐れられる呪いを息子に使う。だが一度でも三つの魔法を一度使用すると魔法界最高の監獄「アズカバン」に無期懲役となるはずなのにこの父親は捕まる事は無い。
「<プロテコ・マキシマ> 盾よ守れ 」
ハウルと呼ばれた少年は大人でも扱える者が少ないという超高難度魔法である盾の呪文を使う。当然六歳では習得はできるような魔法では無い。緑の閃光は青い盾に遮られるが、少しずつヒビが入り、盾は耐え切る事ができず、少年を襲う。
「あァァァァァァ‼‼ 」
悲鳴をあげ、想像を絶する痛みが全身を包み込み、手から杖を離してしまう。ハウルは地面に倒れ苦しみ転げ回る。それを見た父親が呪文を中断する。
「今日はここまでだ。手加減したとは言え、許されざる呪文だ。三秒も耐え抜いたのは称賛すべきだ。盾の呪文の腕はまだまだだが、あと五年もすれば完全に習得できるだろう。明日も稽古をつけてやる。よく体を休めておけ。」
父親は倒れて動けない息子を置いて、地下室から出る。ハウルの父親はイギリスでも指折りの闇祓いだ。闇祓いとは法律で禁止されている呪文を使用する闇の魔法使いを捕らえる職業だ。当然許されざる呪文も法律で硬く禁じられているが、息子達を自分の後継ぎにするためとして、特別に許可を得ている。普通の魔法使いの子供は親から魔法の訓練は受けないものだが、一部の由緒ある魔法家では稀に行う事がある。第三者からの視点から見れば、この訓練はただ虐待のように思われるが、双方は虐待と認識していない。父親であるガリムは息子に呪いなど使いたくはないが、恨みを買う職業柄のためいつ襲われるかもわからないし、不思議ではない。本当は訓練の代わりにマグルの遊園地などに連れて行ってあげたいが人が多く、危険である。自分もいつも家にいるわけではない。妻も大変優秀であるがいつも見守り、警戒するなどは不可能に近い。そのため自衛のために四歳の頃から魔法を叩きこんでいた。ハウルもまた父の想いを理解し、自ら訓練を求めるほどであるし、父のいない間も一つ下の弟と共に地下室に籠り魔法の鍛錬をしていた。
***
食卓には食欲をそそるこんがり焼かれた鳥肉にトマトとレタス、コーンの新鮮なサラダに透き通るようなスープ、そして自家製のパンが並べてあった。イギリスでは食事がマズイとして有名だが、この家は除く。母であるマリアは賢く、料理も家事も得意でさらに子持ちとは思えぬほどの美しさであり、理想の母親像を思わせる母であった。ある欠点を除いて...。
「ハウルの盾の魔法のセンスも素晴らしい。まだ早いかと危惧していたが、杞憂だった。とても二日前から取り組み始めたとは思えない。」
グレンスト家では食事の時間は明るく、誰からともなく会話が始まり途切れることが無い。ありきたりな家庭だが、グレンスト家が全員揃う時はほとんど無い。ガリムは腕のいい闇祓いであるため、出張が多い。ひと月の間家に帰ってこない時もよくある。名家の家では珍しくグレンスト家に仕える屋敷しもべ妖精達も食卓に並んでいる。コウモリのような長い耳に大きなギョロギョロした目をしている小さな生き物だ。当主であるガリムは差別や偏見を持つ事は嫌う。残飯しか与えない奴隷のような扱いを受けるのが当たり前だが、ガリムは食卓に家族と一緒に並ばせる。
「あら?そうなの!! 盾の呪文はかなり難しいのに‼ 凄いじゃない‼」
マリアは食事中なのに隣にいるハウルを抱きしめ頬ずりする。
「ちょっ、母上。食事中だよ。」
ハウルは頬をピンク色にし、照れながらも恥ずかしいのか嫌がる。
「何なのこの生き物可愛い‼ 」
マリアは全てお見通しであるためハウルを離さない。
「マリア...ハウルの言うとおりだ。食事中だ。いささか品が無いぞ。」
渋々ハウルを解放した。母であるマリアは息子達を溺愛している。ハウルは息子ながら将来母が自分から子離れできるのかを不安に思っている。そんな時に弟であるキースが下をうつむいている。あれは自分も褒めて欲しいが、兄であるハウルに比べるとどうしても見劣りしてしまうため、言えずにいる様子だとハウルは感づく。
「それより父上、母上。今日、キースが失神の呪文をマスターしたんだよ。」
ハウルとキースは闇の魔法や対抗できる魔法を父からと日常に使える呪文や変身術を母から教わっている。その時間以外に二人でよく魔法の練習している。しもべ妖精であるティンクスに教わっているのだ。元々しもべ妖精は杖を使わずに魔法を扱える。そこらへんの魔法使いでは太刀打ち出来ない程に。だが誰かに奉仕をしたいという本能が強いため、やり甲斐のある立派な家に世話になることが多い。そのせいで奴隷のような扱いを受けてもそれを受け入れてしまうのだ。
「そうですよ。キースお坊ちゃんもかなり筋がよろしいんですよ。」
ティンクスはハウルの意図を感じ取りキーキーとした甲高い声で後押しする。
「そうだったの⁉ キースもやるじゃない‼ 」
マリアは今度はキースを褒めちぎり始める。
「失神呪文を覚えたのか...。五歳で憶えられる魔法ではない。見事だ。その魔法は使い勝手がいい。」
ガリムも不器用ながら褒める。
「兄様に比べたら大したことないよ...。」
キースはサラサラの銀髪でハウルと同じ黒い目をした可愛らしい顔をしている。ショ○コンの人間から人気がでそうな顔をしている。褒められるが自身の才能は兄に比べて未熟だと理解しているからか素直に喜べない。
「僕が失神呪文を覚えたのは今年だよ。(本当は四歳)キースはまだ五歳だから僕より優秀だよ。」
「そうね。弟の事をよく見てるわね。ハウルは優しい子ね(嘘をついてまで励ますことに) 」
キースはあまり自己主張が得意では無いためハウルはいつもキースの代わりに口を出したり、かばったりするのがいつの間にか当たり前になっていた。キースもまたハウルが自分の代わりに意見を言ってくれることに常日頃から感謝し、五歳の時にはすでに兄を崇拝していた。