他のIS二次SSはいくらでもあるので、もしこのSSでスコップ爆砕しても、頑張って自分の気に入った作品を探し出してくださいね。
メインの進行について(重要!)
真面目に考察や軍事的な事を時折混ぜつつも基本はネタに走ります。
このSSの方針
・原作キャラ周りの欝・シリアス要素を出来るだけ排除
・ラブコメ成分多め(ワンサマーがラブコメします
・出来れば原作での無茶のあった部分の修正
・出来るだけ原作キャラのサポート・フォローに回る
・他のIS二次ではあんまり書かれてない内容や組み合わせ、物語の展開を試みる
が主目的(優先度が高い)です。
副次目的(優先度が低い)
・出来るだけ原作キャラの魅力を増やすように尽力する
通常タグ・警告タグで書ききれなかった注意事項
・通常パートでちょくちょくおフザケが入る(パロネタ・微エロネタ)
・欝・シリアス要素排除と原作での無茶のあった部分を修正するので、結果何らかのフラグが折れて、一部原作イベントが盛り上がりに欠ける場合があるかもしれない
・IS自身やIS用の銃器よりも人間様の銃器の方がしゃしゃり出てくることもある
・大量には無いと思うけどミリタリー系(?)の用語が入ってることがある
ググればすぐに出てくるので、気になったら検索
・特に嫌われるような行動は基本取らないので原作キャラの好感度が最終的には高評価になりがちです
・オリ主と原作キャラの恋愛・多角的関係あり
・ガンシューネタやマイナーゲーネタがあります(※知らない人には何も感じない程度)……が、これわかる人いるだろうか……
※ガンシュー・マイナーゲーネタは必ず本編に関連、もしくは何らかの伏線が含まれています。意味は必ずあります(大事なので二度言いました)
あ、あと題名の意味がわからない人はno matter whatでGoogle先生に聞いてみると大体言いたいことはわかると思う。細かい文法はぶん投げてますので、造語か何かと思って頂けたらありがたい所存であります。
一部元ネタは開示しております
詳しくは活動報告の『区切りが良いので』から
以上
それはもう、唐突としか言いようが無かった。
いつものように外国に行き、いつものように行きつけの射撃場に行き、しばし至福の時間を味わっていた時だ。
突然、自身の後方から発砲音がすると、いつの間にかうつ伏せに倒れていた。そして視界にはコンクリートの他に赤褐色で粘性を帯びた液体がドクドクと流れ出していた。なんだか周りが騒がしいが、すぐにそれは聞こえなくなり、だんだんとまぶたが重くなっていき、抵抗する間も無く目をすっと閉じたのだった……
『起きろよ起きろよ点呼だ起きろ、起きろよ起きろよ点呼だ起きろー』
突然の声に意識を覚醒させられ、自分はベッドの中にいることを自覚させられる。
「……起きないとな」
そう言いつつも目は開けず、意識もまだ朦朧とする中おもむろに手を伸ばした。
『起きろよ起きろよ点呼だ起きろ、起きろよ起きろよ点呼ダ』
ピッっと電子音がなり、アラームが無くなる。そして、勢いをつけ、起き上がると同時に布団を半分に畳む。
「……」
意識が覚醒するにつれ、自身の視界もクリアになり、部屋の全貌が見渡せるようになる。勉強机、通学用のカバンにかなり丈夫なボストンバッグ、そして壁に飾ってあるエアガンに壁に立てかけてるエアライフル。今年で一応16才だが、最早なんちゃって武器庫になりそうな自身の部屋を見て、クスリと笑みを浮かべるが……ついさっきまで見ていた夢の内容もはっきりと把握することができるようになってしまい、笑みが消え、眉をしかめる。
さっき見た夢は紛れも無い、自身の最期。死因は夢を見た限りでは銃の暴発による不幸な事故。
ここまであっさり死なれると、よくもまあこんなに呆気無くくたばりやがった物だと感心する。
この夢はほぼ定期的に来る。最初は生き返った直後、次は小学生の始めで、前回は中学生の始めにだ……まるで、二回目の人生でも同じ死に方をさせないかのように。
「もうそれは魂単位で刻まれてるから無理だっての。さあ今日も1日、頑張りますかー……」
今日から二度目の高校生、決して油断は禁物だ。
用意を迅速に済ませた後、学校指定のカバンに筆記用具と貴重品等を入れ、カラビナでカバンと持ち手と腰のベルトに繋ぎ固定して、出発。
自宅から自転車で最寄り駅に行き、事前に購入した電子定期券で改札を通過し、行きたい乗り場にいく。
そして、乗り場に着くと電車が止まっていて、それに躊躇なく乗り込み、やがて発車する。
電車は1駅目、2駅目に続き、3駅目で停車した。自分は電車から降り、違う乗り場へと向かう。
違う乗り場にたどり着くと、予定通り電車は停車していた。それに乗り、学校の最寄り駅へと向かう。
これら一連の動作はまるで何年もの間、通いなれたように素早く、効率的であった。
無事、最寄り駅にたどり着き、徒歩で数分のところに高校があった。
正門に入り、玄関を抜け、階段を上り、何事も無く教室のドアを開ける。
二回目と同じ街、自宅、小学・中学、そして二回目になっても変わり映えしない友人と一緒に受けた同じ高校ともなると、記憶が多少薄れていても体で覚えているものである。そして、二回目でも友人でなるはずであろうクラスメイト達もそこにいた。
小学生の頃、初めてこのような状況になった時には煩わしいとも思ったこの境遇、今思えばなかなか幸福な環境ではないかと思っている。
なにせ、向こうは自分のことを知らないが、こちらは前世の情報ではあるがある程度はクラスメイト達のことは理解しているからだ。だから、コミュニケーションを取る際、相手との距離を大変調整しやすいのだ。
もちろん、前世の情報と食い違う事もあったが、取り分け経験の長さ……つまりはコミュニケーション力ではクラスメイト達よりも少なくとも一歩はリードしていると自負できる。このようなアクシデントに対処もでき。その結果、前世の時よりも遥かに快適な人生を満喫することが可能となった。
しかし、一つだけ疑問があった。
学生時代の記憶しか鮮明に思い出せないのだ。
それ以外の記憶といえば夢で見る自身の最期のみ。薄ら寒いモノを感じるが、それ程までに社会人になったら人生の暗黒期にでも入るのだろうか?
そんなことを考えながら、前世の時に一番世話になった友人と学力がトップクラスのクラスメイトを探そうとして、教室を見渡したその時であった。
気づいてしまった。座席の端の奥、そこにいる二人の少女。彼はその少女達には一切の記憶の覚えがなかった。片方が容姿端麗の威圧感漂う美少女でもう片割れはウサミミをつけていたら嫌でも覚えているはずだ。だが、覚えていない。その欠片も何も無いのだ。
目が合わないうちに二人を視界から外し、教卓に向かう。教卓の上には席と名前の一覧があり、例の二人が座っている位置を、特に端の方を先に調べる。
『織斑 千冬』
『篠ノ之 束』
そして織斑の前の席は……
『岡部 友章』
自分の名前が刻まれていたのだった。
うわぁ……と言いたくなるような気持ちを抑え、席に座る。
後ろの方は特に変わった様子でもないので、当分はこのまま静観を選択することにする。
Rも残り5分で始まりそうなので大人しく待っておくことにする。クラスの誰よりも例の二人とは距離が近いようで、途切れ途切れに二人の会話が聞こえてくる。
「ちーちゃ……IS……思っ……んだけ……装は……にするの?」
「……銃や盾のよう……軟弱……刀の方が良いな」
「さっすが……高速化された戦闘……遠距離……身重になる盾……鉄くずレベル……その戦術は正解……」
ただのゲーム何かの話のようだが……何か銃器が貶されているのを偶然聞いてしまった。
自分の中で少しだけ苛立ちを覚える。悪い癖だが、自分は極端な銃器スキーである。
前世では大学時代、しょっちゅう射撃場に足を運んでいるし、レプリカのジュラルミン防盾とSMGや拳銃やマシンガン、ショットガンとグレネードを持ったり、時にはスーツにコートを羽織って装備は拳銃のみなどのなんちゃってエージェントや特殊部隊をサバイバルゲームでやるほど好きだ。
だからこそ、織斑さんの発言には眉をしかめる、だがそれに対する不服を言ってしまうと同時に彼女の近接スキーを汚しているとも言える。だから言わない。だからこそしっかりと胸の内に抑えておく。大人なんだ、ここは我慢だ。
「まあ、銃弾なんて銃口向けられても射線から離れれば問題は無い。あとは、装填中に寄って……斬るだけだ」
この織斑さんの一言がいけなかった。抑えていた自分の理性が外れていた、無意識に撃鉄を上げるように息を吸い、そして彼女に銃口を向け、トリガーを引いてしまったのだ。どうせ社会的身分は学生さんだし何も問題は無い。
「じゃあ、連射で押し切るか予備に切り替えて射撃を継続的に行なって寄せ付けなければいいじゃないか」
ムッ、といった感じでこちらを見る織斑さん。ウサミミをピクッ、っと動かし見下すように見ている篠ノ之さん。
うわぁ、案の定だった。特に篠ノ之さんに至っては「テメェに発言権なんぞ与えちゃいねぇ」みたいな顔をしてら。
織斑さんは……まあ、少し前の自分ですよね、思いっ切り。
「……いや、すごいボロクソに銃器について言われたもので……」
さらに、二人とも不機嫌に……そうですか引っ込んどけばいいんでしょ引っ込んどけば……
「お前、ちーちゃんは剣の達人だから言えるんだ。素人の分際で勝手な口叩くな」
変更……絶対に引かねー。引いてやんねー。射撃オタを見くびるなよ……
「じゃあ、織斑さんは剣道かなんかで?」
「ああ、全国で優勝してきた。」
「どう、これでわかった? しかもちーちゃんは中学時代ずっと優勝だから三連覇だよ」
自分からの質問に律儀に答えてくれた織斑さん。いきなり話振られて少し肩が強張った気もするが……
あと、篠ノ之さんは胸を張らんでいい。メロン様溢れるから。
「実は、自分エアライフル競技とエアピストルで優勝しました……」
と言うと織斑さんは何故か獲物を見るかのような目で見だし、篠ノ之さんは暫く無言だったが、「ハッタリじゃない……しかも日本記録更新ッ……!」と呟いて歯軋りしていた。
一応、新聞に乗ったんだけどなぁ……『最年少でダブル優勝!』……って。競技自体がマイナーだからかねぇ。
前世ではあんまりできる時間や環境に恵まれなかったが、二度目の人生ではうまいこと立ち回って何とかできて本当に良かった。そのおかげで前世とは違った異常も見つかった訳だし。
「ふうん、じゃお前の事は一応しょうがなく認めてあげる」
と、嫌な顔をされながらも篠ノ之さんにはそんな事を言われた。え?なんで?射撃キチだから? ぐぬぬ……
■ ■ ■
結論から言うと、現状ではあんまり変わっていなかった。
ただ、前世とほぼ同じ生活サイクルの中に二人が新たに加わったぐらいである。
そうなるようにできる限りの努力をした結果でもあるっちゃあるけど……
二年前に高校で初めて二人と顔合わせした時から思っていたことだが、織斑さんも篠ノ之さん、二人は同年代の子達と比べて最早隔絶した能力と精神を持っている。
例えば織斑さんは圧倒的な運動神経と剣才、そして獣の如く鋭すぎる直感を持っている。
篠ノ之さんは織斑さんと比べてみれば身体能力は見劣りするが、他の追髄を許さないほどの頭脳と知識量、学術的センスを持つ。そして両者共に美少女。
欠点らしい欠点と言えば、その余りある才能と成熟した精神のおかげで誤解や反感……申し上げにくいが羨望や嫉妬を誰からも受けてしまうといった感じか……良くも悪くも彼女達は他の人達とは対等に話し合えないのだ。
だから入学当初、クラスで孤立しかけてしまっていた。実を言うと自分もあのちょっとした会話が原因で余波を思いっきり受けている。
昔ならばもうとっくに詰みの状態にまでなって灰色の青春でも送っていたのだろうが、こちらはクラスメイト達の性格や傾向なんかはお見通しなので、誤解を解くとともに、二人についての事も理解してもらえるように懇切丁寧にお話をさせて貰い。危うくもあったが、なんとか解決した。
そして、織斑さんと篠ノ之さんを加えた学生生活は……とても刺激的であった。
1年生での出来事のみを語るならこんな感じかな?
体育での話だ、中学生の頃から本格的に自分の将来を見据えての体づくりに取り組んでいたので、スポーツテストではその運動能力を十分に発揮でき、特にハンドボール投げとシャトルランは満足のいく結果となった。
ただ、体づくりの結果では無く、織斑さんとの競争の結果……なのが真実なんだけどね……
きっかけは初日の体育館内での体力テストでの出来事だ。
織斑さんはその身体能力で瞬く間にクラストップの座に君臨したのだが、そこに自分が食らいつき、織斑さんの記録を塗り替えたのだ。
これに対して織斑さんは自身の闘争心に火を付けたらしく、次のグラウンドでの50m走では織斑さんと併走、壮絶なデッドヒートを繰り広げつつも織斑さんはこれを制する。
次はハンドボール投げ、これは自分が織斑さんの記録を更新することで決着が着いた。
で、最後は20mシャトルラン。
織斑さんと併走しつつスコアは80、90、100へと増えていく……
110を超えると流石に両者共に息が上がっていき、150を超えるとほとんど意地の張り合いで走っているような物になっていた。
結局、両者共に同スコアで終了。クラスメイト達の拍手の中、自分と織斑さんは二人してその場に寝転んで休息を取っていたのであった。
あの時はお互いに顔を見ながら笑った物である。
後は……若気の至りで新しい部活を創設しようとしたぐらいかな?
その名も射撃部……まあ、ある意味布教活動みたいな物である。
顧問の教員や部活の場所、部員などの規定の条件を問題無く満たし、書類を提出したのだが……何故か受理されない。
――それもそのはず、実はある教員達がその書類を握り潰していたからだ。
理由はまあ、よくある内容であった。「銃は危険」だとか、「安全性が」とか「そんなことをする奴は犯罪者」だとか……そんな感じ。
いくら正論や安全対策を提示しても出てくる言葉は「でも、」「もしかしたら、」「学生の意見なんて、」で相手にしてくれない……
この様子を見かねた篠ノ之さんはそろそろ諦めるように自分に促すのだが……
――だが、このまま黙ってはいられない。
前世での学生時代、特に大学での知識をフル動員し、パワーポイントとそれに伴う資料を作成、顧問の教員にお願いして教員達や校長先生を集め、懇切丁寧に説明をする。
結果、例の教員達以外の賛成を貰い、なんとか射撃部を創設する事が出来た。まさにゴリ押し。
この様子を見た篠ノ之さんの驚いた顔は見ものだったなぁ……
この後から、織斑さんと篠ノ之さんとの交流が更に増え、ちょくちょく織斑さんの弟君や篠ノ之さんの妹さんとも会うこともあった。
それらの出来事から約二年が経ち、三年生になる頃には織斑さんと篠ノ之さんとは一切関わらない人達が増えてしまってはいるものの、まあクラスメイト達相手にでも事務的な会話程度ならば可能になった。
まあ、そこからどうするかは二人次第な為どうとでも、としか言えない。
ちなみに織斑さんは前年度も前々年度も剣道で全国優勝。五連覇という前人未到なレベルに達してしまっている。
自分は前年度はライフル競技が優勝、前々年度はピストル競技で優勝できた。
今年から火薬入りの本物の銃での競技が可能になるので、熟練した自衛官などの強力な相手との熾烈な争いだろうと予想される。
射撃なんてスポーツは日本では無いのも同然なのでメディアやマスコミは一切報道しないのです。まあ、銃に抵抗があるから当然だし、銃社会=危ない=悪の等式が続く限り、日の目を見ることはないだろう。
「ちーちゃん〜、アッキー」
「む、また何かやらかす気か?束?」
「束さんだって毎回毎回何かやらかすわけじゃないよ……」
「そう言って何も無かった事例なんてなんだろ……
」
「ちーちゃんひどぉい、今日はいつにも増して愛が多いねっ!やっぱり束さんとちーちゃんは結婚……」
「同姓愛はお断りだ」
いつもの寸劇、オチは織斑さんのアイアンクローで決まる。
「ち、ちーちゃんの愛が重いぃー!もう頭がおかしくなるぅー!パンクするぅぅ!」
「おかしくなれ、いやむしろ爆ぜろ」
「らめぇぇぇ!」
「で、なんだい? 篠ノ之さん?」
天才を通りこして天災へとランクアップなされた篠ノ之さん。また何かを思いついたようで、朝からテンションがクライマックスな事に。
篠ノ之さんと日常的会話ができるようになった辺りから、こうして度々何か発明したり理論が出来上がったしたものを自分と織斑さんに見せる為に自宅に招待する事がある。
入学当初、ISとはてっきりゲームか何かの略称か、作品内での架空の言葉だと勘違いしていたが、篠ノ之宅にて初めての発明品を見せてもらったのがその例のISだった事は未だに忘れられない。
なんというか、篠ノ之さんの発明品や新理論の数々はまさに新鮮で童心に帰った位にワクワクする。ISなんかはその代表格だろう。なんせその身一つで空が飛べ宇宙服替わりにもなるだなんて、傍から見れば妄言とも取れるような物なのだが、篠ノ之さんは大真面目に作って、しかも試作まで漕ぎ着けているのである。資金源がどうの、法がどうのとかそんなちゃちな細かい事が吹っ飛ぶレベル。
そんな友人の姿を見て目頭を押さえ、アイアンクローをかける織斑さんは嫌そうに見えるが実はそんな篠ノ之さんがとっても大好きなのである。うん、わかってる。自分は理解してますから。
篠ノ之さんが兎のような人ならば、織斑さんは狼……いや、山猫の方がしっくりくるね。
「やめろ岡部、そんな生温かい目で私を見るんじゃない」
「岡部はわかってます。それが織斑さん、貴女の不器用な愛情表現だって事を……」
「そうだよアッキーもっと言ってあげて!そして束さんを助けて!」
一瞬、愛情表現が弱まったのかこっちに逃げ出そうとする篠ノ之さん。
織斑さんはある程度のボーダーラインを超えると実力行使に打って出る傾向があるが、篠ノ之さんのおかげでそのボーダーラインが大体把握済みなのでこっちはイジり放題。それに加えて、大抵は篠ノ之さんが先に織斑さんのボーダーラインを突破するので篠ノ之さんが必然的に折檻を受けて、それで織斑さんは満足するのがさらにイジりやすさに輪をかけている。
「逃がさん、お前だけは」
アイアンクローから離脱せんとする篠ノ之さんに再び織斑さんの篠ノ之さんに向けての愛情表現が始まり、メキメキ……ウミミャァァァ!!と、とても人類が発してはイケナイ音や声を発する。でもってそんな公開処刑の様子を見て、今回も本題に入る間もなく。また、篠ノ之宅に行って実際に見てからのお楽しみなんだろうなぁ……と、思ったのであった。
■ ■ ■
「……ガチの天災じゃねーか」
織斑さんと篠ノ之さんのキャッキャウフフタイムが終わり、篠ノ之宅に到着後、彼女の研究室で見たものといえば……どうも、全世界で艦船や潜水艦、航空機などの軍隊がそこらじゅうを動き回っているという情報と某二ヶ国の保有する各ミサイルサイロに動きがあったという情報だ。
どうも、サイロ内では何故か正規軍や特殊部隊などが無理矢理サイロ内に突入し、サイロ内の確保が急ピッチで行われている。通信記録を見た限り、小規模な戦闘が行われているようで……
当然、これらの事柄は衆目の目には晒されていない……というより、これは公表できない。
もし公表したら、それこそミサイルサイロを乗っ取った奴らの思うつぼだからだ。
事態を重く見た束さんは、万が一、長距離ミサイルが日本に飛来してくる事を懸念し、こっそり監視をして欲しいと自分達にお願いした。
「束、いくらなんでもこの冗談は笑えんな……」
いつにもまして鋭い目で篠ノ之さんを睨む織斑さん。
エイプリルフールでもこんな事言わねぇよ。
「ううん、本当の話。だから呼んだのちーちゃん達を」
しかし、篠ノ之さんもいつものようにポヤンとした空気がなく、稀に見る真剣さで織斑さんと視線を交差させる。
「しかし!? 私はそんなことは出来んぞ」
当然のように織斑さんは反論するものの、あることに気づいてしまった。
「……ISを使うのか」
「うん。さっすがアッキー。その通りだよ。」
そう、確かにIS……正式名称インフィニット・ストラトスならすぐにミサイルに接近し、迎撃なんてふざけた事が可能だ。
もともと宇宙進出用の装備だ。宇宙空間上にある邪魔なスペースデブリを排除する為の装備もあっておかしくは無い。
ISに近接武器をもたせている理由はは無重力下でデブリを効率良く排除し、高速で飛んでくる破片などにも最も効率良く対処できる……らしい。なんでそうなるかは理解しがたいけど、ついでにそのISデザインが騎士甲冑なのかは理解に苦しむが……
ただし致命的な欠点として、女性にしかIS、正確にはISの心臓部であるISコアが反応しないらしくそこら辺の問題の解決に四苦八苦していた……ってところまでは覚えている。
「束、お前!?」
「篠ノ之さん、でも……それだと!?」
「いいんだ、アッキー。それで束さんの夢と引き換えにアッキーやちーちゃんいっくんや箒ちゃんが守れるのなら……」
これだけの事を言うんだ。つまりはそれなりに気持ちの区切りもついてるってことか。
珍しく、篠ノ之さんのメカメカしいウサミミも垂れて、ロップイヤーみたいになってるし。たぶん、どっかで制圧が間に合わない事を予想しているんだろうな。
……つーことはだ、束さん自身はミサイルサイロの数については言及していなかったが、少なくとも1つや2つのミサイルサイロの奪還ではないのだろう。
「ごめん、篠ノ之さん。自分は篠ノ之さんの気持ちを踏みにじってしまいました……」
「……そうか、なら私はそのISに乗ろう」
「ならちーちゃん。ISに乗るためのスーツを着て、IS『白騎士』に乗って」
そう言うと、量子展開でISスーツと真っ白なISが出てくる。
量子展開については前に篠ノ之さんが上機嫌で説明してくれてついでに実験もやってくれたのでもう慣れた。細かいことはいいんだよ。
「と、言うわけで。アッキーは別室で待機だね」
はいはい、此処から先は見せられないですもんね。
篠ノ之さんに促され、織斑さんの生着替えが見れない別室まで誘導された。
篠ノ之さんに誘導された先の部屋には何故かISが……色は、白騎士のペイントされた白色というよりは金属特有の光沢のある白、つまりは未塗装品。
……と自分があっけにとられる内に篠ノ之さんはIS周りに接続されているであろうコンピュータのディスプレイを見ながら、キーボードをタイプしていく。このままボケっとしていても仕方が無いので篠ノ之さんの近くに歩き出す。
「はーい、アッキー。ちょっとこの子に触ってみて〜」
めまぐるしく動き回るディスプレイと格闘しながら、唐突に変な事を言う篠ノ之さん。
ISは女性にしか反応しないのでは?……と疑問を抱きつつ視界内に篠ノ之さんとディスプレイを何度も往復したものの、ISの方へと歩く。
そのISは白騎士の様に若干露出度が高いがまさに騎士の甲冑のようなデザインではなく、全身が装甲に覆われている、露出なんて無かった。しかも丁寧に傾斜までつけて。各体の部位には所々穴やプレート、姿勢制御用のちょっとしたスラスターが設けられてもいる。
頭部は白騎士の様なバイザーではなくフルフェイスメットのような物で何故か完全な丸型ではなく丸型を帯びた四角形みたいな感じ……
まあ、現実逃避はやめてとっとと触ることにする。
「で、触ったけど何か変化でもあった? 篠ノ之さん?」
「……」
返事が聞こえていない。コンソールに意識を集中させているのだろうか?
「篠ノ之さーん。返事してー」
「……」
まだ、返事は無い。
これは直接篠ノ之さんの所に行ったほうが良さそうだと判断する。
「もう……そっちに行きますよ!」
と、ISから手を話して篠ノ之さんに向かおうとしたが後ろから誰かに服の裾を掴まれた。これは織斑さんこれは織斑さんこれは織斑さんこれは織斑さん……
「アッキー! 成功したよ! たよ!」
子供みたいにはしゃぐ篠ノ之さんの様子ですべてを理解してしまった自分は諦めて振り向くと……
『……』
無言でこちらを見下すように見るさきほどのISがいたのだ。ちょん、と服の裾を掴んでるのでIS的には小さな子供の上目遣いのつもりなんだろうがこれは普通に怖い。
「……まさか、中の人が……」
『……』
自分呟きに反応し、中に誰もいませんよ、と言いたげに服の裾から手を……マニピュレータを離して一歩下がってから跪く。そして胴部と下半身の装甲部を真ん中から外側にスライドさせる。
「……マジかよ」
『……』
どう?、と言いたげに首をかしげるIS。ものの見事に現実に叩き落してくれてどうもです。
なんともショッキングな光景に立ち眩みを起こしそうな時、後ろから足音が聞こえてくる。
「にゃはは……これは流石の束さんも予想外だね……」
振り返ると、いつの間にか白衣に着替えていた篠ノ之さんの姿が、珍しく苦笑いなんてしてるのでホントにビックリしているんだろう。
「篠ノ之さん。ISは女性にしかの反応しないんじゃ……」
「束さん超頑張った」
「具体的には……?」
「おおよそ二年ぐらいの間にISコア造りまくった」
「じゃあ、自分以外の男性もISに」
「ん〜、多分無理かも。下手したら永遠に男には反応しないのかもね」
篠ノ之さんはその子も君にしか反応しないだろうし……とも付け加えた。
確かに篠ノ之さん超頑張ってる。
「じゃあ、ISは欠陥機になってしまいますよね」
「そうだね。ISは女性にしか動かすことができない正真正銘の欠陥機。でもISの出力と汎用性は世界のどのような兵器よりも凄い。だから一気に革命が起こるね」
「具体的には?」
「戦争は変わって、もしかしたら、もしかすると……男尊女卑ならぬ、女尊男卑到来? にゃははは……」
やっちまったと言わんばかりに自分から目線を外し、苦笑いのまま、後頭部を掻いている。だがしかし、女尊男卑はねーよ流石に。
――そして自分は重大な事実に気づいてしまう。
「女尊男卑云々は流石にねーだろ……じゃあ、戦争の花形はISに?」
「うん、そうなる」
「じゃあ……ISって的としてはかなり小さいよね」
「うん、既存の兵器に比べたら小さいね」
「どうやってISに当てるの?」
「近距離まで詰めないと話にならないし、距離を保つのは困難だね」
「結論」
「機動力に物を言わせて、すれ違いざまの近接攻撃が一番当たる。つまり機動力と近接武器最強伝説。銃器と装甲と盾はくず鉄以下」
あ、詰んだ。
「で、話を戻すけど。アッキーもこの子に乗って、ちーちゃんの援護に行ってくれないかなぁ……?」
篠ノ之さんに促されたので、ISに近づく。すると、ISが自分の脇にマニピュレータを入れて自身に招き入れる。そして、ISを装着すると自動的に開いていた装甲が閉じ、不可視だったバイザーも見えるようになった。
「へぇー、ISってこんな感じなんだ」
自分の呟きに答えるようにピロン! と電子音がなった。
「あらら、この子。アッキーにゾッコンだね!!」
篠ノ之さんの言葉にまたピロン! と電子音で返す。
「じゃあ、最初にこの子がいた場所に行って。装備を装着するから」
篠ノ之さんの言葉に従い、ISが置かれていた場所に戻る。別になんのことはないただ歩いてISが置かれていた場所に戻る。
「じゃあ、ミサイル対策に用意した対空迎撃用の装備をつけるね」
と、言って。ロボットアームで自分の背中に何かを取り付けられる。一瞬、ずしりと重量を感じたが、すぐにISが調整してくれた。
「後は……自衛用火器も付けておくね」
そう言って今度は臀部の少し上辺りに何かが取り付けられ、次に右腰に拳銃が取り付けられた。
「なあ、何を取り付けたんだ?」
「今から説明するね」
篠ノ之さんはコンピュータのキーボードを叩きながら説明する。
「まずは背中に取り付けたのは40mm対空電磁加速砲。右と左、それぞれに一門づつ装備してるよ」
自身のバイザーからそれのスペックが表示される。
「炸裂弾を積んでるから、おおまかに狙えばいいよ。後は……大体わかるかな?一回展開してみてよ」
そう言われて、電磁加速砲を展開する。すると視界には映らなかった砲身が右左両方共に、前に出てきた。そしてグリップとトリガーが砲身下部から出てきた。どうやらランチャーのように撃つみたいだ。炸裂弾が撃てるのでコイルガンなのかね?よくわからん。
「いいよ。電磁加速砲を収納して、次は盾を取り出してみて。あ、その拳銃はブラスターガン。まあ、ざっくりいえばビーム兵器」
篠ノ之さんの言うままにバイザーの表記に従い、対空電磁加速砲のグリップを持ち上に限界まで上げた後手を離すと、自動でグリップを収納してから砲身が短くなった。
そして、左腕を後ろに回すと盾の持ち手のようなものがあったので持って前に出して構える。それと同時に腰のブラスターガンに右手を回し、取り出して構える。
「うん、それで問題ないね。じゃあ、予定の集合ポイントに向かって」
装備を戻すと同時に地下道が現れる。
「地下を通って、海底に出てからのテイクオフの予定だよ。ミサイルの迎撃作戦中は束さんがオペレートナビをやるから」
そう言って当然のように道を開ける篠ノ之さん。え?飛び方知らんけど……
そう思った時、突然体が浮かび上がる。突然の未知の感覚に驚いていると。
『……♪』
ISの嬉しそうな電子音と同時に急に発進したのであった。
■ ■ ■
ISが自分の意図とは関係なしにスラスターを噴かして海底に続く地下道を駆けていく。
通常の乗り物ならば、確実に強烈なGがかかっているが流石次世代機IS、圧迫感なんてものも無く、ただ突き進む。やがて、海水の中に突入しそのまま海底に到着するとようやくISは一時停止する。
『♪♪』
ねえねえ?楽しかった?と言わんばかりに電子音を2回鳴らす。
正直に言えばいきなりジェットコースターに乗った気分である。つまり、心臓に悪い。
……と、その時、通信が入る。
「ちーちゃんの白騎士はアッキーのよりも巡航速度は早いから、もう集合地点に付きそうだね。アッキーもそこに行ってちーちゃんと合流して」
「了解した」
そう言うと通信が切れる。それと同時に視界の左下の隅にうつっていたマップにマークが付けられ、上にはその方向を指し示す矢印が。
『♪』
気が利くでしょ? と言いたげに電子音が鳴った……ってまさかまさか。
「じゃあ、織斑さんのとこに……白騎士と合流しようか?」『♪』
電子音が鳴った後、ISはスラスターを再び噴射、海面へと上昇し、やがて海上に躍り出る。
その頃になるとやっとこさ感覚に慣れるが、未だに動かすことはできない……
「こうもあれだと多分自分ではなくてISの自動操縦かね……?」『〜♪』
今度はピロン! という音では無くファンファーレが鳴った。
「正解って訳かい……」
最早ツッコミどころ満載である。篠ノ之さん曰く凄い懐いてるみたいなことを言ってたが、このIS、確かに相当人懐っこい。しかもこちらの言葉と意図を理解できている。
まさかアニメや漫画みたいにアンドロイドか女の子に変身、そしてラブコメへ……なんてことにはならないよね?
……あれ?その法則でいくともしかして自分か他の誰かがラブコメするんじゃね?
多分、そんなことになったら……篠ノ之さん爆笑するだろうなぁ……などとしょーもない事を考えながら、織斑さんとの合流を急いで向かったのであった。
「む、遅かったじゃないか」
織斑さんと合流したのは、出発してから僅か数十分後のことであった。
移動中にも刻々と状況がわかってきている。篠ノ之さんの情報というか予想通り、ミサイルサイロの様子がどんどんときな臭くなってきた。
これに対し、国連と米国、海上自衛隊は付近に展開していた護衛艦や機動艦隊を展開させ、衛星による徹底監視を始めている。
これは自分の推測だが、事の全貌としては恐らく相当前からミサイルサイロは既に乗っ取られておりこれに対し、所有国は奪還のための軍を寄越したが、あまりの数の多さに全システムの奪取が困難な為に全世界の至るところに艦隊を派遣して、さらに国連軍にも要請して少しでも被害を減らそうといている最中なのだろう。
一市民?としては誠に遺憾だが、これだけの事態だ。前世でこれと似たような事があったが、この時も徹底的に隠匿してたしなぁ……あれ?
――……自分は何を言っているんだ?
それにしても織斑さんが駆る白騎士、どう見ても後ろにマウントしてる荷電粒子砲らしきものとその手に持っている刀しか装備が無い。そりゃ機動力に任せてのすれ違いざまに一閃なんだろうが……
マッハ20、つまり音速の20倍で突っ込む長距離弾道ミサイルにそれはねーよ。うん、荷電粒子砲の方を信じてもいいよね?
日本を無傷で守り切る。援護があるとはいえ、それ相応のプレッシャーに押しつぶされそうになり、胃の中がグチャグチャになり頭の中がグルグル回るような感覚に陥る。動悸も相当前から酷く、過呼吸の兆候も現れだす。それでも……胃の中からくる酸っぱいモノを飲み込み、己自身を叱咤し、少しでも下らない事を考えて乗り切ろうとする。
――俺、この戦いが終わったら、篠ノ之さんか織斑さんに愛の特攻するんだ……
――あかん、それなら核の炎に包まれた方がマシや……
「ちーちゃん、アッキー。あんまり気張らないでね。今は中間圏界面にいるから補足はされないと思うし、もしミサイルの迎撃に失敗しても、既存の迎撃システムで何とかなると思うから」
中間圏界面?ごめんわからん、どこだよそこ……
と思った所、現在の高度が表示される。何々……高度は大体、80キロ?
「了解した、篠ノ之さん」「それぐらいわかってるよ、束」
「それじゃあ、頑張っ……」
篠ノ之さん最後まで言い終えることなく、突然通信が途絶する。
「束!?おい!?どうした!? 束!!」
「敵さんが来なすったって事だ!! 狼狽えんな!!」
まさかの下からのミサイルにビビりながらも、織斑さんにそう怒鳴って、電磁加速砲を両門共に展開、グリップを握り、長い間研ぎ澄ましてきた射撃の勘とISの補助を受けて、対空射撃を開始する。目標は……国連・米国側のミサイルの群れ。この海域だと米軍の第7艦隊か妥当か。
「織斑ァ!!お前は……」
「……ッ!!わかってる!群れからはぐれたのを叩き落す!」
そう言って、白騎士は自分とは比べ物にならない程の加速でミサイルの群れの方へと突貫する。いや、そうじゃない。その後ろにマウントしてる荷電粒子砲で迎撃してほしいんだ。
織斑さん……多分、興奮してるから突貫が吶喊になってると思うけどさぁ。
「……聞こえる!!アッキー?!」
「問題無い」
「どこかのバカが付近の衛星すべてをダメにして、さらにこっちに何らかの形でを誤射やらかしてくれたみたいで……流石にここまで本気だと束さんビックリだよ……それで、ちーちゃんは?」
「巡航ミサイルを叩き落して貰うようにしてる」
実際は自分から突っ込んでったが……
先程、篠ノ之さんが言ってたが、多分……アレだ。もしかしたら偽の命令書でも送ったんじゃないのかねぇ?
「さっすが! 束さんの意図を読んでくれるなんて! もしかしたら束さんとアッキーって、中々に相性バツグン?」
「そうじゃない。なんでミサイルを叩き落とすのにそんな反応なのさ……」
「長距離弾道ミサイルは荷電粒子砲で撃たないと不可能だけど、トマホークミサイルとハープーンミサイル位なら白騎士とちーちゃんのコンビなら問題ないよ」
「いや、それもオカシイ。だいたいなんで白騎士にそんな……お前まさか!?」
「いや~、音速レベルで進むデブリも処理しちゃおうかな~……なんて」
「……オイ」
自分の声色を聞いてか焦りだす篠ノ之さん。
「い、いやぁ。まあ、そんな速さで自由自在に動けるなんてこと出来るのは白騎士だけだし……あとアッキーのISも束さん印の超・特注品だからもう造れないね!!」
もうやめて!束さん過労死しちゃう!?という言葉に対し、そりゃそうだ。と言いたい気持ちを飲み込む。
「絶っ対に! 白騎士のソレの隠匿は完璧にするように!!」
「い、イェッサー!!」
「データもしっかり隠匿するように!!」
「イェッサー!!」
そうこうしている内に、篠ノ之さん方が相変わらずおバカな事を言って茶化してくれる事に少しばかり安心を覚える。
相変わらず、無茶苦茶な事をしてくれて目眩もするが……
肩の荷が下りるような感覚がする中、電磁加速砲を撃ち続ける。もう何発迎撃したかなんて覚えていない。
「状況確認を」
「今の所はまだ発射されてないね」
「それは良かった」
「ミサイルもそろそろネタ切れだし、サイロ内もそろそろ終盤みたいだし、このまま行けば束さん達の勝利だね! それにしても、スパイ衛星からリアルタイムで見てるけど、ちーちゃんは縦横無尽に飛び回るし、アッキーの弾幕は炸裂弾を撃っている事もあってか凄いねー」
特に、ブラスト噴かして炸裂弾を撃ちだす様なんて壮観だよ。と、付け加えた。
そこから、先はただただ電磁加速砲を撃ち続け、時にはスラスターを噴かして射撃位置を変えながら迫りくるミサイルを叩き落していく。
何故かミサイルを一閃……という一般常識では狂っていると言われてもおかしくは無い荒業をやってのける白騎士と、その体躯に見合わない圧倒的な対空能力でミサイルを叩き落し続け、なおかつ精度も常人離れしている自身。最早この場に居合わせてしまった人間にとって、世界の常識は砂のように脆く儚くも崩れ去っていく。
ついでに白騎士が巡航ミサイルに追いついている様子に自分の常識的も崩れ去っていく。そりゃ強いわ、IS。
現実は非情だった……
長距離弾道ミサイルが来る前に何故か巡航や対艦ミサイルなどの迎撃を無事に完遂した。ハイパーセンサーでなんとか第7艦隊のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦やアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、ニミッツ級航空母艦を視界に納めると、自分は電磁加速砲を収納し、両手を上げて後頭部に回すことで、ホールドアップ……つまり敵意がないことをアピールする。この様子を見たのか、遠く離れた織斑さんも同じようにする。
だが、おかしい……いや、それはない。と思考を切り捨てたいと切に願うが、自身の頭の中で警鐘が止めどなく鳴り続けている。そのおかげでその思考完全に切り捨てることはできない。だが、僅かな希望的観測を自分は持ち続けた。
「……トマホーク!!」
僅かな希望的観測、それも叶わず、篠ノ之さんは新たなトマホークの発射を確認したと告げたのだった……
放たれた凶弾は二発、自分と織斑さんにそれぞれだ。織斑さんは……精神的ショックで動けていない……電磁加速砲を展開する程に、心の余裕もなく腰にマウントしてるブラスターガンを一つ取り出し両手で構え、咄嗟に撃つ。
ISのハイパーセンサーと経験によって培われた勘は見事に自分を狙うトマホークを破壊する……しかし、まだ織斑さんは動かず、沈黙を貫いている。なので、織斑さんの方へと向かうトマホークを拳銃による射撃で破壊し、白騎士に向かう。左腕に盾を持って。
ガツン!と白騎士に盾によるバッシュを行う。ISのシールドエネルギーの消失には遥かに程遠いが、衝撃までは殺せない。
「……何をする!」
「そりゃ、こっちが言いたいよ……」
正気に戻ってきたようで、再び刀と荷電粒子砲を構えた白騎士と背中合わせにし、盾を持ち、電磁加速砲を展開、警戒を怠らない。
多分、今のは錯乱したどこかの潜水艦か艦艇の誤射だ……もしかしたら錯乱するように命令を受けた線も捨て切れないが、だから反撃はできない。下手な手も打てない。今この場で、逃走なんて事もご法度だ。彼らに拘束なんてもっとご法度だが……
織斑さんは動けないと考えるのが妥当だ。自分は……多分、興奮してる。
何かできることは無いのか?!
ただひたすらに思考する。トマホークの発射を知らせたまま、それ以来篠ノ之さんも沈黙しているが、彼女もひたすらに思考しているのだろう。信じるほかない。
すると突然、目の前にウインドウが出てくる。
『これつかって』
その一文が書かれていて、その下にはスイッチが描かれている。
そして次々と情報が流れていく……
「篠ノ之さんではない……ISか?」『♪』
それに答えるように、トマホークの迎撃以来、沈黙していた電子音が鳴る。
それと同時に国連の艦隊の方から誤射による謝罪と身柄の確保をお願いしてきた。法的拘束力が無く、お願いなのが実に憎い。
「篠ノ之さん、返答は?」
「無理だよ。できないに決まってる。逃げるしかないよ……」
「どう逃げます?」
「ちーちゃんは無理だね、動けない。戦闘にでもなったら戦闘機を斬って多少なりともパイロットは死ぬ。艦隊に突っ込めば被弾は流石に避けられない。そうなるとシールドエネルギーはともかく、ちーちゃん自身の精神が持たない」
重戦車の意外な損害要因は何だと思う? 兵士の損害は? と付け加える。まあ、意味は察した。
「だから、海底に逃げ込んで、そのまま消息を断つ」
海上には史上最高規模の大艦隊、空にも世界各国が誇る最新鋭の戦闘機。機銃がミサイルが艦砲がそのすべてがたった二機のISに集中している。
「何とか出来る?無理なら電子の目を全部潰すけど……」
「それは駄目だ。間違い無く事故などで死人がでる。絶対に許さない」
「でも……」
「これでも男だ、意地くらい張らせてくれ」
それを最期に篠ノ之さんと通信を切る。そして、今度は織斑さんに通信を繋げる。
「織斑さん」「なんだ?」
「逃げます」「ああ……でもどうやって?」
「海底に逃げ込みます」
「合図は?」
「自分がライトを点灯させますので、それを終えたら開始で。」「わかった」
それを最期に通信を切る。最後に国連艦隊にモールス信号としてライトをチカチカと規則的に点灯、謝罪を示す意思だけを見せ、最後までこちらには敵意が一切もない事を示した。
そして、降下を始めようとしたが……
「ちーちゃん!アッキー!」
突然、篠ノ之さんが通信に割り込んできた。
「なんだ? 束」「まさか!」
「ミサイルサイロから、長距離弾道ミサイルが発射したんだ! しかも2発!」
篠ノ之さんから報告を受け取った時、運悪く国連・米国の艦艇がこちらに向けて巡航ミサイルを発射していた。
核弾頭の起爆にはいくつもの手順がある。起爆に至る前に迎撃すれば、原発事故よりも少ない被害で止めることが出来る。
「織斑さん!!迎撃だ!」
「何を!?」
「巡航ミサイルをだ!」
まずはこちらに迫りくるミサイルを何とかしなければどうにも出来ない。
電磁加速砲を構え、迎撃する。時間がない、迅速にすべて叩き落さねば……
それで焦ったのがいけなかった。左肩の電磁加速砲がダメになってしまったのだ。原因は砲身への過剰な加熱による変形、つまりは撃ちすぎた訳である。それに右の電磁加速砲は残り弾薬が数えるほどしかない。
「全部叩き落としたようだな、後は……」
「ゴメン、織斑さん。電磁加速砲が片方ダメになった」
まさにプロにあるまじき行為。痛恨のミスだ。
まだ生きてる右の電磁加速砲を構え、長距離弾道ミサイルに狙いを定める。
「なら、私の荷電粒子砲を」
「左肩の電磁加速砲が邪魔で撃つことが出来ない、残りも1発分しか迎撃できません。片方は自分がやります、織斑さんは……もう片方を」
「……わかった」
そう言って、荷電粒子砲を構えるが……手元がぶれてる。こりゃ無理だ。
「使う」
ただ一言、そう告げるとISはプログラムを作動、やがて左半分の視界と左腕の感覚がおかしくなる。そう、それは織斑さんの視界と荷電粒子砲の感覚。
「そういえば織斑さん。以前、射撃の感覚がわからないと言ってましたよね?」
「……ああ」
「なら、この感覚を忘れないで下さい」
電磁加速砲と何も持っていないはずの左手の両方を構え、引き金を引く。すると、それに連動し、白騎士の荷電粒子砲も動き、引き金を引いた。そして、長距離ミサイルを見事、迎撃した。
後から聞いたが、中々幻想的な光景だったそうな……
さて、とっとと戻るかと呟きながら、ふと織斑さんが視界に入る。
荷電粒子砲の方を向きながら、呆然としていた。
「織斑さーん、とっととトンズラしますよー」
「織斑さーん、帰りますよー」
仕方が無いので荷電粒子砲を構えたまま時が止まっている白騎士を両腕でしっかりと、そして大事に抱き……降下。海面にそのまま突入してそのまま海中に、潜水艦を振り切り無事……とは言い難いものの、自分達の白騎士事件はここで一つの区切りを迎えた。
■ ■ ■
さて、無事に離脱したものの、その後世界はまさに大混乱……といった所だ。
離脱後、帰還するまでの空白の時間にまあ色々とゴタゴタがあったが、そんな物は投げ捨てる事にして……
――結果的には世界中からの非難は無かった。しかし、賞賛も無かった。
篠ノ之さんが後日正式に世界に向けて発表したIS、正式名称インフィニット・ストラトスはまさに常人の理解を超えた領域にあった。
それとは別に篠ノ之さんは白騎士事件の映像も公開した。
結果的には誤射とは言え、艦隊からの攻撃を防ぎきり、航空機の攻撃も気にかけない様子は文字通り、軍関係者の度肝を抜いた。
他には――特にISは女性にしか起動できないという点には誰もが理解できない領域であった。
ちなみに自分も白騎士事件の映像――出撃時に記録映像としてバイザーごしに自分が録画していた映像を見て、それらに映った兵器・航空機・艦船から部隊の規模と所属の割り出しを行った。
今回の事件のロケーションは日本近海。
ISに関わった兵器群は大陸間弾道ミサイル――俗に言う
これに参加した部隊は海上自衛隊第1護衛隊群とアメリカ海軍第7艦隊。
主な内訳としては海上自衛隊が
その他には日米共に補給等を行う補助艦艇や航空機が確認された。
余談だが、篠ノ之さんは顔は発表の際に見せたものの、メディアには一切の非公開なため、顔は完全には割れていない。また名前は発表の際、完全に伏せている。
正確には白騎士事件のあったこの日、彼女は亡き者となっている。
有り体に言えば、彼女は自らの戸籍を抹消したのである。
日本は多分わかってるとは思うけど、まだメディアなどにはバレていないようなので安心。
なんかここの日本は地味に凄いね。
あと、なぜ?そんな物を創ったんだ?という声に対しては……
「好き好んで欠陥機を創って発表したくはありませんでしたが、事態が事態だったので止むをえなく正式に発表させて頂きました」
との苦笑いの混じったコメントが唯一常人でも理解できた点なのが笑えるというか、なんというか……
昔は篠ノ之さん、ろくに受け答えも出来ない娘だったのに……成長したね……
――話がずれたがとにかく、鼻で笑いたいが、証拠がある。実績がある。信じるほかないのだ。
まあ、それよりも実はミサイル発射とその迎撃による費用やそれによる経済損失の方が世界中を大混乱に陥れているのが現状で真実だが……
技術的ブレイクスルーよりもお金の方が大事なのであった。流石金は天下の回りものでぇ……
特にミサイル保有数が大きい先進国が総崩れの状態でそれに伴う世界恐慌が始まっている。
対策としては主に軍事費の超緊縮と軍事規模の超超縮小、そして開発途上国の支援の打ち切り。最貧国の支援は引き続き行うようである。
特に元赤い超大国とチート国家が大打撃。まさかこんなところで冷戦の煽りを受けるとは予想してなかったらしく、色々と凄いことになってたり……
欧州もえげつない事になっているが、こんな中でも安定のドイツ。流石やでぇ……
ここまでくると篠ノ之さんのマッチポンプ説が囁かれるが……先手を打つかのごとく、篠ノ之さん自身はあっさりと白騎士事件時の収集した情報を開示しまくったので、その手の危険性は全く無くなった。
万が一、億が一だが彼女に手をだそうものならたちまち自分がISで超超電撃戦を展開するだろうと思われているらしく、おいそれとは手出しが出来なくなってしまった事も一因だと思う。
そして、トドメに篠ノ之さんはISの心臓部となるISコアの配布に後の第一世代機の祖、IS白騎士のフレームを納めることによって、篠ノ之さんの立場はひとまず落ち着いたと言える。
――後のアラスカ条約の一部である。
まあ、それでも篠ノ之さん自身がヤバイ人になったのでそのままあの人消息を完全に遮断したけど……
――そしてその結果が……
「大学受験を控えているのに転校だなんてあんまりだろ……」
あまりにもひどい話である。前世では行けなかった防衛大もこの件で行けそうに無いし……
オマケでいえばオリンピックもオジャン、射撃大会も何故かオジャンになった。国内のメジャーなスポーツぐらいしかまともにやってないのではと思う。
因みに日本は全くの無傷。陸上自衛隊及び航空自衛隊、海上自衛隊などの組織も無傷。ISも貰えて、実質最強クラスの織斑さんも国内のIS適性検査に引っかかり代表候補生になり、それに伴い弟さんとお引越しとなった。
しかしそれらと引き換えに輸出は伸び悩んだ模様。まあ、全世界に比べて遙かにマシなので問題はないだろう。
篠ノ之さん曰く、ISのお陰でアメリカとの仲が悪くなったので、仲直りにロシアと秘密裏に技術提携と言う名の諜報機関を潜入させるらしいです。
――前世含めて初めて、日本ヤベェと思った瞬間である。
後、ダメージが少なかったドイツに対して、『これはヤバい』と、これまでにない危機感を感じたイギリス・フランスはすぐにEUでの会議にてISの開発をEU全体で行うと言う名のドイツへの強請・タカリ行為とも言える統合防衛計画、通称イグニッション・プランを発案、異例の超スピードで議会を可決させる。
統合防衛計画の内容は極東の島国やチート国家、お隣の超大国に遅れを取らずに凄いISを開発しよう……という、非常に体の言い訳で、見事、ドイツの独走状態をストップさせる事に成功。外交の世界は恐ろしい……
これが、白騎士事件の事の顛末である。
だが、そんなこともどうでも良い。一番の問題は。
「あ!岡部さん!また、銃を弄ってばっかり!早く荷解きを済ませてください!」
なんで篠ノ之さんの妹さんと同居なのかということ。
何が悲しくて小学四年生と同じ屋根の下なんでしょーねー?
結論から言えば、篠ノ之さんに妹を守るように頼まれた。まだ篠ノ之さんと織斑さんしか知らない唯一無二の男性操縦者であり、織斑さんレベルでヤバすぎる腕だからだそうで。さらっと人外扱いされて泣いた。
弟君は織斑さんが何とか出来るそうで、一番の懸念は篠ノ之さんの妹さんらしい。
色々と突っ込みどころ満載だが、まあ我慢して引き受けることにした。本人自身も特に否定もしなかったので問題はない。
最期に「出来たら箒ちゃんのオッパイの成長具合も教えてね!!」だなんて言うあたり相変わらずだが……性犯罪者とかマジ勘弁。
表向きには国には両親と姉、親しいお姉さんと同時に別れると精神的まずいので、対して価値の低い岡部氏を彼女に充てて健全な生活を営んでほしいというお願いを頼まれた、という形にはなってる。一部ロシアに潜入した防諜組織の残りの人達がしっかりと妹さんと運が良ければ自分を守ってくれるそうなので一安心だが。対暗部用暗部の名前は伊達じゃない。
「はいはい、わかったから自分の部屋でも掃除してて」
「もう全部しましたよ。後は岡部さんのだけです」
全く、一夏と同じズボラなんですから。とため息混じりに言われる始末。
ため息と同時にたわわに実っている林檎様も揺れる。前から思っていたが、あれは遺伝か……
「また手、止まってますよ。ちゃんと動いて下さい」
こりゃ、旦那は尻に敷かれるわ。つくづくそう思ったのであった。
こうして、人んちの幼女と二人で荷物整理に格闘してしばらく経つ、整理もほとんど終わり後はのんびりと過ごせる。
幸いこの辺は気持ちのいい風が吹き、また風通しも良く優良物件といってもいい程だ。
……襲撃とか監視って点を加味したらどうなるんだろうねぇ……
「そう言えば岡部さん」
「ん?何だい?」
「岡部さんって本当に銃が好きなんですね」
そう言って、壁に飾っている銃器を見つめる篠ノ之ちゃん。
今では反応薄くなったけど、最初に見た時はビックリしたよねー。
「正確には、射撃全般かな?」
「へぇ、じゃあどうして複数持つんですか?」
拳銃と小銃とかならわかりますけど……と付け加える。
「篠ノ之ちゃんは、剣道好き?」
「はい!!」
こちらを真っ直ぐに見つめて勢い良く答える。ええ子ですなぁ。
「竹刀だってモノによっては違うでしょ?」
「はい、だから自分が一番気に入った者を愛用してます!!」
「銃はそれが出来ないんだ。竹刀のように扱えないんだ」
「……そうか!部品があるからですね」
暫く考えていたが、どうやら答えに思い至ったらしい。はっ、とした顔で答える篠ノ之ちゃん。
「うん、それに自身の最高傑作は……創り上げるんだ」
「つくり……あげる……銃器は歴史が浅いからと思って軽く見ていました」
「まあ、自分の勝手な持論だから、気にしないで」
さあ、おやつの時間にするかと言うと元気よく返事が聞こえた。
おやつの時間といってリビングでくつろぎタイム。自分はカプチーノを篠ノ之ちゃんはお茶と麸菓子……一言いわせて、枯れてるのに豊作とはこれいかに……
篠ノ之ちゃんは普通に勉強は問題ないし、自分もまあ……問題はない。要するに暇なのだ。
「そう言えばさー」「何ですか?」
「射撃してみたいーって昔言ってたよね?」
「そうでしたね。あの時は危ないからダメって岡部さんに言われたんでしたっけ」
「そう言えばさ、もうすぐ篠ノ之ちゃんは誕生日だよね」
「はい……」
禁句なのは重々承知ではあるがあえて踏み込む。そうじゃないとこの先始まらないから。面倒見ると言ったからにはそれ相応の責任ってものがある。
「大好きな一夏からとは……では無くて申し訳ないけれど、エアガンをあげようと思うんだ」
「そうですか……ありがとうございます」
まあ、こんな奴から貰ってもしょうがないよね……わかってたことだが……
織斑さんの弟君にはゾッコン、ということは自分達年上組は普通にわかっていて本人もそのことはわかっているのでこうして二人きりの時には問題はない。
「自分は、一夏みたいに気の利いた子じゃないから、カタログから選んでくれない?」
といって、エアガンのカタログを差し出す。気まずくて、自然と視線が揺れて挙動不審になっていくのがわかる。すると、篠ノ之ちゃんは少しだけ笑った。
「一夏だってそこまで気の利いた奴じゃないから、大丈夫です」
あいつ、昔私の誕生日忘れた事あるんですよ。と笑いながら話してくれた。
それにつられて、自分も笑ったのだった。
因みに欲しいと言われたのは弾倉式のポンプアクションショットガンとマグナムリボルバーでした。なんか歳の割に渋い……