雪広家の長男   作:TAROH

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1.長男、誕生す

僕、雪広燈哉は今をときめく大企業グループ・雪広コンツェルンの長男だ。

家の中では温厚な父と、これまた穏やかな母を持っている。

目の前に課題を出されるがままに解決していたらいつの間にか雪広の麒麟児と呼ばれるようになっていた。

そんな僕は妹が二人いる。

一人は雪広詩織。妹たちの内の姉のほうに当たる。

もう一人は雪広あやか。結構歳が離れている。今のところ末っ子だ。

 

「燈哉、遊ぼ」

「お兄様、遊んでくれますの?」

 

うん、昔は勉強に明け暮れて幼児期の遊びというのをまったくしなかった代わりに現在11歳にして既に大卒レベルの学力を持っているけれど、この妹たちに比べると勉強なんて塵以下の何か素粒子に等しいね。

あと詩織、何故いつも呼び捨てなんだ。そしてあやか、若干4歳にして僕に敬語を使わないでくれ、兄妹だろ。

 

「だって燈哉(お兄様)だ(です)から」

 

 

うん、何かごめん。

 

 

 

 

 

 

 

雪広家では物心付く頃から勉強をする決まりになっている。

僕は今はすべて終わっているのでいろいろな武術を嗜んでいる。

 

「お兄様、勉強を教えてほしいのですが」

「ん?いいよー」

妹に頼られたらそれに答えるのが兄の存在意義である、と|「兄妹のお<聖>|・や・く・そ・く」<書>に書かれていたからね。

それにあやかがやっているのは年齢相応の問題だ。数を数えたり、本を読んでみたりするというような感じのね。

 

 

「燈哉、私も勉強教えてほしいんだけど」

「かまわないぞ」

妹に頼られ(ry。

詩織がやっているのは明らかに年齢不相応な問題で。

微分積分とかがちらほら見えるのは気のせいではないはず。僕もそうだったけど。

前に僕や詩織が高校数学の勉強をしているのを見て両親が呆然としていたのも仕方が無い。

その逆影響があやかの|普通<・・>の勉強に繋がっているのだけれど。

 

「そう言えば前から聞きたかったんだけど、詩織ってそんなに勉強好きじゃなかったよね。何でそんなに勉強してるの?」

僕の何気ない質問だった。

確か詩織は足し算や引き算の頃から「もう勉強いやー」とか漢字覚えるのが面倒だとかいろいろ言って進行を遅らせていたはずだったんだけど。

 

「そんなの燈哉に負けたくないからに決まってるじゃない」

さも当たり前かのように言われました。困った。

「燈哉が10歳で大学までの勉強全部終わらせたから私は9歳で終わらせて見せるの」

 

そーですか。

適当に応援したら顔を真っ赤にして怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

二人が勉強している合間に僕は武術を習得していた。

父さんの知り合いの自称・仙人による中国拳法だ。

技の名前とかは覚えるのが面倒そうだったので適当に考えることにする。

意図しなくて技って成功するんだよね。

仙人の空き時間は一週間。みっちりした修行はすごくいい経験になる。終盤には何故か仙人が呆れたような目で僕の自主トレーニングを見ていた。

何か悪いことしたかな。

 

一週間の総纏めに模擬戦をした。

やっぱり仙人は強かった。仙人は最後に、一日も修練を欠かさないようにと言って締めた。

いつか勝てるようになりたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突に僕は詩織と一緒にアメリカに住むことになった。

 

まだ幼い子供だというのに、家族二人だけで、両親はあやかと一緒に日本に残るらしい。

しかも、付き人はなし。与えられたのはちょっとした家と、口座。ある意味放り出されたとも言えるんじゃないかなこれ。

 

 

「勉強は出来ても社会生活が出来なければ意味が無いからな」

父さんの言っていることは間違っていない気もする。要するに学校に通わせることが目的なんだろう。

でも、社会生活が出来ないって何だか生活破綻者みたいで嫌だな。

行き先の学校はジョンソン学術総合学校というところらしい。

変わった学校形態のようだな、と思ったのはここだけの話。

名前が不自然に長いし。

 

 

 

「お兄様、行かないでください!」

あーあ、あやかが泣いてるよ。父さんのせいだからな、あやか。

父さんは苦笑している。母さんが僕と詩織を順番に抱き締めてくれた。

「燈哉、詩織。辛くなったらいつでも帰ってきていいからね」

そんなことを目に涙を浮かべながら言う母さんを見て、詩織がもらい泣きしている。

え?僕はって?もう水溜りが出来ているよ。

 

「○○便にお乗りのお客様は――」

 

搭乗を促すアナウンスが聞こえてきたので僕は詩織を連れて飛行機に乗った。

普段は割りと奔放な性格の詩織が僕の手をぎゅっと握り締めてきたので思わず頭を撫ですぎてしまった。

これはギャップなんとかって友人が言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちの座席はファーストクラス。安全も兼ねて、である。

離陸したのを確認して僕は私物であるパソコンを立ち上げる。

詩織も横から画面を見つめている。その目はさっき泣いていたから赤くなっていた。

「詩織?今はゲームをするんじゃないんだよ?」

 

普段パソコンを起動するときには大抵カードゲームをやるから詩織は画面を眺めるのだ。

 

「知ってる。お仕事するんでしょ?」

 

6歳児から仕事、なんていう単語が出てくるのが雪広家の特徴……ではない。

「仕事、って言ってもお金儲けなんだけどね、ただの」

「ふーん」

詩織は興味を失ったのか、画面から目を外して持ってきた手荷物の中身を漁る。

 

 

「じゃじゃーん」

柄にも無くそう言って詩織が取り出したのは……ノートパソコン!!!???

 

「お父さんに買ってもらったの」

詩織が隣で操作し始める。何やら新しいゲームのようだ。画面上にグラフが出ている。

何処かで見たことのあるようなグラフだ。

 

「あれ?このグラフって……」

 

「日経平均株価だけど。知らないの?」

 

いや、知ってるけども。

「何で日経平均なんて見てるのさ」

質問には答えてくれなかった。

すると次に起動したのは今流行のsky○eだ。インターネット通話が出来ることで有名だ。

マイク付きヘッドホンをセットして誰かと会話している。

 

「あそこの株売り捨ててくれる?」

さて、どうしたものか。

妹が突然スカ○プで株取引を始めました。全国のお兄ちゃん!どうするこの状況。

妹が株を売るという会話をして数分後、突然チャートが急降下し始めた。

 

あれ?これってもしかしてやばくね?

 

「詩織。何やった?」

 

僕の、根底から来るような切実な質問に対して詩織はとんでもなく眩しい笑顔を見せてくれました。

 

「燈哉が、株を持っている会社の株を全部紙切れにしちゃいました。エヘ?」

 

詩織、エヘ?はお前の性格には似合わないぞ。

 

 

 

ああ、ごめん父さん。僕の所持金はゼロです……ライフと共に。

 

「大丈夫?燈哉」

 

 

 

 

 

 

僕の精神チャートがストップ安を迎えて立ち直りかけているときに突然飛行機が揺れた。

直ぐにシートベルト着用ランプが点灯する。

詩織も僕もパソコンをしまってシートベルトを付ける。

 

 

「当機は現在、大型の乱気流の中を飛行中です。機体が大きく揺れる事がありますが安全に飛行していますので――」

聞き取れたのはそこまでだった。

突然飛行機に落雷した。

僕は咄嗟に詩織と僕のシートベルトを外して詩織を抱き締めた。

 

「燈哉ぁ……」

普段は冷静な詩織も流石に恐怖によるものだろう、涙目になっていた。

 

「大丈夫だ、僕―いや俺が一緒にいるから」

 

詩織はまだ涙目だったけれど、落ち着いた様子を見せて頷いた。

 

「一応この飛行機は世界最高の性能を誇って――」

 

ガタン!!

 

突然の揺れと立て続けにおきた機体の急降下と共に僕の意識は落ちた。

 

 

意識が落ちる直前に閃光を見たような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ・ニューヨーク行き飛行機、太平洋上にて消息不明。




ほほほ
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