迷宮に非日常を求めるのは間違っているだろうか 作:サンマ味のヨーグルト
友達はエロゲ最強の非能力系主人公は無敵軍人UGだと譲らないが、俺は無敵ギャグ超人の朝霧オティンティンティムティム海斗さんだと思ってます。
UGは軍人だが海斗は半分一般人だぞ。拷問紛いの教育を施されたり人を何人か殺していたりしているけど、選択肢によってはドアをprprしたりユーモア溢れるんだぞ!ゲームオーバーになるけどさ!つまりUGよりも海斗さんがかっこいいのよ!
人の記憶は曖昧で、人の記憶はおぼろげで
人の記憶は時に幻想を作り出す。
それは防衛本能であり、それは、実を虚に変えるものとなる。
物心がついて最初に教わったのは、人を疑うことだった。
「腐りきった世の中で信じられるのは、自分だけ」だと。
そう教えた人さえも、俺を信じるなと言った。
「人はいつか、裏切るから」と。
震えを隠し切れなかった。
だって、その人が大好きだったから。
だから震えた。
なんて…………恐ろしいんだろう。
なんておぞましい世界なのだろう、と
こんなにも溢れた同じ存在を、なに一つ信じられないなんて。
それが現実。
その人は一度頭を撫でて、漆黒の瞳でそう言った。
少なくとも、ここ一年間を平凡な毎日だと思った事は無い。
繰り返す日常はいつも新鮮だった。
単純に、日常かどうかを考える余裕がなかったとも言える。
だからこの一年、耐え続けることが出来た。
そして―――
平穏な街並みそのものに見る景色。
そこに浮かぶ異質な存在たち。
…おいおい、今日ガッスの奴がレベルアップしたらしいぜ
…マジか。ならお祝いにミアの母ちゃんの所に行こうぜ
俺の前に通り過ぎる複数の男。
明らかに普通の人間ではない。
新聞で見た相撲取りのような体格をした鼻がデカい大男。
ガキみたいな容貌をしている癖におっさんみたいな声を出す男。
雷太が譫言のように説明してきたコスプレか……単純に演劇団の団員達か。
しかしこの街には演劇団など来たことは無い。金持ち連中は個人で海外に見に行くスタンス。街にわざわざ呼んで観る暇人は居ないと、思う。俺の知っている金持ちは居ないが、佐竹が詳しい筈だ。まあ興味も無いが。
だがヤツらの恰好を見る。明らかに特殊メイクというレベルでは無い。あの鷲鼻も作り物には見えないし、あのガキは唯者には見えない。明らかにこの街には似合わない強さを持っている。武器も銃刀法違反レベルの剣を持っている。本物にしか見えないが、アレから臭うのは血だ。何かを殺しているのがはっきり見える。
「…………禁止区域の住人か」
特別禁止区域。政策により造られたこの世の犯罪者を区域毎に集めている危険地帯だ。高度経済成長を遂げているこの日本。しかし発展と同時に犯罪者も増えている。いわば陰と陽。禁止区域、あそこは陰だ。金持ち達が煌びやかな暮らしを送っている裏で、アイツらはその日の食料を求めて彷徨っている。
だが顔を観察する。
………あの二人、顔がやけに明るいな。
人を殺した奴。禁止区域に暮らしている人間は殆ど、欲望に忠実な顔をしている。
が、まあどうでもいい。
もしヤツらが人を殺したとして、事件になったとしても誰だって気にしない。一般人は携帯でニュースを見て犯罪者達を嘲笑して、歯牙にもかけない。いや話の種くらいにはなるかもしれない。
それが現実。
見知らぬ他人が傷つけられようが死のうが、自分は知った事じゃない。
その場では可哀想と言いつくろい、やがて興味を無くし忘れ去る。
それは、人のあるべき姿。
見知らぬ誰かが殺人鬼に殺される現場を見ても、一度は見捨てることが正解。人間、自身に被害があるとわかれば躊躇し、動かなくなるものだ。
例え殺人現場を見て、通報し犯人を取り押さえることが正しいことだとしても、見捨てる、あるいは見過ごす事が多勢なら、それが正しいこと。
だから――――見捨てる事が異常ではなく、助けることが異常。
冷静に観察していた間に、奇怪な恰好をした男二人はその場から見えなくなった。
………。
「って何冷静に思考しているんだ俺は。」
危険な思考を振り払い、男達に続くように俺もその場を後にする。さっさと佐竹に退学届け出しに行くか。卒業式は終わった筈だ。佐竹も私室に籠っているだろう。あれでも校長だからな、あの禿げ。
程ほど小走り、ダンゴムシが全力疾走する位のレベルで、俺は大きな建造物に挟まれた小さな通りから抜け出した。
全然速くないわな。まあ行こうとも思っても無い場所に行くんだ。それくらいはなるだろう。あれだ。小説で読んだやつで、緊張して腹が痛くなる奴。あれは本気で目的の場所に行きたくないから無意識になるらしい。あとはあれだ、結婚すると嫁さんの親父に会いに行く男。あまり行こうとは思えないだろう。
つまり俺にとって、佐竹とはあまり会いたくないのだろう。
…………………。
「ボディーガードなんて、クソのやるもんだぜ」
道の脇に空き缶が落ちていた。
蹴った
「ぐへっ!」
「あ」
通りすがりのオヤジに頭が直撃した。許せ。
― ― ― ― ― ―
「ここはどこだ」
周りを見渡すが、小説で見た中世に似たような雰囲気の街並み広がっている。
車や行き交う排気ガスの騒音は無い。
眩いディスプレイも、街頭もない。
ただただ、仮装しているような人混みしか見当たらない。
耳がやたら長い女。視界に入る分だけだが皆かなり美人だ。尊や侑祈辺りがいたら飛んで行きそうだ。いや、尊はビビって立ち止まるか?
そして頭に猫や犬のような耳を付けている大男。明らかに似合っていないんだが。あいつは先ほど見た連中と次元が違う。親父クラス…かそれ以上、か。
それらが当たり前のように闊歩している。まるで俺だけが世界に取り残されたかのように。
俺は一人だ。
最初からわかっていたことが。
当たり前の事実だったが。
これは何だ?
禁止区域に居た時とも違う、初めて暁東市に入った時とも違う。
自分がここには居てはいけないと思い知らされているような、感覚とも違う
まるで歓迎されているような感覚。
不愉快だ。
だが、小説で見た主人公のように、異世界に混じったようで少しワクワクする。
「ふんふ~ん♪今日はジャガ丸くん結構売れたな~」
目の前に下着同然の恰好をした痴女が通り過ぎる。乳の下に紐を通していたが、あれは役に立っているのか?
「さて、ここが俺の知識が及ばない謎の場所というのは確定のようだ」
ならばここはあれだあの糞漫画、かずおの大冒険でやっていた行動。
「聞き込みだ!」
「うおわ、なんやねんアンタ突然大声上げて!!」
「すまん」
怒られた。これも侑祈があんな漫画を買ってくる所為だな。しかしこの選択は間違えでも無い。まあここで選択肢を作ろう。消去法で誰に聞き込みするかを三択で選ぼう。
誰に聞こうかね
1. 目の前の女に聞く
2. 2m位ありそうな大男に聞く
3. 乳首を舐める
…………………………。
何だ、三番は。乳首を舐めるなんて怪しい奴にしか見えんぞ。ゲームならここでゲームオーバーだ。というか無理。
取りあえず目の前に居るアマ。一番だ。
「おい、そこの西の高校生探偵」
「せやかて工藤っ!って誰や!」
普通に反応してるじゃねえか。というか今の反応でここが暁東市とは違う事がわかる。真実は何時も三択ぐらいあるっ!と喧しい名探偵モナンを知らない奴はいない。多分。
「なあ糸目女。聞きたい事があるんだが」
「なんやアンタ。さっきから変な事してんのや…」
目の前の女。糸目で髪をポニーにしている女は糸目ながら俺を胡散臭げに見ている。
「気にするな。まあ聞きたいことがあるんだが」
「あん?ははー。人にもの聞くんなら相応の態度ってもんがあるんちゃうか?」
何だこのアマ。仕方ない。こちとら異世界チックな場所に放り込まれた一匹の羊だってのに。本当にぷるぷる言ってるからな脚が。
「仕方がない……。聞きたい事があるから答えろ」
「全然畏まってないやん!?
おお、この女結構リアクションがデカい。まるで尊みたいだ。これは磨けば光る素材という奴だな
「光栄に思え。お前は今日から尊だ」
「誰やねん!?光栄とかどういう基準なんや!?」
ツッコミの技術。
「で、答えろ」
「あんた……。人の話聞かないって言われんか?」
「しょっちゅう」
「はあーー」
目の前の女はおもいっきりため息を吐いた。
「何だ。疲れてるのか?それとも生理か」
「生理でもないし疲れてんのはアンタの所為やて…で、何か聞きたい事があるんちゃう?」
「何で知ってんだ。まさかエスパー?それともストーカーか」
「違うわっ!アンタさっき言うてたやろうが!」
んなぷりぷり怒るな
― ― ― ― ― ― ―
俺は、目の前の女から色々とこの世界について情報を聞き出した。
とりあえずここはオラリオという街らしい。街というか都市だな。万単位の住民が生活しているようだ。
ここの時点で俺が居た地球とは違う事だ明確にわかる。
そしてこの女の名前は、ロキ。いくら学の無い俺でもわかる。それは神話に存在する神だ。悪神とも言われているロキだ。だがロキは男だと思ったが、ここが俺の常識が通じないという点だけは理解できていたのでそういうものかと思っておこう。
この世界に神が居る事は珍しい事ではないらしい。オラリオには殆どの神が暮らしているそうだ。
神は自分の勢力、眷属を作り縄張りを増やすとかなんとか。
というのは冗談だ。眷属というものを仕立て上げ、冒険者にするらしい。
冒険者。モンスター。
最早、地球では創作上、そんな存在だ。詳しく説明できるやつは雷太のようなニッチな野郎などが専門だろう。一般人は政治だけを覚えておいて生活できる社会だからな。
しかしこの世界には当たり前の存在だ。
非日常だ。異常だ。しかしこの世界では俺の世界が異常だ。
俺は普通では無い。この世界が普通になっているのだ。
俺が世界に取り残されたような孤独感、あの感覚…。間違いでもなかったみたいだ。
「そうか……」
面白いじゃないか
口角が吊り上がる。日常なんてものを幻想とした暁東も悪くなかった。
だが物足りなかった。友達と遊ぶ生活も。くそつまらない授業を手抜きで受けるのも。
物足りない。
あの息の詰まる肥溜め生活も。生きるか死ぬかの殺し合いも。人が理性という名の皮を脱ぎ去って欲望のままに蠢く欲への衝動も。
あれが俺の日常だ。
だが、殺しても、実力を隠さずにも、建前ばかりじゃない生活も
ここでは正常。日常と出来る。
モンスター。迷宮。冒険者。ドラゴン。これだ、これだ!俺は非日常を求めていたんだ!!
俺は怪訝な顔をしているロキに振り向く。要件は一つだ。
「ロキ。お前のシルバニアファミリーとやらに俺を入れろ」
「は?」
手っ取り早い。ここに神がいるのならば、コイツを使おう。
さあ、俺の非日常が始まる。
佐竹。お前が用意した生活も悪くはなかったが
俺には血が匂う生活のが、合ってるみたいだ。