かける、海鳥   作:魔獣先輩

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第1話

始まりは、ふと見かけたニュースだった。僕は新聞を滅多に読まないので、世間で起きている出来事を知る手段はテレビで流れるニュース程度に限られている。

 

行方不明者、殺人事件に政治問題。これといって目に留まるニュースは無かったのだが、1つ。気になるものを見た。見てしまったのだ。

海に浮かぶ少し小柄な鯨の様な生物を捉えたその写真は、僕の良く知っている姿形をしていた。

 

深海棲艦。

 

艦隊これくしょん、と呼称されるブラウザゲームに登場する、所謂雑魚敵ポジションの駆逐イ級に酷似している。位置的な問題で良く見えないが、黒くぽっかりと空いた口腔内には主砲が鈍く光っている様だ。

 

何故、ゲームの中の敵が。とか、日本はどうなる、世界はどうなる、とか。艦隊これくしょんをこよなく愛する僕の頭の中には、そんな危機感よりも、艦娘も存在するのだろうか、等と考えてしまっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数年後、提督の一般公募を受付しているとの情報を得、早速届け出を提出。どうやら軍の関係者では適性が居らず、更に敵が深海棲艦である為か、結果一般公募…と言った所らしい。僕は幾つかの試験と訓練の後、晴れて提督となる事が出来た。勿論、試験と訓練はそんな易しい物ではなく、指揮を執る者としての最低限の教養を叩き込まれる厳しいものだった。

 

仮設の鎮守府にも配属され、これで夢の様なめくるめくハーレム天国!と意気込んでは居たが、どうやら艦娘の方の準備が整っていないらしく、何処の鎮守府にも未だ配属はされていないとの事だった。

 

深海棲艦を撃滅する為、30余りの提督が各地に配属。各提督の試験の結果順に、配属される艦娘が選出される様だ。出来の悪い提督には出来の良い艦娘を監督役に、とかそういった具合なのだろう。

 

ゲームとは違い、初期配属の艦娘は戦艦も有り得るとの話だったので、僕の秘書艦となる子は正直予想が付かなかった。

そもそもゲームの通りの容姿なのか?性格は?もしかしたら性別がおかしな事になっているかも知れない。

 

そんな他愛もない事を考えつつ工蔽、入渠する浴場、各部屋と点検していく。別棟の一戸建てを点検し終えた所で、今の時刻を確認する。……危ない、提督である僕が時間に遅れるのはいただけない。

 

くるりと踵を返すと、執務室へと戻る。僕の人生を変える出会いになるかも知れない、初期配属の艦娘が到着する頃なのだ。

僕自身の成績は中の下と言った所だが、さてさて、来てくれる子はどんな子なんだろうか?デカイ椅子に腰掛けながら、じっとその時を待つ。

 

こんこんーーと。慎ましく、それでいてハッキリとしたノックが響く。来た。

 

「どうぞ、入りなさい」

 

精一杯尊厳のある声を出したつもりだったが、どうだっただろうか。…齢二十そこらの僕には難しいか。

扉の外からクス、と小さな笑い声がしたかと思うと、一声掛けた後に入室、彼女は凛とした声で続けた。

 

「失礼します。本日付で此方に配属になります、高雄型4番艦の鳥海です。…宜しくお願い致します。」

 

「ぁ、」

 

不味い。間抜けな声が漏れてしまった…。艶のある黒髪と少女の面影を残す美貌。正面から見たとしても緑色の服の隙間から覗く双丘の谷間、今にも下着が見えてしまいそうな程短いスカート…不味い、何というか色々と不味い。

 

ーーと、其処で違和感に気付く。

 

「あれ?…どうしてもう改二に。それに、君は……鳥海にしては、少し大人びていないか?」

そう、艤装が改二の物である上に、ゲームの鳥海…恐らく高校生程度だろうか。それと比べると、目の前の鳥海は18、19程まで成長している様に見えるのだ。

 

「ふふ、それについてはまた後でお話ししましょう。申し訳有りませんが、司令官さん。鎮守府の案内をお願いしても?歩きながらでも説明出来ますし。」

 

………なんだろうか、この可愛い生き物は。しかし、ゲームの鳥海と比べると、やはり精神面も大人びている様に感じる。

 

人生を変える出会いに……なっただろうか。

 

 

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