ダクソで全身真っ赤の変態郵便屋が居たら、僕です。
因みに時間経過とかは書いてないんで、1つのエピソード間が数日だったり数ヶ月だったりとバラバラです。
ーーーーー翌日、演習海域にて。
『では、これより呉と佐世保の艦隊戦演習を行う。制限時間は1時間とし、勝利条件は損害状況で判断。尚、大破判定としたとしても戦線離脱とはならず、砲雷撃又は艦載機の発射を禁止し、その状態で戦闘を続行して貰う。つまり大破状態で出来る事は移動のみであり、その移動にも速度制限を付加する事とする。…ああ、それと。今回は轟沈判定も設けさせて貰う。』
『厳しい様だが、轟沈判定を受けた艦の所属艦隊はその時点で敗北とする。』
これが僕と佐世保で考えた最も実戦に近い演習だ。
この演習の肝は、如何に軽い損害で敵艦隊にダメージを与え、大破した艦を守り切るかに掛かっている。
実戦では大破したからと言って敵は逃してはくれないのだ。大破したから戦線離脱、なんて演習は甘えでしかない。
『じゃあ、双方、準備が出来たら合図を。』
言い終えると同時に2方向から煙弾が上がる。…初演習の始まりだ。
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「…始まりましたね。」
遥か遠くから見える煙弾が視界に入り、思わず呟く。
先程のルール…ただ勝つだけであれば私一人でも十分ですが、実戦を想定して…と言うのが厄介です。
恐らく司令官さん達は連戦を想定しての演習を組んだのでしょう。敵を轟沈させても私が大破して指揮が執れなくなっては意味がありませんからね…。
「行きますか、皆。佐世保さんの艦隊を必ずや下しましょう。」
ですが…大破した艦は必ずしも庇う必要は有りませんよ、司令官さん。それさえも利用して敵を打ち砕く…それが私達艦娘の使命なんですから。
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「青葉さん、敵艦隊、見えました!」
「ふむ、来ましたね。では、先程の作戦通りに行動お願いします。戦艦のお二人は出来るだけ派手にぶちかまして下さい!後の事は、頼みましたよー。」
「榛名は大丈夫です!」
「私の計算通りに撃てば大丈夫。榛名、行きましょう!」
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「!!…敵の砲撃、来るぞ!」
「各々回避に専念し、やり過ごした後は砲雷撃を!加賀さんは艦載機で索敵をお願いします!出来れば攻撃の方にも割いてくれると有り難いです!」
「了解したわ」
加賀さんが艦載機を飛ばした直後、敵の演習弾が次々と着弾し飛沫を散らす。
「っく……流石です、伊達に高練度では無いって事ですね!」
迫り来る砲撃の間を縫う様に回避しながら、大井さんが叫ぶ。
確かに、私達の居る場所に的確に撃っては来ています。が、私の鍛えた艦隊には通用しません。その証拠に、皆軽々と避けて…
「えっ」
と、此処で加賀さんから驚愕の声が上がる。
一体どうしたのかと視線を向け促すと、唖然とした表情で言葉を続けた。
「偵察及び索敵に使っていた艦載機が撃墜されたわ。それで、撃墜数なのだけど…本隊の居る方ではなく、此処から東方向に当たる海域での撃墜数が多いのよ。」
「…成る程。では、隊を2つに分けて挟撃しようという魂胆なんでしょう。」
奇策といえば奇策だが、大破判定を受ければ致命的な作戦です。そんな危険を冒してまでする必要があるのでしょうか。
取り敢えず撃墜数の多かった方角は私が意識を向けておくとしましょう…
「では、私は東の方を注意しておきます。貴方達は本隊の方を宜しくお願いしますね?」
私の言葉に他の4人は頷くが、加賀さんは怪訝な顔を崩さぬまま何かを考えている。…あの人がこんな顔をするなんて珍しいものですね。
「…何かありましたか、加賀さん?」
「…いえ、少し気になってしまって。どうして奇襲を掛けるべき分隊の方が、撃墜数が多いのかと。」
………。あぁ、そうか、そういう事なの。
この戦法…恐らく"あの子"の考えた作戦がベースとなっているのでしょう。………でも残念。
「この作戦の要はあの子の卓越した技術と運動能力が前提なの。だから、貴方には出来ないんですよ、青葉さんッ!!」
背後…つまり私の注視していた東と反対の方向から聞こえた風を切る音に振り返ると、其処には連装砲を構えた青葉さんが砲撃するや否やの状態で急速に接近する姿が。
本隊と分隊は囮にした、青葉1人の特攻作戦。
この間にも本隊三隻の砲撃は続き、更に分隊の二隻も砲撃を続けながら接近している。
青葉一人に手間取っていると増援で詰み…という作戦だ。
「貰いましたっ!!!」
「甘いですね!」
青葉の高らかな宣言とともに目と鼻の先で火を噴く連装砲に裏拳を叩き付けて、咄嗟に軌道を逸らす。と同時に、此方の連装砲の砲塔を180度回転させては手甲の形を取り、その拳をカウンターとして青葉に叩き込んだ。
「ぐぅ゛っ!!!?」
強力な一撃のボディブローにより中破した青葉がその身体を浮かす。私の頭上へ浮き上がった青葉に、すかさず連装砲の手甲を180度回転させて砲塔の狙いを定めた。
「幾ら貴方の装甲でもこれは耐えられないでしょう。では、安らかに。」
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鳥海の素手による一撃を貰った青葉は気の毒だが、何事もなく帰投する。
結局、轟沈判定を受けた青葉の艦隊が敗北する形となった。
作戦は悪くはなかったとは思うが…先程会話に出て来た"あの子"と呼ばれていた艦娘の考案した戦法だったのだろう。だが鳥海はそれを見切り、見事青葉を撃退して見せた。
今は執務室で秘書艦同士、反省会を開いている。最も、青葉が一方的に説教されるだけであったが。
…………
「大体、何ですかあの作戦は。同じ様な作戦が2度も通用する訳が無いでしょう?」
「ふぇぇ……」
反省会という名の説教はかれこれ小一時間にも及んでいる…いい加減可哀想になってきたので、助け舟を出すとしよう。
「って事は…前にも1度こんな事があったの?その口振りからすると
、1度は通用したみたいだけど。」
此処ぞと言うタイミングで鳥海に問い掛ける。すると彼女は余り聞かれたくなさそうな表情で振り返り、「ええ、まぁ…」と何とも曖昧な返事を寄越した。
すると青葉が補足する様に詳細を教えてくれた。
「鳥海さんは艦隊としての演習は無敗ですが、個人的な勝負で何度か負けた事があるんです。その艦娘は鳥海さんの次に優秀な子なんですよ。」
……鳥海より強い奴が居るのか。最早化け物の域じゃないか。
僕がうんうんと唸っていると、鳥海が思い切り苦い顔のまま更に補足を続ける。
「私は艦隊などの群を率いた方が真価を発揮されるらしいのですが、その子……白露型の時雨は、群よりも個で真価が発揮される特殊な例の様で…」
…成る程。それで、先程の特攻を受けた際に不覚を取られて敗北した、という事か。
「最終的には他の子に倒して貰ったのですが、余り清々しい勝ち方とは言えませんでした…。」
「そうなのか…。でも、艦隊で行動するのに群が苦手って致命的だね…何処かの鎮守府に配属になったんだよね?」
「配属先は聞いていないので何処かは分かりませんが、恐らくは…。鎮守府以外に私達の行く当てはありませんから。」
視線を落としながら鳥海が答える。中々心に刺さる一言を言ってくれるな…行く当てがない、か。僕には親がいる…けど、彼女達艦娘にはおよそ親と呼べるものが居ないのだろう。それこそ、僕達提督が彼女達の親族の様なものなのだ。
「そんな顔をしないで下さい、司令官さん。私は此処に来て良かったと思っています。」
ふと気が付くと目の前には申し訳無さそうに顔を覗き込んでいる秘書艦の姿。そんなに変な顔をしていただろうか。彼女達を戦地に送るのは仕方ないとは言え、やはり誇れるものではないし恨まれて当然と思う。でもそんな中、来て良かっただなんて言って貰えるのは…
「……ありがとう。君のその言葉だけでも、肩の荷が降りる感じがするよ。」
僕はとても幸せ者なのだろう。