「で、さっきの説明。お願いしても良いかな?」
僕は一歩下がった位置を歩く彼女をちらりと見遣る。すると彼女はにこりと笑い、的確かつ簡潔に説明をしてくれた。
先ず1つ。彼女が改二姿なのは、艦娘の学校の様な所で修練を積んだからだという。学校とはまた平和な響きだが実際はそうではない様で、実際に海へと出ては深海棲艦を撃破する、所謂実技も存在するらしい。
そして2つめ。彼女が大人びた姿なのは、"鳥海"として生まれた時には既にあの姿だったという。建造したのか、ドロップという形で生まれたのか迄は分からないらしいが…。
「艦娘の学校ね…そんな物があったなんて、初耳だよ。…そうだ、鳥海の学校では順位付けとかあった?配属先は提督と艦娘の成績で決められる、なんて聞いたんだけど。」
「はい、ありました。司令官は……確か真ん中位の成績でしたよね?」
言ってくれるじゃないか…。僕の気持ちが伝わったのか、彼女もくすくすと静かに笑っている。成る程、艦娘なだけあって、肝が座っている様だ。
「言いにくいが、その通り。…もしかして、配属先の提督の成績は、艦娘の方には開示されてるのかな?」
「実は、そうなんです。逆に司令官の方々からは艦娘の情報を規制する…そういう策を取っているそうです。これは恐らく、セクハラ防止の為でしょう。」
「ああ、そうか…それが一番厄介な問題だからね。……して、鳥海。君の成績はどの位?是非とも聞かせて欲しいな。」
艦娘の学校の存在は知らなかったが、同名艦の数も含めて少なくとも300以上は居ると聞いている。同じ鳥海でも優劣の差はあるだろうし、他には戦艦や空母も同時期に他の提督へ配属するとなると、鳥海と同じ成績の算出法で順位付けされて居る事だろう。さあさあ、言ってみろ!
「私は約250名という少ない幅の中ではありますが…首席で学業を終えました。」
「ファッ!?」
まさか。戦艦や空母の所謂大人組を出し抜き、トップだと言うのだろうか。であれば、疑問が1つ。
「…なら、どうして君は僕の所に?僕の成績は…良くも悪くもないけど、君が指導役に就く程ではないと思うんだけど。」
「それは……」
彼女は返答に困った様に顔を曇らせる。ああ、困った顔もまた可愛い!……ではなく。曇らせる?何か言えない理由があるのだろうか。……と、そこで鳥海は顔を上げて蠱惑的な笑みを見せつつ一言。
「もしあなたが、私に永遠の誓いを立ててくれる日が来たなら。その時は、お教えします。…ですからそれまでは、お教えする事が出来ません。」
なんだそれは。それはつまり、ケッコンカッコカリのシステムが存在している、という事なのだろうか。この現実世界に、レベルの限界突破なんてオカルトめいた物があるのか。
そこまで話した所で、いつの間にか全ての施設を周り切っていたらしい。説明をした覚えは無かったのだが、鳥海によれば道案内だけで十分、との事だった。
いつの間にか薄暗くなりつつある外を眺めて、来る戦いに備えねばと思案しつつ、執務室へと帰っていく。明日からは本格的に鎮守府の運営が始まるだろう。