かける、海鳥   作:魔獣先輩

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スカサハ姉貴頼むよ〜来てくれよ〜
それはそうと、話ごとの補足についてです。その話ごとの主人公…呉提督だったり鳥海だったりするのですが、話中の注意力・情報の取捨選択は各々のキャラ依存となります。
例えば情報Aをそれぞれの視点から捉えた場合、提督は大事だと判断しないが、鳥海は要チェックと判断する…といった具合です。
その場合、話中にその情報についての考察の有無に関わります。ですが、その情報自体は文中にしっかりと登場しているので、見ているみんなも謎解き、しよう!(唐突)





第24話

 

 

 

鳥海ヤンデレ疑惑事件から時間は飛んで、一週間後。

 

因みに霧の海域調査に関しては、さして面白味もなく、また新たな発見も無かったので割愛させて頂いている。敵戦力の殲滅も含めて、何事もなく終えたまで、である。

…あくまでも調査と銘打ってあるのに、殲滅してしまった事には驚いたが。

 

 

「…さて、そろそろ迎えが来る時間だろうからね…お留守番、頼んだよ。」

 

「はい、任せて下さい。」

 

朗らかな返事と共に微笑む秘書艦を背に、迎えの車が停車する正門へと向かう。

…実は手紙の内容に、鳥海には意図的に伏せていた事柄がある。それは、"必ず僕一人で来る事"だ。一見すると罠かと疑う様な危険極まりない匂いがする一文だが、時雨が来てくれるとなれば話は別だ。

 

恐らく話す内容は"これからの先どうするか"だけではないのだろう。

そしてそれは鳥海には勿論、他の艦娘にも関する何かである事は明白だ。

 

 

…と、そこで目の前に黒塗りの車が一台停車する。そして後部座席から降りて来たのは、紛れもなくあの時雨だった。大人びた、それでいてミステリアスな雰囲気は変わらないままだったが、前回と大きく違う部分がある。

 

「時雨…改二になれたんだね。」

 

「ふふ、僕の努力の甲斐あって、かな。君は変わらずで居てくれたみたいだね。」

 

ふむふむ、と僕を暫く観察すると、一人頷き納得した風な仕草を見せる時雨。するとくるりと踵を返して車の扉を開き、乗車を促す。

 

「さ、それじゃあ行こうか。君達提督の上官がお待ちかねだ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

車で走る事、数十分。

大本営へと連れて行かれるものかと思っていたが、どうやらこの周辺に滞在しているお偉いさんの元へと招待される様だ。

 

ヤバイ…緊張して来た。提督達の集会で会った事はあるが、それ以外ではからっきし。ましてや一対一での対話など今まで一度もなかったのだ、緊張しても仕方がないと思う。

 

嫌な汗をかいている僕を見兼ねてか、隣の美少女が微笑みかける。

 

「はは、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?…気難しい人じゃないからね、彼は。君とも気が合う筈さ、多分。」

 

「そ、そう…?僕と気が合うなんて少し変な人だね、うん。」

 

「……まあ…否定はしないよ。」

 

何故か遠くを見つめながら呟く時雨。…彼女も彼女なりに苦労をしているのだろうか?

 

「さ、そんな事よりもう到着だよ。腐っても君の上官だ、失礼の無いようにね?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

時は少し飛んで或る部屋の前。

時雨が何回かノックをして声を掛けると返答があったのか、僕の方を振り向き微笑む。

 

…行こう。

心中で意を決した僕は扉に手を掛け、ゆっくりと開いていく。

 

「やあ、待っていたよ。君が期待の提督くんか。思っていたよりも…そうだな、童顔とか言われない?君。」

 

…………思っていたよりも変人だった。

 

「ああ、まぁ…偶に言われます。」

 

「総督、呉提督が引いてるよ…」

 

「あ、すまない。思っていたよりも可愛い男の子だと思ってね?てっきりゴツい奴を想像していたものだから。」

 

「…僕の渡した資料を読んでいないのかい?それじゃ作った意味がないじゃないか…」

 

「ははは、重ねて謝罪しよう。何も見ない方が楽しみが増えるというものさ。」

 

総督と呼ばれた彼が、目的の上官か。…成る程、中々の変質者だ。

それに自由奔放な性格…よくもまあ、僕の周りにはこの様な変質者が多いものだ。

 

「呉提督、彼が提督総監督…は言い難いから、総督と呼ばれている人間さ。」

 

「その通り、私が総督。君達提督の監督役。まあ、詳しくは君達が艦娘達に対して人道外れた扱いをしない様観察をしているだけだけどね。」

 

「…つまり、憲兵達のボスでもある訳ですか?」

 

「その通り。察しが良いね、君は。……ではそんな呉提督に質問だ。

暴走した提督は僕が。じゃあ、暴走した艦娘は誰が処罰すると思う?」

 

「はぁ…憲兵…ですかね。………いや、」

 

…待った。深海棲艦を素手で圧倒出来る様な艦娘を、只の人間が止められる訳がない。

という事は…

 

「残念、タイムオーバーだ。じゃあ、答え合わせを頼んだよ、時雨。」

 

「そこで僕に振るかい、普通。君が言う流れだったじゃないか…」

 

言い終えると、先程より疲れた表情の時雨が僕に向き直る。

 

「…まあ良いさ。答えは、僕だよ。不貞を働く輩は、僕と彼で罰しているんだ。」

 

それが、時雨の仕事…だった訳か。

 

「当然、そういう、武力を行使して暴走する奴は居る。自分で身に付けた力でも無い癖にね。」

 

「………因みに、暴走した奴はどうなるんです?」

 

「ははは、まあ…五体満足では済まされないだろうね!艦娘の方はどうなのかな?」

 

「僕は理由によるけどね。悪意ありきなら…例外無く沈んで貰ってるよ。」

 

何だこの怖い人達は…最早ヤ○ザじゃないか…

それでも、尋常じゃない力を持つ艦娘と、それを指揮する提督を監督するにはその位しないと抑止力として働かないのかも知れない。

 

「話が逸れたね。…あれ、逸れてない?そもそも話もしてなかったか、これは参ったね!…では本題に移ろう。……君の所の鳥海の話にさ。」

 

 

 


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