一息……つけたのかは分からないが、取り敢えず休憩を挟めたので施設の点検へ移る。僕が事前に見てはみたのだが、何しろ工学系には疎く、何が壊れていて何が正常なのかがサッパリ分からなかった。ので、鳥海にも見て貰い、不具合をメモに記す……といった所だ。
…少し鳥海に頼り過ぎだろうか。彼女は年下の筈なのだが、その仕草や落ち着いた言動の所為で僕よりも年上に見えてしまう。…僕には姉はいないが、居たとしたらあんな感じなのかも知れない。
「…いかん。司令官さん!…最初は何処を見に行くんですか?」
鳥海の声で現実に引き戻される。最近考え事が増えたと思う…立場上、仕方のない事なのだけれど。
「おぉ…ごめんごめん。最初は工廠から見に行こう。一番重要な場所だからね。」
無用な心配を掛けさせない様、笑顔で応える。
すると鳥海は何処か納得つつも呆れた様子で「もう…」と漏らすと、コツコツと靴音を響かせながら工廠へと歩を進めていく。
他人の感情の機微に、本当に聡い子だと思う。
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「少しでも明石の負担を減らす事が出来ればと思ったんだけど……僕らじゃやっぱり分からないか。大人しく彼女に任せるとしよう。」
色々と見てはみたが、工具や、ましてや機械の構造なんて素人に理解出来る筈もなく。鳥海共々工廠見学で終わってしまった。
「やはり彼女は凄いです。あんな複雑な構造のものを扱えるなんて…私は機械音痴ですから、サッパリで。」
「初めて聞いたんだけど……それじゃあ、鳥海に見て貰った意味がないじゃないか…」
「ふふ、そうですね。」
そうですね、って。
……仕方ない、次の用を済ませてしまおう。いよいよ鳥海のお手並み拝見って訳だ。1人で出撃させるのは些か無謀ではあるが、この鎮守府周域だけだし、改二の彼女なら問題ないだろう。
「はぁ…じゃあ、次は鎮守府の周りを軽く見て来てくれるかな。もう少しで他の艦娘も到着する予定だけど、君の実力を見ておく為に…」
「あの。」
僕の言葉を遮り、鳥海の怒気を含んだ声が届く。先程までの温かみのある少女の声ではなく、鋭く凍てつく様な声色に思わず身を竦める。
「最初に快諾してしまいましたが…、これは現実です。ゲームとは違うんですよ、司令。現時点では軽巡以下の深海棲艦しか報告されていませんが、鎮守府周辺海域にも空母や、戦艦が現れるかも知れません。」
そこまで一息に言い切ると僕の様子に気が付いたのか、申し訳無さそうな表情に変えて言葉を続ける。
「私だったから良いものの、他の子であれば、大なり小なりの損害を受けてもおかしくはありません。……今回だけは受けますが、これからはこんな無謀な事は止めて下さいね?…それと、怒ってしまって申し訳ありませんでした。」
人差し指を僕の鼻先へ突き付けながらにこりと微笑む。が、すぐに頭を下げる。
その切り替えの早さに、僕は「あ、うん。」なんて間の抜けた返事しか出来なかった。
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「準備は良いかな、鳥海。」
『はい、通信に異常はありません。いつでも行けます!』
通信機から彼女の声が響く。緊張しているのだろうか、その声にいつもの様な柔らかさが余り感じられない。
「緊張してる?僕もこうやって出撃させるのは初めてだからね、正直手が震えてる。でもこれからずっとやらなきゃいけない事だから、頑張ろう!」
『ふふ……はいっ!』
『抜錨!鳥海、出撃します!!』