かける、海鳥   作:魔獣先輩

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第6話

 

 

鳥海。高雄型重巡洋艦の4番艦。

全長203.76m、速力35.5ノットの13万馬力。

多くの戦に身を投じ、また、数多の敵艦を葬り去った武勲艦である。

 

出撃を無事に終え、執務室のソファーでうたた寝をする彼女を見遣り、可憐な少女であってもやはり艦娘なのだと再認識する。

 

先程…鎮守府周囲を懲戒中に、一隻で漂っていた深海の駆逐艦と交戦になった。が、敵艦の砲撃は鳥海を掠る事もなく、ただ一度の射撃で駆逐艦に命中、撃沈させてしまった。

 

直接見た訳では無い。彼女は控えめに報告をしていたが、鳥海の装甲に傷1つ付いていない事と、交戦する旨の通信から僅か数秒で戦闘終了の通信が入った為、恐らくそうではないかと推測したのだ。

 

だとしたら、鳥海の実力は相当なものだろう。改二にも、なるべくしてなったと言っても過言ではない筈だ。…しかし、教育施設で修練を重ねただけで、改二になれるものなのだろうか。こればっかりは、鳥海と同期の卒業生に聞かねば分かるまい。

……僕の同僚の提督もいる事だし、交流ついでに会ってみようか。

 

普段は穏やかで他人を気遣える優しい少女だが、一度戦いとなれば、先程僕に怒りを露わにした様に厳格な一面もあるのかも知れない。

が、それは今迄多くの仲間を看取って来た経験によるもの。温和で優しさに溢れる普段の姿と、冷徹で正確無比に敵を打ち砕く戦闘時の姿のどちらも、本当の彼女なのだろう。

 

「……いつの間にか寝てるじゃないか。」

 

そう呟くと座ったまま安らかな寝息を立てる彼女の隣に腰を下ろす。

…寝顔だけ見れば年相応の女の子にしか見えないんだけど。僕は目に掛かりそうな前髪を軽く梳き流そうと手を伸ばし、さらりとした髪に触れる。

 

「……………。」

 

思わず触ってしまったが、今起きたらヤバイのでは。

ドーモ、テイトク=サン……何て事になるのは真っ平御免だ、御免なのだが…もう少しだけ良いだろうか。今の今まで春の来なかった僕には夢にまで見た光景。少し位なら良いんじゃなかろうか。

 

「来てくれてありがとう、鳥海。」

 

こんな言葉、とてもではないが面と向かって言えたものではない。こんな可愛い子の前なら尚更である。

恥ずかしい台詞を吐いてしまった自分に羞恥が差し、踵を返して執務机に向かう。その背後で、彼女がくすりと笑った…ような気がした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「申し訳ありませんでした…まさか執務室で寝てしまうなんて…」

 

「いや、こちらこそ。初出撃で疲れていたのに引き止めちゃって、ごめん。」

 

それと、良い体験をありがとう。これは死んでも言わないが。

 

「寝ている私に悪戯なんて…していませんよね?」

 

「(して)ないです。」

 

「そうですか。」

 

何て鋭い子なんだ…何とか誤魔化せたが、今のは危うかった。これに懲りて今後は控えよう…

 

「ん、もうこんな時間か。今日はこれ位にして、また明日から書類の処理をしていこう。君が初めての艦娘だからね、好きな部屋を選んでくれて構わないよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

軽く頭を下げると背を向け執務室の扉を開く。……と、彼女は突然振り返り、僕と視線を通わせにこりと微笑む。

 

 

 

「それでは、司令官さん。また明日。」

 

 

 

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