「…失礼します。起きて下さい、司れ…、し、失礼しました。…起きてましたか。」
快活なノックの後、彼女はノータイムで入室し僕の姿を見つけると、勢い良く頭を下げる。どうやら本当に寝ているものだと思っていたらしい。
「うん、ちょっと僕の同僚に連絡をね。今度、交流を深める約束をしようとしたんだけど…今日でも都合が良いらしいから、今日来ちゃうってさ。」
携帯電話を懐に仕舞い込み、気にしていない、という風に笑い掛ける。
それにしても今日これからとは、彼も些か性急過ぎでは無いだろうか。
彼…呼称は佐世保提督。因みに僕は呉提督と呼ばれているのだが…呉と佐世保ってどの位掛かるのだろうか。恐らく泊まっていく羽目になると思う。
調べてみたが、どうやら5時間位は掛かるらしい。それだと…来るのは大体昼過ぎになるだろう。それまでは書類の整理を頑張りますか…。
「……司令官さん、流石に急過ぎます。現状では何もおもてなし出来ませんよ?」
「いいよ、アイツにそんなのしなくても。お茶くらい出してあげれば、それで良いと思う。」
「最低限も良い所じゃないですか…」
彼とは仲が良い、それこそ余計な気遣いはお互い必要ないくらいに。
だが、彼には重大な欠点がある。それは、憲兵待った無しの超弩級の変態である事だ。
あの変態にこの鳥海は、正直紹介したくない。が、彼女をもっと知るには…彼の元に居る艦娘に話を聞いてみるしかない。
「鳥海、君の部屋に行こう。持って来た荷物もあるだろうけど、片付けておく。今から来る提督はとんでもないド変態だからね、必ず君の部屋に入る。」
「えっ…そんな方が提督になれるんですか。」
まあ、そうだよね。僕もそう思う。
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理由はともあれ、部屋を片付ける事自体には了承して貰い、彼女の部屋へと向かう。重巡寮の1番奥、其処に鳥海の自室がある。扉の前に立つと、彼女は半ば諦めた様に僕へ問う。
「司令官さんも、一緒に片付ける…という事でしょうか。」
「うん、ごめん。失礼だとは思うけど、入らせて貰うよ。」
「……では、どうぞ。少し散らかっては居ますが。」
キィ、と小さな金切音と共に扉が開かれる。
てっきりゴミだらけ、脱いだ服だらけ等を想像していたばかりに、整理された部屋に思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
「お、綺麗だね。片付ける場所なんて無さそうだけど…」
と、其処で違和感に気付く。彼女の、学校から持って来たであろう荷物が見当たらないのだ。決して多くは無いはずだが、ここまで何もないのはおかしい。
「ねえ、鳥海。君の荷物は何処に?手ぶらって訳でも無いよね。」
「ありません。持って来たのは私の着替えだけですから。」
なんて事だ…こんな綾◯レイみたいな部屋で過ごすというのだろうか。あまりにも殺風景過ぎる。
「…君も女の子なんだからさ、もう少し女の子らしい部屋にしてみたらどうかな?僕も特に咎めたりはしないからさ。」
すると彼女は困った様な、苦い表情を浮かべる。何も難しい事は言ってないと思うんだけど…そういう部屋が苦手なのだろうか。
「ですよね…善処します。」
怒ったり言い返したりしない辺りを見ると、本当にそう思っているのだろう。"女の子らしく"…彼女の在学中は、もしかしたらそんな暇が無かったのかも知れない。
今度、彼女には何か女の子らしい物を買ってあげよう、と思う。それをきっかけに、少女らしい趣味を見つけて貰いたいものだ。