インフィニット・ストラトスadvanced【Godzilla】新編集版   作:天津毬

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今回は久々に妖刀さんから使用許可を頂いた家城燈さんが登場です‼︎

…なお、今回も短いですが、どうかご了承下さい。


EP-12 戦火の暇

ロリシカ、ギジガ統合基地。

司令基地、

モナーク機関ロリシカ支部棟・617研究室。

 

燈は、そこのパソコンに面と向かって、コンソールを何度も叩きながら、メドヴェーチ中隊のガンヘッドが捉えたバルゴン超大型種の映像を繰り返し見ていた。

注目したのは、湾曲するレーザーを放つ直前の瞬間。

通常、レーザーが進路上に何もないのに途中で曲がる事などあり得ない。

レーザーを曲げようとするなら…これはイギリスのISに搭載される予定だったが問題が発覚し、現在修正中の【偏光射撃】の理論の場合だが、左右横に並べた2つのレーザー照射機によるエネルギーの干渉でレーザーの進路を変える…例えばレーザーを右に曲げたければ左のレーザー照射機の出力を上げ、左に曲げたければ右側のレーザー照射機の出力を上げるというものだった。

…最も、上下には偏光出来ないし、パイロットへの負担が多すぎる事から、現在修正中だから、理論留まりで、現時点で実現は不可能なのだ。

そして、そんなものを自然界の生物が使えるはずがない。

「でも…そうとしか…考えられないのよね…」

燈は険しい顔で、万年筆を下唇に当てながら、呟く。

あのバルゴン超大型種の湾曲レーザーは間違いなく、イギリスの【偏光射撃】とほぼ同じ理論のモノだろう。

背中に付いていたプリズム状のレーザー照射器官が大型種が1つなのに対して超大型種は2つも持っているのだ。

その、2つのレーザー照射器官の出力を調整して、干渉させ合う事でレーザーの進路を変えて––––––いや、だとすれば可笑しい。

なぜ【偏光射撃】とは違い、上下にも進路を変えられる?

たった2つでは出来ない。

…では、2つ以上もの照射器官があるのか?

燈は再度コンソールをターン、と叩いて、映像を再生する。

バルゴン超大型種が湾曲レーザーを放つ直前の瞬間を。

バルゴンの照射器官に薄紅色の妖しい光が収束する。次の瞬間、膨大な熱で大気がプラズマ化し、虹色の生体レーザーが放たれ、爆撃機編隊の1機を呑み込み、爆撃機編隊を光が大気がプラズマ化する衝撃で殲滅し––––––突如、レーザーが湾曲する––––––直前。

燈は、一時停止ボタンを素早く押し、映像を止める。そして、バルゴン超大型種の部分を拡大し––––––

「これだ––––––」

プリズム状のレーザー照射器官を見て、呟く。

そこには、2つのプリズム状のレーザー照射器官の内部には、先端からレーザーを放っている照射部と、その上下にひとつずつ妖しく光る部位––––––おそらく、

「レーザー出力調整用の、干渉器官––––––」

燈はそう呟く。

間違っているかも知れない。だが今現在集まっている情報からは、燈にはそうとしか、思えなかった。

…確かに、今現在修正中の【偏光射撃】システムも、バルゴン超大型種のプリズム状のレーザー照射器官のように、銃口の上下に干渉機を取り付ける事で問題を解決仕掛けている––––––この事から、バルゴン超大型種のレーザー照射器官は、2つの照射器官による左右の進路変更、上下についた干渉器官による上下の進路変更が可能というモノだと言える。

「めちゃくちゃね…現時点で、最も洗練された地対空迎撃システムじゃない––––––」

自嘲するように、呆れるような声音で、背もたれにもたれ掛かりながら、呟き––––––

「…地対空迎撃システム?」

ふと、自分の言葉に疑問を浮かべ、先ほどまで気にしていなかった、バルゴンの生物としての側面について、考え初めてしまう。

…まず、バルゴンの生態系は、まだよく分かってはいない。ただ分かっているのは、炭素系生物という言葉、細胞が水に触れると液状化してしまう事、鉱物資源がエサという事、空間飛翔体に対して生体レーザーを放つ事、そして…… ” 何故か人間を捕食する ” という事…。

まぁ、生体レーザーに関しては…クラゲのネオンや深海生物の放つ光がそれの一種だから、自然界にも生体レーザーを放つ生物はいる。それらは求愛や身を守る為だ。

だが、バルゴンに関しては違う。

確かに身を守る為かも知れない。

だが、何故、空間飛翔体を集中的に狙うのか?という疑問が浮かぶ。

そして燈の中で仮説が生まれる。

「…脅威となる生物が ” 空を飛ぶ生物 ” だったから?…いえ、でも…」

しかしその仮説にさらに疑問が浮かぶ。

空を飛ぶ生物だったから…という理由ならあれ程の…湾曲すら可能で高威力の生体レーザーを放つ必要はないハズだ。

「…では、巨大生物級の敵ということ…?いえ、でも…」

燈はさらに仮説を立てるが、さらなる疑問が浮かぶ。

「…何故こんな ” 兵器のような生物が、自然発生する ” の…?」

そしてまた、新たな疑問が生まれる。

「…そして…何故、生物では人間のみを捕食するの…?」

バルゴンの主食は鉱物資源であり、人間は本来捕食する必要は感じられない。

…しかも、捕食した人間は硬化した体液と共に吐き出してしまう事から、捕食する必要は、ないハズだった。

…なら、

「ならば何故…バルゴンは人間を捕食するの…?」

人間を優先的に捕食––––––殺すのは、何故?

疑問が、尽きない。

(人間を優先的に殺す生き物は、人間くらいしか思い浮かばな––––––)

内心呟く。だが瞬間、遮って、

「まさか––––––」

燈の脳内で散らばっていた糸が交わり始める。

兵器のような生物。

人間を優先的に殺す。

–––––––燈の脳内で立てられた結論は、

「…生物兵器、とでも言うワケ……?バルゴンは…。」

そう、呟く。

だが、その結論には無理がある。と脳内で別の思考が異議を唱える。

「…まさか…無理があるわよね…まずあんな生物を作る技術がないわ…。そもそもあれだけの生物兵器を作っても、制御出来なきゃ意味がないし……。」

実際、バルゴンの遺伝子を作る事も制御する事も、現代科学では不可能だった。

「……はぁ…分からない…。」

燈は溜息を吐く。

…とにかく、今は、

「この事をまりもちゃんに伝えるべきよね…」

そういって、衛星通信対応型のスマートフォンを取り出して、まりもにメールを送る。

『バルゴン超大型種への対処法…前方からの一斉砲撃が行われている最中、左右真横からメドヴェーチ中隊と防衛省技術試験小隊が挟撃する形によるレーザー照射器官の破壊。但し対象の索敵範囲が不明な為、必ず低空飛行を行う事。

防衛省技術試験小隊の照射器官破壊用の装備としては、戦術機銀龍と共に試験に持ち込んだ【試製4式超電磁投射砲】を推奨。』

そう、打ち込んだ。

 

 

 

■■■■■■

 

 

ギジガ統合基地・第2前哨基地

旧戦術機ハンガー

 

血と肉と屍が埋め尽くす惨劇の残り粕–––––––バルゴンと兵士の屍が埋め尽くすそこで、箒は松葉杖をつきながら、ライサは不自由な片手で生存者の捜索に当たっていた。

バルゴンの死体の下にまだ負傷兵が埋もれていた、なんて事は、ザラだからだ。

箒やライサ以外にも捜索に当たっている兵士はいるが、やはりそれらの捜索班も、陣地再構築やバルゴンの死体撤去、戦車の整備、負傷兵の治療などに人員を割かれ、2名ずつが限界だった。

そうでなくても第2前哨基地の兵士の数は、箒とリーナがここに来た時の3分の1にまで減っていた。

正直、生存者の捜索に人員を割く余裕すら無いのだ。

だが、貴重な人員を見捨てるワケにもいかない、それ故に無理をさせてでも捜索に当たっていたのだ。

「…うっ…」

” 機械面 ” を貫くことで惨状に耐えてきたが、 ” 人間面 ” がそれを潰してしまい、年頃の少女らしさを取り戻した箒は、その地獄を前にして、何度も嘔吐感がこみ上げてきていた。

そして実際、何度も吐いていた。

今ではもう胃の中身は出し尽くし、唾液混じりの胃液しか出てこない。

ライサは心配げに大丈夫か?と忙しく尋ねるが、箒は大丈夫です、と言って、

「…当分、肉は食べたくも見たくも無いです…。」

ライサを安心させようと、辛そうな笑顔を浮かべながら軽口を、叩く。

「分かるわ。私も最初はそうだったし。今では、『やっぱり無理』––––––と思えなくなってるのがアレよね。頭のネジ外れちゃったかな?まぁ、もう慣れちゃったから。」

ライサも先程より厳しい口調ではなく、女の子らしい声音で、苦笑いしながら言う。

「やっぱり、入隊前の人達はこういうのは……」

「当然知らないわよ。知っちゃったら皆入隊したがらなくなるわ… ” メシが喉を通らない ” って理由で。」

「あ、はは…違い無いですね。」

本来なら無駄話の程度で、任務中なら罵声のひとつやふたつ飛んできかねないが、ライサは箒の精神を安定させる意味で、雑談を続けていた。

先程のクリス二等兵の凄惨な死、悲惨の一言しか浮かばない医療区画、体を失うという教本となってしまった、左腕を失ったライサ、そして今の屍の山を見て、箒は精神がズタボロのハズだった。

「そう言えば、クリス二等兵の死を目の当たりにさたのに平気なのね?」

「…6年前の墨田大火災で、死体は見慣れてるので……」

「…そう…」

だから今こうして雑談をして、箒の精神を安定させるのだ。

…当然、リーナもそうだから後で対策を取らねばならないが。

するとそこに、衛生兵の女性が駆け寄って来る。

何か言いにくそうな顔をしていた。

それでライサは、察した。

 

 

 

「…貴女には手伝いを頼んだハズだけど?」

ライサは壁のそばで蹲りながら、現実を拒絶しているリーナに話しかける。怒りを孕んだ声音で。

「まだ負傷兵だっているし戦車を修理しなきゃいけないし陣地再構築もしなきゃいけない。メシだって食わなきゃいけない。私達には限られた人員でみんな役割を分担してやれる事をしなきゃいけないの…私達だって暇じゃない。何もする気になれないとか、駄々を捏ねられても困るんだけど。」

リーナは尚も黙り込み、肩を震えさせながら、現実を拒絶する。

それが、今まで墓穴のようなこの基地で必死に生きてきたライサの怒りにターボを掛ける。

「甘ったれるのもいい加減にしろ!辛いのは分かる。だがあんたの任務は生き残ることでしょう⁉︎」

リーナの胸倉を掴み、強引に立たせる。

「だって…だって…」

ボロボロと涙を流しながら、リーナは言葉を紡ぐ。

「私がいても皆さんの迷惑になるだけです…守ってもらう価値なんて……!私には、みんなを救う力も、ない、のに…………!」

「だったら何だ⁉︎自殺でもしたいのか?みんなを救う?甘ったれるな!犠牲を覚悟して初めて戦えるんだ‼︎誰かを生贄にしなければ勝てないし、生き残れないんだ‼︎」

「もう…無理です…」

淀んだ瞳からいくつもの涙が、零れ落ちる。

「たすけてお父さん…ストラヴィツキー軍曹…」

瞬間、ライサは喪った左腕で殴りつけることができない代わりに頭突きをかまそうとして––––––抑える。

今のリーナは無力感と絶望に囚われているだけだ。殴ったり蹴ったり頭突きをかまして、どうにかなるものじゃない。

(戦争神経症の入り口?いえ、自分の無力感と戦場の現実を知ったショックの方が大きい…わね。)

ある程度予想していたとはいえ、やはり罪悪感を感じる。

思えばリーナは戦場の凄惨さを知らない。

箒のように大災害の経験もない。

普通の新任兵士なのだ。

…しかも純粋な性格。

脆くて、当たり前だ。

「…はぁ…さっき言った通り、私達は忙しい。…でも、貴女今は暇でしょう?少し付き合って。」

リーナの手を掴むと、篠ノ之一等兵も、と言って箒もついてこさせる。

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

第2前哨基地・管制塔

戦術機などの管制やバルゴン群の監視のために設けられた高さ150メートルもの、塔。

その展望フロアに箒とリーナはライサに連れられて来ていた。

「あの、ここに一体何が…?」

箒が、問う。

その箒に双眼鏡をリーナに渡しながら、ライサが応える。

「私達がこの墓穴で戦っている理由よ。」

窓から見えるのは一面暗黒に包まれた雪原、バルゴン群の屍、活動を休止しているバルゴン超大型種、そして––––––曇天の雲に反射する、幾つもの煌めく灯り。

「あれ…って…まさか⁉︎」

リーナが双眼鏡を覗きながら、呻いた。

「私達の守るべき街、ギジガの灯りよ。」

「「えっ⁉︎」」

あまりの戦場との近さに愕然とする。

「みんな今頃暖房の効いた部屋で夕飯を食べてる頃でしょうね…」

「「……」」

「あんた達にもこの光景がどれだけ異常か分かるでしょう?ギジガ防衛線を突破されたら、間違いなくギジガに住む5万人の市民は皆殺しにされる。…でもバルゴンがギジガに侵攻してくるようになってから今まで、街の灯りは僅かにしか減ってない。」

「ど、どうして––––––疎開とかは?」

堪えきれない何かを抱えながら箒が聴く。

「それをできるだけの時間も予算もないんでしょうね…それに、5万人の市民のうち2万人は体に障害を持っているし、さらに言えば五千人近くの人間が病院で寝たきりなのよ。––––––逃げたくても逃げ出せない。ギジガは医療機関の集中している都市だし、ギジガ防衛線を一気に打通されたら、被害はさらに拡大するわ。」

「そんな…」

リーナは思わず呻いた。

「そんな人達を守るのに私達は必死で戦っている。今日みたいに片手を無くそうが、仲間を失おうが、何も感じなくなるほどに感情を麻痺させて、ただ戦って死ぬ為に。」

ライサは言い放つ。

「…でも私達が彼らを守らなきゃ誰が守るのよ…それにね、可笑しい事にさ、私達は遠からず化け物に食い殺されるのに、みんながみんなして、仲間を犠牲にしても、自分を犠牲にしても、あの街を、あの灯火の中にいる人達を守りたいって思うのよ。」

ライサは少し誇らしげに、そして何処か悲しげに言う。

箒もリーナも、ライサの意図に気づく。

「だから貴女達は自分を責める必要なんてない。…多分、明日にでも私達はバルゴンに殺されるけど、決して犬死なんかじゃない。守りたいモノを守りぬいて死ぬ。この上なく名誉な事よ。このクソッタレな戦場では。」

微笑みながら言うライサに、箒もリーナも視界が霞み、涙が頬を伝って冷たいコンクリートの床に零れ落ちていく。

「…で、でもッ…」

リーナが罪悪感に塗れた声音で言う。

「わ、私は…誰も救えて…いません…誰かを救えるだけの力も…」

が、遮るようにライサが右手で頭を撫でてやる。

「そんなことはない。貴女には戦術機パイロットとして、成せることがあるでしょう?」

優しい声音で言う。

確かに、リーナや箒のような戦術機パイロットにはバルゴンとマトモにやり合える力がある。

ライサには1人1人は弱くとも、ギジガを守るという、確固たる意志を持った同志達の結束という名の力が。

「私達が束にならねば出来ないことを貴女達は少数で私達より多くの事を成せる。…決して無力という訳ではないわ。」

ライサが、言う。

「…ありがとう、ございます…少し、気持ちの整理が出来ました…」

涙を拭いながら、リーナが応える。

「…あの、ライサ伍長…その…」

箒は言いにくそうにするが、意を決して、

「…さっきのお話…半分は、嘘…ですよね?…まだ、死にたくは、ないんですよね…?」

「…ええ。そうね。死にたくない…死にたくなんかないわ‼︎」

ライサは感情のまま叫ぶ。

「市民を守る為に死ねって言われて、はいそうですかって死ねるもんですか!誰にも否定出来ない正義とか大義とかを私達だけに押し付けないで欲しいわよ!こんなとこで死んでも戦況は大して変わらない!また彼奴らが攻めてきて私達の仲間を殺して、奪い去って…せめて、希望くらい…持たせてよ…。」

ライサの中で心の片隅にしまい込んでいた本音が、放たれる。

「…死んで英雄だのなんだのなんかになるより、生きて、まだ行きたい場所にも行きたい。学校にも行きたい。…また家族に会いたい。…まだ、残っているこの手で、家族の温もりに触れたい…‼︎」

語る内に、ライサの目頭からポロポロと溜め込んだ疲れが決壊したダムから溢れ出る水のように、頬を伝う。

箒とリーナの前にいるのは、先ほどいかにも軍人と言った大人びた少女ではなく、それは箒とリーナと同い年の、まだ幼い少女だった。

それを聴いていて、箒は自らの立ち位置に罪悪感を覚える。

当たり前のように学校に行って、当たり前のように行きたい場所に行って、当たり前のように家族と触れ合えて––––––ついこの間まで通っていたIS学園や、千尋とデートに行った渋谷。今まで箒にとって当たり前だった世界の価値観が…それが、目の前の少女には出来ない、いや許されないのだ。

いかに自分が恵まれていたかを思い知り、そして自分の自己犠牲が如何に無意味かを、思い知る。

そしてその自己犠牲は、結局自己満足だったのだと思い知る。

…ライサのように、強制されたものではなく、自分がそうしたいと、そうしなくてはならないという強迫観念に突き動かされた結果。

箒は今回の事を機に、その歪だった思考からは抜け出せた、

だが、…ライサは、それすらできないのだ。

自らの命すら、諦めて、目の前の現実に死ぬまで足掻くしか出来ない、そんな絶望的な立ち位置に立たされている。

それがどれだけ辛いか…バルゴンとの戦闘を経験した箒には、分かるような気がした。

「……2人は、私みたいな、諦めてしまった人間には、ならないでね…絶対。」

涙を袖で拭いながら、ライサが言った。

 

 

 

数分後。

箒はまだ管制塔に居た。

ギジガの街の灯りではなく、バルゴンが侵攻してくる、暗黒の雪原の方を、見ながら。

「…私は…私は、何も知らなかった…」

思わず、ポツリと呟く。

箒は、こういう事は墨田大火災で経験したから、知ったつもりでいた。

…でも、根本的に環境が違い過ぎた。

墨田大火災が起きて10万人が死んでも数年、いや、早ければ半年で人々は忘れ去ってしまう。

『自分たちには関係無いから』と言って。

だから箒は忘れないで覚えていたから知ったつもりになっていた。

でも、ロリシカは17年もほとんど孤立無援でバルゴンと戦い続けていたのだ。

平和な日本とは、あまりに真逆の世界だった。

「…私は、どうするべきなんだ…ロリシカを去ってからは…。」

(…答えは出てるでしょうに。)

ふと、箒の悩みにナニカが干渉してくる。

「…分かっている…日本がロリシカみたいになってしまった時…ひとりでも多くの人を救う為に…戦術機乗りとして…腕を磨くこと…」

(なんだ…分かってるんじゃない…)

「だがそれまで私は保つのか?」

(…今は、どうとも言えな––––––⁉︎)

「どうし––––––⁉︎」

瞬間、ナニカと感覚を共有していた箒は窓の外––––––雪原の遥か彼方、人間では視認不可能な距離に居た、それを見る。

瞬間、それは箒と目が合う。

(あらあら…こんな時に私の同胞である、あの子が来ちゃうなんて…)

妖艶な声音だが困ったような感情で、ナニカは言う。

ナニカの視覚を共有して箒が見る先には、青白い稲妻を背中の針山のトゲの間で走らせながら、無数の白い蝶を引き連れ、一歩、一歩、と第2前哨基地に迫り来る––––––暴龍・アンギラスの姿が、あった。

 

 

 

 

 




今回はここまでです。

燈さんにサクッと解析されちゃったバルゴン超大型種…そして燈さんの言うように、果たしてこんな『兵器同然の生物』が自然発生するのか…?

そしてライサの想いと本音…どの国のどの兵士も、大抵はこうだと思います。
英雄的行為を強いられる一般人ってこんな心情なんだろうなぁ…と、何処ぞの、英雄になってしまった「身体は剣で出来ている正義の味方」を思い浮かべながら書きました。
…そして箒の心情…二次創作とはいえ、なんか日本と紛争国の学校や家族への認識もこんな感じなのなかぁ…と思ったり…。

そして第2前哨基地にアンギラス接近中‼︎
…ヤバいです。


次回も不定期ですがよろしくお願い致します。


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