インフィニット・ストラトスadvanced【Godzilla】新編集版   作:天津毬

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タイトルで出落ち感あるけど…()

今回は朝倉さんと片桐さんの絡みと箒と簪の絡みが主体の人間ドラマパートと、いつぞやのマグロ君とゴジラさんの戦闘回になります。
ただ、後半は若干ギャグ混じりです()

………あと、一言。マグロ君が好きな人にはキツい回になるかもしれません。ご注意下さい。
それでもよろしいという方はどうぞ…。





EP-38 離別と紛イ物タル蜥蜴(マグロ食ってるようなの)

IS学園第1シャフト外周空中通路

 

––––––そこで私は光ちゃんと邂逅した。

彼女は小銃を握っている。

多分、それは護身用。

私は拳銃を握っている。

勿論、それは殺傷用。

彼女は世界に溶け込むように、緑を主とする迷彩の戦闘装束を身に纏っている。

私は世界の異物である事を示すように血のついた白のワンピースを身に纏っている。

––––––私と光ちゃんはもう違う場所にいるのだということを思い知らされる。

手を伸ばせば届く場所なのに。

声をかければ届く距離なのに。

けれど互いの立ち位置は、多分地球10周分くらいには遠い場所にいる。

 

「美都…なぜ、ここに?」

 

動揺を絞め殺した様に平静に満ちた声を彼女は放つ。

けれど動揺を殺し切れておらず、声は僅かに震えている。

 

「…うーん、そうですね…嘘偽りなく正直に言えば、私は篠ノ之束を殺しに来ました…ここには居ませんでしたけれど。」

 

だから私は事実をぶつけてみる。

…すると、やはり衝撃に彼女は目を見開く。

…だけれど、彼女は再び平静の海に身を沈める。

 

「––––––そうか。」

 

覚めた瞳と、冷たい声が大気を震わせて音を鳴らす。

––––––小銃を私に向ける。

…ああ、やっぱりこうなるのか、と。

少し残念そうに顔を歪めながら、腹をくくり切る。

私を逃してくれた事には感謝しているし、光ちゃんのそういう情を捨て切れないところとか、とても愛おしいけれど––––––死に場所くらいは自分で決めたいから。

––––––微笑みながら、口を開く。

 

「うん、だから私は––––––貴女の『敵』。」

 

それで2人の中にある枷は引き千切られた。

 

 

 

––––––朝倉の疾走が始まった。

朝倉は足––––––つま先に全体重をかける、そして地面を、蹴る。

踏みつけた床の金属タイルがへこみ、埃が舞い––––––朝倉は人間では、あり得ない速さで迫る。

十メートルを駆け抜けるのに、3秒とかからなかった。

片桐を押し倒して無力化するには容易い。

だから、朝倉は片桐の顔めがけて手を伸ばす。

…だが。

片桐はミニミ軽機関銃に取り付けた07式大型汎用銃剣でそれを阻害する。

––––––それは、風に刃を乗せるような流麗さで。

銃剣をもって朝倉の腕を浅く斬りつける。

 

「ッ––––––!」

 

鮮血が舞う。

思わず朝倉は顔を僅かに顰めて、片桐の真上を跨ぐようにして、さらなる斬撃を躱す。

 

「………。」

 

片桐は背後に飛んだ朝倉に再び照準を合わせる。

––––––それを見て、朝倉は笑う。

不思議そうな物を見るように微笑みながら、片桐に問う。

 

「––––––どうして、撃たなかったの?」

 

––––––それは最もな質問だった。

先程、片桐は朝倉の腕を浅く斬りつけた。

斬りつけた事でさえ、刃を皮膚に斬りつけたものの夾叉したのではなく––––––ワザと浅く斬りつけて牽制してみせたのだ。

…そう、ワザと。

どの程度で斬りつければ良いかという制御が可能な程度には余裕があったのだ。

…つまり、人間では有り得ぬ速さで走る朝倉に対しても十二分に対応可能だった。

ならば––––––朝倉を射殺することはより一層容易かったハズである。

…だが、片桐は撃たなかった。

––––––まるで、躊躇っているように。

 

「………。」

 

––––––沈黙。

そんなことは関係ない、とばかりに片桐は朝倉を見つめたまま平静を維持する。

…そんな片桐を朝倉は見つめる。

…片桐は勝手に再生する朝倉の腕を見つめる。

それで、––––––ああ、彼女も千尋と同じ存在になったのか、と––––––理解する。

その片桐に、再び朝倉は飛びかかる。

––––––朝倉は人間の動きをしていなかった。

彼女は蛇のように蛇行する。

広いようで狭い外周連絡通路の道は、人間には狭く、人外には広過ぎる狩猟場だった。

片桐が五感を駆使して感じ取る警戒網を、彼女はケモノのように認知出来ぬ素早さで潜り抜ける。

視認できる––––––だが動きを捉えられない。

しかし片桐に焦燥はなく、淡々と覚めながらミニミから銃剣を取り外す。

––––––直後、蛇の動きが猛獣へと変化する。

爆ぜる火花のような迸り。

朝倉(ケモノ)片桐(ニンゲン)の頭上へと跳躍し、肉を引き裂かんと手刀を繰り穿つ––––––‼︎

ギィン、と(ツメ)(ナイフ)が衝突した。

片桐(ニンゲン)の脳天から肩にいたる肉を狙った(ツメ)と、防ぎと邀撃に入った片桐(ニンゲン)(ナイフ)が衝突する。

一瞬––––––己の(ツメ)(ナイフ)を共有するように、互いの視線が交錯した。

朝倉(ケモノ)は悲哀に歪んだ笑みを浮かべながら。

片桐(ニンゲン)は平静に見えながらも揺らぎながら。

––––––朝倉(ケモノ)は寂しそうに微笑みながら口角を吊り上げると、後方に飛び退く。

…たった一度の跳躍で、6メートルも離れ飛ぶ。

明らかに人間では、もうない。

それが望んだモノだろうとなかろうと、彼女(朝倉)はもう人間ではなくなっていた。

––––––それは肉体が変異したという意味であるのか。

––––––あるいは、人間扱いされていなかったという意味なのか。

どちらもなのか…それは定かではない。

だが、そんな物は関係ない。

朝倉は6メートル離れ飛び、床に着地しようとして––––––一瞬にして眼前に現れた片桐光の左手によって、押し倒された。

 

「––––––え?」

 

一瞬にして6メートルを詰めた片桐の速さが、視認出来なかった。

自分(朝倉)の上に被さるように乗りかかった片桐光の動きが視認出来なかった。

––––––握られた(ナイフ)が振り下ろされる。

気が付いた時には、片桐光の動きはもうその段階にまで到達していた。

あとは、そのナイフを自分の肉に突き刺すだけ。

獲物を狩る肉食獣の動きは速過ぎてニンゲンには視認は出来ても捕捉は出来ない。

ソレと同格の動体視力をもってしても、朝倉美都は片桐光を捕捉出来なかった。

…たとえ、ニンゲンがケモノに劣る生き物であったとしても、ニンゲンもケモノも動物の一種である以上、極限環境下でケモノと拮抗出来るだけの能力を保有或いは獲得する個体がいてもおかしくない。

ただ、その事実を目の当たりにしただけ。

こんなにもアッサリ終わってしまう自分を嗤う。

…だから、朝倉(ケモノ)はそのまま(ナイフ)が肉を食い破る結末を受け入れて。

––––––しかし、いつまで経ってもその時は来なかった。

 

「––––––––––––。」

 

眼前には空中で静止したナイフ。

平静のままに激情を宿した表情。

あと2、3センチ押し込めば朝倉の眉間を貫くにも関わらず、片桐は刃を空中で静止させている。

 

「––––––何故殺さないの?」

 

当然といえば当然の問い。

 

「…友人を殺せると思うか?」

 

それに対して、無難な解答を片桐は放つ。

––––––直後、振動と警報音が空気を疾る。

ゴジラが放射能を捕食すべく、原子炉建屋の壁を破壊したせいで放射能が漏れ出したのだ。

 

 

高濃度の放射能を含む霧は400メートル程下層から世界を侵食しながら2人に迫る。

––––––当然、放射能漏れを防ぐべく、隔壁が次々と閉じられて行く。

それにより霧は第1シャフトを上昇し、2人に迫る。

––––––あと300メートル。

 

「…光ちゃん、どうして逃げないの?」

 

美都が問いかける。

––––––あと250メートル。

 

「…昔、お前を救うと約束しただろう?…だけど出来そうにない。」

 

光が応える

––––––あと200メートル。

 

「––––––だから、責任とって一緒に死んでやる。」

 

続けて言う。

––––––あと150メートル。

 

「––––––嬉しい。」

 

––––––あと130メートル。

 

「…すまない。」

 

––––––あと110メートル。

 

「…謝らないで。それに、謝らなきゃいけないのは、私の方。」

 

「––––––ぐっ」

 

美都が光の首を掴む。

––––––あと100メートル。

 

「そんなに言われたら、私も一緒に死んであげても良い。」

 

––––––あと90メートル。

 

「だけど、それはダメ。––––––光ちゃんは、まだ、死んじゃダメ。」

 

先程のケモノらしさなど露ほども感じさせない口調が走る。

––––––あと80メートル。

 

「光ちゃんは多分、たくさんの命を任されてるんでしょ?…じゃあ、死んじゃダメ。」

 

––––––あと70メートル。

 

「それに、ね––––––––––––」

 

––––––あと60メートル。

 

「光ちゃんには、貴女には、私を託しても良いかなって、思えるから。」

 

首飾りのUSBを引き千切る。

––––––あと50メートル。

 

「私は人類(ヒト)が大嫌いだし、赦せないけれど––––––」

 

USBを光のマガジンケースに差し込む。

––––––あと40メートル。

 

「––––––貴女には、絶望的なまでに崩壊した未来でも生きてもらいたいから。」

 

––––––あと30メートル。

そのまま、光を第2シャフト方面連絡通路目掛けて放り投げる。

そのゲートは隔壁の自動閉鎖システムが破損してしまっているのか、封鎖システムが作動していなかった。

––––––あと20メートル。

 

「がっ––––––」

 

連絡通路の床に光は叩きつけられる。

全身に痛みと衝撃が疾るが、構わず顔を上げて第1シャフトを見る。

––––––あと10メートル。

 

「美都––––––‼︎」

 

叫ぶ。

それに、美都は儚げに微笑む。

 

「––––––死んだら許しませんよ。」

 

そう言うと、彼女は手動(マニュアル)で隔壁の封鎖システムを作動させて––––––放射能の霧に、呑み込まれた。

 

––––––光/自分に残された選択肢は、茫然と立ち尽くすか、部下の元へ戻るか。

––––––冷静に考えればどうすれば良いか、嫌でも分かる。

公人である以上、私情は許されない––––––だから私は、元来た道を辿る事にした。

 

 

 

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

 

第2シャフト方面連絡通路

 

肉片と。

肉塊と。

血液と。

体液と。

薬莢と。

硝煙と。

––––––殺戮の沼、と評するに相応しい有様と化した連絡通路。

そこで第1教導隊と日英共同開発実験団の残存混成部隊は撤退戦を継続していた。

 

「はあッ––––––‼︎」

 

最後尾––––––箒は打鉄甲一式を纏い、試製12式耐熱装甲刀を振るう。

近接防御戦をもって、クラブロスを漸減する様子はどう考えても危うく、距離を保つべきである、という思考に至る。

だがしかし––––––今の箒を含む全員が、それが許されぬ状況に置かれていた。

箒が全機のステータスが表記されたウィンドウを自覚する。

––––––全機残弾ほぼゼロ。

––––––平均推進剤残量2割。

––––––SE(シールドエネルギー)平均残量1割。

––––––部隊内総稼働機体数9機。

––––––うち、交戦可能機体2機。

––––––操縦者の生命維持に全てを回した戦闘不能機体が3機。

––––––SE枯渇とそれらを輸送する為に武装を投棄し戦闘不能となった機体が4機。

––––––眼前の敵個体数は推定60体近く。

状況は最悪で絶望的だ。

こちらに抗う術は近接装備以外に無く、ただ逃げるしかない。

だがジェットを蒸し続けて飛行しながら逃げれば推進剤は枯渇する。

故に主脚歩行と飛行を併せた方法でなければターミナルに辿り着く事は不可能だ。

しかしこのやり方ではいずれ奴らに追いつかれてしまう。

故にシールドエネルギー残量と推進剤残量が最も多い箒と簪が邀撃に当たっていた。

そうしても、もはや無理だった。

際限なく襲い来る異形の群れ。

絶え間なく続く暴力の嵐。

枯渇していくシールドエネルギー。

––––––限界などとうに超えている。

迫り来る破滅の可能性に呼吸が浅くなる。

 

「––––––箒、このままじゃ……!」

 

簪の乱れた、苦しげな声。

超振動薙刀––––––【夢現(ゆめうつつ)】を振るうその腕の動きは、次第に鈍り始めている。

まるで波打ち際に作られた砂の城のように、いつ飲み込まれてしまってもおかしくはない状況に、彼女は立たされていた。

 

「私がカバーする!とにかくその夢現(デカブツ)を振るっていろ‼︎死にたくなければな!!」

 

思わず怒鳴る。

––––––箒/私は、別に死んだって構わない。

だけれど、此奴まで巻き込むなんて許されない。

だからこそ、死に物狂いで彼女に生まれる隙と綻びを潰す。

だが––––––限界を迎えたのは肉体だけでなく武器もであった。

飛び掛かる鋏を受け止める––––––直後、手にしていた試製12式耐熱装甲刀が金属音を立ててへし折れる。

––––––無理もない、対ラウラ戦から対VTシステム戦という激闘を経て、ゴジラの白熱光の直撃を受けたのだ。

それほどの苛烈なダメージを受け続け、整備無しで酷使され続ければこうなるのは必然と言える。

 

「ち––––––」

 

舌打ちと共に箒は拡張領域よりふた振りの武装を顕現させる。

––––––右手には試製15式誘導熱放出剣(タイプ15・プロトメーサーブレード)

––––––左手には92式火薬式射突槍(タイプ92・パイルバンカー)《改》。

…どちらも、対VTシステム戦で使わず仕舞いに終わり、今の今まで温存されていた装備だった。

しかしそれだけではない。

箒と共に簪が左方に拡張領域より2枚のシェルツェンを指定展開––––––そのままスパイクが鈍い金属音を立てて床に突き刺さる。

さらに打鉄から拝借した近接刀【葵】を合計2本拡張領域より呼び出され、同じく床に突き刺さる。

––––––それで、拡張領域は(カラ)になる。今度こそ、抗し得る手段はここにあるモノを除いて全てが尽きた。

そんな中でありながらも––––––箒は左右に試製15式誘導熱放出剣(タイプ15・プロトメーサーブレード)92式火薬式射突槍(タイプ92・パイルバンカー)《改》を構え、眼前を見据える。

––––––眼前には依然として迫り来るクラブロス数10体。

––––––対するは、墓標のように立つ武具の中に佇む箒。

その隣には簪がいる。

だが––––––箒は最初から簪をここに残しておくつもりなど、露さえも無かった。

 

「––––––簪、お前は離脱しろ。」

 

簪の纏う、(あかしま)-改二の機体ステータスを見ながら告げる。

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––––––兵装

荷電粒子砲【春雷】:EN残量ゼロ。

MLO誘導弾【山嵐】:残弾ゼロ。

超振動薙刀【夢現】:耐久度低下。

シェルツェン(借出):使用中。

近接刀【葵】(借出):使用中。

––––––推進剤残量17%

飛行継続可能時間残り11分。

––––––機体損傷蓄積量61%

操縦者保護機能に問題発生。

––––––シールドエネルギー残量9%

被打撃許容回数推定2回。

絶対防御、PIC出力低下。

––––––機体内部バッテリー残量21%

機体稼働限界時間まで18分。

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これだけ見れば、継戦能力など無いに等しい。

…次の攻性を迎え撃てば、間違いなく簪は死ぬ。

だから––––––

 

「なっ、何言ってるの⁈」

 

突出したクラブロスに夢現を突き立て、刺殺しながら、簪は心底驚愕した表情を浮かべる。

対する箒も誘導熱放出刀にメーサーを流していない状態で、突出して来たクラブロスを横一文字に両断しながら応える。

 

「それはこちらのセリフだ––––––そんな機体状況で、ここを守り切れるか。」

 

務めて、突き放すように言い放つ。

 

「それは箒だって––––––!」

 

だが、簪は箒の機体ステータスを確認しながら反論する。

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––––––兵装

試製12式耐熱装甲刀:喪失。

試製20式複合ライフル砲:喪失。

76mm支援ライフル砲:喪失。

試製15式誘導熱放出刀:使用中。

92式火薬式射突槍《改》:使用中。

シェルツェン(借出):使用中。

近接刀【葵】(借出):使用中。

––––––推進剤残量25%

飛行可能時間限界まで21分

––––––機体損傷蓄積量57%

操縦者保護機能に問題発生。

––––––シールドエネルギー残量18%

被打撃許容回数推定4回。

絶対防御、PIC出力低下。

––––––機体内部バッテリー残量28%

機体稼働時間限界まで25分。

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––––––確かに、箒の方が余裕があるとはいえ、ジリ貧具合は簪と大差ない。

だから簪は、ここに残るというのだ。

––––––ただでさえ、死に近い場所にいるというのに。

…それは決して仲間を見捨てたく無いと、身を呈することを決意した簪の意思の表れであった。

––––––それに箒は思わず口角を上げてしまう。

 

「––––––優しいな…簪は。」

 

聞こえないように、小さく呟く。

その意思は嬉しいし有難いとさえ思う。

––––––だけれど、元より腹を括った自分にその意思は不要だった。

そして自分の行いに簪を巻き込む訳にも行かない。

だから––––––箒は、自身の中に蠢くものを使うことにした。

 

(––––––イリス、単一能力(ワンオフアビリティ)起動。)

 

《…あら––––––いいの?》

 

(…何度も言わせるな。)

 

僅かに苛立ちを込めた、箒の声。

それにイリスは憐憫と憂慮するような声音で返す。

 

《…考え直す気は?貴女、千尋君の為に死のうとしてるけど、まだ生きてるかも知れないわよ?貴女だって彼が普通じゃない事くらい知ってるでしょう?貴女が普通じゃないと、彼が知っているように––––––》

 

(だから、何度も––––––それに、あんな状態で、生きてる訳が––––––‼︎)

 

《…どうしても、やるの?》

 

––––––最終確認のような問い。

それを箒は、

 

「ああ、やってくれ。」

 

––––––迷う事なく選択した。

…直後。

 

「ぐッ––––––…!!」

 

––––––胸に焼けた鉄が突き刺さるような、鋭く鈍い痛みが走る。

…体内で抑制していたイリスが活性化したのだと、箒は理解する。

同時に、

 

「え––––––な、何コレ⁈」

 

簪の声が響く。

見れば、機体ウィンドウには数多のノイズとハッキングを告げる警告ウィンドウが無数に現れる。

その簪の前に、箒が飛び出し––––––92式火薬式射突槍でさらに迫り来るクラブロスに風穴を穿つ…‼︎

 

《––––––颱コアユニットに侵入……機体制御システムおよび姿勢制御バーニア制圧。》

 

イリスの淡々と頭に響く報告を聴き流しながら、箒は眼前の異形を斬り捨てる。

––––––偶発的とはいえ、機体ステータスに単一能力を発現した箒の打鉄甲一式。

その能力内容は––––––イリスによる自身の侵蝕範囲拡大を代償とした対象の無条件での電子的制圧および無力化。

早い話––––––ハッキングである。

 

《––––––挙動偏向テーブル展開。》

 

簪の颱改二を囲むように、一輪の光輪が浮かぶ。

そして颱改二ごと、簪は180度方向転換させられる。

 

「箒、何を––––––⁈」

 

––––––一連の事象が箒の仕業であると理解して、簪は背を向けさせられながらも叫ぶ。

 

「––––––すまない、言う事聞かないから、無理矢理言う通りにさせる。」

 

箒は背を向けながら、申し訳なさそうに口を開く。

––––––同時に。

 

《––––––対象の従属化を完了。》

 

頭に響く、支配の宣告。

––––––直後、響く警報。

ウィンドウが投影され、警報の正体を知らされる。

それは第1シャフト最下層にある原子炉からの放射能流出。

それに対する処置として各ブロックを隔壁で封鎖するというもの。

そして––––––都合が良い事に、たった今ここも封鎖されるのだという。

 

「…これで、逃す口実は出来たな…。」

 

迫り来るクラブロスを斬り伏せ、イリスの侵蝕に伴う激痛で顔を歪ませ、声を曇らせながら、箒は呟く。

 

「…颱改二に現戦域からの離脱指示。」

 

《––––––了解。》

 

指示から実行へは流れるように速く、実行される。

––––––簪の意思とは全く異なるように。

颱改二は跳躍ユニットを吹かし、ターミナル方面への後退を開始した。

 

「ま、待って––––––箒!!」

 

簪の声。

––––––だが、箒は振り返らない。

背を向けたままただ一言、謝罪の言葉を放つべく口を開く。

 

「––––––お前を巻き込む訳には行かないから…。」

 

––––––警報と共に隔壁が迫り上がる。

––––––簪と箒を隔てる壁が顕現する。

 

「箒………‼︎」

 

簪の、泣き出しそうな声が響く。

––––––隔壁はさらに迫り上がり、箒の下半身はすでに簪のいる世界から隔てられている。

 

「…すまないな––––––迷惑ばかりかけて…。」

 

箒の自嘲するような声音。

そして––––––振り返りながら、口を開く。

 

「…片桐一佐に会ったら言ってくれ––––––千尋は最期まで優しい子で、私は最期まで大馬鹿者だった、って。」

 

––––––泣き出しそうな笑顔を浮かべながら、告げる。

 

「ほう––––––」

 

簪の呼びかけ。

だが––––––それを遮るように、隔壁が閉ざされる。

こちら側に残された人間は箒のみ。

––––––これで、気を遣う必要はない。

––––––これで、思う存分やれる。

––––––これで、千尋の元へ行ける。

––––––だけど、その前に。

…眼前より迫り来る、数10体の異形共を視認する。

––––––今から死ぬ、それはいい。

––––––だけど私情による自決をするならば、それ相応の行いをしなくてはならない。

…故に。

 

「三途の川の駄賃がわりだ––––––貴様らを殺させて貰うぞ……!!」

 

––––––右手に試製15式誘導熱放出刀。

––––––左手に92式射突槍《改》。

––––––そして陣地に突き立てられた武装群。

それらを手に、箒は咆哮した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

 

 

 

第1シャフト直上

地上区域跡廃墟群

 

…放射能を含む霧が舞い上がる第1シャフト直上。

––––––焼けた重鉄骨(H形鋼)

––––––砕けた混凝土(コンクリート)

––––––溶けた観客席(プラスチック)

正真正銘の廃墟。

放射能の霧に包まれた世界にポツリと浮上するその姿は、さながら幽霊船を彷彿とさせる不気味さを孕んでいる。

それこそが––––––原型を留めぬまでに破壊し尽くされた第1アリーナの残骸であった。

…高さ1メートルほどの瓦礫のひとつに、朝倉美都は腰掛けている。

第1シャフトから登り出てきた彼女は、放射能に満たされた空間の中、生身で何処か浮かない表情を浮かべて。

 

「––––––意外でしたね…。」

 

ポツリ、と呟く。

 

「光ちゃん、てっきり私の事を敵だと断じて殺しちゃうものだと思ってました。」

 

誰に言うわけでもなく、あるいは自身に対しての独白か。

––––––もちろん、光の性格が冷徹でないことは知っている。

けれど、朝倉美都が知っているのは子供時分の光だけ。大人になってからの片桐光を、彼女は知らなかった。

––––––人は子供の頃と大人になった後とでは大きく性格が変わるという。

だから、子供時分に「友人を失いたくない」という私情で、白騎士事件の生存者になっただけで犯罪者扱いの身に墜とされた自身を逃がしてくれた彼女はもういないと思っていた。

…けれどほんの僅かな、砂粒程度の期待だけれど、少し考えれば絶対無いって言える奇跡に対する期待もあった。

––––––だから、私はあのUSBを用意していたのだ。

完全に天災みたいな、ISに身を委ねて、結末がわかっているのに無視して現実逃避するような人間じゃなかったら…そう思わずにはいられなかった。

今の世界は破滅に「傾く」とか「転がり落ちる」とか、そんなんじゃなくて。

言葉にするならそう––––––「墜落」とか「垂直落下」の類。

––––––傾く程度であれば、いずれ限界に至るにせよ、歯止め(ブレーキ)をかけられる。

《破滅という結末》を抑制することが可能かも知れない。出来なくても長い時間をかけて可能にできるかも知れない。

––––––だが、今の世界はビルから飛び降りて、地面に叩きつけられて絶命するまでの垂直落下中の自殺志願者に等しい。

《破滅という結末》に歯止めすらかけれず無条件で墜落していく状態。

…私からすれば、それがどうした、という感じだが。

––––––正直、そのまま滅んでしまえとさえ思う心があるというのも事実。

…これは理不尽で死ぬ未来を世界と天災ひいては当時の人類に強制された朝倉美都の記憶から生まれたものか。

…あるいは、彼女に仮初め(カリソメ)の命を与えた黒き荒神(ゴジラ)の旧い記憶から生まれたものか。

…それとも、前述の両者が混じり合って生まれたものか。

––––––どちらとも言えないし、分かりようがない。

閑話休題(それはともかく)

意外だったのは––––––彼女、片桐光が全く変わらない認識で接したからだ。

いや、多少は変わっていただろう。

敵だ––––––と宣言したし、殺すつもりで攻撃もしたのだから。

しかし、それを経てもなお、片桐光は朝倉美都を友人として見ていた。

––––––土壇場で共に心中してくれるくらいに。

そこまでされたら、朝倉美都に対する認識は変わらないと思わざるを得ない。

…それが、印象操作の可能性もあるが、今の政府が私にそこまで気を遣うメリットは存在しない。

何しろ、朝倉美都は故人。

死んだ人間であり戸籍も人権も権力も財力も存在しない、政治的にも無価値なモノでしかない。

それに、朝倉美都があそこにいた事を事前に知っていた訳では無いだろう。

…だとすれば独断。

そして片桐光が独断で朝倉美都にあのような対処をするという事は私情。

––––––そう判断したからこそ、『私だった者』の記憶と記録を渡して、生き残らせようなんてしてしまった。

…結局、朝倉美都(わたし)も私情で対応してしまった。

朝倉美都(わたし)ゴジラ(わたし)が混じってから酷くあやふやだ。

思考はなく、ただ本能的に動かされているだけのようにも感じてしまう。

いや、感じてしまうのではなくその通りなのだ。

だって––––––今の私は、【ただの死体】だもの。

 

「…ああ、だけど––––––」

 

––––––その私情は、確かに朝倉美都(私の意識)だと。

少し頰を赤らめながら、そう思う。

 

『あーさくーらさーん。』

 

ふと、先程までの時間を粉砕するように、倉田が通信をかけて来る。

手にした半ばトランシーバーに改造されたスマートフォンを見ながら、美都は鬱陶しげに口を開く。

 

「––––––なんですか?」

 

『いや〜放射能の霧柱が立ったモンですから。今霧の中に居るみたいですけど大丈夫ですかw?急性被曝でハゲたりしてませんw?」

 

倉田がニタニタと笑っている姿が通話越しにも分かる。

––––––やはり、朝倉美都(わたし)は彼のことが嫌いなのだ。生理的に。

他人の不幸に悦を見出す人間が、多分、朝倉美都(わたし)は嫌いなのだ。

天災を痛め付ける時も、ゴジラ(わたし)は僅かな加虐心を抱いたが、朝倉美都(わたし)は何も感じてはいなかった。

少なくとも、報復対象たる篠ノ之束やその他の誰かを殺めても、快楽を感じない。

ただ、「ああ、こういうものなんだな」と俯瞰するだけ。

それは自分が殺戮で悦を得る人間を悪しき者と捉えているからか。

…まぁ、何はともあれ、彼のニタニタと笑っている顔が見えないのが、まだ救いだろうか。

 

「––––––嫌味を言いに来ただけなら、切りますよ。」

 

言って、通話終了ボタンを押そうとして。

 

『ああ、違うんですよ。朝倉さんこの間見たいマグロ食ってたゴジラモドキを覚えてます?』

 

「…ああ、あのレッチ島近海にいた…。」

 

『そいつがIS学園南部に上陸しまして。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「◼️◼︎◼︎◼︎◼️◼︎◼︎▪︎▪︎▪︎––––––!!」

 

––––––直後、響く異形の咆哮(こえ)

同時にその姿を現わす新たな異形の体躯。

速さに長けることを選んだであろう細長い印象を抱かせる身体。

元はイグアナだったのか、その面影を残している頭部。

発達し強靭さを感じさせる脚と腕に反して貧弱さしか感じられない全身。

背中には皮膚を突き破るように並び立つ鋭利な背ビレ達。

以前太平洋で見かけ––––––【紛い物(ジラ)】と名付けた巨大不明生物であった。

 

「––––––そういうのは、もっと早く言ってください。」

 

そう言うなり、スマートフォンの通信を切る。

これ以上の通信は時間の無駄だ。

どうせ通話越しにニタニタ笑われるがオチ。

––––––それに、背後からは無視したくても出来ない程にまで肥大化した暴力的な気配が漂っている。

振り返れば、背後は第1シャフトから立ち込める放射能の霧柱。

放射線量は遥かに減衰したものの、微量に残されている。

…だが、そんな絞りカスなど眼中にないのか––––––龍を連想させる長く黒い尾が霧を引き裂きながら世界に浮上する。

 

「▂█▂▇▂▂▂▂▂………!!」

 

地の底から響くような唸り声。

それが再び振動を纏い、唸り声と共に地上へと登り来る。

––––––霧の果て。

放射能という最凶の毒によって隔絶された孔より、霧の根源を全て喰い尽くした黒い影が現われ出でる。

それは先程この地を焼いた災厄の怪物にして罪科の具現。

 

「▂▅▇▇▇█▂▇▂––––––––––––!!」

 

––––––全身が壊れるかと錯覚する。

それは13キロメートルもの距離を隔ててもなお爆風となって肉体に轟く大音響。

再び黒き荒神(ゴジラ)の咆哮が世界を戦慄させる(ふるわせる)

 

「◼️◼︎◼︎◼︎◼️◼︎◼︎▪︎▪︎▪︎▪︎––––––!!」

 

呼応するように、紛い物(ジラ)が咆哮を上げる。

––––––対峙する2体。

僅か数刻の硬直の後、両者は動き出す。

先手を打つのは、ジラであった。

発達したその強靭な脚をもって大地を踏み砕きながら、疾走する。

巡航ミサイル14発分に相当するその踏み込みは、

地表を踏み砕く。

土塊を巻き上げる。

1万8000トンにもおよぶ巨体が時速200キロもの速度をもって、ゴジラに突貫する…‼︎

 

––––––疾走は、肉眼で追えるものではなかった。

 

後手に回されたゴジラは、背鰭を青白く光らせる。

増大する放射線量。

明確に対象を視認する肉眼。

空間を照らすチェレンコフ光。

口内に満たされた核の炎は3000度に到達する。

…鉄を溶かすには1500度の熱が必要であるとされている。

すなわち、今ゴジラが溜めている炎は鉄を容易く焼き払うというもの…!

…2秒の後。

開け放たれた口より焔が眩く荒れ狂う高熱の蒼炎が穿たれる…‼︎

 

––––––獄炎の咆哮は、紛い物を討ち払わんと大気を焼却する。

 

それを、

 

「◼️◼︎◼︎◼︎◼️◼︎◼︎▪︎▪︎▪︎▪︎––––––!!」

 

––––––紛い物(ジラ)は、それを跳躍で躱してみせる…‼︎

つまり先の突貫は、ゴジラの白熱光を放たせる為の(デコイ)

その賭けの末に、ジラはゴジラに白熱光を放たせることで隙を作らせることに成功した。

ゴジラは確かにすかさず白熱光の放射からジラの迎撃防御に回るだろう。

だがそれには僅なタイムラグがあり––––––その隙を突く事が、ジラの狙いであった。

––––––跳躍したジラは、本命たる、疾走と跳躍からの落下による移動エネルギーと質量エネルギーによる飛び蹴り(ハイジャンプキック)を放つ…‼︎

…先の疾走より圧倒的にソレは速い。

間違いなく機動力と反射神経、知性––––––それらどの面においても、ジラは全てがゴジラを凌駕している。

ゴジラは獣の側に在る巨大不明生物ならば。

ジラは人の側に近い巨大不明生物と言える。

ヒトはケモノを狩る為に、知恵を絞りながら対峙する。

ジラも同じように、知恵を絞り、勝てるであろう陽の要素をもって、ゴジラに対峙した。

白熱光は既に放射を停止し、眼球は迫るジラを視認する。

しかし遅い。

既にジラの攻撃はゴジラを有効射程に捉えている。

仮に避けられたとしても、次なる第2撃を放ち、有効打たらしめるには造作も無い。

そして今これは––––––限り無く勝利に近い状態。

だから今この状態では、ジラの攻撃を躱す事など叶わず、抗えぬ高速に無抵抗に押し潰される結末だけが存在しない。

––––––その相手が、ニンゲンであれば。

 

「▪︎◼︎▪︎▪︎▪︎▪︎––––––––––––!!」

 

「▂▇▂▂▂▂––––––––––––––––––」

 

両者が激突する。

しかし––––––ジラは上空で停止してしまっていた。

それに対するジラの驚きの声と。

ゴジラの唸り声が大気に揺れる。

––––––突如、ジラの腹部に未知の感覚が発生する。

上空で静止するという未知の現象を体験する。

蹴りを打ち込む筈が、対象の眼前で停止するという謎が残留する。

––––––ごふっ、と吐血する。

そして血を吐き出した際に、ふと下を向いてしまう。

––––––そこで、腹部を貫通して、体内に残留しているゴジラの腕が見えてしまった。

 

「◼️◼︎◼︎▪︎▪︎––––––⁈」

 

––––––その現実にジラは恐慌する。

…自分の腹部に手を入れられている。

これほど恐ろしい状況はそうないだろう。

何しろ体内に手を入れられた側は、手を入れた側に命を握られたも同然。

…手を引き抜けば、間違いなく大量出血で死に至る。

…手を入れたままでは、生きていくことさえ難しい。

だが、そんな理屈よりも先に、ジラは早く手を引き抜こうと手脚をばたつかせる。

––––––ゴジラは、ただ無言で、ジラの腸を握り掴む。

腸を握られた激痛に悶え狂うジラなど視野にも入れないまま、ぐちゅり、と濡れた肉の音を響かせて。

––––––握り掴んだ腸ごと、腕を引き抜いた…‼︎

どす黒い血と。

澄んだ鮮血と。

体内から二酸化炭素を多く含んだ血と酸素を多く含んだ血が溢れ出す。

同時に、肝臓と腎臓までも体外に零れだす。

 

「◼️◼︎◼︎▪︎▪︎––––––!◼️◼︎◼︎▪︎▪︎––––––‼︎」

 

あまりの激痛に悶え、ショック死出来なかった自分を呪うようにジラは発狂しながら倒れ行く。

––––––だが、このままでは終わらせない、とでも言うかのように。

 

「––––––––––––––––––」

 

ゴジラはあろうことか、腸を握ったまま、ジラを振り回し始める。

 

「◼️、◼️◼️◼︎◼︎▪︎▪︎––––––!!」

 

ジラが苦悶と訳の分からない悲鳴を叫ぶ。

ゴジラは無言のまま、ただひたすらに容赦なく、ジラをブン回す。

それはまるで、ではなく、正しく鉄球だ。

振り回される度に体内から腸を漏らすジラはなす術もなく、ゴジラに振り回され、残骸と化した校舎や未だ無傷だった校舎、果てはISの格納庫に激突し、有象無象を粉砕して行く。

その度にジラの手脚はあらぬ方向に圧し曲がり、全身の骨が次々と砕かれて行く。

 

「…って、きゃあッ!危な…‼︎」

 

ゴオッ、と旋風を纏いながら振り飛ばされるジラを視認して、朝倉美都(わたし)は思わず伏せて避ける。

その隣では、ジラが第1アリーナの残骸であった観客席の廃墟に激突し、粉砕され、残骸から破片へと成り下がる。

 

「◼️、◼️◼️、◼️、◼️––––––!!」

 

怪力だの暴力だの関係ない。

そんな概念で済まされる次元ではない。

この悪魔的なまでに凶悪な回転を繰り返した後、ゴジラはその遠心力を生かして、

 

「––––––▂▅▇█▂▇▂▂▂▂▂!!」

 

咆哮を叫びながら、ゴジラは鉄球(ジラ)を放り投げる––––––!!

まさにハンマー投げ。

まさにジャイアントスイングである。

全身の骨を砕かれたジラは、無残にも最後は頭から投げ飛ばされ、飛んで行く。

貧相なイグアナの怪獣は、ポイ捨てされたゴミのように投げ捨てられ––––––進行方向に存在した、モニュメント・タワーに激突した。

 

「あ…うわあ…。」

 

…あまりの惨さに朝倉美都(わたし)は顔を引き攣らせる。…正確には、一連の惨殺を嬉々として行ったゴジラに。

––––––ジラの最期は。

血を撒き散らしながら痙攣するジラに、駄目押しのトドメと言わんばかりにモニュメント・タワーが倒れて来て––––––下敷きになる形で潰死した。

––––––モニュメント・タワー一帯には、血と肉片の沼地だけが残されていた。

 

『––––––朝倉さん』

 

不意に倉田が通信して来る。

朝倉美都(わたし)は一連の惨殺劇に顔を引き攣らせていて、彼の言葉さえ届いていない。

だが、それも見越していたのか、独り言のように倉田は言った。

 

『––––––やっぱマグロ食ってるようなのはダメだなぁ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱマグロ食ってるようなのはダメだな…《パチンッ(指パッチン)》––––––次!!

ジラ「あんなバトルのさせ方ひどいよぅ…あんまりだ…。」

上げて落とすのは基本だからね。
あと今回のバトルはゴジラFWのvsジラとvsクモンガ戦を組み合わせてみました(グッ)

ジラ「尻尾掴んでジャイアントスイングでもいいじゃないかぁ…ひどいよぅ…。」


––––––今回はここまでとなります。
正直、怪獣バトルパートを入れたかったからというのと、「いつかジラvsゴジラをコッチでもやりたいなぁ〜」という願望書くためにキャラ描写がおざなりになった感否めませんが…()

朝倉「そういえば、ゴジラはどうやって第1シャフトから出て来たんです?」

手足の指を使ってロッククライミングよろしくよじ登って来ました。



次回も不定期ですが、よろしくお願い致します…。



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