ダンジョンとは無縁でありたい 作:雑食
三日と経たず俺はこの世界の言葉と文字を習得した。
さすが俺と褒めてやりたい。実際はリューがいなかったら文字や言葉の習得などままならなかった。リューというのは少女の名前だ。リュー・リオン。それが少女の名だった。最初に言葉を交わした時はいきなり変態扱いされてしまった。どうやら本を持ってきたときに抱きついたのがいけなかったらしい。
この世界におけるエルフは気を許した相手にしか肌を触れさせないということだ。
なるほど……つまりリューは俺に気を許したということだ。
違います。と、そう睨まれながら言われた。
……違うらしい。
そして一番知りたかったのがこの世界はどういうものかという事だ。
訪ねた際は怪訝そうに何故知らないかと聞かれたが、異世界から来ましたなんて言えるわけもなく、どこかの遠い村からきただの、その村は周りから隔離されて住んでいただの、言い訳をずらずらと並べた。
しかし、それでもリューはどこか納得のいかない様子だったが渋々説明してくれた。
この街の名前はオラリオ。通称、迷宮都市オラリオというらしい。
簡単に言えばダンジョンがある街だ。ダンジョンといえば、ゲームでよくある定番のアレだ。
モンスターとかいっぱい出てきて、冒険者という職業をもった人々が挑むアレだ。
興味が出たが痛いのは嫌なので今は遠慮しとこう。
そして俺が最重要問題で気になったのは通貨だ。
オラリオで用いられているのはヴァリスという単位の通貨。
1貨幣で1ヴァリスでおおよそ考えていいとのことだ。
その他にも様々な事を教えてくれたが割合しよう。
「それでこれからどうする?」
「どうすると? 私は恩があったから貴方に文字や言葉を教えた。もう一緒に行動する義理はないのでは?」
「冷たいな……一緒に寝た中じゃないか」
「……誤解を招く言い方はやめていただきたい」
「それにリューはどこかに行くあてあるのか? 路地で倒れていたところを見ると何かあったんだろ? わかっているさ。大人の俺がリューの面倒を見てあげようじゃないか。今は辛い路地生活になるだろうが、いつかは安心して眠れる一軒家を……」
「一応、私は隠れ家があるのでご安心を。それに貴方は何か勘違いをしているはずだ。そこを改めて理解していただきたい」
「……あ、そうなのね。」
路地暮らし生活は俺だけらしい。
「じゃぁ、これでお別れのようだ。リュー元気で生きろよ!」
「そうですね……この三日間、色々と不愉快でしたが有意義な時間でした。それでは……!!」
俺は突然リューに押し倒された。
いきなりのことで受け身なんて取れずに地面と頭が激しいキスをしてしまった。
……あまり痛くはないが、脳が揺れる。
しかし、こんな真昼間から押し倒すなんて発情でもしてたのだろうか。
俺の
俺の上に跨るリューは路地の奥を鋭い眼光で見据えている。
見上げるような形で俺も路地奥を伺うと、そこには一人の人影があった。
「ちっ、Lv4相手は不意打ちはあんま意味ねぇか」
路地の奥の先から黒いフードを被った男が現れた。
手には先ほど射ったであろう弓を手に持っている。
先ほどリューに押し倒されたのは矢の射線上にいたからか。
俺は状況の把握を終えると、すぐさまリューを持ち上げて男と対峙するように間合いをとった。
この男はどうやら敵さんのようだ。もしかしてこの前路地裏でお金を頂いたお仲間の可能性が……
「そこの男もお前のファミリアの生き残りか?」
「この男は関係ない」
違うみたいだ。状況から見るからになにやらリューの因縁の相手っぽい。
「まだ生き残りが……」
「やってくれたなぁ『疾風』、俺を残して全員死んじまったよ。誰かさんが殺してくれたせいでなぁ」
「元はお前たちが!!」
「事故みたいなもんだろ。あのとき偶然にもお前らがいただけの話だ。それを人のせいにしては困るな」
「下衆が!」
すぐにでも戦闘が開始しそうな空気の中、俺はいまにも逃げ出したかった。
だが神は俺を許してはくれなかった。
「それにそこの男に現場を見られてたんじゃあ、殺すしかないよなぁ」
……まじで?
「待て! この男は関係ない! 用があるのは私だけだろう!!」
「その男と関係をもったのはお前だろう? なら、さっさとその男を守ってみるんだな!!」
そう言ってフードの男は素早く弓を構えて俺に目掛けて矢を放った。
それが戦闘開始の合図となった。
放たれた矢は見事俺の肩に命中し、辺りの鮮血が飛び散る。
……痛い痛い痛い!!
いきなり打つなんて卑怯じゃないか!
俺はその場でうずくまり、矢を肩から抜くと傷口を手で押さえた。
原因のフードの男とリューは戦闘に入っており、壁や屋根を飛び回るように動いていた。
フードの男は矢を放っては逃げ回り、リューも躱してはフードの男に短剣を振りかざしている。
どちらも均衡を保ち、決定打がない状態で戦闘は長引いていた。
そして数分が経過したときだった、俺の体に異変が起きた。
「………がはっ!」
吐血だ。
それに眩暈もする。
「そろそろ効いてきたようだな!!」
俺の様子を見たのか、高笑うフードの男。
「……ど、毒か……」
俺はこの状況でも冷静に物事を把握できてた。
……これは本格的なマズイ状況だ。
「そうだ! 射った矢には全て毒が塗ってある。かすってでもしたら毒に侵されて死ぬってわけだ!!」
「さっさと俺を倒して解毒でもしてあげるんだな! まぁ、死ぬのは俺じゃなくお前だけどな!!」
「貴様!!」
怒り狂ったリューの声を最後に俺は意識を失った。
願わくば無事に目が覚めることを祈って……