ダンジョンとは無縁でありたい 作:雑食
久しぶりなのでリハビリ程度な文字数です。
拙作ですがお付き合いしてくれるかた宜しく。
異世界に来てからの何度目かの目覚め。視界に入るのは澄み切った青い空ではなく、木造の天井。
どうやら無事に生きているようだ。毒で体が蝕まれていたはずなのだが、清々しいほど体の調子は良くなっていた。異世界定番の魔法かなんかで治ったのだろう。知らないけど。
しかし、一体ここはどこなのだろうか。
体を起こし、辺りを見渡し見るが、ベッド以外何もない。殺風景という言葉がピッタリな部屋だった。
あまりにも少ない情報に現状の把握さえできないでいると、ゆっくりと部屋の扉が開いた。
突然の乱入者に身を固めると、扉の先から出てきたのは銀色の髪をした綺麗な女性だった。
「良かったぁ〜 無事に目覚めて」
「おかげさまで……それで貴女は?」
「私は、ここ『豊饒の女主人』という酒場で店員をしているシル・フローヴァです。大変だったんですよ? 路地で倒れている貴方と彼女をここまで運ぶのは」
リューが無事でいることに、ほっと胸を撫で下ろす。
俺が気絶した後、襲撃してきた男を退けたのか、あるいわ殺してしまったのか……
「……それでリューは?」
「リューは下で働いてますよ?」
……ん?
展開がまったく読めない。
「あの〜…俺が倒れてから何日たってます?」
「3日ですね。……リューから事情は色々と聞いてます。リューの内情も伺いました。彼女のファミリアが壊滅したことも、壊滅に追い詰めたファミリアに報復したことも、罪のない人を殺めしまったことも彼女の口から聞きました。その上で私たちは彼女を受け入れ、ここで働いてもらってます」
……うん、さっぱりわからん。
まずファミリアってなんぞや。壊滅した?
リューって親に捨てられた可哀想な子っていう設定じゃなかったけ?
あっ、俺の中の設定か。
「……それで貴方はどうしますか?」
「……え?」
「帰るとこないんですよね? リューから聞きましたよ?」
「……いや、そうですけど……」
「ここで働きます? ちょうと男手も欲しかったところなんですよ」
何も知らない異世界に投げ出され、途方に暮れていた俺にとって願っても無い話なのだが、
こんなにうまく話が進んでいいのだろうか……
うまい話には裏があるってのが世の中の常だ。
「いいんですかね?」
しかし、俺には彼女の提案に縋るしかないのである。
「貴方しだいですね。ミア母さんーーーあ、此処の店長なんですけどね?『そこら辺でくたばってもらっても目覚めが悪い』だそうですよ? あと、ちゃんと働くなら受け入れるって言ってましたね♪」
「じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」
すぐさま俺はベットの上で正座し、シルに顔を下げた。
男のプライドなんてドブに捨ててしまえ。
「頭を上げてください。私じゃなくてミア母さんにお願いしますね。私としても従業員が増えて嬉しいですから♪」
そう言ってシルは扉から出て行く。
親切な人だーーそう思って彼女が出て行く姿を眺めていると、一瞬彼女の姿がブレた気がした。
瞼をこすり、再度彼女の姿を拝もうとしたとき、すでに彼女は部屋を出たあとだった。
「……気のせい?」
毒にやられたせいか、まだ体が本調子ではないのかもしれない。
そう思うには十分だったが、どこか納得していない自分がいた。
◇
今日、変わった色をした男を見つけた。
男の魂は誰よりも歪だった。人の魂には色が付いている。
それは今まで見てきた魂が証明している。
情熱的な赤色、穏やかな青色……多種多様の色の魂が存在する。
しかしーーー。
男の魂は何も見えなかった。
確かに魂は存在する。だが、何も見えない。色が分からない。
見ようとすると靄が掛かったように見えなくなってしまう。
こんなことは初めてだった。
……ぁあ、気になる……。
見ることができない魂をもつ男。
まだ誰の物にもなっていない穢れない魂。
ーーーそれなら手に入れてしまえばいい。
他の神に見つかる前に私が手に入れてしまえばいい……ふふっ。
「あぁ……、彼が私の元に来るのが楽しみ」