俺のボーダーとしての青春はまちがっている。【俺ガイル編】   作:ばけねこ

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【第六章 少女達の憂鬱】

7月末頃由比ヶ浜は1週間程家族旅行があるからとその間飼い犬を預かってくれと押し付けてきた

雪ノ下も同じタイミングで一度実家に帰ると言ってきたが由比ヶ浜の飼い犬サブレを苦手そうに見ていたのが原因じゃないよね

 

「ねえ八幡、この日に防衛任務を入れて欲しいんだけど」

 

「ん、なんかあるのか留美」

 

「留美正直に言え、俺達はお前の味方だ」

 

二郎は真剣な眼差しで留美に問いかけたそう言えば留美を連れてきたのは二郎だったな

トリオン量が多くボーダーとしても才能があるからだと言っていたが・・・

 

話を聞くとどうやら小学校で林間学校があるそうで防衛任務でたびたび学校を休んでいる留美には友達らしい友達もおらず

こういったイベントでは浮いてしまうとのことだった

 

「3日間全ては無理だな・・・2日目に入れて途中で抜ければいいんじゃないか」

 

二郎に入知恵されたこともあり俺はそう答えたのだが留美は渋々だが了承はした

実は裏があるのだ二郎の話では現在留美は虐めの対象となっておりこういったイベントではハブられてしまうのだそうだ

 

留美を連れてきたのが二郎であり留美の親を説得しボーダーへ入れたのも二郎だ時々留美の様子を見ているのも二郎だ

今回のイベントで留美の虐めを根絶してやると意気込んでいる二郎に哀願され俺は協力することにした

 

由比ヶ浜が家族旅行から帰ってきてサブレを引き取りにきたのだがどうやら1週間で飼い主を忘れたらしい

唸るサブレをキャリーバックに入れて家に帰る由比ヶ浜の背中は煤けていた

 

「ねぇヒッキー花火大会行こうよ」

 

「え~やだよめんどくさい」

 

「だめ行くの!」

 

由比ヶ浜は宣言通り優柔不断をやめ自分の意見を言うようになってきた

 

「おにいちゃん、偶には外でないと歴史に取り残されるよ昭和はとうの昔に終わったんだよ」

 

「小町おにいちゃんは歴史に名を残すような人物ではない従って歴史に取り残されても問題ない」

 

「ほら、最近ゆきのんの様子が変だからさ~気分転換にいいかなって」

 

「うーむ比企谷隊で行くってのなら偶にはいいか」

 

「あ、小町は受験生なのです。勉強してますのでお土産よろしく!」

 

「由比ヶ浜、雪ノ下へはお前が連絡してくれ俺は留美と二郎に声を掛けるからな」

 

「OK~」

 

花火大会の日駅前集合にしたわけなんだが俺と二郎の二人だけの待ちぼうけだ

場所や時間合ってるよね。また俺すっぽかされたの?

 

「ヒッキーサクジーお待たせ」

 

「比企谷君、佐久間君こんにちは」

 

「八幡二郎見て見て着物だよ」

 

留美が浴衣を着たいと言い出した為、雪ノ下の家で着付けをしたのだ。雪ノ下って完璧超人なの?

 

「おう似合うぞ」

 

「可愛い可愛い」

 

俺達の前で一回転する留美

 

「ヒッキーとサクジーあたし等を褒めてないよ」

 

「おう由比ヶ浜も雪ノ下も綺麗だよ・・・着物が」

 

「由比ヶ浜は華やかで雪ノ下は可憐だな」

 

「ヒッキー最後はいらないからね」

 

「由比ヶ浜さん比企谷君のあの目には美と言うものが映らないらしいから仕方ないわ」

 

会場に向かうにしたがって人が多くなっていくまだ花火までの時間には間があるので俺達は小町へのお土産を買ってしまう事にした

 

当たりのない紐のくじ引きの前で動こうとしない雪ノ下と留美を見咎めた二郎が二人を呼び戻しに向かったのだが

 

「結衣も来てたの」

 

「あ、さがみんやっはろー」

 

「いいなぁ結衣そっちは華やかで、うち等は女だけだよ」

 

とは言ってもその女が俺を見る目は下げずんだ目であった。二郎達が合流する前に去っていったのでよしとしよう

二郎にバレたらきっと一悶着起こしていたから

 

「当たりクジがないなんて詐欺だわ。なんとか訴えられないのかしら」

 

「八幡パンさんの大きなヌイグルミがあったんだよ」

 

どうやら二人はヌイグルミが目が留まっていて二郎に当たりなんか入っていないと説得されたようだ

 

「留美お前はボーダーから支給されているお金でヌイグルミの一つや二つ簡単に買えるだろ」

 

そう俺達ボーダーが防衛任務で支給されているお金は決して少なくない。俺と小町の分を合わせれば家だって買えるぐらいだからな

 

「だって、おかーさんが無駄遣いしちゃダメだって言ってるんだもん」

 

「え~ヒッキーボーダーってお金貰えるの。あたしまだ貰ってないよ」

 

「あのな由比ヶ浜B級に上がって防衛任務をすれば危険手当やら討伐ボーナスがでるんだ。お前まだ防衛任務やってないだろ」

 

「そうなのてっきり有志かなにかだと思っていたのだけれど」

 

「精神論じゃあ腹は膨れないし生きては行けない。だからスポンサーが必要なんだよ

 まあ俺や二郎はA級だから固定給金もでるんだけどな」

 

「だったらヒッキー今度奢ってよ」

 

「いいぞ、サイゼの水がいいかガムシロップなんかどうだ」

 

「それサービスだし、無料だし」

 

「日本は恵まれているわね」

 

そうこうしていると花火の時間が近づいて来た。俺達は人込みを避けるように川沿いを歩いている

 

「あ~雪乃ちゃんだ。やっほー」

 

雪ノ下を大人にしたような女が話しかけてきたんだが、雪ノ下の知り合い?

 

「ね、姉さん、どうしてここに?」

 

「何時ものお父さんの代理だよ。ところで、どっちが雪乃ちゃんの彼氏なのかな?うりうり白状しなさい」

 

「この二人とは別にそんな関係ではないわ」

 

「ふ~んそうなんだ。残念」

 

俺と二郎は目の前の女を冷めた目でみている。分厚い外面に隠れた醜い本性が見て取れるようだ

 

「なら君達は雪乃ちゃんの何なのかな?もしかしてナンパ?だったら痛い目を見るかも」

 

「え~と、どちら様」

 

二郎が攻撃的に問いかける

 

「あ、そうだったね、私は雪乃ちゃんの姉の雪ノ下陽乃です、で君達は」

 

「俺は佐久間二郎ボーダー隊員だ」

 

「比企谷八幡でしゅ、雪ノ下とは同級生?同じくボーダー隊員やってます」

 

「由比ヶ浜結衣です。ゆきのんとは友達です。ゆきのんと一緒にボーダー隊員を目指してます」

 

「鶴見留美ボーダー隊員」

 

「ふ~んそうなんだ。君達が雪乃ちゃんをボーダーなんかに誘ったんだね」

 

「姉さん私は自分の意思で決めたのよ」

 

「まっ今日の所はいっか・・・

 雪乃ちゃんこの前は自主的に帰ってきたからいいもののまだお母さんは一人暮らしの事納得してないんだよ」

 

そういって雪ノ下の姉は去っていった

 

「見苦しい所を見せてしまったわね。私の家はちょっと事情があって・・・」

 

そう言って雪ノ下は悲しそうな顔をした。当然察しのいい二郎が黙っているわけがないわけで

 

「なあ雪ノ下、俺達はお前の家の事情なんか知らないが

 今後雪ノ下家の人間としていたいのか雪ノ下雪乃個人としていたいのか決める必要があるんじゃないか」

 

「二郎の言う通りだな。親離れなんてのはしたいときにすればいいんだ。幸いボーダーになれば独立することも可能だからな

 でだな・・・もしボーダーとして仲間になるんだったらいつでも手助けしてやるぞ」

 

「あたしだってゆきのんを助けるから」

 

「あの・・・その・・・ありがとう」

 

泣き笑いのような複雑な顔で答える雪ノ下。うーむ空気が重い

 

「さて、お前等隠れてないでそろそろ出てこい」

 

二郎が暗がりに声を掛けたらぞろぞろと出てくるボーダー達、小町やら木虎やら出水、三上、綾辻、米屋・・・

ちょっと待てなんで小町がいるんだ

 

「おい小町お前勉強するって言ってたよね」

 

「それはですね。ほら突然気分転換したくなるってあるじゃないですか。だからボーダーにいたみんなを誘って来てみたのです」

 

「お前な・・・」

 

ヒュー・・・ドーンその時突然花火が夜空に上がった。1発目の後に次々に上がる花火に目が奪われる

 

「ほらほらおにいちゃん、花火見ないと」

 

「はあ・・・まあいいか」

 

「比企谷の目と違ってなかなか綺麗だな」

 

「米屋これが終わったら模擬戦しようぜ。メテオラでお前を花火にしてやんよ」

 

「汚い花火だな・・・」

 

二郎の言葉がツボにはまったのか笑いがおこる。まあ雪ノ下の表情が若干明るくなったんで当初の目的は果たしたんだろう

久しぶりに見た生の花火は綺麗だった

 

 

「由比ヶ浜から連絡あったが、留美はやっぱり虐めに合ってるみたいだな」

 

現在由比ヶ浜と雪ノ下は平塚先生に土下座され留美が参加している林間学校にボランティアとして千葉村に行っている

どうやら葉山達トップカーストも内申点を餌に参加しているようでそこで問題が起きていた

 

葉山が虐めから避難している留美を無理やり虐めグループの中に押し込んでいるそうだ

あいつ一度切り刻んでやらないとわからないのか・・・

 

「なら打ち合わせ通りでいいんじゃないのか」

 

「本当にうまくいくもんなのかね」

 

「よく言うだろ。不良が犬を助けただけでチョロインに惚れられるって印象なんて簡単に覆るんだよ」

 

あれ?俺犬助けた事あるよね。あっ俺不良じゃなかった・・・

 

 

千葉村

 

「君達はどうしたい」

 

「俺は出来る限り何とかしたいと思っています」

 

「あなたには無理よ・・・あの時もそうだったでしょ」

 

「確かに以前はそうだったのかもしれない。でも今なら・・・」

 

「これもいい機会だ。君達で何ができるのか考えたまえ」

 

平塚先生が去った後三浦、海老名がそれぞれ案を出すが実現性も低くとても解決できるとは思えない

 

「やっぱり、みんなで仲良くできる方法を考えないと根本的解決にならないか」

 

「そんなことは不可能よ。ひとかけらの可能性もないわ」

 

「ねえ隼人君、さっきから自分なら出来るみたいに言ってるけど具体的な方法ってあるの?」

 

「俺がみんなの前で虐めはよくないと説得すればきっとわかってくれると思う」

 

「あなた冗談を言っていい場ではないのよ」

 

「俺は真面目に言ってるんだ」

 

「ねぇ優美子真剣に答えてよ、隼人君の言った事やったら虐めがどうなるかわかるよね」

 

「結衣・・・そ、それは・・・」

 

「たぶん虐めは更に酷く陰険になるよね。隼人君それはないなー」

 

三浦と違って海老名は葉山に容赦なかった

 

「だったら俺はどうすれば・・・」

 

「少なくとも葉山君あなたは何もしないほうがいいわね

 移動中やカレー作りの時にわざわざ距離を取っている鶴見さんを無理やり虐めグループへ放り込むのを見た時は気を失うかと思ったわ」

 

雪ノ下の辛辣な言葉にも三浦や海老名は反論は出来ない。そんな様子を見て葉山は拳を握りしめ俯いたままだった

 

 

俺達はボーダーの車で千葉村の近くまで来ている

 

「さて行くぞ八幡」

 

「了解って隊長俺だよね」

 

俺達は戦闘体を纏いグラスホッパーで空から全小学生が集まっている中に降り立った

この辺のタイミングは由比ヶ浜に連絡を貰っていたのだ、突然のボーダー隊員の登場に騒然とする小学生達を無視

 

「鶴見留美、任務だ迎えに来た。戦闘体になれ」

 

「トリガーON」

 

戦闘体へ変化する留美の姿に歓声があがる

 

「行くぞ」

 

頑張れーとの応援の中留美を交えた俺達はそのまま千葉村の空に消えて行った

実際は車に戻って地味に移動したんだけどね

 

 

ここからは由比ヶ浜が帰ってきてから聞いた話だ

 

俺達が去った後、小学生達は口ぐちに留美がボーダーだったのかと言い合い一躍ヒーロー扱いになったそうだ

留美を虐めていたグループはまわりから白い目で見られやれ黒服に連れていかれるだの報復されるだの脅され教師に泣きついた

 

虐めグループ意外からは概ね好評で、今まで一人でいたのはボーダーの秘密が漏れないようにしてただの密命を帯びて潜入してただの

まあ好き勝手に想像していたようだ。これで学校で留美が虐められる事はなくなるだろうと俺も一安心だ

 


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