破界せよ、総てを   作:アゴン

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第五話 エリア11

 

 

 

 

「………はぁ」

 

 航空機内。シオニー=レジスは先日の次元獣襲来の日を思い出し、心底疲れ果てた様子で溜め息を吐いていた。

 

既にあの次元獣襲来から二日程経過し、リモネシアは被害らしい被害も受けず、今日もその姿を健在している。

 

全ては、記憶喪失者であるブロリーが次元獣を撃破したお陰……と言うが、その所為で新たな問題が浮上してきたとも言える。

 

 唯でさえ時空振動で現れたというだけでも厄介だと言うのに、その上トンでもない力を持っているという規格外の存在。

 

金髪碧眼で、金色の炎を纏って、空を飛んだり、次元獣を投げ飛ばしたり、ビーム出したり、殲滅したり。

 

もう、お腹一杯で胸焼けを起こしそうです。

 

 本来なら彼女は“世界を変えられる力”を手に入れたと歓喜するのだが、そんな気はとても起きなかった。

 

強すぎる。ブロリーの持つ力は自分の予想の遥か上を行っていた。シオニーはブロリーの強過ぎる力をとても御しきれる自信がなかったのだ。

 

 ……憶測だが、もしかしたらこの男は本当に三大国家と……世界と渡り合える力を持っているのではないだろうか?

 

確証はない。だが、何となくだが確信はあった。

 

世界と、たった一人で渡り合える存在。

 

 何を馬鹿なと、聞いた人は間違いなく鼻で笑う事だろう。

 

だが、実際そんな人間が存在していたら?

 

………間違いなく、世界のバランスは崩れるだろう。それも我が祖国、リモネシアを中心に。

 

リモネシアはマトモな軍隊組織などありはしない。警察組織がお情け程度である位の小さな国でしかないのだ。

 

そんな国が戦渦に巻き込まれでもしたら、確実にリモネシアは滅ぶ。

 

どんなにブロリーが強大な力を持っていようとも、国を守るだけの器用さは持ち合わせていない。

 

(まったく、問題が多過ぎよ!)

 

 そんな最悪の事態を避けるべく、シオニーは帰国しようとした国連大使とその従者に、この件は内密にしておいて欲しいと言い含めた。

 

 ……その際、虚ろな顔で頷いていたアレハンドロ大使には少しばかりの同情心が芽生えたのはここだけの話。

 

 無論、その際には彼等の求める要求にも答える必要があるのだが。未だにその要求の声は届いていない。

 

下される要求に内心で冷や汗を流しながら平静を装い、シオニーはその元凶たる人物へと視線を移すと。

 

「おぉ、高い……です」

 

 相変わらずの無表情。しかしいつもよりはしゃいでいる様子のブロリーにシオニーは更に疲れを募らせるのだった。

 

 そう、今二人はとある国に向かう為に飛行機の中にいるのだ。

 

 ……というか、本当にコイツはあの時次元獣を撃退した奴と同一人物なのだろうか?

 

 髪は金髪に逆立っていないし、瞳だって黒いままで特に変わった様子はない。

 

 何より、あの時感じた……近付いただけで蒸発してしまいそうな覇気が全くと言っていいほど感じられない。

 

 本人曰く、あの時の力は使うには使えるが、使えば結構疲れるらしくその後多くのエネルギーを必要とするらしい。

 

エネルギー、即ち食料。力を使える代わりに求められる代償……とでも言えば聞こえは良いだろうが、実際は堪ったモノじゃない。

 

 力と同様にブロリーの持つ胃袋や食欲は天井知らず。最低でも店一軒全ての料理を食べ尽くさないといけないらしい。

 

正直、自分の財布程度ではとても賄えず、かと言って国からその費用を出すわけにもいかない。

 

自分の護衛という役目もあって、ブロリー自身もそこそこの給料も貰ってはいるが、それでも満足に腹を満たす事は出来ないだろう。

 

だったら、これから往く国の所で食べ放題の店でも探しておくしかない。

 

「ブロリー、これから行く所では絶対、万が一、何があっても例の金ピカになっちゃだめよ! 空を飛んだりするのも禁止!」

 

「何でですかぁ?」

 

「何でも! 兎に角、もしあの姿になったりしたらご飯抜きですからね!」

 

「っ!?!?」

 

 シオニーの何気ない一言にこの世の終わりの様な顔をするブロリー。やはりそれが弱点かと、シオニーは内心でほくそ笑む。

 

「まぁ、これから往く国は確かに少し危ない所だけど、それはそういう場所に行けばの話。会談場所は警備が厳重にしてあるし、滅多な事件は起こらないわよ」

 

 だから、そんなに気を張らなくていい。シオニーは自分の事を考えてくれているブロリーに励ましの言葉を送るが……。

 

「ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯」

 

「…………」

 

俯きながら、呪詛を唱え続けているブロリーにシオニーは前言撤回する。

 

この男、どんだけ食欲に忠実なんだよ。

 

隣で腐っている男を無視する事にして、シオニーはこれから往く国へと思いを馳せるのだった。

 

「所でシオニー」

 

「なに?」

 

「その国に行くのにどうしてこんな機械に乗るんだ?」

 

「………は?」

 

「このひこうきって奴より多分俺の方が速いぞ。試しに乗ってみるか?」

 

 そう言うや否や、ブロリーは窓に向けて拳を振り上げようとするが。

 

「止めなさい! このおバカ! そして私の話を聞きなさい!」

 

何処からともなく取り出したハリセンで、ブロリーの頭を殴りつける。

 

機内に響いた音は、それはそれは良い音だったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリタニア・ユニオン。それは神聖国ブリタニア帝国と連合国家ユニオンが大時空振動により北米大陸に同時に存在していた為合併する事になった超大国でAEU、人革連と並ぶ三大国家の一つ。

 

 大時空振動により現れた二つの日本と二つの月。ブリタニア・ユニオンはその中でも片方の日本への侵略行動を開始。

 

 日本は敗れ、ブリタニア・ユニオンの属国となり、後の“極東事変”と呼ばれ片割れの日本はエリア11と名は変わり、日本人はイレヴンと呼称される事になった。

 

 文化、歴史、そして名前を奪われた日本人は今日もブリタニアによる理不尽な差別を受けているのだった。

 

 そして、そんな植民地となったエリア11に二人は降り立った。

 

空港に辿り着き、迎えの人間によって連れてこられたのは総督府。即ちこのエリア11に於ける政府機関である。

 

屈強な兵士達に囲まれ、通された部屋にはこのエリア11を束ねる者。 神聖ブリタニア帝国の第三皇子であるクロヴィス=ラ=ブリタニア総督その人である───────が、いた。

 

「ようこそレジス外務大臣。遠い所からのご足労、お疲れ様です」

 

「此方こそ、今回の会談に応じて下さり。本当にありがとうございます」

 

「さて、挨拶の方はこの辺りにして、早速ですが本題に移るとしましょう」

 

どうぞと用意されていた席に座るよう促され、着席するシオニー。ブロリーは会談の邪魔にならないようシオニーの背後の方へ移動する。

 

その際、クロヴィスとブロリーの視線は交わり。クロヴィスは少し驚いた様子で目を見開かせた。

 

「これは驚いた。仕事熱心と噂されていた貴女がまさか専任騎士を選んでいたとは……いやはや、人は見かけによりませんな」

 

「……は? はぁ!? ち、違いますクロヴィス総督! 彼は単なる私の護衛に過ぎません!」

 

 クロヴィスの一言に顔を真っ赤な染めるシオニーに、ブロリーはどうしたんだと目をパチクリさせる。

 

専任騎士とは、皇族だけが選ぶ事を許される騎士の事。あらゆる面に長け、皇族の支えとなり助けとなる……正に選ばれし者の事である。

 

近年では、その能力の高さ故に皇族と結ばれる騎士も見かけられ、専任騎士とはつまり恋人選びにも見られる事もしばしば……。

 

世界各国を渡り歩いているシオニーは当然、専任騎士という存在とその意味を知っている為、こうして慌てふためいているのだ。

 

……意外と、ウブである。

 

ただ、相変わらず話に全くついて来られないブロリーは、窓から見える街並みを呆然としながら眺めていた。

 

『やれやれ、いけないよクロヴィス。彼女が困っているじゃないか』

 

「っ!」

 

「兄上、もうそちらの方はよろしいので?」

 

『あぁ、ついさっきトレーズ閣下との会談も終わってね。こんにちはレジス大臣、こうして会うのは久し振りだね』

 

「シュナイゼル殿下……」

 

 クロヴィスの背後のモニターから現れた人物に、シオニーの表情は一転して緊張感に満ちた表情となっている。

 

警戒とも呼べる彼女の姿に流石のブロリーも無関心ではいられず、思わず身構えてしまう。

 

シュナイゼル=エル=ブリタニア。神聖帝国の第二皇子でありながら皇帝に次ぐ権力を持ち、その能力の高さと人物像により、周囲からも絶大な人気を誇るブリタニア帝国の中でも政治、政略に於いて屈指の実力者。

 

つまりは、シオニーの天敵の一人でもある人物。そんな彼が通信越しとは言え突然現れては緊迫もするというもの。

 

だが、そんな二人を前にしても、モニターの男は笑みを絶やさず。柔らかい物腰で語り掛け。

 

『そう固くならないでくれ、本来なら其処の席には私もいるべきなのだけれど、急用の別件が入ってしまってね。……もし気分を害してしまったのなら詫びよう。済まない』

 

と、この様に第二皇子でありながら素直に謝罪を述べる彼に、シオニーはウッと息を呑む。

 

「兄上、そう簡単に頭を下げないで下さい。寧ろ逆効果ですよ」

 

『いや、やはりここは礼儀で応えないとね。と言う事でレジス大臣。私の謝罪、どうか受け入れて貰えないだろうか?』

 

「は、はい。此方こそ失礼な態度をしてしまい。申し訳ありません」

 

『では、これでお相子と言う事で……宜しいですね』

 

 一瞬、シュナイゼルからの微笑みに鼓動が脈打つ。

 

彼は人望もそうだがその甘いマスクも人気の一つであり、本国ではファンクラブもあり、女性達からも絶大な人気を持っている。

 

そんな彼からの微笑みを受けて、僅かでも頬を染めている彼女を、一体誰が責められようか?

 

『では、これより会談を始めたいのだが……ブロリー君、だったかい? 済まないが席を外してくれないかな?』

 

「なんでですかぁ?」

 

『これから話すサクラダイトの話はちょっと人には話し辛くてね。君を疑うつもりはないけど……』

 

「大丈夫です。俺、話よく分かっていないから」

 

 普通、そこは口は固いではないのか? 普通とは違う返しにクロヴィスはポカンと口を開き、シオニーはアワアワと慌てふためく。

 

しかし。

 

『ぷ、くく……いやはや、面白い人だね君は。こんな風に笑ったのはいつ以来だろうか』

 

第二皇子たるシュナイゼルだけは、そんなブロリーが可笑しく思えたのか、人目を気にせず笑い始めた。

 

「なら、俺はここにいても良いのか?」

 

「良い訳ないでしょうが!」

 

 スパァン、と、シオニーは何処からとなく出したハリセンでブロリーの頭を頭を殴りつける。

 

「何で殴るんですかぁ?」

 

「貴方がアホな事いうからでしょうが! いいから黙ってここは大人しく下がりなさい! ここはこのエリアで一番安全な場所だから余計な心配はいらないわ」

 

「だ、だけど……」

 

「い・い・か・ら!!」

 

 有無を言わせないシオニーの迫力に呑まれ、スゴスゴと総督室を後にするブロリー。

 

寂しさ漂うその後ろ姿は、まるで売られていく仔牛のよう。……その図体からして仔牛よりも闘牛に近いが。

 

『済まないね』

 

「いえ、それよりもいい加減私も話を進めたいですから」

 

『それじゃ、始めるとしようか。議題は取り敢えずサクラダイトの流通と、そして……』

 

「…………」

 

『先日のリモネシアで起きた時空振動……いや、ブロリー君についてね』

 

「っ!?」

 

 シュナイゼルから告げられる開始の一言は、シオニーを一気に追い詰める。

 

あの時気付けば良かった。このモニターに映る男は一度たりともブロリーの名前を聞いていなかったのだから。

 

重苦しくなった総督室で、シオニーはブリタニア随一の明晰である第二皇子と圧倒的に不利な状況下で、会談する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、総督室から追い出されたブロリーは当てもなく彷徨い、総督府から出て行き。

 

「ここは……何処だ?」

 

現在、絶賛迷子中だった。

 

総督室から出て、取り敢えず空腹を満たそうと近くのレストランでも探そうと街を探索するが、如何せん初めて訪れる他国の土地故に、土地感など分からず、ブラブラと放浪していると。

 

いつの間にか、ブロリーは廃墟の街へと足を進めていた。

 

流石に雰囲気が違うと気付いたブロリーは、辺りを見渡すと後ろに自分がさっきまで歩いていた街並みが見える。

何で近くにこんな廃墟があるのかと、不思議に思うブロリーだが、今はそんな場合ではない。

 

(早く戻ろう)

 

 総督府から出て行ったと知られれば、またシオニーに怒られるだろうし、もしかしたら本当にご飯抜きにされる事もあり得る。

 

それに……。

 

(頭が……痛い)

 

 ズキリと突き刺す様な頭痛に苛まされ、貯まらずブロリーはその場に膝を着く。瓦礫の山となったビル、荒廃した街並み、壁の至る所では銃痕らしき抉られた痕が見られる。

 

まるで過去に戦争があった場所をそのまま放置された様な風景だか、目の前に映る光景にブロリーの痛みは更に増していく。

 

「俺は、ここを……知って、いる?」

 

 荒廃し、腐敗し、荒れ果てた世界。其処からは怨念に満ちた声はさながら地獄からの誘いの声である。

 

自分は知っている。この場所を、或いはこの地獄を。

 

眩暈が酷くなっていく。頭痛で意識が消えかけたその時。

 

「あ、あの、離して下さい!」

 

「?」

 

 か弱そうな女性の声がブロリーの耳に入ってきた。みると、廃ビルの近くに屯っていたチンピラ達か、一人の女性に群がっているのを見えた。

 

「い~じゃんちょっとくらい。こんな所にいると危ないからさ、俺達が守ってあげるよ」

 

「その制服、アッシュフォード学園のだよね? ブリタニアの学生がゲットーに何の用よ?」

 

「ってか、君かわうぃーね!」

 

 群れているチンピラに脅えているのか、鞄を抱えて俯いてしまう赤毛の少女。

 

そんな彼女に益々つけあがったチンピラがここぞとばかりに近付いてくる。

 

その光景を前にブロリーは一瞬だけ迷うが即座に割って入る事に決めた。

 

自分が盾になればその間に彼女は逃げられるだろう。この躯はやたら頑丈に出来ているし、機動兵器や次元獣ですらも傷を付ける事も叶わない。

 

 自信に裏打ちされた防御力。それは記憶のないブロリーの数少ない自慢出来るものである。

 

それはそうと、そろそろ彼女を助けに行かなければ。ブロリーは怯えているだろう少女の下へ歩み寄ろうとするが……。

 

「あ~あ、たく。面倒くさいなぁ」

 

「は?」

 

「いつもと同じ道じゃいつかバレると思って今日は別のルートを通ったってのに……」

 

 先程までのしおらしい態度から一変。髪を無造作に掻き乱し、眼光を鋭くさせる少女にチンピラ達は勿論、ブロリーも剰りの変貌ぶりに言葉を失っていた。

 

少女、というよりも戦士に近い雰囲気を醸し出す彼女にチンピラ達は僅かに後退るが、すぐに表情を憤怒に染め上げ。

 

「てめぇ、可愛い顔してるからって調子くれてんじゃねぇぞ!」

 

「生意気なその面、ボコボコにしてやんぜ!」

 

 チンピラ達は少女一人に一斉に襲い掛かる。

 

数は圧倒的、しかも全員男。少女唯一人ではどうしても覆らない状況。

 

しかし。

 

「ふっ!」

 

「なっ!?」

 

「せい!」

 

「がっ、あぁ……!」

 

「たぁ!」

 

「ぎゃぶるん!?」

 

少女は並み居るチンピラ達を卓越した体術で以て圧倒していった。

 

投げつけた鞄を目隠しにしている間、背後にいるチンピラ達に振り返りもせずに蹴りを鳩尾に叩き込み。

 

左右にいる二人には回し蹴りとハイキックをそれぞれの延髄に叩き込み、鞄をぶつけられ、僅かに怯んだ真っ正面の男には渾身のアッパーをお見舞いする。

 

三秒にも満たない僅かな時間、ほぼ一瞬とも呼べる刹那の合間、少女は四人のチンピラ達を瞬殺した。

 

「ふん、つまらない男だね」

 

少女の凄まじい体術に遠巻きで見ていたブロリーは助ける必要はなかったかと踵を返す。

 

ところが。

 

「こ、のぉ! 舐めくさりやがってぇ!!」

 

最初に打ちのめした筈の男が、近くにあった鉄パイプを拾い上げて少女の背後から襲い掛かる。

 

どうやら、最初の一撃は他の男の一撃と比べやや浅かった様子。

 

「死ねクソアマァ!!」

 

「っ! しまっ!?」

 

死角から狙われ、咄嗟の対応に反応が遅れ、次に来る痛みと衝撃に備えるが。

 

パシリ、と、突然現れた横からの手が男の手首を掴み取り、阻んでいた。

 

「え、え?」

 

「な、何だテメェは!?」

 

 突然として現れた黒スーツの男。ブロリーの突然の登場に少女は目を丸くさせ、男もまたブロリーの手から逃れようと必死にもがくが。

 

「は、離せ、コイツ!」

 

「…………」

 

どんなに力を込めても、どれだけ蹴り付けようともまるでビクともせず、万力の如く締め上げるブロリーに男は徐々に痛みの声を上げていく。

 

……因みに、これでもブロリーは豆腐が崩れないよう優しく包み込んでいる程度の力しか出していないのであしからず。

 

 

「あ、がぁぁぁ!! 離せ、離せよ畜生!!」

 

「ち、ちょっと、もうその辺にしておいたら……」

 

 紫色に変色し、ギシギシと骨が軋む音が聞こえ、痛みに耐えかね涙混じりに叫ぶ男に少女は流石にやりすぎだとブロリーを止める。

 

「分かり……ました」

 

 ブロリーは少女の言葉に従い、男の手を離す。持つ手に力が入らないのか、男は手にしていた鉄パイプを手放しブロリーに睨みつけるが………。

 

「……………」

 

「ひっ! ば、化け物!」

 

黒く澄んだ瞳に男はゾクリと肌寒いモノを感じ取り、仲間を放って一目散に逃げ出した。

 

特に追い掛ける必要も感じず、ブロリーは今度こそ踵を返すが。

 

「ちょっとアンタ」

 

「?」

 

「何で割り込んで来たのさ? アンタには関係ない事なのに……私を女だからってバカにしてんのかい?」

 

 鋭い剣幕でいきなりの喧嘩腰、何がなんだか分からないブロリーだがどうやら自分が怒らせているのだと思い、素直に謝ることにした。

 

「ごめんなさい……です」

 

「……い、いや、私こそその、ごめん。助けてくれたのに失礼な事言って」

 

 今度は怒りの顔から一変し、急にしおらしくなる少女。なんだか慌ただしい女だなと思いつつも、ブロリーは地元住民らしいこの少女に対しちょっとしたお願いをしてみることにした。

 

「あの、訊いても良いですか?」

 

「え? えぇ、構わないけど」

 

「総督府に行くにはどうすればいい?」

 

 総督府。その単語を聞いた瞬間、少女の目は鋭くなり、ブロリーとの距離を開け始める。

 

「アンタ……ブリタニアの人間か?」

 

「ブルガリア? 俺はリモネシアから来ました」

 

「いや、ブリタニアだから。三大国家の名前位覚えなさいよ」

 

「ごめんなさい……です」

 

「…………」

 

 やりにくい。少女は目の前の男は自分が殺気を出している事にも関わらず平然としていて、尚且つ隙だらけであるブロリーに対し警戒している自分がバカバカしくなってきた。

 

暫し考えに耽ると、少女は警戒を解き、髪の毛を無造作に掻き乱してブロリーに向き直り。

 

「其処を真っ直ぐ行くと通りに出るから、後は道なりに進むと総督府に着く筈よ」

 

「ありがとう、ございます」

 

「それじゃ、さようなら。誰かに聞かれても私の事は喋らないでよね」

 

少女はボソリとブロリーに総督府への道を告げ、口止めらしき言葉を告げると、廃墟の奥へと姿を消した。

 

残されたブロリーは少女に礼を述べ、言われた方向へと足を進める。

 

後に戦場で再会する事など、この時二人は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、こんな事になるなんて……」

 

 総督府に設けられている客室。会談を終えたシオニーは一人、思い詰めた表情でうなだれていた。

 

会談は無事終了。サクラダイトのリモネシアへの流通も何とかこぎつけた。

 

しかし、その見返りとしてシュナイゼルはシオニーに対しある条件を提示した。

 

それは次の会談は此方が用意した場所で招待する人物と共に行うと言う事。

 

ここまででは、さほど問題視するモノはないのだが、問題はその条件の内容だった。

 

「……トレーズ、クシュリナーダ」

 

敵意を剥き出しにした彼女の視線の先には一枚の手紙。

 

其処にはシュナイゼルが提示した条件の詳細が書かれており、その内容はというと……。

 

”場所はAEUに所属する組織OZを束ねる総帥の部屋。“

 

そして、その会談に出席している名前の欄の最後には唯一言。

 

 

 

“リモネシアの若き大臣、シオニー=レジスと、遠き時空の旅人の到着を、心待ちにしています。

 

トレーズ=クシュリナーダ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんなに欺いても、世界が放っておけないのなら……

 

乗り込んでやろうではないか。

 




確かこの時点では、まだシュナイゼルもトレーズも知り合ってはいないんでしたよね。

早速原作を無視してしまってすみません。



そして、シオニーの心労は加速していく。
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