お菓子な剣は好きですか?   作:九呂巣

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来たぜ!!決着の時が!!

 

善行は、威風堂々と言った感じで通路を歩く。

「‥‥‥本当にばれないものだな。」

服の中からダガッシーの声が聞こえる。

「‥‥‥そんで、俺の生徒証はどこだ?」

完璧(?)に変装している善行が、後ろを歩く裕太に聞く。

「多分、ここを進んだ先だけど‥‥でもどうやって取り返すの?僕は私設の中でも立場がそうとう低いから持ち出せないし、兄ちゃんも勿論無理だよ?」

「スティールとか出来たら良いのにな。」

「急にゲーム思考になるのはやめて。」

「まあ、ごまかせばなんとかなるでしょ。」

「そんな軽くいかないよ。」

「とりあえずそこは任せとけ。」

「ええー。」

そう言ってるうちにたどり着いたある部屋の扉。

自動ドアで、近づけば横にスライドするようになっている。

「ここだよ。」

「ん、そうか。」

そして、善行は扉に近づいていく。

 

ウィーン

 

扉が開く。

中は、机が部屋の真ん中にあるだけの簡素なものだった。

中にいた兵士が全員善行の方を向く。

それを見て善行は、叫ぶ。

 

「大変だーー!!地下一回とかに学生服のやつがうろちょろしていたりしたーー!!」

 

「な、何ーーー!!」

「それは真か!!」

「い、行くぞーー!!」

「捕まえるのだーー!!!」

それに驚いて兵士達はドタドタと善行の横を抜けて部屋を出ていく。

そして、部屋には善行一人だけになった。

兵士達が消えた扉の方を見て、一言。

「チョロいぜ。」

「いや、おかしいでしょ!」

裕太が部屋に入ってくる。

「普通はあんなのに引っ掛かるわけないでしょ!」

「そこはほら、主人公補正ってやつだ。」

「自分で言わないでよ‥‥‥」

「とにかく結果オーライだ。」

トコトコと部屋にある机に寄っていく善行。

「お、あったあった。」

机に置かれてあった生徒証を軍服の中の制服のポケットに入れる。

「ねえ、兄ちゃんはそれを手に入れて、どうするのこれから。」

「帰るに決まってるだろ。」

手段はまだ無いが。

「‥‥‥‥だったら。」

ふと裕太を見ると、かなり真剣な目をしていた。

何か決意を決めた顔だ。

「だったら、僕も、仲間達も連れてって!もうこんなとこにいたくないんだ!」

どうやらここから逃げたいらしい。

仲間も連れていけと裕太は言う。

「んーー」

「ダメ‥‥‥かな?」

「ま、いいんじゃない?」

善行がポケットを揺すると、

「うむ。ついてくるならついてくればよいぞ。」

「そうですよ。ここは辛いでしょうしね。」

中からダガッシーと泥っちが出てくる。

「い、良いの?」

「だって。」

「や、やったぁ!!」

手を上げて喜ぶ裕太。

「じゃ、じゃあみんな呼んでくるから待っててー!」

「今呼ぶのかよ。」

嬉しそうに手を降りながら部屋を出ていく裕太。

「待っててって。ここで固まってると怪しいだろ。」

「それに早くしないと帰ってくるのではないか?あの兵士達。」

「その内嘘だってバレて帰ってきますよ?」

「だよな。」

なんて言ってて、

 

ウィーン

 

「「「あ。」」」

このタイミングで鉢合わせ。

「い、いたぞーー!!!」

「捕まえろー!!!」

恐らくはもう侵入者だと分かっているのだろう、すぐさま襲いかかってくる兵士達。

「タイミング悪いな。」

「でも、もう生徒証は手に入れたのだからもう逃げてもよいのではないか?」

「とりあえずここからは出ましょう。」

バッと軍服を脱ぎ、オード・スチースを取り出す。

「お掃除トルネード!」

泥っちが魔法で兵士達を吹き飛ばしていき、逃げ道ができる。

「さ、行くぞーー。」

肩にダガッシーと泥っちを乗せて階段へと走り出す。

「あ、兄ちゃ―――えええー!!!」

曲がり角の辺りで裕太とばったり出会う。

そして後ろには何人もの少年兵がいた。

こんな大人数で動いてたら不審だろうに。

「え!?何で!?見つかったの!?」

「まあね。」

「まあねじゃないよ!!どうすんのさ!!」

裕太がかなり慌てているが、ここで騒いでいても意味がない。

「とりあえずお前ら、ターンして後ろへゴー。逃げるぞ。」

「わ、分かった!!みんな後ろへ向いて!ええっと‥‥‥」

「階段に行け。ここから出るぞ。」

「階段に行って!!」

裕太が少年兵達に指示を飛ばす。

そしてドタドタと大人数で通路を走る。

「待てぇーー!!!」

ババババババ

逃すまいと後ろから兵士が発砲してくる。

「風壁!」

それを風の壁で軌道をそらす泥っち。

今回は大活躍である。

最前列の方は少年兵達が、しんがりは善行がしている状態で、階段を上っていく。

そして、地上へと見事に脱出をとげる。

「こっからどうするの!?」

「とりあえず森を抜けるぞ。」

森の中に入り、とりあえず海辺へと急ぐ善行。

「でも、そっから逃げ道ないよ!?」

「大丈夫だ。こういうときにこそご都合主義が発動するんだ。」

「何それ!!」

しかし、そうして話ながら森を走っていると、突如、

 

ゴゴゴゴゴ

 

地鳴りが響いた。

「な、なに!?」

「地鳴りだな。」

「知ってるよ!!」

「まあ、このパターンはあれであろうな。」

「ですね。」

ダガッシーと泥っちはそう言って、善行と三人で音のする後ろを向くと、

 

ぐおおおーーーん!!!

 

例の格納庫で見た戦車が何台も君臨していた。

機械に普通出来ない咆哮と共に。

 

「やっぱりね。」

「こうなるのは読めたぞ。」

「ていうか、これはもう十八番ですよね。」

「何今の―――うわぁぁ!!」

咆哮にビックリして後ろを向いた裕太がさらにビックリする。

「あ、あれ、日本政府が作った最新鋭の戦車じゃん!!通称『鋼ギア』!!」

「そのネーミングは危ないだろ。」

ご丁寧に説明までしてくれる裕太。

「その強さは、世界中の兵器を集めてぶつけても叶わないという!!」

「べらぼうに強いな。」

そんなものは現実的に無理です。

「ヤバイよ兄ちゃん!!あれは本当にシャレにならない!!」

「へー。」

「かるぅ!!えええ!!?反応軽すぎるよ!!」

「慣れてるし、こういうの。」

「兄ちゃんほんとに何者!!?」

「とにかく先行ってろ。」

そう言って、善行は立ち止まる。

そして、鋼ギアの方へと向き直る。

善行は制服の、大きめのポケットから鍔と柄に別れたオード・スチースを取り出し組み立てて、

 

「んじゃ、くらえ。」

 

バシューン!

 

オード・スチースにメ〇トスを入れて、衝撃波を飛ばす。

森の木をいくつも巻き込み、盛大に砂ぼこりを上げる。

いつもはこれでぶっとばせないものはないが、

 

「‥‥無傷だな。」

 

晴れた砂ぼこりからは、傷一つついてない鋼ギア。

 

「まさか、天駆けるメ〇トスの閃きが効かないとは‥‥」

「かなり堅いですね。」

妖精二人もそれなりに驚いている。

「まあでも、もっと良い攻撃はあるがな。」

「あるのか。」

まだまだオード・スチースには機能が満載である。

「柄を鞘に少し入れてみるのだ。」

言われて、鞘にオード・スチースを入れる。

 

すると、

 

「なんだこれ?」

 

チリのようなものが高速で、見えない刃の周りを回るように渦巻き始めた。

 

「これはポテトチップの破片を高速で飛ばして操ることができるのだ。」

「それ強いの?」

「まあ、やってみたら分かる。振れば剣から離れていくぞ。」

オード・スチースを素直に振る善行。

すると、

「あ、ほんとだ。」

すると、チップの欠片を含んだ風の渦巻きが善行の前で止まる。

「これ、ラジコンみたいなやつか。」

「そんなものだ。剣がコントローラーだからな。」

剣を振ると、その方向に風が飛んでいく。

そして、そのまま鋼ギアの集まる方へ吹いていき、

 

ヒュウーー

 

ドカドカドカドカーーーン!!!!

 

鋼ギアを貫いていった。

 

轟音を立てて、見事に全部爆散していく鋼ギア。

 

「強いな。」

「とりあえずなんでも貫くぞ。」

「パワーのインフレですよそれ。」

「まあ強すぎるに越したことはないけど。」

だが、そう言ってる間にも森の向こうから兵士達がどんどん攻めてくる。

再びターンして逃走する善行。

「化け物かー!!」

「あの鋼ギアを破壊するなんて!!」

「こっち来るなーー!!」

「じゃあ追って来るなよ。」

追いかけながら器用に悲鳴をあげる兵士達。それにつっこまずにはいられない善行。

そういう話の駆け引き(?)をしながらしばらく走っていると、森を抜けて海辺へ出た。

「ほら、グットタイミング。」

「スゴいご都合主義だな。」

善行が指差した船着き場にはちょうどよく搬送用の船が。

「兄ちゃーーん!!早くーー!!」

船の上から裕太が手を振っている。

「このまま乗るとやつらも乗ってくるぞ。」

「なんとかしろ。」

「それならお任せ!」

泥っちは善行の肩の上で後ろを向くと、

「お掃除トルネードー!」

魔法を唱える。

後ろの兵士は吹き飛んでいき、兵士達の動きが止まる。

その隙にササッと発進しかけた船に飛び乗る善行。

「よし。これで脱出完了だな。」

「案外あっさり出来たな。」

特にはりつめてもいなかったが、一息つく善行達。

「兄ちゃん!」

「おう、裕太。」

「やったよ!!やっとこの島からおさらばできる!」

「よかったな。」

口々に喜ぶ少年兵達。

裕太は涙さえ浮かべて喜んでいた。

 

だが、そう簡単にふりきれないらしい。

 

「待てーー!!!」

 

ブロロロロロロ

 

後ろからガンシップが何機も低空飛行の状態でやって来る。

「今度はヘリか。」

「なんかの海賊マンガですか?これ。」

「撃ち落とせばよかろう。」

「なら、ここで一発。」

善行はオード・スチースでまたチップの風を作り、ガンシップを狙う。

だが、

 

ヒュウーー

 

ひょい

 

ヘリにはあり得ない一瞬の俊敏な避けられる。

 

「‥‥‥もう一回。」

 

ヒュウーー

 

ひょい

 

ひょい

 

何回やっても、一瞬の素早過ぎる動きで避けられる。

 

「いや、おかしいだろあの機動力。」

「まあ、あんなふざけた兵器つくるくらいだからな。」

「弾丸を肉眼で避けるやつ並みにヤバイですね。」

現実には不可能です。

「でもどうするんです?当たらなければ落とせないですし。」

「まあ、私に任せろ。」

すると、ダガッシーはなにやら呪文を唱え出す。

「さあいくぞ!」

詠唱が終わり、魔法が発動する。

 

「召喚!!」

 

「召喚?」

「ああ、召喚魔法もあるから出来るぞ。」

「なに召喚したの。」

「見ていれば分かる。」

すると、船の横の海が淡く発光しだす。

そして、光が一層強くなったとき。

 

『♪ゴーリゴーリーく~ん!!』

 

謎の歌と共に、口が異様にでかい、一軒家くらいの大きさはある子供が出てきた。しかも筋肉バッキバキ。

召喚されたものはしっかりと船の手すりを大きなつかんでついてきている。

「なにあれ。」

「ゴリゴリ君だ。」

「いや、ガ〇ガリ君だろ?」

「ゴリゴリ君だ。」

「ガ〇ガリ君だろ?」

「気にするな。」

「ふざけんな。」

微妙にモザイクのかかりそうなキャラである。

ガ〇ガリ君と違って、坊主ではなく、そして筋肉ムキムキだが。

「さあいけ!!ゴリゴリ君!!」

ダガッシーが高く宣言すると、

 

バシャーン!!

 

水飛沫を上げて、ゴリゴリ君はガンシップの方へと飛んでいく。

ゆっくりゆっくり飛んでいき、

 

ひゅーん

 

バシャーン!!

 

飛距離が足りず、着水。

 

そして、

 

プクプクプク

 

『♪ゴーリゴーリーく~ん!!』

 

謎の歌と共に沈んでいった。

 

「全然役にたってねえじゃねえか。」

ゲシ

「へぶぅー!!」

善行にヤクザキックされ、コロコロ転がっていくダガッシー。

「‥‥‥どうやら、ゴリゴリ君は筋肉でゴリゴリのあまりに重すぎたようだ‥‥‥」

「ゴリゴリすぎだ。普通沈まねえよ。」

ボディビルダーのような筋肉ムキムキの人は水に浮きにくい。

「なら、次は僕ですね!」

今度は泥っちの番らしい。

「一応言っとくけど、役にたたないのもってくるなよ。」

「大丈夫、任せてください!」

すると泥っちは、どこからか変身ベルトを取り出した。まあ、いつぞやのあれである。

「この流れだったから妥当すぎてあれだな。」

「なんだ?期待してたのか。」

「うるさい。」

ゲシ

「へぶぅー!!」

戻ってきたダガッシーをまたヤクザキックでぶっ転がす善行。

泥っちは、取り出したベルトを頭に巻き付けた。

「あれ、腰じゃないの。」

「まあ、見ててくださいよ!」

何故かちょっと興奮している泥っち。

そのまま、ベルトを起動させる。

「これが、本当の―――」

 

「ミ〇ルビーーーム!!」

「いや無理があるだろ。」

 

ビューーーン!!!

 

極太のビームが出現、ガンシップを全て飲み込み、彼方へ消えていった。

 

「本当のってなんだよ。つかミ〇ルビームは頭から出ねぇよ。」

「まあ、やってみたかっただけです。」

「もうなんでもいいよ。」

「とにかく、全員一掃しましたよ☆」

いい顔の泥っち。

爽やか度マックスだ。

とりあえず追っ手は殲滅したから次にやるとすれば、

「後は残党狩りだな。」

善行は目を細めてなおも遠ざかっていく島を見る。

「もうそれはよくないか?」

コロコロ転がって戻ってくるダガッシー。

「でも、一応やっといた方がいいだろ。」

「その方がいいと思いますよ。」

同調する泥っち。

「なら、次こそは任せてくれ。」

「えー。」

「次は大丈夫だから!任せてくれ!」

「でもお前、ろくなのないし。」

「次は真面目にやるから!!本当にお願いだ!!」

「はいはい。わかったわかった。」

見せ場が少なくて少し焦ってるらしい。

やる気満々のダガッシーは、また詠唱を始める。

「今度はろくなのやれよ。」

善行の念押しの一言。

詠唱が終わり、魔法が発動する。

 

「召喚!!ゴビゴン!!」

 

すると、遠ざかっていく島の上空に淡い光が集まる。

光が強くなっていき、中から、

 

「ゴビゴーーーン!!!」

 

巨大な腹をもったタヌキみたいな、島ぐらいに大きいモンスターが咆哮しながら出現した。

 

「ポケ〇ンのカ〇ゴンじゃねえか。」

「違うぞ。ゴビゴンだ。」

「もうしらね。」

 

島の上空に出現したゴビゴンは、そのまま落下していく。

 

島へ。

 

ヒューーーン

 

「うわぁ!!なんだあれは!!?」

「化け物が降ってくるーー!!!」

「迎撃しろぉーー!!」

島からは騒ぐ声と、何発ものミサイルがゴビゴンに飛んでいくが。

 

パシュン!

 

パシュン!

 

島とおんなじかそれ以上を誇る大きさのゴビゴンの手に凪ぎ払われていく。

 

そのままゴビゴンは自由落下を続け、あわや島を割るかと思いきや、

 

ヒュン

 

島が横に瞬時に動いた。

 

ゴビゴンはそのまま海に着水。沈んでいった。

 

「いや、その理屈はおかしい。」

「む、どうした。八坂真〇のような突っ込みをいれて。」

この非常識に思わず突っ込んでしまう善行。

まあ、普通島は動きませんが。

「どうしたじゃねえよ。見ただろ、島が非常識なことしたの。」

「そうだな。非常識だ。」

善行の指差した方を見ながらダガッシーは答える。

すると、島がまた動き始めた。

ゆっくりと、しかし順調に加速しながらこちらにやって来る。

「なんですかあれ。実は島に見えた巨大生物でしたみたいなオチですか?」

「どちらかと言えば船だろう。」

「そうじゃねえよ。早くなんとかしろよ。」

「他人任せはよくないぞ少年。」

「お前、失敗したの誤魔化そうとしてるだろ。」

ビクーンと固まるダガッシー。

「お前、次はかならずなんとかするって言ったよな?」

「‥‥」

「次はないって言ったよな?」

「‥‥」

「‥‥」

「‥‥」

「‥‥」

「‥‥許してちょんまげ?」

 

ブス

 

「ギャァァァ!!やっぱ来たーー!!」

 

ダガッシーの両目に目潰しがクリーンヒット。

 

目を押さえてゴロゴロと悶え転がるダガッシー。

「だってぇ!! 普通島は避けないでしょ!!?」

「それでもお前は失敗した。」

「残酷だぁー!!」

「さ、次は泥っちだ。」

「任せてくださいな!」

「私の立場がない!」

「うるさいなわたあめ。」

「もはやお菓子扱いか!」

叫ぶダガッシーを華麗にスルー、泥っちは手すりに乗ると、

「お掃除トルネード!」

巨大竜巻を発生させた。

竜巻はそのまま加速してくる島に突っ込んでいく。

色々と巻き上げて大ダメージをくらうと思いきや、

 

シューーン

 

見事なまでの横スライドを見せて竜巻まで避けていった。

 

避けたところからまたこちらへやって来る島。

「非常識にもほどがあるだろ。」

「ですね。」

「まあ、仕方ないな、今のは。」

「そうですね。」

「ええー!!?この扱いの差はなんだ!!?」

「コイツはお前と違って活躍してんだよ。」

「く、くそぉーー!!」

床をガンガン叩くダガッシー。

モブ感がさらに増した。

「な、ならもういいとも。本気を出してやろうではないか!!」

立ち上がったダガッシーはそこで強く宣言する。

「さっきのは冗談だ。まだ本気を出してないだけだ。」

「NEETみたいなこと言うな。」

「無駄に発音よかったですね。」

「とにかく、必ず決着をつけて見せるとも!」

そして、手すりに乗ったダガッシーは、

「‥‥ふぅーーーん‥‥」

腰辺りに何かをためるような構えをとった。

「お前、かめ〇め波とかやるなよ。」

「‥‥‥」

無言のダガッシー。

その無言は、集中しているせいか、図星を当てられたせいかはわからない。

「‥‥‥取って置きの技だったのに‥‥」

「お前出し惜しみしてたのか。」

「もうなんでもいい!!とりあえず食らえ!!」

溜めが終わって、腰にあった手を一気に前につき出す。

そしてその手から出たのは、

 

「バレンタインでチョコをもらえなかった男たちの妬みビーム!!」

「名前長いよ。」

 

赤黒く禍々しい光線だった。

 

それは島に着弾するなり、

 

チュドーーーン!!!

 

大爆発を起こした。

 

煙で何一つ見えないが、恐らく跡形もないだろう。

「ほら、一掃できたぞ☆」

ドヤ顔のダガッシー。

名誉(?)挽回である。

「今の何?」

「ツッコんだ後に言うか。」

「で何?」

「まあ名前の通りで、バレンタイン?なにそれ美味しいの?的な男子の恨み妬みがたっぷりつまった光線だ。」

「飛んでいった方向にリア充がいたら爆発すんのか。」

「お、よく分かったな。」

分かりやすくて恐ろしい攻撃だった。

きっと非リア充達のこんな思いが込められているのだろう。

世のリア充共よ。

くだけ散れっと。

「上にものすごく失礼なこと書いてある気がする。」

「む?上?」

「いやなんでもない。」

まああの中に非リア充がいたら、本当にとんだ災難だが。

「まあこれで追っ手ももう来ないだろう?」

「完全に駆逐しましたしね。」

「まあ。」

敵を殲滅し、特に張った訳でもない気を緩める。

そして、島が破壊された影響で大きな波が来て、船を揺らす。

震動で少しバランスを崩したため、軽く手すりをつかんで体を安定させる。

その時、横で裕太がポカーンと口をだらしなく開けて茫然としている。

あっさり沈んでいった日本の最先端。

それを目の当たりにした裕太。

「‥‥‥兄ちゃん‥‥強すぎでしょ‥‥‥」

「ん?どうした。」

急にうつむいたと思ったら、ワナワナと震えだした。

「‥‥‥ねえ兄ちゃん。」

「うん。」

「‥‥‥弟子にしてくれ!!」

そして、言いながらぐいっとこちらに迫ってくる。

目がすごくキラキラしている。

どうやら、善行に憧れを抱いたようだ。

「嫌だ。」

「即断した!!」

「弟子とか、面倒だし。それにうちは弟子、受け付けてないし。」

「そんな田〇くんみたいなこと言わないでさあっ!」

「何で知ってんだよ。てか、俺は一回お前を脅したり騙したこともあるのに何でそんなことになるんだ。」

「だって兄ちゃん、みんなも助けてくれたじゃん。」

「それだけでか。」

「とにかくお願い!いいって言うまでどこまでもついていく!!」

迫り方が、本当にいいと言うまでついてきそうなレベルである。

つきまとわれるのも面倒だと思った善行は、

「‥‥‥‥まあ、好きにすれば。」

「え、やったぁ!!いやっふぅい!!」

許可してやった。

まあ、善行には相手にする気はないだろうけど。

「まあ何はともあれ。」

「一件落着だな。」

「もう帰るだけですね。」

こうして、ただ船が陸に着くのを待つのみとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「んで、結局七日もかかったのだな。」

「行きは一日のはずだったのに。」

「いや、ついた場所が問題だったんですよ。」

夜。

善行はやっとの思いで自分の住む町へと帰ってきた。

「まさか、ついた場所があんなに遠くだとはな。」

「ヒッチハイクでなんとかこれたけど。」

船がついたのは、自分の住む県よりも、何十県も向こう。ほぼ日本列島の真反対の県である。

「ふぅ。やっと着いたな。」

善行はようやっとの思いで自宅に帰ってくることが出来た。

「ただいまー。」

玄関の扉を開けて、いつも通りに家に入る。

すると、

 

ドタドタ

 

大きな足音が二つ聞こえてきた。

 

そして、玄関横の階段から二つの影が降りてきた。

 

電気のついてない廊下でよく見えないが、二つの影というのは、

 

「「善ちゃん!!」」

 

雪音と母親の雪穂だった。

雪穂は、善行の行方不明を聞いてわざわざ帰ってきたのだ。

 

「どこ行ってたのよ!!」

「心配しんだからぁ‥‥‥」

二人とも善行に駆け寄り、ひしっと抱き締める。

「ごめんごめん。」

二人に抱き締められながら、ほんの少し気恥ずかしそうに言う。

「よかった‥‥無事に帰ってきて何よりよ‥‥‥」

「本当にどこに行ってたの?」

雪音に聞かれるが、反応に困るものである。

素直に、『たまたま乗ったトラックが、まさかの無人島行きで、しかもその島では日本が秘密裏に兵器をつくっていて、巻き込まれて帰るのに時間がかかった』なんて言ったって、普通に信じてもらえないだろう。

だから、

「まあ、誘拐された。」

と言った。

「「ええー!!」」

仰天する雪穂達。

まあ当たり前だ。

「え、誘拐されたの!?」

「うん。」

「それで逃げてきたの!?」

「うん。」

「「警察にも連絡しなきゃ!!」」

大急ぎで部屋に戻って行く雪音と雪穂。

だが、実際には誘拐犯なんていないので、どこを探しても一生見つからないだろう。

例のあの島も、今は海の底だし。

 

 

 

 

 

「むぁぁ!!」

 

起き上がって、大きくあくびをする。

「‥‥‥んんーー‥‥」

モゴモゴしながら時計を探す。

昨日の夜に無事に家に着き、流石に色々あったので少々疲れて早く寝たのだ。

「‥‥あったあった。」

時計を見て、現時刻を確認すると、

「え、十二時じゃん。」

時計を見て少しビックリする。

確かっとカレンダーで今日の日付を確認する。

「今日普通に学校あるはずだよな。」

寝間着を着替えて、階段を下りて居間に入る。

「あ、起きたの?」

扉を開けると、台所の方から雪穂の声がする。

「母さん、今日学校のはずだけど。」

起こしてくれなかったこととかをとりあえず聞いてみる。

「いいのよ。今日くらいは休みなさい。疲れているんでしょ?」

「まあ、そうだね。」

「だから、今日くらいは休んで、明日から学校行くなら頑張りなさい。」

どうやら善行が疲れていると踏んで休ませてくれたようだ。

なんとも気のきく母親で。

「ん、わかった。ありがと。」

それだけ言って、部屋に戻って行く善行。実際、それなりに休みたいとも思っていたので、その気遣いがとてもありがたいのだ。

部屋に戻り、ベットに身を投げ出す善行。

「今日は寝とくかな。」

耳を澄ましても、ダガッシーや泥っちが起きた様子もない。

再び目を閉じて、また眠りに入る善行だった。

 

 

 

 

 

「‥‥‥なあ、神代ヤバくない?」

学校。

鞄を肩にかけて登校してきた寛人が虎鉄に耳打ちする。

「‥‥‥そりゃ、アイツが急に消えてから帰ってこないからな‥‥」

ヒソヒソと話す寛人達が見るのは、机に突っ伏して動かない亜美。

そばで佐波が話しかけているが、何の反応もない。

「‥‥‥アイツ、どこにいったんだ‥‥‥」

暗い顔でつぶやく虎鉄。

「‥‥‥もしかして、善行はもう死んだんじゃ‥‥‥」

ネガディブ思考になる寛人。

「!!変なこと言うなって!!」

虎鉄はガタンと机を叩く。

「あ‥‥‥ごめん‥‥」

寛人は余計にシュンとしてしまう。

一週間、善行が消えて以来、警察にも連絡してあちこち捜索しているが、何の手がかりもなし。

虎鉄達は憔悴にかられる日々を送っていた。

「‥‥‥‥うう、うううう‥‥」

「あ、亜美ちゃん、泣かないで。まだ帰ってこないなんて訳じゃないし。まだ一週間だし、帰ってくるよ、きっと。」

机に突っ伏したまま泣き出した亜美を、慌てて宥める佐波。

だが、その佐波自身も暗い表情が隠せない。

「ほら、こうやっててもあれだしさ――」

 

ガラガラ

 

「うーっす。」

 

佐波が何かを言おうとした瞬間、ドアが開き、善行が入ってきた。

 

「「「「「え‥‥」」」」」

 

固まる教室の空気。

 

しかし何も気にした様子もない善行は、自然に自分の席に座る。

 

「‥‥‥‥よ、よ‥‥‥」

「「善行ーーーー!!!」」

やがて状況に追い付いたのか、虎鉄と寛人が善行の方へ駆け寄っていく。

「お前、どこにいたんだよ!!てかどこに行ってたんだよ!!」

「そうだぞ!!寛人なんか心配しすぎて泣いてたぞ!!」

「うるせぇ!!虎鉄も死にそうな顔してたろうが!!」

何故かケンカを始める二人。

「あれ、雪ねえとかに聞いてなかったの?」

「なにをだ!?最近めっきり会ってなくてな!!」

「そうそう!!なんか醸し出す空気が暗すぎて近づきづらかったし!!」

殴りあいながら返答する寛人と虎鉄。

「あっそ。」

とくに興味もないといった様子で、鞄の中をゴソゴソとしていると、

 

ぎゅう

 

横から急に抱きつかれる。

 

「うわ‥‥‥神代?」

 

抱きついてきたのは亜美だった。

目にいっぱいの涙を貯めて、こちらを見てくる。

「猪飼くん‥‥‥猪飼くんだよね!?」

「ん、あ、ああ。」

「よかった‥‥‥本当によかった‥‥!」

存在を確かめるようにしっかり抱き締める神代。

「‥‥う、ううぇぇ‥‥‥」

善行の肩に顔を埋めて、再び鳴き始めた。

「‥‥‥まったく、女泣かせはいけないんだぞ?」

佐波も、無事に善行が帰ってきて安心のようである。

「‥‥‥善行、お前どこに行ってたんだよ。」

「‥‥‥急に消えたと思ったら一週間行方不明になってからに。」

ひとしきり喧嘩も終わった二人が聞いてくる。

でも、これも同様、真面目に言っても信じてもらえないだろうから。

「誘拐された。」

と言った。

「「え‥‥‥」」

ドン引きの二人。

「誘拐って、連れ去られたんだろ?」

「うん。」

「え、どうやって逃げてきたの?」

まあ、今ここにいるなら普通逃げてきたと考える。

「留守の間に玄関から逃げた。」

「「‥‥‥」」

そんなまぬけ過ぎる誘拐犯はいないと思うが。

「あ、あの。誘拐だよ?そんなケロッと解決するもんじゃないでしょ?」

動揺した感じの佐波が問う。

「解決してるじゃん。」

「‥‥‥あの、えーっと‥‥」

簡単に答える善行に色々言いたいが、言葉が出てこないといった様子。

「‥‥まあ、帰ってきて何よりだよ‥‥」

何を聞いても意味がないと考えたのか、ため息をついて諦める佐波。

「‥‥‥あ、良いこと思いついたよ、猪飼くん。」

さっきまで泣いていた亜美が、いつの間にか泣き止んでいた。抱きついたままだが。

本当に良いことが思い付いたのか、とても微笑んでいる。

「何?良いことって。てかそろそろ離れて。」

「ん、わかった。」

素直に亜美は善行から離れる。

「そんで、良いことって?」

「ん。良いことって言うのはね――」

そして、満面の笑みで言う。

 

「猪飼くんを檻に入れるの♪」

 

「‥‥え、は?檻?」

流石に意味不明過ぎてテンパる善行。

「うん。そうしたら猪飼くんがこれから何処かに誘拐されることもないし、外に出るときは首輪と鎖を着けていけば大丈夫。」

「いや全然大丈夫じゃないんだけど。つか意味わかんないし。」

「意味わかんなくないよ。こうしたら、猪飼くんはもう何処にも行かない。そうだよね?」

「いや、だから何で檻や鎖が」

「そうだよね?」

「だから待てって。俺が檻に入れられる意味が」

「ソウダヨネ?」

段々邪気を纏ってくる亜美。

目が何も感じさせない感じになっている。

これはもう、

 

ダッ

 

「あ、逃げたアイツ。」

 

逃げるしかない!

 

ガラガラ!

 

勢いよく扉を開けて、廊下を失踪していく善行。

あの島で森を駆け抜けた時より断然に速い。

「‥‥‥‥ほら、こうやっていなくなっちゃうから‥‥‥繋いでおかないとね‥‥」

うつろうつろと揺れる亜美は、一体どこから持ってきたのか、長い鎖と首輪を持って、廊下に出ていった。

「なんか、本当に愛されてるなアイツ。」

「段々愛のベクトルがおかしな方向に行きそうだな。」

「お菓子だけに?」

「‥‥‥‥」

「ごめん無視しないで!!」

 

やっと戻ってきたのに、いつも通りにはいかなそうである。

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