「おはよう。」
「ああ、おはよう。」
「おはようさん!」
「おう。」
「なに?俺には挨拶なしか!?」
「別に。」
「エリ――」
「言わせねえよ。」
朝。
いつもの様に、席に着くと後ろから寛人と虎鉄が挨拶してくる。若干虎鉄を蔑ろにしながら。
いつもならこの二人だけに挨拶を受けるのだが、最近はもう一人増えている。
「猪飼くん、おはよう‥‥」
「ん?おお、神代、おはよう。」
善行の挨拶を受けると、神代亜美は嬉しそうにうなずくと、ゆっくりと幸せオーラを出しながら自分の席に戻っていく。
亜美から挨拶を受けるようになったのは善行が一週間前に亜美を助けて以来。それまでは、休みの時間は席で一人、ずっと本を読んでいるだけで、基本的に誰とも話さないし、善行も話している姿をほとんど見たことがない。
黒髪ロングでクールな面持ちの亜美。友達はいないけれど、嫌われてるわけではない。というより、女子の間ではこっそり人気があったりする。
そんな無口な人物が自分から積極的に声を掛けようものなら、だいたいの人は事情を把握し、「そういう事ね」となるのだが、
「善行、お前さ‥‥こう‥‥何か思わない?」
「何が?」
「‥‥‥‥いや、いいっす。」
「‥‥‥‥普通はすぐ分かるようなもんだけどね。」
善行はこの有り様である。
席に戻った亜美は今は女子達に囲まれて、浮いた話で盛り上がってる。こういう事に敏感なのか、すぐに察知した女子陣は当人である亜美に話しかける様になった。亜美も、もともと話す事は嫌いではないことと、話題が善行の事っということで、それはそれは幸せそうな顔でのろけている。
「あいつ、最近よく話すようになったな。」
「ああ、うん。」
「何でだろう?」
「‥‥‥さあね。」
善行は鈍感まっしぐら。
「なあなあ、知ってるか?」
「なにが。」
午前中の授業が終わり、昼休み。
今日は虎鉄も一緒に三人で弁当を食べていた。
その時、虎鉄がこんな話題を出してきた。
「最近出来たこの学校の都市伝説的なやつ。」
パンをモグモグしながら虎鉄は答える。
「なにそれ?」
「ああ、知ってるよ。」
「え、寛人知ってるの?」
「夜の10時に音楽室で時計の時報を聞くと異世界に行けるってやつだろ。」
この学校の音楽室には、午前と午後の0時になると、時報として鐘の音が聞こえる奇妙な時計がある。それが、噂では夜の10時になるらしい。
「それ七不思議じゃないの?」
「何言ってんだよ。七不思議は別にあるよ。」
「じゃあ、その都市伝説がどうしたの?」
「いやそれがさ、確かめに行ったやつらが何人か行方不明になってるらしいんだ。」
「嘘だろそれ。」
「いやいや、どうやら本当らしいぞ。二年の先輩が三人、噂を確かめに行ったっきり帰って来ないって。」
「らしいね。三人とも割りと真面目な人らしいから、授業サボったり家出したりはするような人じゃないって。」
「これはもう連れて行かれたとしか。考えられないだろ。」
「いや、普通に誘拐されたんじゃないの?」
「これだからねぇ‥‥┐('~`;)┌」
ぶすっ
「ぎゃぁぁ!!」
「その顔うざいな。」
虎鉄の表情に腹がたった善行は、目潰しを食らわせた。
「じゃあ何なんだよ。本当に異世界に連れて行かれたってのか?」
「そうとしか考えられないって。何の痕跡もないし、町のどの防犯カメラにも、夜に学校に行く三人が映ったきりらしいし。」
「へえ。」
ここで一段落をおき、虎鉄はパンの残りを全部頬張ると、
「なあ、行ってみようぜ!」
こう言いはった。
「はあ?バカじゃないの?」
「そうだって。わざわざ危険な所に行く意味が分からない。」
「いいじゃん楽しそうだし。」
「お前、噂は本当だって言ってただろうが。帰ってこれなくなるんじゃないの?」
「いやいや、噂の真偽は自分達の目で確かめなくては。」
「じゃあお前一人で行けよ。」
「やだよ。怖いし。」
「俺達を巻き込むな。」
「いいじゃんかよー。頼むよー。」
虎鉄が善行にすがり付いてくる。
それを見た寛人は、
「なら行ってみようよ。」
「え?何言ってんの。」
「虎鉄がここまで行きたいって言ってるんだから、付き合ってみようよ。」
「でもなぁ――」
「危なくなったらすぐさま帰ればいいし、行ってみようよ。」
寛人に説得される善行。
「―――はぁ。お前もお人好しは大概にしとけよ。」
「よっしゃあ!!行こうか!!」
というわけで、行くことになりました。
「うわぁ、メチャクチャ不気味ー。」
その日の夜9時半。
善行は学校の校門前で集まっていた。夜の学校の不気味さに寛人が若干引いている。
「‥‥‥っていうか、何でお前らまできてんの。」
善行がそう言ったのは、この場にいるのが善行と虎鉄と寛人だけじゃないからだ。
「いやぁ、こういうのって大勢の方が安心だし楽しいじゃん。」
ここには三人に加えて、亜美と、クラスメートの末貞佐波と高宮隆がいる。
末貞佐波はクラスで一番うるさい女子という認定がある。その通り、声がとにかくデカイのである。そして生来よりとても明るい性格的なので、よく笑う。したがって笑い声がよく響くのである。決して悪い人ではない。
高宮隆は、一言で言えば優男である。性格もとても優しいのである。ただ、かなりのビビり。何でここに来たのかは分からない。
「ってか神代も来たのか。」
「うん。‥‥‥だって、猪飼くんが居るから‥‥‥」
「ん?最後の方なんて言った?」
「‥‥何でもない‥‥‥」
「んー、そうか。」
「爆ぜろ!」
「何で?」
善行が鈍感モードを展開していると、
「ねえねえ、もう入ってようよ!」
佐波が入ろうと言ってきた。
「何で?何もすることはないぞ。」
「そ、そそそそうだよっ。わわわわざわざ早くからいいいいいいかなくてもっ。」
「高宮ビビりすぎだろ。」
「何でこいつよんだの。」
「何となくね、面白そうだったから。」
「高宮、何となくで死にそうになってるけど。」
「ねえ!それより早く入ろう!」
「‥‥んー、まあここで時間潰すわけにもいかないし、もう行くか。」
そして、夜の学校に足を踏み入れて行った。
「ふえええええ‥‥‥」
さあ、隆は生きて帰れるのか。
「うわ、真っ暗だな。」
下駄箱のある玄関から入ると、いつもは見慣れてるはずの光景が黒く染まっている。
「何も聞こえてこないね‥‥」
シンっと静まりかえった校舎。何の気配も感じないが、すぐ先が真っ暗闇なのが余計恐怖をそそる。
流石の佐波も、暗闇に圧倒されて声がしぼんでいる。
「(カタカタ)」
隆は真っ青のまま善行に虎鉄にしがみついて震えている。
虎鉄も寛人もさっきからだんまりだ。
そんななか善行だけは、
「ほら、行くぞ。」
何も臆する事なく歩き出す。
「!!ちょっと待って!!」
慌ててそれについていく虎鉄達。
「お前‥‥‥怖くないの?」
「何が?」
「え、いやさ、夜の学校だよ?真っ暗闇だよ?」
「それがどうしたんだ?ただ暗いだけだろ。」
「‥‥‥まじか。」
善行は、ダガッシーの手伝いで、たまに深夜に出ることもあり、割りと暗闇を進むのは慣れている。
「‥‥‥‥猪飼くん格好いい‥‥」
亜美もそこまで怖がっていない。まあ、善行の近くにいるからだろうが。
階段を上がり、音楽室のある階の一個したの階にくる。音楽室は隣の北校舎。玄関があるのは南校舎だけで、北校舎にいくには連絡橋を渡る必要がある。
「暗いよぉ。何も見えないぃ‥‥‥」
「ていうか、マジで何か出そうだけど。」
現在は廊下を歩いて連絡橋にいこうとしている所だ。
「‥‥‥止めろよ。それフラグでしかないんだけど。」
「い、いるわけないよ、幽霊なんてさっ。」
「末貞、声裏返ったぞ。」
「う、うるさい。別に怖くないやい!」
ガラガラ
「ひぃぃぃぃ!」
「何だよ今の!!」
「誰か扉を引いたのか!!?」
「ひぃぃぃぃやぁぁ‥‥‥」
歩いていると不意に聞こえた、扉を引く音。
「誰か懐中電灯くらい持ってこいよ。何も見えないだろうが。」
「そ、その方が雰囲気出るかなって‥‥」
「んで、さっきの音は一体何だったんだよ!?」
「分からない‥‥‥分からないよぉ!!」
「末貞が泣いてる。」
「な、泣いてないよ!私は絶対に泣か――」
言いかけた言葉が止まった。
全員が凍りついてる。
その理由は、
突如、暗闇の向こう側から人体模型が歩いてきて、
「やあ( *・ω・)ノこんにちは♪」
挨拶してきたから。
「「「「「ぎぃゃやぁぁぁああ!!!!」」」」」
全員が一斉に反対方向に全力ダッシュする。虎鉄、寛人、佐波はもちろん、亜美まで絶叫をあげて走っていった。隆にいたっては声にならない叫びをあげている。
一人、ポツンと取り残されている善行。人体模型に全く恐れをなしていない。
というよりも、
「‥‥‥‥もういいぞ。」
正体を知っているらしい。
善行がそう言うと、人体模型の影から、
「ウッハッハッハ♪脅かすのはおもしろい!!」
「全くですよ!!」
ポテトチップに載ったダガッシーと泥っちが出てきた。
何でダガッシー達がこんな事をしてるのかというと、
数時間前、家に帰った時のこと。
部屋に戻ると開口一番、ダガッシーが敵の発生を知らせてきた。
「場所はどこ?」
「君の学校。」
「マジで?」
「マジで。」
「今夜、なんやかんやで行くんだけど。」
「なるほどわかった。」
てな具合で、敵の発生が分かったため、発生場所である学校は危険なため、虎鉄達を脅かして帰ってもらおうと言う魂胆だった。
「まあ、人体模型に話しかけられたりしたら、絶対家まで直行で帰るだろう。」
「そうですけど、一人色が抜けていくやついましたよ?」
「いいよ、気にすんな。ドラ〇もんだって色が抜けても懸命に生きてるから。」
「ストレスの度合いが全然違うと思いますが‥‥‥」
善行はダガッシーと泥っちを肩にのせて廊下を歩いていく。
「それより、この学校の何処にそんなのがいるんだ?いつもみたいに結界を張ればいいのに。」
「それが、相手側が独自に別空間を作ってるらしいんだよ、ここで。」
「別空間?」
「自分で空間を作ることが出来るんだ。普通じゃ目に見えないが、その世界ごとにある条件を満たすと侵入出来るんだ。」
「じゃあ、もしかしてこの学校の噂の、夜の10時に音楽室の時計の時報を聞けば異世界に行けるってのは‥‥」
「多分、別空間だろうな。」
「でもそれ、別に放って置いてもいいんじゃないの?」
「いやいや、放って置いたら、それこそもしその世界で人類を滅亡させられるほどの大魔法の準備をしていたら一貫の終わりさ。おそらくその空間に入ったものは魔法を発動する条件か代償にでもなるのだろう。」
「そこで、魔法が完成する前にそれを食い止めるってわけです。」
妖精の魔法には詠唱か魔方陣のような、発動条件が必ずある。それは規模の大きな魔法ほど時間も準備も必要となる。だから、小さい別空間を作って、そこで魔法の準備の邪魔をさせないというものなのだろう。
「でも、普通じゃ目に見えないし、邪魔が出来ないものなら、何でお前は位置が特定出来たの?」
「別空間と今の世界がつながる瞬間だけ探知が出来るんだ。」
「へー。てか、それ昨日探知出来たんじゃないの?何ですぐに言わないんだ。」
「いやぁ、腕輪の通知をオフにしてたから、探知出来たことに気づかなくて‥‥」
「ふんっ」
ブスッ
「ぎぃゃやぁぁぁああ!!!!」
ダガッシーの目にじゃが〇こを突き立てた。
「アホか。そんなメールの返信が出来なかった言い訳みたいなこと言うな。」
何てやっていると、音楽室の前にやって来た。
「今は10時前、後一分で時報がなるな。」
ガラガラガラ
音楽室の戸を開く。
「本当に聞くだけでいいのか ?」
「さあ┐('~`;)┌」
「ふんっ」
ブスッ
「ぎぃゃやぁぁぁああ!!!!鼻に刺さないでぇぇ!!鼻血がやばしぃーー!!」
鼻から血が噴き出しているダガッシー。
「‥‥‥君、段々刺すのが楽しくなってきてないかい?」
「気のせいだ。」
「嘘だ!!」
ブスッ
「ぎぃゃやぁぁぁ!!!!耳の穴もやめてぇぇ!!」
耳から血がドクドクと。
「そんなひ〇らし的なこといわれたら、粛正に走らないと。」
「‥‥‥もういい‥‥」
ダガッシーの体がおおよそ赤く染まったとき、
ゴーーーンゴーーーン
時計から鐘の音がなった。
その時、
ぎゅぅぅぅぅん
「すげぇ、世界が歪んでる。」
「どうやら入れたみたいです。」
世界が歪んだかと思うと、景色が大きく変わった。
「なんだここ?」
見渡すと、大理石の壁で囲われてるのが見える。空にはやたらと明るい月があり、暗さを感じさせない。広さはテニスコートぐらいだが、真ん中の床が抜けてて、両端に4mくらいしか床がない。善行達はそんな床の他端の方にいる。崖の下は真っ暗で、どうなっているか分からない。
「フッフッフっ」
崖の向こう側の方から何かが話しかけてきた。
「今日も生け贄がやって来たようだな。」
話しかけてきたのはトカゲのマスコットみたいなやつだった。
「おい、あいつか?今日の敵。」
「どうやらそうらしいな。」
泥っちがトカゲのマスコットの方を向いて話しかける。
「お前は誰ですか。」
「私?私はな‥」
「カードゲームの妖精、ドロー丸だ。」
「アウトーー。」
善行が言う。
「ラグビーファンに謝りなさい。」
「ん?何のことだ?」
「だって明らか五〇丸だよな?あのルーティーンで有名な五〇丸意識したよな?」
「知らん!そんな筋肉ムキムキ!」
「知ってるじゃん。」
そして、鞄からオード・スチースを取りだし、メントスを入れて鞘に戻し、抜刀した。衝撃波がドロー丸の方に飛んでいき、
バチぃン!!
途中で見えない壁に阻まれた。
「あれ?」
「フッフッフ。妖精を連れているようだが、貴様ら私の邪魔をしにきたようだな。しかし、このバリアがある限り私は無敵だ!」
ドロー丸が高笑いをした。
「バリア?」
「これはATフィール〇だな。」
「あ?」
「ATフィール〇。」
ブスッ
「ぎぃゃやぁぁぁああ!!!!」
善行の目潰しがダガッシーに炸裂!
「‥‥‥‥敵のことなのにどうしろと言うのだ‥‥‥」
「笑えばいいんじゃないかな。」
「だまれぃ!」
げし!
「ぶぎゃぁぁぁ!!!!」
善行のヤクザキックが泥っちに炸裂!
「そろそろこの小説アウトだろ。」
「まあまあ、気にしない気にしない。」
「気にするよ。いろいろ失礼だろうが。」
「オーイ!私を無視するんじゃない!」
向こう側からドロー丸が話しかけてきた。
「いたんだ。」
「いるよ!!最初からここにいるよ!!」
「んで、どうやったら死んでくれるの?」
「私死ぬこと決定してんの!!?」
「そりゃね。」
「‥‥まあいい。私を倒したいなら、私とカードバトルして私に勝ち、バリアを消してからだ!」
ドロー丸がそう言うと、地面からディスプレイ付きの机が出てきた。机にはカードゲームのバトルフィールドがある。
「さあ、カードゲーム、ブレイクハートで勝負だ!!」
「あのさ、俺カード持ってないし。ていうかなにそのカードゲーム。聞いたことない。」
それに泥っちが答える。
「ブレイクハートは妖精界のカードゲームです。デッキならありますよ。」
どこからともなくカードデッキを取り出す泥っち。
「私もあるぞ。」
するとダガッシーもカードデッキをどこからともなく取り出した。
「君のもあるぞ。」
「何かご都合主義の展開だな。」
ダガッシーからカードデッキを渡される。
「これどうするの?」
「これをフィールドのデッキゾーンと書いてある所に置くんだ。」
言われて、デッキゾーンにデッキを置く。
すると、
しゅん!
ライフゾーンという所にダイヤモンドの宝石の形をしたガラスが3つ出てきた。
「これは?」
「それはガードチップと言ってな。500ポイント分のダメージを受けると一個、相手のライフゾーンに持っていかれるんだ。」
「何かバ〇スピっぽい。」
ダガッシーと泥っちも各々のテーブルにデッキをセットする。
「よし!準備はいいようだな!」
「「「デュエル!!」」」
「遊〇王みたいだな。」
ダガッシーと泥っち、ドロー丸がそう叫ぶと、ディスプレイのスイッチがオンになったのか、画面がついた。ディスプレイには四人のフィールドの様子が表示されている。
「あれ?このスペルカウンターは?」
「スペルカウンターは手持ちの魔法カードを使うのに使うポイントだ。自分のターンが来るたびに一つずつ増えていく。カードごとに払うスペルポイントは違うぞ。」
魔法カードは、スペルカウンターを支払って使うらしい。このデュエルはこの魔法カードの使い方が大事らしい。
「さあ、デッキからカードを五枚引くんだ。」
言われて、デッキからカードを五枚引く。
「それでは、先行は私でいこう。」
「何で?」
「何でも。」
ディスプレイには、ドロー丸のターンと表示されている。
「そちらは三人でチームを組んでいる扱いになってるからな。交互にターンが回ってくるぞ。」
そう言うと、ドロー丸は自分のデッキの上に指をおき、
「私のターン!!」
勢いよく引いた。
「それも遊〇王ぽい。」
「これは男のロマンだ。」
そして、ドロー丸は手札から一枚、モンスターフィールドにカードを出した。
「私は、ブロンズタイガーを召喚!」
すると、床が抜けている部分に、銅の色をしたトラが現れた。
「なんだこれ。本物か?」
「ああ、特別仕様にしてあるから、本物ではないけれど、ダメージは受けるよ。このゲームは相手プレイヤーに直接攻撃出来たら勝ちだからな。その時はデットエンドだと思えばいい。」
「ほー。」
「軽いな!死ぬかもしれないんだぞ!?」
「僕は死にましぇん。」
「は?」
「僕は死にましぇん。」
「‥‥‥え?」
「僕は死にましぇん。」
「‥‥‥‥何で?」
「これ以上は危ないから言えない。」
「‥‥‥‥‥」
「おい、早くしろよ。」
「‥‥‥‥私はこれでターンエンドだ。先行は攻撃出来ないからな。」
そしてこちら側にターンが来る。
「先に私がいこう。」
ダガッシーはそう言い、両手でデッキからカードを一枚持ち、
「私のターン!」
体をネジって思いっきり引いた。
ゴキッ
「ぎぃゃやぁぁ!!腰にきたぁー!」
「無理してやるな。」
ダガッシーと泥っちは身長が15センチくらいしかないので、手札はフィールドの端に置いて、カードを必死に持ってテーブルの上を動いている。
「一応いっておくが、このカードゲームでは、1ターンに一体モンスターを召喚出来るからな。」
そう言うと、ダガッシーは一枚、モンスターフィールドに置いた。
「私はバーニングペガサスを召喚!」
すると、炎をまとったペガサスが出てきた。
「攻撃力はこちらの方が上だ!いけ!」
「ペガ〇ス流星拳!!」
「聖闘〇星矢ーー!!」
善行は叫ぶ。
どごぉ!!
バーニングペガサスが飛ばした攻撃で、ブロンズタイガーは撃破された。
「くそ!だが攻撃力の差は500以上はなかったようだな!こちらのダメージはなしだ。」
500ポイントの攻撃力差が出ないと相手のガードチップを奪えないので、相手のダメージはなし。
「私はこれでターンエンドだ。」
ダガッシーはターンエンドした。
次はドロー丸のターン。
「よし、私の―――」
「いや俺のターン。」
善行はガードをデッキから一枚引いた。
「何で!!?順番守れよ!!違反だろ!!」
「いや、ディスプレイ見ろよ。」
言われて、ディスプレイを見る妖精達。
そこには、
善行のターン
こう表示してあった。
「「「せこい!!」」」
「何言ってんだ。機械がこう言ってるんだから俺のターンでいいんだ。」
そして、善行はモンスターフィールドに一枚ガードを出す。
「俺はデスジャッチマンを召喚。」
すると、外套をかぶり、大鎌を持った男が現れた。
「ふっ。フィールドががら空きだぞ。」
「お前のせいでな!!!」
「攻撃。」
デスジャッチマンはドロー丸に攻撃した。すると、
バリィィン!!
ドロー丸の前にある見えないバリアが砕けた。
手元のガードチップが増える。
「釈然としないぞーーー!!!」
そう言うドロー丸だが、
「さらに。」
善行の攻撃は終わってなかった。
「ガード効果で、相手のガードチップを一個奪ったとき、もう一度攻撃できる。」
「何そのチート能力!!?」
また、デスジャッチマンがドロー丸のガードチップを一個奪う。
「さあ、もうライフは一個だぜ。」
「お前のせいでなぁ!!!!」
「俺はこれでターンエンドだ。」
善行はターンエンドした。
やっとドロー丸にターンが回る。
「私のターン!!」
そして、ドロー丸は一枚のカードをマジックフィールドに出した。
「私はスペルカウンターを一個使い、魔法『起死回生』を使用!!」
すると、ダガッシーと善行の召喚したモンスターが光りだした。
「このカードはガードチップが一個で、フィールドにモンスターがいない時にスペルカウンターを一個支払って発動できる!!このカードの効果により、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する!!」
そう言った瞬間、
ビキィィィン!!
バーニングペガサスとデスジャッチマンが砕けた。
「フッフッフ。これで直接攻撃が可能だな。」
そして、ドロー丸はガードを一枚、モンスターフィールドに出した。
「ミステリアスドラグーンを召喚!!」
床のない所に紫色のドラゴンが現れる。
「さあ、ミステリアスドラグーン!!人間に攻撃!!」
すると、ミステリアスドラグーンが善行に向けて、極太の光線をはいた。
しかし、
「トラップ発動!!」
それは、
「聖なるバリア、ミラーフォ〇ス!」
泥っちによって阻まれた。
「いつの間に!!?ていうかガードゲームの種類が違う!!?」
極太の光線はバリアに跳ね返され、
どごぉぉぉん!
ミステリアスドラグーンを破壊した。
「せこすぎる!!お前にターンは回ってないだろ!!」
「何でかな?」
「疑問でかえすな!!!」
「‥‥‥‥仕方ない。私はこれでターンエンドだ。」
ドロー丸はターンエンドした。
次は泥っちのターン。
「僕のターン!!」
ぐきっ
「ぎぃゃやぁぁ!!!」
ダガッシーと同じことをした。
「だから無理するな。」
泥っちはよろけながらも、ガードを持って動く。
「‥‥‥‥くそ。モンスターガードがないです!僕はこれでターンエンドです!」
「手札事故起こしてるだろ。」
泥っちは何も出来ずターンエンド。
「よし!私の――」
「またまた俺のターン。」
「「「またか!!!」」」
「良いだろ?」
「「「良くない!!!」」」
善行はモンスターガードを出す。
「俺は玉手箱の番人を召喚。」
すると、鎧を着た男が現れた。
「攻撃。」
玉手箱の番人はドロー丸のガードチップを奪う。
「俺はターンを終了する。」
善行はターンエンドした。
「さあ、もう後はないぜ。」
「黙れぇーぃ!!!」
ドロー丸の悲痛な叫び。
「やっと来た私のターン!!」
ドロー丸は指をデッキの上におき、
「ドロー!!」
できなかった。
「玉手箱の番人の効果発動。」
善行によって、
「この効果により、このモンスターだけが俺のフィールドにいる限り、相手のドローをスキップする。」
ドローを封印された。
「なにぃ!!!」
そして、善行は決め顔で言う。
「お前はもうドロー出来ない。」
「サブタイトルぅーー!!」
ダガッシーが叫ぶ。
「‥‥‥‥くそう!!!私はマッドピジョンを召喚!!!」
場に全長2メートルの鳩が現れる。
「私はこれでターンエンド!」
次はダガッシーのターン。
「私のターン!!」
今回は控えめに引いたダガッシー。すると、引いたガードを見て、
「ふっ。」
と笑い、
「勝った!」
と言いはった。
「何!!?」
「私が引いたのは、」
「ブルー〇イズホ〇イトド〇ゴン!」
「本当に怖いんで伏せ字多めに使いました。」
善行が何やら言った。
ダガッシーは引いたガードをそのままフィールドに出した。
すると、巨大な青い竜が現れた。
「さあいけ!!」
「滅びのバース〇スト〇ーム!!!」
「海馬〇戸にあやまれぃ!」
善行のヤクザキックがダガッシーにきまる。
竜の吐き出した光線はマッドピジョンに飛んでいき、
しゅん!
飲み込んで蒸発させた。
光線はそのままドロー丸の方へ飛んでいき、
ジュゥゥゥゥ!!
「ぎぃゃやぁぁぁああ!!!!」
ドロー丸を飲み込んだ。
「やったぞ!!」
「勝ちました!!」
大喜びのダガッシーと泥っち。
「‥‥いや、まだ生きてるよ。」
言われて、向こう側の方を見てみると、
「‥‥‥‥せめてちゃんとしたカードで勝ってよ‥‥‥」
普通にドロー丸が立っていた。
「あれ?私がとどめをさしたはずだが。」
「いや、少し細工して、私の方には物理的ダメージはないようにしてるんだ。」
「せこいな。」
「お前に言われたくない!!!」
「じゃあどうしようか。」
「フッフッフ。どうしようもないさ。お前達は何も出来ず、そこで指をくわえて人間界が滅ぶのを見ているが―――」
「ふんっ」
ぶしゅぅぅぅぅぅ!!!
「ぎぃゃやぁぁぁああ!!!!」
ドロー丸の鼻から血がバカみたいに噴き出した。
「そういえば、これは物理攻撃じゃないからATフィ〇ルドとは関係ないな。」
善行がオード・スチースでとどめをさしたらしい。
「最初からそうすればよかったじゃないですか!」
「今気づいた。」
「‥‥‥‥そうか。」
さっきのデュエルが茶番感じる事態だった。
血を思う存分噴き出したドロー丸は、
バタっ
血がなくなって死んだ。
そして、
「おお?また世界が歪んだ。」
別空間を作り出している者が死んだため、空間が消えようとしているのだ。
気がつくと、真っ暗な部屋にいた。回りには色んな楽器が置いてある。
「どうやら戻ってきたっぽいな。」
時刻を見ると、夜の11時。
「やべっ。早く帰らないと。」
扉の方へと走る善行。
しかし、
ぶにゅ
途中で何かを踏んだ。
「なんだ?」
止まって見てみると、制服を着た女生徒が三人倒れていた。
「これってもしかして行方不明になってた先輩方か?」
それは、噂を聴いて、面白半分で時報を聞き、あの空間でドロー丸に魔法の生け贄にされそうになってた、行方不明中の先輩達だった。
「‥‥‥背負って帰るのめんどくさいし、ほっとこ。」
善行はそんな先輩達を放って、帰ってしまった。
‥‥‥顔を見られたらフラグをたてられるかもしれないのに。
翌日。
「おはよう。」
善行は席につくなり挨拶した。
すると、
「お前、昨日何があったんだ!!?」
「そうだぞ!!気がついたら猪飼君いないし!!」
「それに行方不明の先輩達も帰ってきたらしいし!!」
虎鉄、寛人、佐波に詰め寄られた。
「えーと‥‥‥」
「「「何があった!!?」」」
「‥‥‥まあ、異世界に連れていかれたんだけど‥‥」
「あの人体模型に!!?」
「‥‥‥まあ‥‥」
「「「それで!!?」」」
「‥‥‥‥そしたら、気を失って、気がついたら、音楽室で倒れてた。」
「え!!?何が起こったんだその間!!?」
「さあ?」
「気になる!!!すごく気になる!!!」
「何か知らないのか!!?」
「悪いけど、俺気を失ってたし、何も見てな―――」
「ちょっといいカナ?」
善行の言葉を遮る、静かだけど、ものすごく威圧感の強い声。
「「「「‥‥‥え?」」」」
虎鉄達は振り向くと、向こうから亜美が歩いて来た。亜美の表情は、前髪の陰でよく見えない。
「猪飼クン。」
「な、なんだ神代。」
何故かものすごく心を圧迫されるその声に、冷や汗が出てくる善行。
「猪飼クン、その時って、行方不明の先輩達もいたんだよネ?」
善行の目の前まで来た亜美。近くになり、表情が見えるようになった。その顔は笑顔だが、
目が濁っていた。
「マサカ、その先輩に変なコト、」
亜美は顔をずいーっと善行に近づけ、
「シテナイヨネ?」
そう聞いてきた。
「‥‥‥してないですしてないです!!!」
必死に答える善行。
「本当ニ?」
「うん!本当に!!」
「絶対ホントウニ?」
「ああ!!絶対にそうだ!!」
「そう。」
それを聞いた亜美はゆっくりと離れていき、ふりかえると、
「安心したっ。」
元の普通の笑顔に戻ってた。
そのまま亜美は自分の席に戻っていった。
「‥‥‥何で、何であいつはあんなにダークだったんだ?」
「こえぇぇぇぇ!!!」
「亜美ちゃんやばいねぇ‥‥‥」
神代亜美、ヤンデレ説!