といっても、多分あんまり長くならないと思います。
「いやー、善ちゃんと登校するの久し振りだねー!」
小鳥がチュンチュンと鳴く声が聞こえてくるシャッター商店街を雪音と善行が歩いている。
「あの、姉さん、そろそろその呼び方止めてほしいんだけど。」
善行が嫌そうに顔をしかめる。
小学校低学年のころから呼ばれている愛称は、流石に高校生にもなると恥ずかしくなってくる。というか、小学校の時でさえからかわれた事があるから今も呼ばれるのは余計に嫌なのだ。
「えー、いいじゃなーい。善ちゃんで慣れてるんだから。それに弟なんだしー。」
「その弟も高校生だからいい加減別の呼び方の方が嬉しいんだけど。」
「だーめ。善ちゃんが歳をいくら取ってもそう呼ぶんだからっ。」
ニッコリ笑顔でそんなことを言ってきた。
「はぁ。もういいや。」
早々に諦める善行。いつものことだから段々どうでもよくなってきてもいるらしい。
これが二人の日常の出来事である。
「おはよっ。」
ガラリと椅子を引いて席に座る善行。いつものように近所の虎鉄と寛人に挨拶。
「うぃーーっす。」
「おはよう。」
いつものノリで返す虎鉄と寛人。
そして善行に気づいて、隆、佐波に亜美が寄ってくる。
「おはよう善行くん!」
「よーーーっす!猪飼っち!」
「おはよう、猪飼くん。」
寄ってきた三人は、何だかテンションが高い。
「おはよう。」
とりあえず挨拶を返す善行。
「どうしたんだお前ら。今日は機嫌がいいな。」
虎鉄が三人の様子について聞く。
「いやー、それがさぁ、」
「神代さんのその‥‥‥あの話でとても盛り上がっちゃって、」
「みんな相談によくのってくれる‥‥とても嬉しい。」
「あの話?」
「いや、お前はいいよ分からなくて。」
「あれ、みんなわかるんかよ。」
「まあ、猪飼っちが分かってしまったらねぇ。」
「言っちゃダメ‥‥‥」
「善行には関係ないことにしといてよ。」
「だな。」
「何だお前ら。」
「善行くんは気にしなくていいよ。」
「なんだそれ。」
と言いながらも聞こうとはしないのは、単に興味がないから。
「そうだ善行。お前今日も弁当だよな?」
「そうだけど、それが?」
虎鉄は頭を掻きながら言う。
「いや、今日も弁当忘れてさぁ。また学食にいかねぇといけないんだわ。」
「またかお前。」
「それで何だけどさぁ‥‥‥」
「何だよ、学食行くんだろ。他になにかあるのか?」
「いやぁ‥‥‥‥‥お金貸して?」
「はぁ?」
「昨日の帰りにコンビニ寄ったらガリ〇リ君の新しい味が出ていたから、とりあえず三つほど買ってしまってねぇ。」
「はぁ。それでお金がないと?」
「はい‥‥‥‥面目ありません‥‥」
「はぁーー。」
善行は大きく二度目のため息をつくと、鞄から財布を取り出した。
「おお、流石マイロード!!」
「うっさい。とりあえず千円貸すから、返せよ。」
「明日中に返すぜい!」
「でも、明日休みだよ?」
「え?」
「は?」
隆の言ったことがわからない二人。
「だから、明日休みだよ。」
「え?マジで!?」
「一ヶ月後には夏休みなのに?」
本来、火曜日なので学校があるのだが、明日は開校記念日で学校がない。
「って言うかカレンダー見ても分かるから気づこうよ‥‥‥」
「‥‥‥さすが‥‥」
「亜美ちゃん、そこ誉めるとこじゃないよ。」
「じゃあいつ返すの?」
「今でしょ!!」
「消えろ。」
「ええーーーい!!」
「善行と虎鉄は家近いから返そうと思えばいつでも出来るでしょ。」
「ああ、確かに。」
寛人の言葉ですぐに解決した。
「それでさぁ、この前―――」
そして別の話題で雑談しようとした時、
ガラガラ!
「善ちゃーーん!!弁当忘れてるよぉーー!!」
勢いよくドアを引く音と元気な声が聞こえてきた。
バッと勢いよく机に突っ伏せる善行。
「ゼンチャン?誰それ?」
「さあ?このクラスにそんな名前の人いなかったような‥‥」
「うーーん‥‥‥」
このニックネームが善行を指すことを知らない虎鉄達。まあ、普通は『よしゆき』の『善』の部分を音読みしているだけとは思うまい。語呂が若干悪いから。
「あ、こっち来た。」
クラスの訪問者が善行の席である窓際後方の席にやって来る。
そして、突っ伏している善行の前に立つ。
「あら?寝てるの?」
善行の顔を覗き込みながら言った。
「あれ、すみません。もしかして善行の‥‥‥」
寛人はさっきの行動で善行の関係者と分かったらしい。
「あ、はーい。善行の姉の雪音ですー。」
元気でおっとりした声で答えた雪音。
「え?猪飼っちお姉さんいたの?」
「‥‥知らなかった‥」
「善行くんのお姉さんかー。」
隆は何気なく雪音を眺めている。
「何て言うか‥‥」
「ウーン。」
「あれだね。」
「「「「「似てない。」」」」」
「まあ。よく言われるのよ。本当は血がつながってないんじゃないのかなんて、親にも言われたことあるんだよ~。」
雪音は少しタレ目の優しそうな顔立ちなのだが、対して善行は鋭さのあるつり目だが、中に気だるさを感じさせる瞳に、少しムッとしたような堅い印象がある顔立ちをしている。
「印象が真反対だねー。」
「雪音さん凄く優しそう。」
「理想のお姉さんって感じかな? 僕もこんな兄弟姉妹が欲しかったなー。」
「おお!ありがと!そんな風に言ってくれて!」
ニッコリ微笑む雪音。
「‥‥‥‥‥綺麗だ‥‥」
「‥‥‥‥‥美人だ‥‥」
「‥‥‥‥‥綺麗ー‥‥」
「‥‥‥‥‥まぶしい‥」
「‥‥‥‥‥わぁぁ‥‥」
微笑む雪音の後ろに後光が見えるようで、虎鉄達は思わず見とれてしまう。
「‥‥‥お前ら‥‥あんま姉さんに構うな‥‥」
「ええ?何でよ!」
「そうよ善ちゃん。お姉ちゃんにひどいこと言っちゃだめなんだから。」
「姉さんもう帰って‥‥面倒だから‥‥」
「そんなこと言うと、みんなにばらしちゃうよ?」
「‥‥‥何を。」
「善ちゃんの新しいしゅ――」
「わーーー!!」
大慌てで雪音の口をふさぐ善行。
「どうした!?珍しく叫んで!」
「新しい何なの?」
「猪飼くん‥‥‥‥教えてくれる?それ。」
「‥‥‥は?」
「ダッテ‥‥‥何かタイヘンナことだったら‥‥‥‥‥イケナイデショ?」
「うわ!ここで闇神代出てくんな!」
何か敵が増えた気がする。
「‥‥‥‥んで、何しに来たの?」
「ああ!そうだった!」
手をポンと叩き、肩掛けの鞄の中から弁当を取り出す。
「はい。お弁当忘れてたよ。」
「あ。マジで?」
鞄の中を確かめてみる。すると、今朝入れたと思っていた弁当の姿が見当たらなかった。
「あ、ありがと。」
一応礼を言いながら受け取る善行。
「どういたしまして。」
おっとりした声でおしとやかに返す雪音に、また後光が射してくるような感じがする。
「‥‥お前、良いお姉さんじゃないか!!」
「私にくれぇ!!」
「義姉さんと呼んで良いですか?」
「‥‥‥‥何言ってんのお前ら‥‥」
善行は意味が分からないと頭をふる。
善行にとって朝から疲れる出来事だった。
「よぉ!今日はもう帰れるぜー!」
放課後。
虎鉄は部活が無いから一緒に帰ろうと言ってくる。
「へぇ。今日はみんな無いんだ。」
「いいねぇ。じゃあどっか寄って行こうか!」
「虎鉄、お金は?」
「ない!」
「‥‥‥じゃあ今日遊んだ分のお金は後で返せよ。」
「やったぜぇ!ありがとう寛人兄さん太っ腹ぁ!!」
「止めろその言い方。」
教室を出て、玄関で靴を履き替えて学校を出ていく。
「そう。最近起きてる怪事件知ってる?」
佐波がそんなことを聞いてくる。
「何それ?怪事件?」
「あれだろ。何か急に高校生が失踪してしまう事件が全国各地で起きてるってやつ。」
「何!?虎鉄が知ってんのか!?」
「知ってちゃ悪いか!!」
「じゃあ善ちゃんも気をつけないと。」
「おう。‥‥‥‥って何でいるんだよ姉さん。」
「うわ!雪音さん!」
「いつの間に‥‥」
振り向くといつの間にか雪音がいた。
「今日は私も部活無いんだ。」
「さいですか。」
「この後何処か行くの君達。」
「私達、今からゲームセンターにでも行こうと思ってるんです。」
「なるほどー。じゃあ私も一緒に行って良いかな?」
「は?何言ってんの。ダメに決まってんだろ。」
「いや、大歓迎ですよ!」
善行が拒否した上から虎鉄達は大賛成の意を示す。
「何でだよ!ふつう断るだろ!」
「えー、お前のお姉さんのこと知るいい機会じゃん。」
「そうだよ。もっと知りたいんだってみんな。」
「‥‥‥‥‥」
「私も行っちゃダメ?」
「‥‥‥‥いいよ、もう。」
「やったぁ!」
ほんの少し飛び上がる雪音。
「‥‥やっぱ可愛いなぁ雪音さん。」
「‥‥何か天然系も入ってて少し和むなぁ。」
「‥‥お持ち帰りしたい‥‥‥!」
「ちょっと、今の呟きは危ないぞ。」
何か雪音が着いてくることになった。
自動ドアをくぐるとかなりの音量の喧騒だったりゲームの音だったりが耳に入ってくる。
「やっぱ人多いなぁ。」
「この町最大級のゲームセンターだからねー。」
「ねえねえ、早速だけどプリクラ取ろう!」
「いきなりですか?」
「うん!せっかく善ちゃんのお友達と遊びに来れたから、何か写真残して置きたくて!」
「いいですね!賛成でーす!」
「俺もー!」
というわけでみんなでプリクラを取ったわけだ。
善行はこういうものが初めてなので、写真をどうするべきかなかなか思いつかない。それは虎鉄も寛人も同じようで、シールになった写真をどうすべきか、さっきからずっと写真とにらめっこしている。
「てか、邪魔になるなら撮ろうとか言うなよ‥‥」
その後は、赤い服を着たひげのおじさんが乗る車のレースゲームやら、あちこちから湧いてくるゾンビを撃ち殺すゲームやら、ゲームセンターに来たら大体はやるゲームを一通り制覇して、今はゲームセンターの外に置いてあるベンチに腰掛けている。
「虎鉄さぁ、ゲーム弱くない?」
「なっ!!弱くないわい!」
「いや、マリ〇カートの時は必ずビリで、ガンシューティングでは第一ステージで死ぬくせに。」
「い、いや、あれはたまたまだ。偶然不幸だっただけだ。」
「十回やってもダメだったのに?」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥ゲームなんだから泣くことはないだろう。」
若干涙目になってしまう虎鉄。
「‥‥‥何か、飲み物買ってきてやろう。」
何だか微妙に虎鉄がかわいそうになった善行は、ジュースを奢ってやろうというお情けを与える。
「マジで!!」
「あーマジマジ。これは奢りだけどゲームのお金は返せよ。」
「分かってるって!サンキューな!」
「はいはい。」
何気に優しい善行。
自販機は裏の方にあるため、デパート分の大きさの建物の周りを歩いて回る必要がある。
そうしてたどり着いた自販機。
「自販機まで遠すぎだろ。」
五分は歩いた。
「‥‥‥お、大粒ジュースあるじゃん。」
虎鉄の分を買うついでに自分の分も買う善行。
その時、何気なく道路の方を見た善行はあるものを見て、パキっと固まってしまう。
「‥‥‥‥おま‥‥」
そしてプルプル震えだし、
「‥‥‥お前は‥‥」
ずんずんと歩いて行き、
「‥‥‥お前はなにをやっている!」
無人の、宅急便に使われる荷台の大きい大型トラックの荷台の扉をバン!っと開けた。
そこには大量の段ボール箱に、
ダガッシーと泥っちがいた。
「お、少年。」
「どうしたんですか?」
のんびりと答える二匹。
「どうしたじゃねえよ。何で勝手に出歩いてんだよ。」
「いや、それがね。」
「窓見たらですね、三毛猫がいたんですよ。」
「それで何気なく追いかけてたらこんなところにいたのだ。」
「アホじゃねえのかお前ら。」
荷台の中に入り、ダガッシーと泥っちをつまみ上げる。
「ほら、とっとと帰れ。」
「えー、いいではないかー。」
「そのねこ、多分オスですよー。珍しいんですからね。」
「ほら、いいから。」
と言って荷台から出ようとしたら、
バタン!!
ドアを閉められ、鍵を掛けられた。
「‥‥‥‥あれ?」
「少年よ。」
「‥‥‥‥何?」
「閉じ込められたぞ。」
「いや、見れば分かるよそんなの。」
「どうするんだ。」
「‥‥‥‥┐('~`;)┌」
「┐('~`;)┌」
「流石に車壊して出る訳にも行きませんよねー。」
「‥‥‥‥次止まるの待つか‥‥」
「その時に出してもらおう。」
そうして待つこと六時間。
「‥‥‥‥‥この車どこまで行くんだ?」
「‥‥‥‥何となく高速通ってるっぽいっすね。」
「やっぱりここはぶっ壊して――」
と言いながらオード・スチースを取り出したが、
「今出てもどうやって帰るんだ?」
「‥‥‥‥確かに」
善行は鞄を置いてきたので、誰とも連絡が取れない状態にある。
「‥‥‥って言うか、この荷物何なんだ?」
何気なく積んであった荷物を開けて見る。
「‥‥‥‥何これ、缶詰め?」
すると中には大量の缶詰めが入っていた。
「こっちはカップ麺ですよ。」
泥っちが開けた箱にはカップ麺が詰められていた。
「こっちは大量の栄養カプセルだな。」
ダガッシーが開けた方にはビタミンなどの栄養素を補給する錠剤のパッケージが大量に詰められていた。
「何なんだこれ‥‥‥‥」
「量が異常だな。」
「店とかに入荷するんじゃないですか?」
「でも、これだけ一気に入荷するもんなのか?」
「じゃないですか?」
「‥‥‥‥まあ、どうでもいいか。」
そこまで関心がないので考えるのを止める。
「‥‥‥‥てか、今何時だよ‥‥」
腕時計で時刻を確認する。
現在時刻は12時を過ぎたところ。いつもはこの時間に寝ているので、時間が分かったとたんに眠くなってくる。
「まあいいや。俺もう寝る。」
「ん?寝るって‥‥‥‥ええ!!?」
「マジですか!!こんなときに!?」
「誰かがドアを開けたら気づいてくれるよ。だから俺はもう寝る。」
寝っ転がってしまう善行。
「‥‥‥なら、私もそうするか。」
「じゃあ僕も。」
二匹とも、一応誰か来たとき姿を見られないように段ボールの隙間に寝っ転がる。
そして間もなく、三人分の寝息が聞こえ始めた。
ガタン!
荷台が大きく揺れ、その反動で軽く頭を打った善行はのんびり目を覚ました。
「ん‥‥‥‥‥なんだぁ?」
寝ぼけ眼の善行。上半身を起こして壁にもたれ、微妙に揺れる振動でまたこっくりこっくりいってると、
「あ、そういえば閉じ込められたんだ。」
どうやらあんまり関心がなかったのか、そんなことまで忘れていた善行。
「まだこの中にいるってことは、まだ一回も止まってないのか?」
時計を見ると9時を指している。今日は休みのはずだったので、今頃はまだ寝ている予定だった。
「一体どこまで行くんだ?」
何て言っていると、
「んん‥‥‥あれ、もう起きてたのか。」
「‥‥‥おはようです。」
ダガッシーと泥っちが目を覚ました。
「あれ、まだ走っているのかこの車。」
「どうやらそうらしいですね。」
「今朝の九時だぞ。」
「今、私達は何処らへんにいるのだろうか。」
「さあ?」
と、ダガッシー達と会話していると、
ガタン!
一際大きく揺れて、完全に止まった。
「お、どうやら着いたらしいぞ。」
外から男の声が微かに聞こえてくる。
「よし、じゃあそろそろ助けを呼びますかな。」
そう言ってダガッシー達はドアの前に立つ。
「っておい。」
二匹をアイアンクローで捕まえ、荷台の奥に連れて行く。
「お前らが見つかったら大変なことになるんだろうが。」
「大丈夫だ。その時は人形のふりを――」
ガチャン
ドアがゆっくりと開いていく。
咄嗟に二匹を抱えて死角となる場所へ隠れる。
「‥‥‥‥わざわざリスクを犯すなっての。」
小声でダガッシーを叱る。
ダガッシーはウンウンと頷く。
二匹を制服のポケットに入れ、自分を発見してもらうために出ていこうとして、
バッとすぐにまた身を隠す。
「‥‥‥‥‥何であんなもの持ってんだよ‥‥‥」
ドアを開けた、善行が見た男三人は皆、
武装をしていた。
アサルトライフルを持ち、迷彩柄の軍服を着ていたのだ。
「荷物はこれだな?」
「はい。」
「きっかり一週間分です。」
「分かった。俺は報告に行ってくるからお前は見張りでもしてろ。」
「了解。」
外から三人の軍人と見られる男の会話が聞こえてくる。
どうやら一人は何処かへ行ったらしい、走り去っていく音が聞こえた。
「‥‥‥そういや、昨日またガキ二人処刑されたよな。」
「‥‥‥ああ。かなり粋がってた奴らだったからな。清々するってもん
よ。」
そして、残った二人も何やら会話しながら離れていくのが分かった。
「‥‥‥‥どっか行ったか。」
そーっと荷台の扉から外を見る。
そこには、
森林が広がっていた。
「‥‥‥‥何だここ。」
もう少し顔を出して、そーっと辺りを見渡す。
右手の方には研究施設のような、何の飾り気のないコンクリートの三階建ての建物が建っていて、反対側は森林がどこまでも続いてるようで、先が全くわからない。
二人いた男達はどうやら運転席の方へいったようだ。そちらから声が聞こえてくる。あの二人がここまで運転してきたらしい。
何となく嫌な予感がした善行は、助けを求めるのではなく、とりあえずここから逃げることにした。
幸い、すぐ行けば森林の中なので、サササッと森の中へ消えていく。
そして、一分くらい走ってから一息つき、木にもたれ掛かる。
すると、人気がないのを察してダガッシーと泥っちが顔を出してきた。
「どうした?何で逃げるんだ?」
「何かあったんですか?」
二匹が質問してくる。
「ああ。何か武装している奴らにあった。」
「何ですと!」
「それも何ていうか、少しやばげな会話してた。」
「どんなですか?」
「何かまたガキ二人を処刑したとか何とか。」
「うわぁー‥‥‥かなりヤバそうだな。」
「これまたとんでもないのに巻き込まれましたね。」
「君はコナ〇か。」
「うるさい。」
二匹を肩に乗せ、森林の中を歩いて移動しながら、気づかれないように慎重に気を使う。
歩いて少しすると、何やら開いた空間が見えてきた。
サッと身を低くして、こそこそと草むらの陰を移動してそこの様子を見る。
そこはかなり広い運動場のようだった。
「‥‥あれは‥‥‥」
「‥‥‥あれじゃないか‥‥」
「‥‥‥もしかして‥‥」
そこにいたのは、
「「「子供?」」」
銃を持った子供達が列をなしていた。
小学生くらいの子供が銃を持って、軍服の男達に何やら指導されているようだった。
「‥‥‥‥なんだここ。明らかに普通じゃないぞ。」
「‥‥‥‥日本はおろか、世界的に少年兵ってのはダメなはずだが。」
「‥‥‥‥怪しいですね。」
しばらくその様子を見ていると、10歳位の子供を縛って連れて来た男が広場にやって来た。
手と足を縛られたその少年はかなりじたばたもがいている。
「放せ!!止めろよ!!これほどけ!!」
ここまで聞こえてくるかなりの声。そうとう必死の様子だ。
それを無理矢理引きずって、教官らしき男達のところまで来ると、教官達は列を作っている子供に何やら叫んでいる。
すると、縛られた少年をここまで連れてきた軍服の男は、腰から拳銃を取りだし、それを暴れる少年の方へ向け、
「止めて、助けてぇぇーーー!!!」
パアン
少年の足を撃ち抜いた。
「ぐぅああああ!!!!」
絶叫をあげながら倒れていく少年。
それを目の前で見ていた子供達はかなり動揺しているらしい、泣いている者が何人か見受けられる。
「‥‥‥マジかよ‥‥」
「‥‥‥‥ちょっと。この物語では死んではいけないやつが死んだ気がするだが。」
「‥‥‥いや、あいつは多分まだ生きていられるだろう。」
「‥‥‥‥っていうか善行さん、もうあんなの見ても驚いたりしないんですね‥‥‥」
「一回大虐殺しちゃったからね。」
「‥‥‥‥君は何というか、心が強いねぇ。」
「まあ、親父に育てられたもんだからね。」
「え?」
「いや、俺の親父は極道の人だよ。」
「‥‥‥え?マジで?」
「マジ。だから何か精神的な修行とかってのよくやらされてた。」
「‥‥‥‥善行さん、本当にすごいですね‥‥‥」
善行の心の強さはそこから来るらしい。
「‥‥‥それで、ここからどうするんだよ。」
「‥‥‥‥とりあえず、逃げた方がいいだろう。あっこに突っ込んでも何の意味もないだろうからな。」
「‥‥‥‥だな。」
とりあえずここからも一旦離れることにした。