『緊急放送緊急放送!!警戒レベルを9まで上げろ!!侵入者の面が割れた!!間抜けな侵入者は十六の日本男子!!――』
耳をつんざくような大音量で放送が入る。
「‥‥‥何か、もうクライマックスじゃないか‥‥」
「‥‥‥あのカード、諦めましょう‥‥‥回収されてますよ、もう‥‥‥」
「いや、何回も言うがあれは再発行不可なんだから、取りにいかないと。」
「危険とは思わないのか?」
「全く。」
「「‥‥‥‥」」
現在善行達がいるのは、あの施設の一階に当たる、階段とエレベーターしかないところだ。
入ってくるなり、狙い済ましたかのように放送が鳴り響いたのだ。
「ほら、早く地下一階に行くぞ。」
「でも、今行くと危ないんじゃないか?」
「俺は鉄壁だ。」
「‥‥‥‥」
つっこむ気満々だ。
ス〇ークのようにスニーキングした意味がまるでなくなっていた。
「一応、見つからないように行きましょうよ。絶対面倒なことになりますって。」
「でも真っ正面からいかないと俺のカードが何処にあるか分からん。」
「それなら一人だけ捕まえてOHANASIすればいいじゃないか。」
「脅迫か。」
「せっかく濁して言ってあげたのに‥‥‥」
今更である。
「それで、その脅迫してるとこ見られる訳にもいかないんですよね‥‥」
「うまいこと孤立してるやつがいればね。」
「まさかな。」
「いるわけないですよ。」
なーんて言ってると。
チーン
ガチャ
エレベーターが開く音。
「「「「あ」」」」
出てきた子供一人。
「‥‥‥捕まえろー。」
「「ヒャッハァァーー!!」」
いつでもゆるい善行と、呆然とする子供に殺到する妖精二匹。
数秒後、その子供は森の中で見事に紐に吊るされていた。
「それじゃ、俺のカードどこ?」
善行は吊るされた、全く特徴のない、特徴がないのが特徴って言えるくらい特徴のない子供に質問した。
「言えない。」
「なんで?」
「言っちゃだめだって分かるもん。」
まあ、ごもっともだ。
「何でも?」
「何でも。」
「多分いくら聞いたところで無駄ですよ。」
「この手の事に関してはしゃべらないのが十八番だぞ。」
「なんとかしゃべらせろよ。」
「拷問するとか?」
「ダメですよそんな。」
「えー、じゃあ泥っちはどうなんだ。」
「‥‥‥‥‥釣るとか?」
「どうやって?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「結局ないじゃないか。」
「とは言っても、他に手は無さそうですし。かといって何かに釣られるような感じはしないんですけど。」
「少年も何かないのか。」
そうして、二匹が善行の方を向くと、
「ほーら、おいしーよー。」
木の高い所から吊るされてる少年の方へ、善行はオード・スチースの顕現したチョコスティックの刀身をブラブラやってた。
「‥‥‥‥‥」
無言でダラダラとヨダレを垂らしながら輝いた目で見つめる少年。
「欲しいか?」
「!!」
「食いたいか?」
「(コクコク!)」
力強く首を縦にふる少年。
「喋ったらやるよ。」
「!!‥‥‥‥‥‥‥‥くっ‥‥」
かなり自分の中で葛藤している様子。
「ほらほら。」
ゆらりゆらりと目の前で揺らしてやる。
「あ‥‥‥ああ‥‥‥」
目の前を魅惑のチョコスティックが揺らいでいる。
「あー、早くしないと食べるぞ俺が。」
「!!‥‥‥‥‥言う。」
「え、何だって?」
「言うからくれ!!」
「ああ、いいとも。それじゃ先に話せ。」
「‥‥‥‥あんたのカードなら地下五階の大佐の部屋にあるよ。」
「大佐?」
「ああ、ここで一番偉いヒトだ。それより兄ちゃん、そろそろ下ろしてくれよ!」
「はいはい。」
そう言って、紐をほどいて下ろしてやる善行。
「よし!じゃあいただくからな!!」
「ああ、いいよ。食用じゃないけどね。」
「‥‥‥‥え?」
「どうした。食べないのか。」
「‥‥‥‥兄ちゃん、何て言った?」
「食べないのかって言った。」
「‥‥その前。」
「どうしたって言った。」
「その前!」
「食用じゃないけどねって言った。」
「‥‥‥‥‥これ、でかポ〇キーじゃないの‥‥‥‥?」
「うん。食べたら死ぬ。」
「‥‥‥‥‥騙したの‥‥?」
「聞いてこなかったじゃん。」
「おいしーよーって言ったじゃん!!」
「かもしれないね。」
「く、クソォォォォ!!!!」
「み、見てくださいよ。純真な子供を騙してますよ‥‥‥」
「なんたる外道だ‥‥‥」
「お前らも食べるのか?」
「「遠慮しときます。」」
妖精二匹のシンクロ。
「そんなぁ‥‥‥‥」
「そう落ち込むなよ。」
「兄ちゃんが言うなよ‥‥‥‥」
「ほら、メ〇トスやるから元気だせ。」
「!!」
「ん、いらないのか?」
「いるいる!!食べるぅー!!‥‥‥‥‥これもまた食用じゃないとか言わないよね?」
「言わない言わない。俺ウソつかない。」
「さっきついたではないか‥‥‥」
「マジで!!」
「信じるんですね‥‥‥」
「うん。マジマジ。」
「ヤッホーい!!ありがとう兄ちゃん!!」
「‥‥‥‥こういう釣り方、何か見たことある気がします‥‥」
そして、少年はメ〇トスを食べた。
口の中に一粒を入れて、嬉しそうに頬張っている。
「むはぁ☆ウマーイ!!」
「それはよかったな。」
「あんがと兄ちゃん!!」
「それじゃ、口封じといくか。」
「「「‥‥‥え‥‥」」」
「いや、俺のこと知ってるやつをのうのうと帰すわけないだろ。」
「‥‥‥そうは言っても、子供だぞ?」
「‥‥本当に殺る気ですか?」
「‥‥‥兄ちゃん、俺を殺すのか‥‥‥?」
「いやいや、そんな非人道的なことはしない。」
「この前、学校で蹂躙劇を起こしたくせに‥‥‥‥」
「だから、まあ口封じと言うか、監禁と言うか、とりあえず帰さない。」
「あー、まあそうですね。それがベストです。」
「じゃあどっかに縛りつけるのか?」
「いや、連れて行く。」
「えー、それでは余計に見つかり安くなるぞ少年。」
「大丈夫。こいつはもともとあちら側だから。」
「んー、まあそれでいいか。」
こうして隠密の友が増えた。
「ところで、コイツらなんなの?」
少年がダガッシー達を指して言う。
「コイツらとはなんだ。私たちは妖精だぞ!」
胸を張って言うダガッシー。
「は?妖精?」
「そうだぞ。」
「ぶはははは!!なに言ってんの!!そんなのいるわけないじゃん。」
「目の前にいるだろ。」
「それはお前らがそう思ってるだかなんじゃないの?」
「なら、証拠を見せようか。」
「証拠?」
そうして、泥っちとダガッシーは誰もいない方を向く。
「それじゃあ僕からいきますね。」
泥っちは手を前にかざして、
「お掃除トルネード!」
呪文を唱え、魔法を発動した。
すると、泥っちの前にあった大量の落ち葉が渦巻き状に飛び始めた。
「え、すげぇ‥‥‥‥」
突如起きた現象に少年はびっくり。
「それじゃあ、次は私だな。」
すると、ダガッシーは方向を変え、少年の方に両手を合わせて呪文を唱える。
「チョコニー!」
微妙に森に響くダガッシーの声。
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥え?なんか起こったの?」
「うむ。君の胃のなかにはチョコが召喚されているぞ。」
「‥‥‥‥え?」
「だから、君の胃のなかにはチョコがあるんだぞ。」
「‥‥‥‥そんなこと言われても確かめようがないんだけど。」
「それはそうだろうな。」
「こっちの犬のマスコットみたいのは妖精っぽいけど、お前はそうじゃないだろ。」
「何故だ!!?」
まあそうなるだろう。
「く‥‥‥‥‥少年の時もそうだが、何故だかなかなか信じてくれない。」
「お前の魔法のチョイスが悪い。」
「‥‥‥‥まあ、面倒だから信じてやるよ。」
「なんでそんなに上からなのだ!?」
「どうも、俺は裕太っていうんだ。よろしく!」
「勝手に自己紹介始めたし!?」
「僕は掃除の妖精、泥っちです。」
「俺は善行だ。」
「‥‥‥‥‥」
「ほら、お前もちゃんと名乗ってやれよ。」
「‥‥‥‥ふん、いいだろう。私はお菓子の妖精、ダガッシーだ。」
「ちょ、ふなっ〇ーに謝れよ。」
「何故みんな必ずそういうのだ!!」
段々ダガッシーが小物になっていきそうだった。
「それじゃ、再び行きますか。」
「あ、そうそう。」
再び施設の方に行こうとしたダガッシー達を止める。
「裕太。」
「ん?」
「裏切ったら死ぬってことは忘れんなよ。」
「‥‥‥‥はい。」
こうして、再び隠密に入る。
「‥‥‥‥兄ちゃん、ダンボールで隠れるつもりなの?」
エレベーターの中、裕太の隣にはダンボールが一つ、鎮座していた。
「てか、どっから出したのそれ。」
「どこからって、そりゃ都合のいい異次元ポケットから。」
「‥‥‥‥」
ダンボールから聞こえた善行の声に、ついつい半目になる裕太。
「‥‥‥それじゃ、そろそろ着くから、静かにしててね。」
「オーケー。」
それからすぐに、チンっという音が響いて、エレベーターのドアが開く。
「んーと。」
エレベーターから顔を出して、左、前、右に別れている道をそれぞれ確認していく。
「見た感じだと、直線部分に一人の見張りがいる感じだね。警戒レベルスゴく上がってるし。」
「それでは動けないではないか。」
ダンボールから微妙にダガッシーの声が聞こえる。
「でも俺の生徒証取り返さないと帰れんぞ。」
「もう素直に諦めたらどうなのだ。」
ぐきっ
「そんなわけにはいかないんだけど。」
「‥‥‥ごめんなさい‥‥」
ダンボールから何か音が響いて以降、大人しくなったダガッシー。
「それじゃあいっそのこと全員お掃除しちゃいましょうか。」
ダンボールから今度は泥っちの声がする。
「だめ。それはダメだよ。」
それを断る裕太。
「そんなことしたら、友達がみんな死んじゃう‥‥‥」
「ん?友達?」
友達という単語に反応する善行。
「友達がいるんだよ、この中にいっぱい。」
「じゃあ、あのグラウンドみたいな所で集まってたのって、」
「あれは少年兵だよ。僕たちは元々孤児だったんだけど、それを集めて作った少年の兵団がここにいるんだ。」
「へー。」
「反応うすっ‥‥‥まあいいや。それで、僕たちはここから出ることも出来ずに、毎日辛い訓練受けて、こきつかわれて、虫けらみたいに扱われてるわけ。」
「あっそー。」
「‥‥‥‥ねえ、なんかひどくないその反応。僕たちそうとう悲しいことになってると思うんだけど。」
「まあ、あのグラウンドで子供が打たれたのは少しビックリしたけど。慣れてるからな。」
「慣れてるって、どうして‥‥‥ていうか兄ちゃん何しに来たの?潜入の任務で高校の制服来てくるわけないし。」
「ああ、偶数入った荷台にいたら、気づいたらここに。」
「‥‥‥‥すごいを通り越して呆れるくらいなんだけど。」
「まあ、導かれるして導かれたってやつだろ。」
「‥‥‥まあ、とにかく暴れちゃダメだからね。」
「はいはい。」
「だったらどうするのだ?前みたいに陽動してももう無理な気がするぞ。」
ダンボール内で会話。
「まあここでご都合主義が入らないかな。」
「それに頼らないでくださいよ!もっと現実的に行きましょうよ。」
「それをお前らが言ってもなあ。」
「いいですから!とにかく、ここを通る方法を考えましょう。」
「なら、やっぱり変装が無難ではないか?」
「変装か。」
「ですね。誰かから服を拝借して来てみればいいですよ。」
「でも、お世辞にも体つきはいい方じゃないぞ、俺。」
善行は結構ほっそりとしているので、軍服を着ても軍人特有の筋肉が無いため怪しまれやすいもんだが。
「制服の上から着れば問題はないだろう。少しは体が膨らんで見えるぞ。」
「まあ、そんなもんか。」
とりあえず進み方は決定した。
「そんじゃ裕太、誰か一人ここに呼んで。」
「いいけど、騒がれたら終わりだよ?」
「大丈夫だ。一秒でケリをつける。」
「‥‥‥分かったよ。」
そうして裕太はとりあえず目の前に伸びている廊下の見張りを一人、エレベーターに連れ込む。
「なんだ。用件があるなら早く言え。」
扉が閉じたエレベーター内に、イラついたような見張りの声が聞こえる。
「ええっと、それがですね―――」
ガバッ
ダンボールが急に飛び上がり、中から人が起き上がる。
そして、
「待たせたな。」
決めの一言。
「な、お前は―――」
ぽきっ
見張りの男が言い終える前に、巨大ポ〇キーの刀身をつけたオード・スチースで男の頭を叩く。
そして刀身が折れ、男はその場で膝をつく。
結果としてこの男は、
「ぐへ、ぐへへへへへへへへへへ」
「ゲシュタルト崩壊起きそうなくらいに壊れたな。」
「実質、心も壊れたのだからな。」
よだれを垂らして笑うだけになった。
「に、兄ちゃん、何したの?」
裕太が隅で軽く震えていた。
「ん?心をポ〇キーしただけだよ。」
「そんなはが〇いみたいに可愛く言うな!怖い!スッゴく!」
「面白いだろ。笑い袋だぜ。」
「ぐへへへへへへへへへへへへへへ」
「こんな笑い袋要らないよ!!夜中にトイレに行けなくなるレベルで怖いよ!!」
青ざめながら突っ込む裕太。
「そんじゃ、身ぐるみ剥がすぞー。」
「‥‥‥うん。あの、一応言っとくけど、僕には使わないでね、それ。」
「できたらな。」
「‥‥‥‥‥」
裕太はゆっくり心の中で、粗相がないように心掛けようと決意したのだった。