ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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蒼井宗仁読専さん感想ありがとうございました!
VSユリウス回です。


第13話 明くる年の激闘 ②

 「おおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 雄叫びをあげ、大聖天使ユリウスに突撃する。

 左手の直剣が生み出す斬撃を回避し、単発重攻撃《メルトリーパー》を放つ。

 ガンッ!!という、《マーク・ヴァ・ルイン》とユリウスのガントレットがぶつかり合う音が響く。

 その時反動を逃がさず、そのまま3歩バックステップで後退。と、同時に。

 

 「ハァッ!!」

 

 スイッチしてきたユウナがユリウスの背後から4連撃ソードスキル《メテオスパイク》を打ち込む。

 が、ユリウスも大聖天使の名は伊達ではない。

 最初の2撃を剣で受け流し、両腕のガントレットで残り2撃を止める。

 技後硬直によって動けなくなったユウナにそのまま直剣で斬撃が放たれる。

 

 「ユウナ!!」

 

 「…大丈夫です! 2割も削られてません!!」

 

 すぐに体制を立て直し、今度は先にユウナが攻め込む。

 同じく《メテオスパイク》を打ち込み、さっきと同じように防御される。そこからスイッチし、今度は俺が《アバランシュ・スクエア》を放つ。

 4連続ソードスキルを2連撃は流石に防御が追い付かないらしく、2回の攻撃がユリウスにヒットした。ようやく5本あるHPバーの一本目が消滅した。

 ここまでにおよそ1時間……先が長すぎる。

 

 「ヴァイオさん……コイツ」

 

 「ああ、典型的な防御特化型だな。攻撃事態はシンプルだし威力も大したことねーけど……どんだけ時間かかるか分からねえぞ」

 

 防御力自体はさほど高くなく、数撃でHPバーの一本目が消滅した。

 が、それを補って余るほどに、攻撃を回避する動きが半端ないのだ。基本的には剣とガントレットの弾き防御(パリィ)がメインだが、まれに体全体が動くこともあった。

 

 「どうします? 一度戻って体勢立て直してからでも……」

 

 「いや、その間に大型ギルドにコイツを狩られちまうだろ。時間かかってでも、今この場で倒す」

 

 ユリウスへと突進を仕掛け、さっきと同じように斬撃を回避する。

 今度は《メルトリーパー》ではなく、5連撃《クロスリジェクト》を放つ。2回と3回に分けてテンポよく斬撃を繰り出す。

 クロスリジェクトの強みは、《ガードスルー機能》……というのは俺が勝手につけた名称で、相手のガードに合わせて少しずつ狙い目を逸らして攻撃を当てるシステムアシストの事だ。

 無理やり変な所に攻撃を当てるのだから、当然ながらダメージが安定しない。代わりに、かなりの高確率でダメージを与えることが出来るため、運次第では大ダメージにつながりやすい。

 クロスリジェクトは《吹き飛ばし》……も俺の勝手な呼び名で。最後の一撃が相手をふっとばす機能を持ったソードスキルだ。

 ふっとばす先は当然、ユウナのいるところ。

 

 「ユウナ、やれ!」

 

 「了解、です!」

 

 ユウナの構えはさっきと同じメテオスパイク。

 さっきは全撃回避されたが、今度は相手がバカ正直に重力に従って背中から落ちてくるため、回避のしようがない。

 

 「ヤアァッ!!」

 

 ユウナが雄叫びをあげ、刀身がライトエフェクトに包まれる。

 メテオスパイクの4連撃全てがヒットし、ユリウスのHPバーはあっという間に2本目が消滅した。

 

 「子の方がスイッチよりも効率よかったな」

 

 「なんか、今までセオリーに従って戦ってたのがバカみたいになってきました……」

 

 額に手を当てて落ち込むユウナだったが、そうそういつまでも喋っていられない。

 ユリウスが起き上がり、直剣を構え直す。

 とりあえずさっきの攻防で、クロスリジェクト→メテオスパイクで大ダメージを与えられることは分かった。

 ならば、それの繰り返しで案外楽に勝てるのでは? と思った。

 しかし、現実はそうそう楽ではない。

 

 「な……と、飛んだぁ!?」

 

 起き上ったユリウスが、飛んだ。

 それまでは翼なんてなかったのに、何処からともなく現れた翼は大きく羽ばたきユリウスの体を宙に浮かせている。

 

 「んなのアリかよ……」

 

 「あれじゃあソードスキルは届きませんね……」

 

 ざっと10メートルは上にいるユリウスには、今の俺たちではソードスキルを当てることは出来ないだろう。

 そもそも、空中戦闘を考えたパラメータの割り振りなんかしてないもんなぁ……

 

 「……なあ、ユウナ。何か手ない?」

 

 「ないですよ。あそこまで行かれると、体術スキル完全習得でも無理ですよ」

 

 「体術スキル、かぁ……あれ?」

 

 俺が手で台を作って、ユウナをはね上げたら案外届くか?

 何か体操とかでやるみたいに、こう、ぽーんと……

 

 「……ヴァイオさん、なんか変なこと考えてません?」

 

 「いや別に? ただ、こうポーンといけるんじゃないかと……」

 

 「筋力値的に、飛ぶのって私ですよね?」

 

 「そりゃそうだろ」

 

 うわぁ、すげえ嫌そうな顔してる。

 まあ、下手すりゃ空中と言う回避不可能の空間で思いっきり攻撃喰らうんだもんなぁ……そりゃ誰でも嫌がるか。

 

 「それじゃ、気長に向こうが攻撃してくるのでも待つか」

 

 「……今まで一回も向こうから攻撃してきてないのに?」

 

 「それか、あっちの方で待機してる大型ギルドにやらせる」

 

 「……私が下じゃ駄目ですか?」

 

 「別にいいけど……届かずに落ちるのは嫌だぞ?」

 

 「絶対届かせます。意地でもヴァイオさんをあの天使にぶつけます」

 

 「いやそこまでやんなくていいけど……」

 

 というか、ガチでやられそうだったので全力で遠慮しておく。モンスターと同士討ちとかマジ勘弁だわ。

 両手大剣という、重いことが利点の武器を装備している俺は、はっきり言うとユウナよりもかなり重い。その上ユウナはSTR-AGI特化型の俺よりもSTRが低い、DEX‐AGI型なのだ。つまり、ちょこまかと動き回って敵を翻弄して、そこを俺が叩き潰すというわけだ。

 なので、実はユリウスのところまで届くかどうかが非常に不安なのである。ユウナと違って体術スキルを上げてない俺は、武器無しだとリアルより非力になってしまうし。

 まあ、いつまでも愚痴っててもしょうがない。届かなきゃ俺が落下して終わりだ。

 

 「行くぜ」

 

 「はい、いつでも大丈夫です」

 

 ユウナの準備が整ったのを確認し、一気にダッシュする。

 ユウナは低く腰を落とし、両手で台を作って待ちかまえる。

 上手くタイミングが合えば、ユウナが俺を持ち上げる力と俺自身のジャンプ力で、かなり高い位置まで行けるはずだ。

 ダンッ!と、勢いよく跳ね、ユウナの作った台に着地する。

 

 「「いっ…けえええええええええ!!」」

 

 二人同時に叫ぶ。

 タイミングは完璧だった。最初は目的の高さまで行けるか不安だったが、これなら全然余裕で届く!!

 背中から《マーク・ヴァ・ルイン》を抜き、大剣スキルを完全習得したことによって習得した10連撃ソードスキルを繰り出す――――!

 

 「らあああああ!!」

 

 一撃目――――回避される!

 二撃目――――また回避されるが、さっきよりも余裕がない!

 三撃目――――またかわされた!

 四撃目――――ガントレットで防御!

 その時、普通なら弾かれて終わるか、弾いた後に続いて攻撃するはずの連撃ソードスキルが、そのままガントレットの防御を押し切ってユリウス本体にダメージを与えた。

 またもや俺命名のスキル降下《ガードブレイク機能》だ。

 パリィやガードによる防御を無視して、そのまま攻撃を続ける攻撃――――!

 そのまま更に五回の斬撃を浴びせ、ユリウスを地面にたたきつけて、合計10回攻撃。

 大剣用ソードスキルの最上位技《オムニスラッシュ》だ。

 ゴシャァ!と、ユリウスが地面にたたきつけられ、さらにHPバーが一気に二本消滅する。

 これで、残りのHPバーはあと一本。……最初の一時間がとてつもなくアホ臭くなってきたな。

 

 「ヴァイオさん、凄いです!」

 

 「あ、ああ。まあ、ユウナのおかげでもあるって言うか……」

 

 「さっきのソードスキル!」

 

 「そっちかい」

 

 別にさっきの大ジャンプ褒められてうれしいとか期待なんかしてないし。予想通りだし。泣いてないし……ぐすん。

 そんな漫才はさておいて、まだユリウスは倒れていない。

 HPバーの最後の一本も、地面に叩きつけられたことによる追加ダメージで七割程度に減っていた。

 

 「パターンから考えると、出来ればレッドゾーンぶっちぎって倒しちまいたいけど……」

 

 「ヴァイオさん、フラグMobですよ? そんなに簡単にいきませんって」

 

 ユウナの言うとおりだ。

 この手のボス級モンスターは、HPバーがレッドゾーンに入るととたんに凶暴化するという特徴がある。

 出来ればそうなられる前に倒したいが、おそらくそれは無理だろう。

 何より、今まで片手直剣一本で通して来ていたユリウスが、ここにきて武器を持ちかえたのがそれを物語っている。

 

 「槍に斧、ね……どっちもリーチは今までの二倍近くか。それが二本ってのはキツいな」

 

 「HPはそんなに残ってないですね……アレ(・・)やります?」

 

 「アレ(・・)やるか」

 

 きっと今の俺たちは、凄く悪い笑顔を浮かべているだろう。

 アレ(・・)をやるとなると、今の配置は少しよろしくない。理想形は、ユリウスを挟んで俺とユウナが一直線に並んだ状態だ。

 

 「ユウナ、先に俺が攻め込むから、タイミング見てスイッチしてくれ。上手く並べたら、やるぞ」

 

 「了解です」

 

 言い終わるとほぼ同時にユリウスに突っ込む。もう一度《オムニスラッシュ》を喰らわせてやれば、そのまま押し切れる可能性もあるし、そうでなくとも、少しでもダメージを与えておいた方がいい。

 一気にユリウスの懐に飛び込み、《オムニスラッシュ》を放とうとし――――やめた。

 

 「うおっ!?」

 

 それまでとは比べ物にならない速さで、ユリウスが斧で反撃してきた。――――速い!

 体勢を立て直す間もなく、槍による突きが飛んできた。それを重力に身を任せて何とか回避し、地面に着地。と同時に、斧が振り下ろされ、危うく真っ二つにされそうになる。

 ……おいおい、一気に強くなってんじゃねーか。

 

 「ヴァイオさん!!」

 

 「大丈夫だ、ダメージはない!」

 

 そう言うものの、さっきのはあまりに速すぎる。

 これでは攻撃を当てるどころか、ソードスキルのモーションに入ることすらできない。スイッチをする間もなく連続で二本の武器を振りまわしてくるため、一人が回避に気を取られている間、もう一人は何もできない。

 

 「……二人同時に突っ込むか?」

 

 …いや、ダメだ。相手の武器が一つならともかく、日本の長物を操る相手には二人同時の突撃は意味がない。初撃を回避しても、次でやられてしまう。

 

 「ヴァイオさん、行きますよ」

 

 ユウナが言う。

 位置は偶然にも、俺とユウナとユリウスが一直線に並んでいる状態だ。

 どうせ手詰まりなら、やれるだけのことをやって帰ろうというわけだ。確かに、ここまでやっておいて、他の奴らに渡しちまうのはちょっともったいなさすぎる。

 

 「……行きます!」

 

 「おう!」

 

 二人同時にユリウスに向って走り出し、俺は《オムニスラッシュ》を、ユウナは《グランドスパイク》を構える。このまま突撃しても、ユリウスに回避されてしまうだろう。

 予想通り、ユリウスは回避行動に出た。一気に足を曲げ、そのままジャンプ。それだけで、六メートル近い高さまで行ってしまった。だが。

 

 「上に回避するのは……」

 

 「こっちからしてみたら好都合なんです!!」

 

 俺の《マーク・ヴァ・ルイン》とユウナの《ストレートメッサー》がぶつかり、ライトエフェクトが迸る。そして、そこで消滅してしまうはずの二つのソードスキルが、重なった。

 二色のライトエフェクトがやがて黄金色になり、振り上げられた二本の剣から斬撃が放たれる。

 これが、ユウナが持つ、ユウナだけが持つ ユニークスキル《合体技》――――!

 

 「「――――《グランディアーロ・マグナ》!!」」

 

 噴火の如きライトエフェクトが天に届く勢いで昇っていき、ユリウスを包み込んだ。

 カーソルを合わせると、ユリウスのHPバーの最後の一本が消滅し、ユリウスの体が青いポリゴンとなって消滅するのが見えた。

 出来れば人前で見せたくはなかったのだが――――まあ、しょうがなかったと自己完結しておこう。

 

 「にしても、やっぱすげえな……《合体技》」

 

 「息がそろわないと、そのまま技後硬直しちゃいますけどね」

 

 ユウナの言うとおり、コンマ一秒の狂いもなく完全に息が合わないと合体技は成立しないらしい。今までキリトさんや姉さんとも合体技を試したけど、上手くいったのは俺とユウナの時だけだった。

 ドロップアイテムや経験値などのリザルトを確認し、設置されているトレジャーボックスへと歩く。

 

 「こ……この中に、大天使装備が」

 

 「ヴァイオさん、開けましょうよ早く!」

 

 「お、おう。そう急かすなって」

 

 とは言うが、俺だって凄そうな装備の皆様方には早くご対面したいのだ。欲張って三つすべて同時に開ける!

 中から出てきたのは――――

 

 「「こ、これは――――!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そう落ちこむなよ、ユウナ」

 

 「…………」

 

 宿屋に戻ってきて、試しに大天使装備(女性限定装備だった)を装備したユウナは、そのまま気絶しそうになった。

 確かに大天使と言えば大天使だったよ。違う意味だけどな。

 

 「あの茅場晶彦って人……絶対変態です」

 

 「それは言いすぎだろう。むしろ俺と趣味が合いそうだったと……」

 

 「軽蔑しますよ」

 

 「茅場は変態だったな」

 

 あのトレジャーボックスから出てきた装備名を言わせてもらうと、《猫耳カチューシャ》《キャットメイル》《肉球グローブ》……もうお分かりだと思います。ユウにゃん降臨です。

 最初はユウナも割と乗り気で、ユリウスを倒して若干有頂天だった俺たちはそのまま猫装備を装備してみた。そして、ユウナがこうなった。

 まあ猫耳と肉球型のグローブは可愛いで済んだのだが……体装備がエロすぎた。というか、殆どヒモ水着だった。何処がメイルやねん。

 おまけにデフォルトで喋り方が猫語になるらしく、『にゃ、にゃんにゃんですかこれは!?』とか『みにゃいでー!』とか、もうそのままお持ち帰りしたくなりそうだった。

 いや、まあVITとAGIが+50%は確かに魅力的なんだけどさ……流石にエロすぎて戦えないわ、あれは。

 

 「うぅ……猫語なんて恥ずかしすぎです」

 

 「ああ、そこなのね、ショックの種は」

 

 まあデフォルトだからなー、どうしようもないな、そういうシステムだし。

 

 「……売る。絶対売る。売ってやるー!!」

 

 「ええ!? いや勿体ないだろそれは!?」

 

 「………」

 

 「級に無言になるなよ! おいパーティ解散されたぞ止めろってマジでゴメンナサイ俺が悪かった売りましょう!!」

 

 お年玉イベント……だったのかどうかは分からない。むしろ気苦労が増えただけだったような気もする。

 アインクラッド第百層突破は、まだ先の話だ。




今回の言い訳

ユニークスキル《合体技》について。
これは、『ユウナをメインとした二人、あるいは三人によるソードスキルの複合技』です。つまり、立派なスキル。うん。
合体技については色々考えてますが、今のところは今回登場した《グランディアーロ・マグナ》以外は思いついてません。
元ネタが分かった人は静かに胸の中にとどめておいてください。

今回の言い訳その2

様々なスキル付加アビリティについて。
創作ですオリジナルですかなりご都合主義です。というか、性能がチートです。《ガードブレイク機能》なんかチート以外の何物でもないです。
あ、《オムニスラッシュ》ともども元ネタが分かった人は静かに胸の中に(ry

今回の言い訳その3

ユウにゃん降臨。
装備に関してはエロいうえにチート機能で言語デフォルトはもう許してください。どうしても猫耳猫語を出したかったんです。
……機会があればもう一度出したいです。とりあえずユウナから逃げます。

とりあえずやりたいことは全部やったので、やっと最初のテーマの『復讐』に話が向きます。……ここまで長かったなぁ。
果たして『復讐』とは何なのか!?ユウナは生き残るのか!?これって死亡フラグだよね?では次回もよろしくお願いします!
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