ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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第2話 終わらない現実

 この浮遊城《アインクラッド》は全100層からなる縦型のダンジョンで、中には街やら迷宮やらのRPG中毒者にはたまらない施設が満載である。

 俺が今いるのは第72層―――――現在の最前線だ。今日まさにこの層のボスに挑まんと、様々なギルドやパーティーが集っていることだろう。無論、俺は参加しない。

 俺が装備している両手騎士剣《トゥルヌゥソル》は、ぶっちゃけこの層のボスモンスターと相性が悪すぎる。事前に仕入れた情報では、ちょこまかと動き回るらしいソイツはパワーでごり押しの俺が役に立てるような相手ではない。

 そもそも、この《ソードアート・オンライン》の中に俺以外で両手騎士剣を装備しているプレイヤーは一体どのくらいいるのだろうか。

 STR(筋力要求値)はバカ高いし、値段はクソだし、重いし軌道が読まれやすいしで、結構嫌われ者の騎士剣装備。

 ソードスキルこそ優秀なものが揃っているが、それにしたって熟練度が800を超えて初めて基本技《ディレイアタック》が使えるようになるレベルだ。需要低いにもほどがある。

 それでも俺が騎士剣装備を愛用するのには、理由がある。

 

 『キシャアアアアアアアアアアア!!』

 

 対峙するモンスター、ハードタートルは、俺が現在ソロで挑戦しているクエストのボスだ。目算で98層とかそのくらいのランクじゃなかろうか。

 その巨体にふさわしい破壊力と、5本の尻尾が繰り出す連続攻撃、名前の通りの防御力と、真面目に戦うのがアホらしくなってくるスペックを誇っている。

 しかも、コイツはそれだけで終わらない。

 コイツが98層レベルと判断した一番の理由。それが、頻繁に使ってくる必殺技《エンドライフパルサー》だ。

 効果範囲が無茶苦茶広い上にST防御装備無視の即死属性持ち。おまけにモーション超速と、攻略しようがないような必殺技だ。

 先人達がコイツを倒すのは不可能と判断した理由は、ハイスペックモンスターだからではない。このチート以外の何物でもない必殺技ゆえだ。

 ただし、

 

 「即死攻撃は、俺にとっちゃ最高のカモなんだけどな」

 

 背中に抱える騎士剣《トゥルヌゥソル》を引き抜く。そして、ただ刃の広い面を前に出して待つ。それだけだ。それだけで、俺の勝利は約束される。

 《エンドライフパルサー》が放たれる。その一撃は、普通のプレイヤーなら100%即死のまさに一撃必殺技だ。そう。普通の(・・・)プレイヤー(・・・・・)なら(・・)

 

 「……秘剣」

 

 トゥルヌゥソルの刀身が鈍く輝く。俺の持つ《ユニークスキル》が発動する時のエフェクトだった。

 《エンドライフパルサー》がどんどん迫ってきて、トゥルヌゥソルの刀身に触れた、その瞬間。

 

 「……《黄泉返し》!!」

 

 トゥルヌゥソルの刀身は《エンドライフパルサー》を吸収し、そのままハードタートルを――――10メートル近い間合いがあるにも拘らず――――一刀両断した。

 これが俺が持つ俺だけのスキル、秘剣《黄泉返し》。即死攻撃限定の、必中カウンター。

 カウンターを食らった相手は即死耐性無視で真っ二つにされてしまう。別名《斬鉄剣》(俺命名)。

 

 「さーて、レア素材はどこかなっと」

 

 ここに来た目的でもあるレア素材《クロム・ダイアグラム》を探し出す。クロムなんだかダイアなんだかハッキリしろと言ってやりたいが、そこは我慢だ。

 ついでにハードタートルを倒したことによってドロップしたアイテムも拾っていくが、まあ凄い凄い。レア武器から食材まで、色々落ちてる落ちてる。中にはて転移結晶なんて極レアもあった。

 最初にハードタートルがいた位置に、《クロム・ダイアグラム》を発見した後はもう何も用はない。

 せっかくなので入手した転移結晶を使って自宅がある37層の街《ラーブル》へと飛ぶ。

 

 「まったく、いつからこんな殺伐とするようになったのかね、この世界は」

 

 転移結晶に光に包まれながら、ポロリと口を衝いて出た。

 それについて考えるならば。、遡るときは今からほぼ2年前。

 最悪のデスゲームが始まった、あの日まで遡らなければいけない。

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