ソードアート・オンライン 《Violet Knight》 作:黒炉
夜にまた投稿するのでその時にあわせて返信します!!
そして最終回のじゃないのもごめんなさい!!
やっぱりこの次が最終回と言うなんか引き延ばしになっちゃいました!!
腕も剣も、こっちのほうが2本多い。だから、GM権限のチート技さえ使われなければ、それほど苦戦はしないと思っていた。
勘違いだった。むしろ、それほどのハンデを貰って、やっと五分の戦い。それほどまでに、ヒースクリフとしての茅場晶彦の実力は高かった。
「なろッ……!!」
19連撃《菫》も含めて、全てのソードスキルは茅場晶彦が設計した攻撃だ。少なくとも、俺たちが使うスタンダードなソードスキルは完全に見破られ、反撃のチャンスを与えるだけと思った方がいい。
だからこそ、俺もキリトさんも茅場も、ソードスキルを一切使わない単純な剣撃のみの攻防戦に徹しているのだ。
キリトさんの高速の二刀流が茅場の動きを一瞬止め、俺が左手を斬りとばしシステムの過剰アシストを封じる。あくまでそういう作戦で攻めているのに、攻撃がわずかに届かない。
「く……そおっ!!」
苛立ちが募り、つい攻撃が大振りになってしまう。
その隙を狙っていたかのように、茅場は長剣を高速で振り俺を斬ろうとしてくる。
それを紙一重で回避すると、苦し紛れの一撃を放ちながら茅場から距離を取る。俺が一度退いたのを見て、キリトさんも下がった。
「……なるほど、中々に悪くないコンビネーションだ」
「2対1で一撃ももらわないテメェに比べたら大したことはねえよ」
事実だった。
こっちは全力の超速攻撃で、一瞬でも手元が狂えば斬撃がお互いを切り裂く可能性もある中での集中攻撃だというのに、茅場は涼しい顔でしのぎ切った。
というか、どうやれば剣3本を1本で止められるんだ……?
「………」
そこで、キリトさんの視線に気づく。
言いたいことは分かった。感覚が研ぎ澄まされている。キリトさんの言いたいことが、目の動き、剣の動き、回避の仕方、全てから読み取れる。
キリトさんも伝えたいことが伝わったことがわかったようだった。同時に走り出す。
そこで俺は、この戦いで初めて、システムによって動きをサポートされたソードスキルを使った。
「……行け!!」
19連撃《菫》――――ではなく、6連撃《トリック&トリック》。
剣の全てを使うソードスキルであり、最大の特徴は、『モーションは速いが隙が大きい』ことである。
つまり、どのタイミングで、何処をどう攻めてくるのかが分かれば、対処のしやすさは断トツだということだ。
そして、茅場は待ってましたと言わんばかりに《トリック&トリック》の隙を突こうとしてきた。
そう。ずっとこのタイミングを待っていたのだ。当然だ。強敵に部類される俺たちを下す、最も手っ取り早い方法なのだから。
俺たちを下すとは、つまり俺たちを攻撃するということで、それは自身の防御に向く意識が薄くなるということだ。
「――――アンタなら、そう来ると思っていたよ」
一瞬で茅場の懐に潜り込み、ソードスキルを発動させようとしていたキリトさんが言う。
この状況からつぶせるのは俺かキリトさんかどちらか一方。
だが、その両方が自分に向って大ダメージ必須の攻撃を仕掛けて来ている。動きの速い俺か、ダメージ重視のキリトさんか、どちらに対処すればいいのか。普通なら、ほんの一瞬でも迷うはずだ。
しかし、茅場は迷わず俺を狙ってきた。最初の動きに逆らわず、俺のソードスキルを弾き返す。
ここまでは想定内。ここから、キリトさんが二刀流のソードスキルをぶっ放して決める!!
そう、なるはずだった。しかし、
「……フン!!」
俺のソードスキルを弾き返した後、茅場は剣を引かずにそのまま体を捻った。
右足を軸に、左足を回転させて、そのままキリトさんのソードスキルも弾き返す。
「……!?」
「なん、だと……!?」
思わず息を飲んでしまった。
確実に、どちらか一方の攻撃は当たるはずだった。
それが、見事に両方を防がれ、茅場はまだ体勢を崩していないのに、俺もキリトさんもソードスキル後の硬直時間で動けなくなった。
殺られる――――!
「はぁ!!」
「う、うおおおおおおおおお!!」
技後硬直が解除されるのと、長剣が突き出されたのは同時だった。
俺は体をCの字のように逸らして回避すると、そのまま《夜菫》でありったけの力を込めて殴りつける。だが、茅場に長剣をペンまわしのように回され、盾として防御、パリィされてしまう。
そこへキリトさんが二刀流の斬撃を放つが、それすらも簡単に防がれてしまう。
キリトさんの斬撃を防いでいる茅場にさらに斬りかかろうとするが、防御の合間に繰り出された蹴りによって飛ばされる。
「がっ……!」
「ヴァイオレット!」
「余所見をしている暇は無いぞ、キリト君」
言った通り、キリトさんが弾き飛ばされ、地面に転がる。
強い……強すぎる。
ヒースクリフの伝説は、システム操作による攻撃や敵の弱体化によって積み上げられた虚構だと思っていた。
だが、それこそがまやかしだった。強い。GM権限なんてものを抜きにしても、茅場晶彦――――ヒースクリフは間違いなく最強のプレイヤーだ。
反応速度、剣筋、全てが俺たちの上を行っている。
「糞ッ……なんで、なんで攻撃が全然届かねえんだ……!!」
口には出すものの、原因など分かっていた。
積み上げてきたものが違いすぎる。
茅場晶彦は、現実世界にいたときから、何年も、何十年も前からこの瞬間のためだけの人生を送ってきた。今までに手放してきたものなど、数えきれないだろう。
それに対して、俺がこの世界で必死になった時間はたった2年。あまりにも、違いがありすぎる。
積み上げた物の違い。気付いた物の違い。覚悟の違い。
技術云々じゃない。全てが負けている。
「ちっ……くしょおおおおおおおおおお!!」
苦し紛れの《菫》――――美しくもなんともない、ただの醜い暴力。
美学も何もない、ただの斬撃が、茅場に届くわけがない。キリトさんのアシストもない、ただの攻撃。特攻。
「――――やはり、最後に私の前に立つのはキリト君だったか」
茅場はつまらなそうに言った。
ただシステムに任せた動きに身をゆだねた俺の胸を、長剣が貫いた。
「―――――――あ?」
冷酷に。
無慈悲に。
音もなく。
確実に俺を殺す、そのためだけに。
「…………!!」
遠くでシリカが叫ぶ声が聞こえた。
だが、それを含めて、今起きたことが理解できなかった。
胸を貫く長剣も、溢れる赤いダメージエフェクトも、減っていくHPバーも。
茅場の目を見る。実につまらなそうな眼をしていた。
それはつまり、俺がこうやって自滅することは目に見えていた結果――――
「がっ……」
……そうか。
SAOの主人公、英雄はあくまでキリトさんであって、俺ではない。
俺は主人公がカッコよくなるための踏み台で、力及ばず散る運命のかりそめの勇者。
ここで茅場が俺を殺し、キリトさんが茅場を倒し、この世界は終わり、俺は死ぬ。
俺が生き残ることはない。なぜなら俺は、
《ソードアート・オンライン》という物語にハッピーエンドをもたらす、悪い王様からお姫様を助け出す主人公ではないから。
「がっ……ぐ、おっ……おお………!!」
そんなの……認められるものか。
力が足りないのはしょうがない。それが現実だ。
それでも、俺は死ぬわけにはいかないんだ。帰るって、向こうで会おうって約束したんだ。
残される辛さを、シリカに味あわせるわけにはいかない――――!!
「おおおおおおおおおお!!」
声を出せ。意識を明確にしろ。
まだ体は消滅していないのだから、何か出来ることがあるはずだ。
《夜菫》を放り投げ、両手で茅場の右腕を掴む。
一度加えたら決して離さない、獰猛な獣の如く。
「……そういや、アンタ言ったよな。体術スキルを使うのが自分だけとは思わないことだって」
「確かに言ったな。それがどうした……」
茅場も、俺のやろうとしていることを理解したようだ。瞬時に腕を引こうとするが……もう遅い。
「そっくりそのまま帰してやる。受け取れ糞野郎」
単発重攻撃体術スキル《ビーストファング》。
両手で対象を、顎で噛み砕くように破壊する攻撃スキル。
それは、確かに、茅場の右腕を喰らい、引きちぎった。
「ぐお……!!」
「はっ……どうだ、これで、テメェは丸腰……」
言いかけたところで、目の前に表示された、《You are dead》の文字。
死ねという、宣告。
HPバーは尽き、HPは0になっていた。
0。ぜろ。ゼロ。零。即ち、死。
瞬間、何も聞こえなくなり、ただ視覚だけが残る。
シリカ達が、何かを叫んでいるが、聞き取れない。
――――エギル、お前がいなきゃ、中層プレイヤーの被害はもっと大きかったよ。ありがとな。
――――クライン、俺、本当はお前の事、大好きだった。お前は、もっと強くなれよ。
――――姉さん、今まで、色々ありがとう。姉さんのおかげで、今の俺があったのは確かだよ。
――――キリトさん、あの時、あの夜に、キリトさんと会わなかったら、俺はユウナと分かりあうことができませんでした。本当に、ありがとうございました。
――――シリカ、ごめんな。約束、守れそうにないや。でも、頼むから、俺やユウナのところに来るのはゆっくりにしてくれよ。もう少し、お前の笑顔を見てたいから。
最後に、口が動く感触。
最後に、シリカに伝えたい言葉。
「■■■■■■■■。■■■■■、■■■―――――」
パキィン……という、乾いた音が響き。
俺の体は消滅を迎え。
俺は、死んだ。
感想、お待ちしてます!