ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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静波さん、エロゲマスター・シンさん、リヴァイアさん、浅倉空さん、くまたさん、並立裏子さん感想ありがとうございました!!


第24話 全ては始まる

 気が付けば、俺はそこにいた。

 空は夕焼けのオレンジ色に染まり、風に揺れる芝生が俺をなでる。

 つまり、俺はそこに倒れていた。

 

 「――――三途の川って、川じゃねえんだなぁ……」

 

 不意にそんなことを呟いて――――んなわけあるか。三途の川はちゃんと川があって、渡し賃が6問と相場は決まってんだろ。

 よく見ろ俺。死んだじっちゃんばっちゃんどころかユウナもいねえだろうが……あ。あれ、ディアベルじゃね? なんかこっちに向って手ェ振ってる……

 

 「……行ったらガチで死ぬ気がすんのは気のせいだと思いたいけどなぁ……」

 

 とりあえず、三途の川ではなさそうだ。

 三途の川だったら渡し船漕ぐ奴と喧嘩してるところだったぜ。コルは持ってるが旧日本円は持ってねえ。

 

 「……あれ、でも俺、確かHPが0になって死んだはず……」

 

 自分の格好を見てみる。

 背中には愛剣《夜菫》があるし、服装も全てそのままだ。指を振れば、ウィンドウも出てくる。もっとも、『最終フェイズ実行中 現在23%完了』という訳の分からない文字が表示されるばかりだったが。

 だが、ということは、ここはまだSAOの中……?

 しかし、ゲームオーバーになったらすぐに脳を焼き切られて死ぬんじゃなかったのか? それとも執行猶予的な奴があるのか……

 いくら考えても答えは出なかった。寝転がり、空をただ見つめる。

 その内、視界に建物のような物体が入った。

 

 「あれは……アインクラッド……?」

 

 見間違え……ではなかった。

 あれは間違いなく、浮遊城アインクラッドだ。数々の冒険を経て、75層まで上り詰めた、《ソードアート・オンライン》の舞台――――

 だが、様子がおかしい。

 遠目なので分かりづらいが、外部からぽろぽろと崩れ落ちているような……

 

 「崩壊……?」

 

 頭の中に浮かんだ単語を口に出す。

 すると、今まで誰もいなかったはずのこの場所で、俺以外の声がした。

 

 「そうだ。キリト君によってゲームはクリアされ、アインクラッドは現在崩壊を迎えている」

 

 その声は、忘れることのできないものだった。

 茅場晶彦――――ヒースクリフでも赤ずくめの男でもなく、本来の、ナーヴギア開発者としての茅場晶彦。

 キリトさんによってゲームはクリア――――ということは、あの後キリトさんが勝ったのか……

 

 「……ぷっ、くははは……、結局アンタ、キリトさんに負けたんだ」

 

 「……引き分けだ。HPが0になったのは同時だったのだ」

 

 「大人気ねえな。それくらい認めろよ」

 

 不思議と、さっきまでの殺意も復讐心もなかった。

 死んで、どうしようもないと悟ったからだろうか。

 

 「隣、いいか」

 

 「ご自由に」

 

 俺が短く答えると、茅場は俺の隣に座った。

 ともに、崩壊していくアインクラッドを眺める。

 

 「なぁ……アインクラッドは、《ソードアート・オンライン》の舞台……電子ネットワークに浮かぶ、仮想の城だろ? ありゃどういう仕組みで崩れてるんだ?」

 

 「あれは、まあぶっちゃけ私の趣味だ。現在、SAOメインフレームの全記憶装置で完全消去作業を行っている。あと15分もすれば、この世界の全てが消えさる」

 

 「……いいのか? アンタがあれだけの犠牲を出してでも見たいと思った世界だぞ」

 

 「ゲーム開始初日に言っただろう。この世界の完成を見た時点で、私の目的は達せられていたよ」

 

 つまり、茅場の目的とは、自分の作った世界を見ることであって、そこから先は全てプレイヤーである俺たちに託されていた、ということか。

 全員が低層にとどまって、一生あの中で生活する選択肢だってあったはずだ。選んだ奴は、ごく僅かだろうけど。

 

 「……生き残った六千人は?」

 

 「正確には六一四七人だな。心配無い。先ほど、全員のログアウトを確認した。今頃一斉に目覚めているころだろうな」

 

 「そっか……あの場にいた奴で、俺以外に死んだ奴はいないよな?」

 

 「………いない、な」

 

 一瞬の間が気になったが、あえて追及はしなかった。茅場がいないというのなら、いないのだろう。

 

 「……アンタのやったことは大量殺人以外の何物でもないけどさ、気持ちはわかるぜ」

 

 「ほう」

 

 「俺も時々あったからな。ああいう、ファンタジー染みた世界に行ってみたいって思うこと」

 

 「私の場合は、作りたい、だったがね」

 

 茅場はそこで言葉を切った。

 アインクラッドは、下層から順に崩壊していき、一割程度が既に無くなっている。

 

 「君は、子供のころは夢見る少年だったか」

 

 「残念。お袋のお陰で結構早い段階からリアルに諦めつけてたね。それこそ、剣とか魔法とか言ったら何時間説教喰らうか分かんなかったしな」

 

 「そうか……何歳のころだったかはもう覚えてないが、ずっと昔、空に浮かぶ鉄の白の空想に、私はとりつかれた。普通は歳を重ねれば忘れるのだろうが、私の夢想は成長するたびにはっきりと、鮮明になった。まるで、私に実現を求めているかのようにな。ここから離れて、あの世界に――――鉄の城に行きたい。その思いだけは、今でもまだ色あせてはいないよ」

 

 「まだ……ヒースクリフとして、生きたかったのか?」

 

 「いや……クリアは君たちの努力のたまものだ。私は素直に受け入れるよ。私はね、ヴァイオレット君。あの城は、実はこことは別の世界のどこかで、確かに存在していると、信じているのだよ」

 

 「……見つかるといいな。アンタの世界」

 

 何故、こう言ってしまったのかは分からない。

 だが、今の茅場から感じるのは、小さな子供が持つ『夢を叶えたい』という純粋で無垢な願いだけだった。

 

 「ヴァイオレット君、君は、ユニークスキルがただのラスボスと戦うためのスキルだと思ってはいないか?」

 

 「違うのか?」

 

 「違うさ。あれは、持ち主の心を写すからな」

 

 「心を……写す」

 

 「ああ。何よりも強さと速さを望めば《二刀流》が手に入り、大切な人の死を認めなければ《黄泉返し》が発現し、絆を求めれば《合体技》が芽生える。ユニークスキルとは、そういうものなのだよ。そこは誤解しないでくれよ」

 

 「……死を、認めない……」

 

 つまり俺は、心のどこかでは、ユウナの死を認めずに、目をそむけてたってことか……

 踏ん切りつけて割り切ったつもりでいたのに、何やってんだかな、俺は。

 

 「……さて、私はまだ会う人がいるのでね。これで失礼させてもらうよ」

 

 そう言い、茅場は立ち上がった。この場を立ち去ろうとして、歩き始める。

 だが、数歩歩いたところで立ち止まり、こちらに振り返った。

 

 「そう言えば、二つ言い忘れていたな。まずは、ゲームクリア、おめでとう。ヴァイオレット君」

 

 「……俺は負けたぞ?」

 

 「いいや。君たちの勝利さ」

 

 そう言い、茅場は不敵に微笑んだ。

 まったく、最後まで全部お見通しって言いたげなムカつく表情だ……

 

 「それから二つ目だが……ユウナ君は生きている」

 

 ……………。

 一瞬、理解が出来なかった。

 それまでボーっとしていたのもあるが、それを差し引いてもすぐには理解できないだろう。

 なぜなら、この男は、自分が殺した人間が生きていると言ったのだから。

 

 「……いや、待て。ユウナはアンタが殺したんだぞ。話が合わないだろ」

 

 「私も良く分からないのだ。確かに高圧のマイクロウェーブが脳を破壊するようになっているはずなのだが、ユウナ君のHPが0になった後も、彼女のナーヴギアは動き続けている」

 

 それなら、ユウナの意識は何処に……と思った。

 だが、とりあえずは、それで全然構わない。

 生きていてくれるのなら……まだ、希望はある。

 

 「そっか……生きてるのか。よし……!!」

 

 小さくガッツポーズをする。だがそこで気付いてしまった。

 俺はもう、死んでいる。あの世界には戻れない……

 

 「心配しなくてもいいさ。君ならば、また彼女と巡り合えるだろう」

 

 「な……それって、どういう……」

 

 思わず聞き返す。

 だが、茅場は俺の問いには答えずに姿を消した。

 響く、茅場の声。

 

 『君たちの未来が、希望に満ち溢れた物であることを願っているよ、ヴァイオレット君』

 

 どういう、ことだよ……

 俺はただ、呆然とそこに立ちつくし、途中で何の前触れもなく、意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……薬の匂いがする。病院か……?

 体が動かない……固定されてる感覚じゃない。筋肉が、言うことを聞かない……。

 ああ、俺、帰ってきたんだ……2年も寝てりゃ、筋肉はなくなるよな。

 現実……実感、ないな。

 家どうなってんだろ。部屋とかほこりまみれだったらやだな。

 学校……俺今確か中3だっけ。高校受験は無理だよな……やべぇ、人生真っ暗ロードだ。茅場、俺の人生絶望&ニートライフ確定しちゃってるよ。

 皆……戻ってきたのか?

 エギル、クライン、姉さん、キリトさん、シリカ、ユウナ――――――

 

 「――――ユウナ!!」

 

 起き上がろうとして、全身に違和感が走る。

 何とか体を起こそうとするも、胸に張り付いた何かが邪魔だ。

 心電図だか何だかって奴だろうが……とりあえずはがしちまえっ。

 起き上がれないために、ベッドの上を転がって降りようとする。ドシャッ、と思い切り床に落ちた。

 

 「………つっ、てぇ……ああ、なんか、感覚も、変だ……筋力、とか、誤差大きいなぁ……」

 

 床を這いずるように進んでいく。

 点滴の支柱が倒れる音がした。それすらも無視して、進み続ける。

 頭のナーヴギアは、衝撃で転がっていた。頭から取れている。

 コイツは、ずっと俺と一緒に戦ってくれたんだよな。最後の最後まで……。

 

 「……ありがとう。皆と知り合えたの、お前のお陰だよ」

 

 ナーヴギアに思いをぶつけると、俺はベッドを松葉づえ代わりにして立ちあがった。

 筋肉が著しく衰えているため、何度も転んだ。それでも、進むことはやめない。

 ユウナに会えるんだ。もう一度、あの声を聞ける。

 今からでも、いろんなことが出来る。遊びに行くのも、勉強も、全て、ここからだ。

 やっとの思いで病室のドアに辿り着き、力いっぱいに開ける。

 ここからだ。ここから、一歩を踏み出す。

 ユウナがどの病院に搬送されたかは分からないが、茅場の言うとおり――――会える気がする。必ず。

 待ってて、優奈。今行くから。

 そう胸に刻みつけ、俺はさらに一歩を踏み出した。




と言うわけで、SAO編は今回で終了ー次回からALO編が始まりまーす最終回なのはあくまで第1章だけでーす(笑)
笑えなかったらすみません……

今回の言い訳

ユニークスキルの解釈は拙作オンリーです。原作?何それ食えんの?なマイペースなので気にしないでください。こういうもんだなーとおもって傍観してください。

今回の言い訳その2

三途の川見えませんでした。
『6万だと!? バカ言え!! 渡し賃は6文だと相場は決まって――――は!?』
文庫違うのでお帰り下さい。

今回の申し訳

SAOクリア時のヴァイオレットのステータスを掲載します。参考はア○○○トさまのステータスシート。体術スキルがチート性能だぜ!
HPは本当は0なんですけど流石に可哀そうなのでwww

ヴァイオレット
LV 91 所属ギルド無し
HP 16800/16800

筋力 1189 敏捷値 1022

スキルスロット/11

★両手騎士剣スキル /完全習得 隠密行動スキル  /329
★体術スキル    /完全習得 識別スキル    /449
★索敵スキル    /完全習得 ボケスキル    /772  
★自動アビリティ装備/完全習得 ツッコミスキル  /211
★戦闘時回復スキル /完全習得 秘剣スキル    /834
 追跡スキル    /541

自動アビリティ/4

・筋力+30% ・敏捷力+30%
・格闘     ・拳士の心得

使用可能スキル

ディレイアタック    タイフーン・ブレイバー
ダブルディレイ     ヴィア・アブゾーバー
サーペント・リーヴ   グランドブレイク 
クレセント・ミラージュ 菫
トリック&トリック   秘剣《黄泉返し》
ペイン・サーキュラー  
  

装備

右手    夜菫
左手    夜菫
頭     無し
体1     ミッドブルーウェア
体2     コートオブダークブルー
足     スターリー・ライド
アクセサリ 隼の腕輪
      鮫の鱗

ご質問&ツッコミは感想欄よりどーじょー。

ではでは、次回ALO編も、よろしくお願いします!
はいちゃらばっ!
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