ソードアート・オンライン 《Violet Knight》 作:黒炉
「………なあ、シリカ。超居心地悪いんだけど」
「そりゃ、種族違うし」
シリカに案内され、俺はケットシー領の主都《マリアール》へとやってきた。
入口にこわそーなNPCガーディアンがいたが、既にシリカとパーティを結び直していた俺は排除されることなく街へと入ることが出来た。
しかし、これはこれは、中々に場違いすぎて笑えない。
「ケットシーって皆猫耳だったのか……!!」
「哀愁漂わせながらガッツポーズするのやめてくれない?」
猫耳。ネコ尻尾。猫耳フェチの俺にとってこれ以上の天国はあるまい。さすがは
しかし、全員が猫耳と言うことは、即ちノット猫耳な俺は極めて場違いだということになる。まあ、種族違うからしょうがないよね。皆ケットシーで、俺インプだもん。○羅のスパイとロリコン神級デジ○ンのもとくらい違うもん。ネタ分かった人は結城藍人までご連絡を。
「なあ、やっぱ俺場違いすぎ……」
「あ、ニーナ!」
「聞けよ」
シリカは俺の問いかけには答えず、数メートル先にいる女性プレイヤーのところへ走って行った。
……あの尻尾、あとで鷲掴みにしてやる。
《ニーナ》と呼ばれた見た目少女のプレイヤーは、シリカに気が付くとこちらに駆けて来て、ついで俺に気が付き短刀を構えた。
「げ!? インプ!?」
「どーも、通りすがりのインプです」
本気で事を構えるつもりもないしそもそも出来ないので軽くボケ混じりの挨拶をかます。
そういや俺、いままで一回もケットシーの人に武器を向けられなかったな。なんて言うか、皆ほのぼのしてた。
「え、えっと、待ってニーナ! この人は馬鹿だけど、いい人だから」
「さりげなく俺の事どうでもよくなってますよねシリカさん?」
「……インプのスパイじゃなさそうね。もしコイツがスパイだったら、私インプの人たちにいい精神科紹介してあげなきゃ」
「おいコラ初対面に向かってなんちゅー口の聞き方してんだコラ」
何なんだよこのケットシーの美少女二人組は。そんなに俺をいじって楽しいか。
そんな俺の突っ込みも華麗にスルーされ、シリカとニーナの元には3人のケットシーが集まってくる。
……そうか。シリカが言ってた他の4人ってこの人たちか。シリカが持ち帰ったドロップアイテムを分配するわけだ。
「……あ、ヴァイオも欲しいのがあれば持ってても……いいのかな?」
「俺に聞くなよ。てか、何がいいアイテムなのかなんてさっぱりわかんねーって」
一応さっきのサラマンダーくんがドロップしてくれた大剣を装備してはいるが、カラーリングが深紅なのでちょっと気に入らない。
金には余裕があるので、どこかでいい装備を一式そろえるつもりだ。
「あ、あれ。シリカちゃん、この人は」
「誠に申し訳ないんですけど気付くのおせーよ」
何故だろう。どうしてケットシー領の人たちはこんなにほのぼのしてるんだろう。
「えっと……私が前にやってたMMOの知り合いで、ヴァイオレットって言うんです。リアルでも……友達以上です」
「え……えと、まあ、確かにただの友達ではないな」
一応、シリカの説明に嘘はない。リアル情報を持ちだしたのには感心しないが。
そりゃ、毎日最前線でズバズバやってりゃ友達以上の関係にだってなる。シリカの顔が赤かった気がしたが、気のせいだと勝手に判断しておこう。
「へー。そういや、シリカちゃんアイツ等から良く逃げてこれたね」
「いえ、ヴァイオが助けてくれたので……」
「……初期装備のインプが?」
「どーも。シリカを助けたインプです」
4人全員が、驚愕の視線を俺にぶつけた。
どうやら彼らはかなりの
まあ、ALOのダイブ時間はかなり短いが、ステータス自体はSAOのヴァイオレットの物だからな……
「それじゃ、シリカちゃんを助けてくれた優しいインプさんに、お礼しないとな」
「「「おー!」」」
………ALOってのは、種族間対立の激しいMMOだと記憶してるんだけどな。
俺が呆けて立ちつくしていると、それなりに体の大きい猫と言うより虎な男に担がれ、周囲で一番大きい建物――――というよりも、テントのようだった――――に連れ込まれた。
☆
連れ込まれた先で俺は何故か宴会の主役にされた。……皆、仲イイね。
ケットシーの領主であるアリシャ・ルーさんが、俺のグラスが空になる度に酒を注いでくれるもんだから、俺の胃は液体でいっぱいだ。
「あのー、ルーさん? 俺みたいな正体不明Xを宴会の主役にしちゃっていいんでしょうか……?」
「別に全然大丈夫だヨー? みんな楽しいこと大好きだかラ」
そう言い、アリシャは楽しそうに笑った。
……楽しいのはいいんだけどさ、こんなところでこんなことしてる場合じゃないんだよね。
俺としてはさっさと情報だけ貰ってどこかで装備を整えてから一気に世界樹まで飛んでいきたいんだけど。
「それで、キミは何がほしいのかナ? お姉さん色々教えてあげちゃうゾ?」
「え……? えっと、じゃあ、女性とうまくお使いする方法を」
「何聞いてるのよバカイオレット!!」
ポカン、とシリカに頭を殴られた。いてーな、バカになったらどうすんだ。
「もうバカでしょ。このバカ」
「人のモノローグに突っ込むんじゃない。今のは重い冗談だ」
「……やっぱバカ」
俺がキメ顔でそう返すと、シリカはそっぽを向いてしまった。
む、なんか怒らせるようなこと言ったかな。
「あはハー。ヴァイオレット君、女心が分かってないネー」
「女心どころかなんで俺がこんなところにいるのかも分かってないっすよ」
そう言い、グラスの中の酒を一気に飲み干す。
……こころなしか、アルコールの風味があるのは気のせいだよな……?
「それで、キミはホントは何を教えてほしいのかナ?」
「えっと、とりあえずこのあたりで装備一式をそろえたい。武具屋――――出来ればカラーリングが青系の大剣があるところを教えてもらえると助かる。装備とアイテムさえあれば、世界樹までは行けると思うから」
「キミ、世界樹行くつもりなノ?」
「ああ――――あそこに、探してる人がいるかもしれないんだ」
かもしれない、と言ったのは、優奈と同じ状況にある姉さんがそこにいたからというだけで、優奈がそこにいる確証はないからだ。
だが、なんとなく、第六感と言う奴が告げている。ユウナは……優奈は、あそこにいる。俺を待ってる。
「ふーん、なんかワケアリそうだね。急ぎでないなら、ワタシ達と一緒に行くってのはどウ?」
「へ?」
俺は思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。
冷静に考えれば、彼女たちもまた世界樹あるいはその道中に用事があり、方向が一緒だから行動を共にしようと言われていることぐらい想像できたのだが、俺は咄嗟に俺のために助力を申し出てくれていると勘違いしてしまった。
そこへ、シリカが俺をアリシャの誘惑から呼び戻すべく、解説と鳩尾への一発をくれた。
「シルフと領主会談があるの。それで、アリシャと護衛何人かが《蝶の谷》を越えたあたりに行くのよ」
「解説さんきゅー……食ったもん出ちまいそうだ」
「女の子の前で何言ってんの!!」
シリカのストマックブローが再び俺の腹を捕える。
今のは間違いなくお前が原因だ、と言い返す力も持ってかれ、俺はごちそうが並べられているテーブルの上に突っ伏した。
「あーあ、シリカちゃん、彼抵抗できないんだからほどほどにしてあげなヨ」
「え……? あ、ヴァ、ヴァイオ!?」
「うげぇ……」
何とか意識を保ち、起き上がる。
……うわ、HPが3割近く持ってかれてる。怖いなぁもう……
「それで、どーするノ? 一緒に行ク?」
「あっと……い、いいのか?」
「キミみたいな強い人がいてくれるなら、すごーく助かるヨ!」
そう言い、アリシャは尻尾を大きく振った。
まあ、俺一人あるいは俺とシリカだけよりも、アリシャのようなこの世界の情勢や地理に非常に詳しい人がいてくれれば、助けにはなるし、大勢でパーティを組んでいればどこかで死んでセーブポイント(つまりここ)からやり直しになる危険も低い。
シリカも俺の同行を望んでいるようで、彼女の方を向くとやはり尻尾が揺れていた。
「じゃあ……しばらくだけど、よろしく」
俺は少し照れながらアリシャと握手を交わした。
ちなみに、翌日アイテムストレージに大量の《猫じゃらし》が入っていたのは間違いなく彼女のせいだ。
お久しぶりかと思いきやそうでもない黒炉です。
県学調――――県内一斉学力調査という悪魔の所業でハーメルンから姿を隠していました。
まあ読んで字のごとくというか、テストです。しかも超難しい。ほぼ全問が高校入試レベルなので、夏休み勉強漬けでも追い込みをかける必要があったと、そう言うわけなのです。
主観じゃかなり手ごたえあったので、点数次第で親に「両立出来てんぞどーだ!!」ってドヤ顔できます(笑)
これからは更新ペースを戻していくので、これからもよろしくお願いします!