ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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静波さん、エロゲマスター・シンさん、000Xiさん、ぴるすさん、輪ゴムさん感想ありがとうござました!


第35話 央都アルン

 ALO最大の都市、世界樹の真下にある、央都アルン。

 ようやく、俺達――――俺、シリカ、キリト、リーファ、それからシリカの使い魔のピナに、自称プライベート・ピクシーのユイ――――はここに降り立った。

 村瀬の企みを知った後、俺はまっすぐに帰宅し、ALO内で待機していたキリトさんにのみ、須郷と村瀬の事を話した。キリトさんの話からして、村瀬が加担しているのは間違いなさそうだった。

 現在時刻は午後3時過ぎ。

 昨日の夜からALOがサーバーメンテナンスに入っていたために、昨日は到着直後に即ログアウトしてしまったが、こうして改めて見てみると、街の規模はSAOの始まりの街に匹敵するレベルだった。

 

 「また、トンキーに会えるかなぁ」

 

 唐突にリーファが言った。

 トンキーとは、《ヨツンヘイム》というダンジョンで俺たちが助けた象水母のような姿の邪神級モンスターだ。

 人型の邪神級モンスターに襲われていたところを、キリトさんの突発ヒラメキパワーで助けたところ、《ヨツンヘイム》を連れ回された挙句にアルンの真下までタクシーになってくれた、心優しい(?)モンスターだ。

 

 「そうだな……また会えたらいいな」

 

 「キリトさんが会いたいのは、《聖剣エクスキャリバー》じゃなくてですか?」

 

 「あ、言えてる」

 

 シリカが言うと、俺とリーファ、ユイが笑った。

 あの時――――《ヨツンヘイム》から脱臭する時に見えた《聖剣エクスキャリバー》は、あのユージーン将軍の持つ《魔剣グラム》を超える唯一の剣と呼ばれ、それまでは所在すら明らかになっていなかった、超とドがつくほどのレアアイテムだ。

 それだけの超級武器、キリトさんが欲しがらないわけがなく、ついでに俺も欲しがった。

 もっとも、今のエクスキャリバーの在り処はふざけた化け物がうようよしているヨツンヘイムの最下層。そんなところに、4人+1人+1匹のパーティで挑める訳もなく、俺たち(主に俺とキリトさん)は涙ながらにエクスキャリバーの入手を一時的に(ここ重要)諦めた。

 アルンの大通りに出た俺たちは、まず最初に、点に届かんばかりの巨木――――世界樹に目を奪われ、次いで通りを行き交う人の多さに驚いた。

 

 「うわぁ……人がいっぱいです!」

 

 「ワタシ、こんなに人がたくさんいるの、初めて見たよ!」

 

 「それに、いろんな種族が仲良くしてる!」

 

 女性陣が、感嘆の声を漏らした。上からユイ、リーファ、シリカだ。

 確かに彼女たちの言うとおり、人の多さも、種族の多様さも、今までみたどの都市よりも――――と言っても、せいぜい2つだが――――多かった。

 俺たちの目的はアルンではなく世界樹なので、行き交う人々から視線を外し、もう一度世界樹を見上げる。

 

 「……行ってみる?」

 

 「ああ……あの樹には、外側からは登れないのか?」

 

 リーファが聞き、キリトさんが答えた。

 ……さすが、かつてアインクラッドを外側から登って攻略しようとした命知らず。同じこと考えてる。

 当然、リーファの答えはNOだった。

 

 「幹の周囲は進入禁止エリアになってて、木登りするのは無理みたいだね。飛んで行こうとしても、上に着く前に翅に限界が来ちゃうらしいよ」

 

 「へぇ……あ。あの、多段ロケット式で登って行ったって奴は?」

 

 これは俺。

 

 「ああ、その話ね。枝までもうちょっとってところまで行ったらしいんだけど、すぐに修正が入ったわ。今は、雲の少し上に障壁が設定されてるんだって」

 

 「なるほど」

 

 そして、その時に取ったスクリーンショットの中に、姉さんの画像があった。

 そこから、優奈もいるんじゃないかという可能性を導き出し、俺もこの世界――――VRワールドを再び訪れた。

 

 「行ってみよっか?」

 

 「ああ……」

 

 「そだな」

 

 リーファの問いかけに短く答え、俺たちはとりあえず世界樹の木の根元まで行ってみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分歩き、世界樹の根元と、そこへ行くためにくぐるゲートが見えてきた。

 間近で見る世界樹は、巨木と言うよりも壁と言うイメージを俺たちに与え、樹そのものが巨大なダンジョンになっているのではないかと錯覚してしまうほどだった。

 世界樹の根元へと続くゲートをくぐろうとした時、ユイがキリトさんの胸ポケットから顔を出した。

 彼女は自称プライベート・ピクシーだが、キリトさんをパパと呼んでいるところから見ると、前にキリトさんと姉さんが話していた、《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》――――Yui‐MHCP001こと、二人の娘のユイなのだろう。

 というか、プライベート・ピクシーは初期のキャンペーンか何かで手に入るもので、2年間SAOの中で過ごしたキリトさんには入手のチャンスはないはず。どういう裏技を使ってALOにユイを出現させたのか、ぜひ聞かせてほしいところだ。

 ともかく、そのユイが、世界樹の上部を数秒見上げ、言った。

 

 「ママ……ママがいます」

 

 「な……」

 

 「ホントに居た……」

 

 キリトさんと俺が思わず声を漏らした。

 

 「本当か!?」

 

 「間違いありません! このプレイヤーIDはママのものです……座標はまっすぐこの上空です!」

 

 ユイが言い終わるのと同時に、キリトさんの翅が大きく開かれ、一瞬光ったかと思うと、バン!!と大きな音を立てた。

 気が付いた時には、キリトさんはすでに上空にいた。

 

 「ちょ……キリト君!?」

 

 「キリトさん!?」

 

 「あ、置いてきやがった!!」

 

 驚く二人を尻目に、俺も一気に飛びあがる。

 シリカが呼びとめた気がしたが、このままキリトさんに突き離されたらユウナへの手がかりもなくなってしまう。

 まるで黒いすい星のようにぐんぐん加速するキリトさんに、何とか追いついていく。

 

 「キリトさん……この上……姉さんが……?」

 

 「アスナ……」

 

 キリトさんは、ただ姉さんの名を呼んだだけだった。

 代わりと言わんばかりに、さらにキリトさんの体が加速され、ついていくことすら難しくなっていく。

 

 「気をつけて、キリト君、ヴァイオ君、すぐに障壁があるよ!!」

 

 かなり下方から、リーファの声がした。

 すぐに上を向き、なんとか急ブレーキをかけるが、元のスピードが速すぎるせいで殆ど焼け石に水状態だった。

 少し離れたところを飛んでいたキリトさんが、虹色に光ったかと思うと、超級ボスの攻撃でも来たかのように空気が震える。

 キリトさんが、俺よりも僅かに早く障壁に激突したことが分かり、理解したころには、俺も障壁に激突していた。

 

 「………ッ」

 

 一瞬意識が飛びかけるが、すぐに体勢を立て直す。

 キリトさんもすぐに持ち直したようだった。だが、すぐに障壁に向かって突撃していく。

 やがて追いついてきたリーファとシリカが、無謀ともいえるキリトさんの行動を必死に止めた。

 

 「やめて、キリト君、そこから上には行けないんだよ!」

 

 「キリトさん、落ち着いてください!」

 

 「落ち着いてられるか!! 行かなきゃ……行かなくちゃならないんだ……!!」

 

 視線の先には、ぼんやりとした枝。地上から比べれば、十分に近い距離だが、それでもまだ遠すぎる。システムなんていう無機質なものに阻まれて、これ異常近づけないなんて……。

 結果。システム属性であるはずユイですらもシステムの壁に阻まれてしまった。ただ、そこから届いた小さな声を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キリトさん……」

 

 あれから、一度地上まで戻ってきた俺たちは、言い表しようのない空気に包まれていた。

 戻ってくる前と後で違うのは、キリトさんが右手に持つカード。

 ユイ曰く、システム管理用のアクセス・コードだそうで、対応するコンソールさえあれば、ゲーム内からでもシステムにアクセスできるらしい。

 けれど、スタンドアローン型のRPGじゃないんだから、そんな都合のいい物がその辺に落ちているわけがない。

 

 「……リーファ、教えてくれ。世界樹の中に通じてるって言うゲートは何処にあるんだ?」

 

 「え……木の根元にあるドームだけど……で、でも、あそこは強力なガーディアンに守られてて、今までどんな大軍団でも突破できなかったんだよ」

 

 「それでも、行かなきゃならないんだ」

 

 キリトさんは胸ポケットにカードをしまい、そう言った。

 リーファの手を取り、口を開く。 

 

 「今まで本当にありがとう、リーファ。ここからは、俺一人で行くよ」

 

 「キリト君……」

 

 リーファが泣きそうな籠った声を出す。

 ……まったく、バカだバカだと思ってはいたけど、ここまでとは……

 はぁ、とため息をつくと、スタスタとキリトさんのところまで歩いて行き……

 

 「バカ」

 

 「あだっ」

 

 ぽかんっ。と、キリトさんの頭を軽く殴った。

 

 「な、何するんだよ」

 

 「何するんだじゃないっすよ。なーにが“俺一人で行く”なんすか。俺を頭数から外さないでほしいですね」

 

 「あ……悪い」

 

 「今完全に顔で忘れてたっつったろ!?」

 

 バカと言うか天然だ、この人。悪気がないから性質が悪い。

 もう一度ため息をつくと、キリトさんと手を組む。

 

 「ヴァイオレット……頼む」

 

 「言われなくたって最初から行ってますよ、俺は」

 

 目指すものは違うけれど、俺たちがやることは一つだ。

 まずは、あの世界樹のゲートをこじ開ける!!

 キリトさんと一緒に笑うと、目の前にピナが飛んできた。

 

 「……?」

 

 ピナが何かを飲みこむように喉を鳴らすと、次の瞬間、俺とキリトさんに顔面ファイヤーしてきやがった。

 

 「「おあちゃああああ!!」」

 

 いきなりの敵襲に、二人で顔を抑えながらごろごろ転がりまわる。

 何事!? 何が起こったの一体!?

 

 「二人とも、私の事忘れてませんか?」

 

 ようやく顔の熱さが引いたところで、地面に倒れる俺たちの前に仁王立ちしたシリカは言った。

 ……忘れられてたからって顔面ファイヤーはねえだろ。

 

 「忘れてねえよ。どうせ行くなら一緒に決まってんだろ」

 

 「それならいいけど。あ、最近ピナが新しいブレス攻撃を――――」

 

 「さあ行こうぜキリトさん!!」

 

 実験台にされる前にとっとと逃げ出すべきだ。あれは悪魔だ。猫妖精族の皮をかぶった悪魔に違いない。

 

 「お前たちな……遊んでる場合じゃないだろ」

 

 「別に遊んでるわけじゃ……いいや、もう面倒になってきた……」

 

 流れるボケパートを切り上げる。

 さて、それじゃあ遊び抜きの世界樹攻略、始めるか。

 

 「それじゃあな、リーファ。今までありがとう」

 

 「短かったけど、それなりに楽しかったよ」

 

 「また会おうね、リーファ」

 

 それぞれがそれぞれの別れの言葉をリーファに言う。

 別に、ここで死んでも実際に死ぬわけじゃないし、もっとリラックスしてた方がまともに戦えるかもしれない。

 けれど、この戦い、あの時と――――75層のボス部屋で、茅場と対峙した時と、同じくらいの気持ちで行く。そうでなければ、きっと勝てない。

 

 「よし――――行くぞ。ヴァイオレット、シリカ」

 

 「うす」

 

 「はいっ」

 

 俺たちは、世界樹のそびえる方角へと走り出した。

 俺たちの背中を無言で見つめる、長いポニーテールの少女を残して。




今回の言い訳ではないけれど言い分。

真面目回のつもりがどうしてもボケパートを入れてしまう僕はやっぱりシリアス(だけを)書くのが苦手。
村瀬VS突如現れた藍色くんをご所望だった皆様ごめんなさい。話が過去(1位日くらい前)にもどりました。


閑話休題


実は今まで未登場のユイ。
基本的に話がヴァイオ視点なので、黒猫団とかユイとかヴァイオをからませづらい話はできないっていう難点があるんですよね……でも3人目の主人公とか絶対カオスだからできないし。

10月にSAOの最新11巻が発売(^^♪
10巻末後書きでアリシゼーションの続きとか書いてあった気がしたけど何故かプログレッシブ。
でもアルゴ好きだからまあいいや(^O^)/
そしてMOREDEBAN分かってるならあげろよ出番!

以上、現場の黒炉がお送りしました!!
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