ソードアート・オンライン 《Violet Knight》   作:黒炉

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祈願者トーマスさん、000xiさん、Bruuさん感想ありがとうございました!


第39話 掌の中の守りたいもの

 「おーい、キリトさーん!!」

 

 告げられた時刻よりもほんの僅かに早い3時56分。

 キリトさんは、リーファともう一人、別のシルフを連れてやってきた。

 というか、アイツ誰?

 

 「紹介するわ。私の『友達』のレコンよ」

 

 リーファが『友達』という部分を強めていった。

 レコンがかなり残念そうな顔をしているのは気のせいではない。

 

 「ヴァイオレットだ。よろしく」

 

 「シリカです。こっちはピナって言います」

 

 俺たちが順に自己紹介するが、レコンの意識はもっぱらピナに向いていた。「わーテイムモンスターだ初めて見たー」と目を輝かせている。

 キリトさんの胸ポケットに収まっているユイの反応を見るに、彼女の時はもっとひどかったに違いない。

 

 「でも、レコンはどうしてここに?」

 

 「手伝わせるためよ。世界樹攻略」

 

 俺が聞くと、リーファが即答した。

 レコンが向こうで「何それ聞いてないよリーファちゃん!?」と叫んでいるが、リーファが無視しているので俺も無視することにした。

 ……この光景、すげぇ既視感あるな。

 哀れなレコンに心の中で合掌していると、キリトさんが口を開く。

 

 「ヴァイオレット。あのガーディアン達は、単体じゃたいしたことないけど、湧出パターンが異常なせいで、攻略不可能なボスに匹敵するレベルになってるんだけど……」

 

 「異常なのは俺たちのスキル熟練度やパラメータだって一緒でしょう。あいつらの存在そのものがチート染みてるように、俺らだってチートみたいなもんなんですから」

 

 俺がリーファとレコンに聞こえないように言うと、キリトさんとシリカがさっと目を伏せた。

 ……やめろよ。別にやましいことしてるわけじゃ……十分やましいか。

 そんなローテンションなやりとりもあったが、すぐに話を戻す。

 キリトさんは、さっきとは全く別の、真面目な顔で言った。

 

 「……すまない、皆。もう一度だけ、俺の我儘に付き合って貰えるか」

 

 ……よし、この人もっぱつブン殴ろう。

 すたすたと歩いて行くと、逆立った黒い髪に一発入れる。

 

 「いっつ……」

 

 「だーから、言ってるじゃないですか、キリトさん。キリトさん一人の問題じゃないんですよ、これは」

 

 「そうですよ、キリトさん。どうせヴァイオだって特攻するんですから!」

 

 「俺玉砕が前提!?」

 

 シリカの若干フォローになってないフォローにツッコミを入れる。

 確かに、このままこのメンバーで突撃したところで、勝ち目は薄いかもしれない。

 けれど、俺にもキリトさんにも、時間がない。

 アリシャやサクヤの増援を待って、ただ何もせずにここにいることなんて、出来ないのだから。

 

 「キリト君。行こう、あの上へ」

 

 「リーファ……」

 

 二人の様子を見る限り、どうやら決着をついているようだった。

 レコンは若干置いて行かれているが、何の問題もなさそうだ。

 

 「よし……じゃあ皆、いこうぜ!」

 

 「「おう!」」

 

 キリトさんの掛け声に、全員が応える。

 2回目だ。失敗はない。必ず、ガーディアンの大群を突破して見せる――――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な扉をくぐった先にあったのは、さっきと同じ広いドーム状の空間。

 だが、レコンも含めて声を出す者はいなかった。

 さっきよりもかなり速いペースで、既に数体のガーディアンが湧出しているからだ。

 

 「行くぞ、ヴァイオレット」

 

 「はい。……遅れないで下さいよ、キリトさん」

 

 「お前こそな」

 

 短く言葉を交わすと、各々の武器に手をかける。

 それとほぼ同時に、迫りくるガーディアンの大群に飛びこんで行く。

 俺たちとガーディアンの大群が交差した瞬間、爆音がドーム内に響いた。

 

 「「うおおおおおおおお!!」」

 

 今度は、さっきのミスは繰り返さない。

 俺とキリトさんが、一定以上離れないように距離を意識しつつ、それでもお互いの動きをじゃなしない程度に離れた、絶妙の位置関係。

 憎悪値(ヘイト)に関係なくガーディアンがシリカたちにも襲いかかるのだから、自分のサポートは自分で行うことを前提にして動くべきだ。回復魔法(ヒール)支援魔法(バフ)はないと思った方がいい。

 

 「はああ!!」

 

 4体目のガーディアンを切り落とすと、シリカたちの方に視線を向ける。

 3人とも何体かのガーディアンにタゲられてはいるが、HPは一割も減っていない。

 

 「5体目!!」

 

 5体目、キリトさんと合わせれば11体目となるガーディアンを切って捨て、6体目のHPも7割ほど削ったところで、後方から、紫色の閃光が轟いた。

 

 「「……!?」」

 

 ガーディアンの特殊攻撃かと、俺もキリトさんも一瞬息をのむが、何か雰囲気が違う。

 振り返って確認すると、さっきまで圧倒的にHPに余裕のあったレコンが消え去り、リメインライトがまたたいていた。

 

 「レコン……あのバカ……!!」

 

 ALOの魔法に関する知識がなくても簡単に分かる。自爆魔法だ。

 紫の閃光と、それと同時に死んだレコン。語る物は自爆しかない。

 リーファは、レコンに自爆にショックを受けて、翅が止まっていた。

 シリカはまだ応戦しているが、一気に二人分の戦力が抜けたせいで、かなり追いつめらている。

 

 「(くそ……見捨てるしかないのか……!? たかがゲームじゃない、結果と過程すべてに意味があるはずのこの戦いなのに……見捨てていいのか!?)」

 

 一瞬悩み、剣が鈍る。

 ガーディアンはその隙を見のがさず、たたみかけてきた。

 ああ……くそ、やっぱダメだな、俺。

 シリカが……珪子が伝えようとしてくれたのは、こういうことだったのに。

 迷っていれば、殺られる。だから、心を削って俺にそのことを教えてくれたのに。

 けど……なら、なおさら迷ってはいられない。

 決めたんだ。なら、その答えに素直に従って戦えばいい。

 鈍った剣は、もう一度その鋭さを取り戻した。

 隙を突こうとしてきたガーディアンに首に突き刺さり、刎ね飛ばす。

 

 「次、来い――――!」

 

 向かってくる次のガーディアンと、剣をぶつける。

 だがそこで、想定していなかった事態が起きた。

 レスティカルが、根元から折られたのだ。

 

 「――――!?」

 

 耐久値――――持たなかったのか!?

 いや、戦闘前に確認した時は、まだ余裕があった。つまり、この戦闘中に、耐久力を削りきられて――――

 

 「!!」

 

 思い浮かんだのは、一つの仮説。

 システム外スキル……とまでは言わずとも、耐久値の減りやすいように攻撃する。

 そう言うアルゴリズムを与えられたモンスターを、見たことがないわけではなかった。

 けど……けど、ここで、そんな……!!

 

 武器を失った俺は、体勢が悪いせいで体術に切り替えることも出来なかった。

 斬られる――――!!

 

 「ヴァイオ君!!」

 

 だがそこで、俺を呼ぶ声がした。

 同時に、まるで俺の手に飛び込んでくるかのように飛んできた片手剣。

 白と黒の二色が並んだ、重みのある片手剣。

 

 「お……おおおおおおおおお!!」

 

 何も考えず、ただ目の前に敵を蹴散らす。

 片手剣はめったに使わないが、それでも使えないわけではなかった。

 周囲のガーディアンを一気に屠ると、剣の飛んできた方へ向く。

 そこにいたのは、可愛らしい尻尾を耳を生やした、美しきケットシー領主。

 

 「アリシャ……!?」

 

 「増援に来たヨ、ヴァイオ君!!」

 

 アリシャは、ピナの何倍もある大きな飛竜にまたがっていた。

 シリカが前に言っていた、龍騎士(ドラグーン)隊だ。

 龍たちが猛烈なブレスを吐き、ガーディアンを焼き尽くしていく。

 

 「アリシャ、これは……?」

 

 「キミとスプリガンの彼からもらったお金で、いい装備を大量にそろえれたヨ! お陰ですっからかんだけどネ!」

 

 思わず苦笑いしてしまう。

 俺と同じように追い込まれていたキリトさんの方には、シルフの増援がいた。

 ……なるほど、これで負ければケットシーもシルフも破産だな。なら、なおさら負けられない!

 

 「どりゃあああ!!」

 

 片手剣――――《クライム&ペナルティ》と言う名の、新たな俺の相棒が、ガーディアンをなぎ払って行く。

 コイツ、見た目に反してかなり重い! とんだじゃじゃ馬娘じゃねえか!!

 数多のガーディアンをなぎ払って行くと、途中で孤立していたシリカを見つけた。ガーディアンの軍勢に、囲まれている!!

 アイツらが妨害しているせいで、シルフともケットシーとも合流できていないようだった。

 合理的に見れば、ここでシリカを見捨ててあの扉を目指す方が断然いいはずだ。

 だが、俺に迷いはなかった。

 

 「シリカぁぁぁあああ!!」

 

 叫びながら、急降下する。

 途中で2体、邪魔をしてきたガーディアンがいたが、押しのけて突っ込んでいく。

 タックルと蹴りでシリカを囲むガーディアンを数体押しのけ、彼女をかばうように間に入る。

 

 「ヴァイオ!? なんで……!?」

 

 「助けに来ちゃ悪いのかよ」

 

 俺がそう言うと、シリカは少し怒った風に返す。

 

 「なんで……なんで、あの扉を目指さないの!? これはSAOじゃないんだから、私は死んでも大丈夫だから……!」 

 

 「それでいいわけないだろ」

 

 シリカの言葉を遮って言う。

 確かに、合理的なのはシリカの言うとおりにすることだ。

 けれど、それでは駄目だ。それではシリカが傷ついてしまう。

 

 「確かに、お前の言うとおりにした方が利口だよ。けどな、それじゃお前は笑えないだろ。そんなの、お前が認めても俺は認めねえぞ。誰かが悲しんで終わるハッピーエンドなんて、俺は絶対に認めない」

 

 「ヴァイオ……ホント、ばか……!」

 

 「それにな、シリカ。お前はまだ一つ勘違いしてるぜ」

 

 涙を零しながら俯いていたシリカが、顔を上げる。

 俺は間を入れず、続けた。

 

 「優奈を助けるのは俺じゃない。俺達(・・)だ」

 

 向かってくる2体のガーディアンを叩き落とす。まったく、人がカッコよく決めてるときくらい黙っていればいいのに。

 さらに追加で一帯を墜落させると、俺はその続きを言った。

 

 「お前だけを置いてはいかない。一緒に行こう」

 

 「……ふん、飛ぶのだったら私の方が上だもん。ヴァイオなんて、置いていっちゃうから」

 

 「あっ、開き直った」

 

 シリカの反応に少し笑う。

 そして、俺はクライム&ペナルティを、シリカはダガーを、お互いの背後に迫っていたガーディアンに突き刺す。

 

 「まだ飛べるよな、珪子」

 

 「藍人こそ、途中で弱音はかないでね」

 

 言い合った後、急旋回し、扉を目指す。

 ガーディアンが3体立ちはだかるが、それぞれが一体を撃破し、残った一体は龍のブレス攻撃に焼かれる。

 

 「「おおおおおおお!!」」

 

 早く、速く、優奈のもとへ。

 待ってろ、優奈。俺、こんなにたくさん仲間が出来たんだぜ。お前にも、すぐに紹介してやるからな。

 だから、速く、優奈のもとへ!

 どこまでも、限りなく加速しろ――――!

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